108 / 268
商人への道?
100.新たな目標ができたかな
しおりを挟む
夕日で赤く染まる市場をるんるんと歩く。
青乳牛からたくさん素材をもらえたから、ホームに帰ってアイテム作りするんだ。一階はもうリフォーム作業が入ってて使えないけど、二階なら大丈夫。
「あ、モモさーん!」
不意に呼びかけられて振り向いたら、スキル屋さんが大きく手を振ってた。
「久しぶりだね!」
「そうですね。私、ちょっとスキル屋研修に行ってて、この街を留守にしてたので。代わりのスキル屋は利用してなかったんですか?」
「代わりがいたことすら知らないよ」
スキル屋さん、市場で見かけないなぁって思ってたけど、いなかったんだね。別のスキル屋さんはいたみたいだけど。
というか、そろそろスキル屋さんを個別認識しておきたいな。
「――スキル屋さんのお名前なんですか?」
「今更ですか!? 名前を聞かない主義なんだと思ってました」
大げさに驚かれる。そんなつもりはなかったんだけど、最初はあんまり深く関わらないだろうなぁって思ってたんだよね。スキル屋さんって、変なノリの話し方してたし。
「スキル屋さんっていう響きで満足してたけど、考えてみたら他にもいるんだなって思って」
「まぁ、この街じゃ、基本的にスキル屋イコール私ですからね」
うんうん、と頷いた後「私はシェ・ルーです。シェでも、ルーでも、シェ・ルーでも、お好きにお呼びください」って教えてくれた。
「どれが名字?」
「そのような概念はありません。シェもルーも、私を指す名前です」
「不思議だね~」
この世界の人の名前って、あんまり統一感がない。誰が考えてるんだろう? なんとなく、役割に似た名前が多いのかなって気はする。
「シェルさんって呼ぶね」
「まさかの新パターン。いや、別にいいですけど、私は貝ではありませんよ?」
「知ってるよ?」
英語でシェルは貝とか貝殻を指す。でも、僕はただ呼びやすいあだ名にしただけ。シェって単独で呼ぶの発音が難しいけど、ルーさんもなんか違うんだよねぇ。
「……まぁ、お好きにどうぞ。あだ名つけられるの初めてだなぁ」
照れくさそうに頬をかくシェルさんに、友だちいない疑惑が湧く。でも、友だちがいてもあだ名で呼ばれないパターンはある、かなぁ?
「せっかく会えたし、スキルの交換カタログ見せてー」
「もちろんいいですよ。どんなものをお探しですか? やっぱり農作業系?」
「それもいいんだけど、バトルで使えそうなカッコいいものも欲しいなぁ」
カタログをペラペラとめくる。たくさんスキルがあって、目移りしちゃう。
「モモさんなら、種化スキルとか欲しがるもんだと思っていましたけど」
「それも欲しいよ」
前にマナさんがそのスキルで象の花から種を作ってくれたんだよね。持ってたら絶対便利。種の入手が難しい植物、結構多そうだもん。
「交換に必要なスキル数は五ですよ」
「五かぁ……またスキル集めしないとなぁ」
バトル時に使えるカッコいい感じのスキルは、さらに必要数が多い。ルトが持ってる魔術剣は結構お得な部類だ。
「おすすめな魔術士のスキルというと、光と闇の魔術ですかね。光属性はバフ系の効果を自分に付与しつつ、相手を攻撃できます。闇属性はデバフ系の効果付きで攻撃できます。この辺だとスキル交換でしか入手できませんし、便利ですよ」
「他でも入手できるの?」
「王都の魔術学院で勉強すれば、身につくはずです」
カミラに聞いたことある気がする。王都まではまだ遠いし、スキル交換で入手するのもいいかな?
「どんな攻撃があるの? カッコいい?」
「なぜカッコよさに重きをおいているのかわかりませんが……レベルを上げると良い感じですよ。低いレベルでも、派手さはありますし。ただ、雷魔術とかの複合属性魔術の方がより目立ちますね」
複合属性魔術なら、がんばったら自力で入手できるかも。ミレイが入手方法を教えてくれたし。雷や嵐の魔術を狙ってみてもいいかも?
「……ちゃんとバトルしろってことか」
楽して入手できるわけないよね。いらないスキル集めも大変だし。
「それで、次の目標はどうしますか?」
ワクワクとした顔で見つめられて、迷った末に【種化】スキルを指さす。自力で入手が難しそうだから、交換するならこれかな。結局バトル用のスキルじゃないけど。
「――モモさんって、やっぱり冒険者らしくないですよね」
「自覚してるよ」
ライアンさんに続き、シェルさんにも言われた。もうちょっとバトルをがんばるべきかな? エリアボス討伐目指しちゃう? あんまりやる気ないけど。
今はそれよりお店のこととか、タマモみたいな友だちのこととか考えるのが楽しい――あ、タマモといえば、写真撮影会のことシェルさんに相談しなきゃ!
「シェルさん、シェルさん」
「え、なんです。私になにかをねだっても、出てくるのはゴミだけですよ?」
何故か紙ゴミをポケットから取り出して渡された。いらない。
ペイッと捨てる直前に、何か文字が見えた気がして、凝視する。
「……スキル割引?」
「あ、それ、研修中にとったメモです。研修を受けて、スキル割引資格を取ったんですよ。交換用スキルを一部お金で賄えるようになりました!」
にこっと笑うシェルさんに、「おー、すごい、良かったね」と拍手する。僕にとっても利益になるし、いくらでも褒め称えるよ。
「お得意様にだけ適用するつもりです。もちろん、モモさんもご利用くださいね」
「うん! 交換用スキル五個だと、どうなるの?」
「えーっと、四個と一万リョウか、三個と二万五千リョウですね」
「お安、い……?」
相場がわからないけど、スキルを一つ集めるより、約一万リョウを入手する方が僕は楽。早速いらないスキル集め始めようっと。
「――って、それより、お願いしたいことあったんだった!」
うっかり忘れちゃってたけど、僕はシェルさんに写真撮影会での大道芸披露に協力してもらいたかったんだよ。
「お願いですか?」
首を傾げるシェルさんに説明したら、次第にキラキラと目を輝かせ始めた。
「――私の演奏を、ステージで、できる……!? お客様まで呼んで……!」
「いや、ステージと言えるほどかはわからないけど」
答えつつも、タマモに言ったらしっかり作ってくれそうだなって思った。ライアンさんの許可をもらえたら提案してみようかな。シェルさん乗り気みたいだし。
「全力でがんばります! どのような曲がいいですか?!」
「こっちの曲がわからないけど、明るい感じがいいかな。ほら、前に僕が披露した芸は覚えてるでしょ? ああいうのに合ってると嬉しいよ」
「わかりました! 私にお任せください!」
張り切ってるシェルさんの熱意にちょっと押されちゃう。
これ、僕も同じくらい気合を込めて芸をするべきかな? 新しい芸覚えちゃう? 運営さん、たくさんスキルとしてゲーム内に仕込んでそうだし、探してみるか……。
******
24.07.22
『66.念願のスキル!』でのスキル屋さんフレンドカード取得の表現を削除しました。
青乳牛からたくさん素材をもらえたから、ホームに帰ってアイテム作りするんだ。一階はもうリフォーム作業が入ってて使えないけど、二階なら大丈夫。
「あ、モモさーん!」
不意に呼びかけられて振り向いたら、スキル屋さんが大きく手を振ってた。
「久しぶりだね!」
「そうですね。私、ちょっとスキル屋研修に行ってて、この街を留守にしてたので。代わりのスキル屋は利用してなかったんですか?」
「代わりがいたことすら知らないよ」
スキル屋さん、市場で見かけないなぁって思ってたけど、いなかったんだね。別のスキル屋さんはいたみたいだけど。
というか、そろそろスキル屋さんを個別認識しておきたいな。
「――スキル屋さんのお名前なんですか?」
「今更ですか!? 名前を聞かない主義なんだと思ってました」
大げさに驚かれる。そんなつもりはなかったんだけど、最初はあんまり深く関わらないだろうなぁって思ってたんだよね。スキル屋さんって、変なノリの話し方してたし。
「スキル屋さんっていう響きで満足してたけど、考えてみたら他にもいるんだなって思って」
「まぁ、この街じゃ、基本的にスキル屋イコール私ですからね」
うんうん、と頷いた後「私はシェ・ルーです。シェでも、ルーでも、シェ・ルーでも、お好きにお呼びください」って教えてくれた。
「どれが名字?」
「そのような概念はありません。シェもルーも、私を指す名前です」
「不思議だね~」
この世界の人の名前って、あんまり統一感がない。誰が考えてるんだろう? なんとなく、役割に似た名前が多いのかなって気はする。
「シェルさんって呼ぶね」
「まさかの新パターン。いや、別にいいですけど、私は貝ではありませんよ?」
「知ってるよ?」
英語でシェルは貝とか貝殻を指す。でも、僕はただ呼びやすいあだ名にしただけ。シェって単独で呼ぶの発音が難しいけど、ルーさんもなんか違うんだよねぇ。
「……まぁ、お好きにどうぞ。あだ名つけられるの初めてだなぁ」
照れくさそうに頬をかくシェルさんに、友だちいない疑惑が湧く。でも、友だちがいてもあだ名で呼ばれないパターンはある、かなぁ?
「せっかく会えたし、スキルの交換カタログ見せてー」
「もちろんいいですよ。どんなものをお探しですか? やっぱり農作業系?」
「それもいいんだけど、バトルで使えそうなカッコいいものも欲しいなぁ」
カタログをペラペラとめくる。たくさんスキルがあって、目移りしちゃう。
「モモさんなら、種化スキルとか欲しがるもんだと思っていましたけど」
「それも欲しいよ」
前にマナさんがそのスキルで象の花から種を作ってくれたんだよね。持ってたら絶対便利。種の入手が難しい植物、結構多そうだもん。
「交換に必要なスキル数は五ですよ」
「五かぁ……またスキル集めしないとなぁ」
バトル時に使えるカッコいい感じのスキルは、さらに必要数が多い。ルトが持ってる魔術剣は結構お得な部類だ。
「おすすめな魔術士のスキルというと、光と闇の魔術ですかね。光属性はバフ系の効果を自分に付与しつつ、相手を攻撃できます。闇属性はデバフ系の効果付きで攻撃できます。この辺だとスキル交換でしか入手できませんし、便利ですよ」
「他でも入手できるの?」
「王都の魔術学院で勉強すれば、身につくはずです」
カミラに聞いたことある気がする。王都まではまだ遠いし、スキル交換で入手するのもいいかな?
「どんな攻撃があるの? カッコいい?」
「なぜカッコよさに重きをおいているのかわかりませんが……レベルを上げると良い感じですよ。低いレベルでも、派手さはありますし。ただ、雷魔術とかの複合属性魔術の方がより目立ちますね」
複合属性魔術なら、がんばったら自力で入手できるかも。ミレイが入手方法を教えてくれたし。雷や嵐の魔術を狙ってみてもいいかも?
「……ちゃんとバトルしろってことか」
楽して入手できるわけないよね。いらないスキル集めも大変だし。
「それで、次の目標はどうしますか?」
ワクワクとした顔で見つめられて、迷った末に【種化】スキルを指さす。自力で入手が難しそうだから、交換するならこれかな。結局バトル用のスキルじゃないけど。
「――モモさんって、やっぱり冒険者らしくないですよね」
「自覚してるよ」
ライアンさんに続き、シェルさんにも言われた。もうちょっとバトルをがんばるべきかな? エリアボス討伐目指しちゃう? あんまりやる気ないけど。
今はそれよりお店のこととか、タマモみたいな友だちのこととか考えるのが楽しい――あ、タマモといえば、写真撮影会のことシェルさんに相談しなきゃ!
「シェルさん、シェルさん」
「え、なんです。私になにかをねだっても、出てくるのはゴミだけですよ?」
何故か紙ゴミをポケットから取り出して渡された。いらない。
ペイッと捨てる直前に、何か文字が見えた気がして、凝視する。
「……スキル割引?」
「あ、それ、研修中にとったメモです。研修を受けて、スキル割引資格を取ったんですよ。交換用スキルを一部お金で賄えるようになりました!」
にこっと笑うシェルさんに、「おー、すごい、良かったね」と拍手する。僕にとっても利益になるし、いくらでも褒め称えるよ。
「お得意様にだけ適用するつもりです。もちろん、モモさんもご利用くださいね」
「うん! 交換用スキル五個だと、どうなるの?」
「えーっと、四個と一万リョウか、三個と二万五千リョウですね」
「お安、い……?」
相場がわからないけど、スキルを一つ集めるより、約一万リョウを入手する方が僕は楽。早速いらないスキル集め始めようっと。
「――って、それより、お願いしたいことあったんだった!」
うっかり忘れちゃってたけど、僕はシェルさんに写真撮影会での大道芸披露に協力してもらいたかったんだよ。
「お願いですか?」
首を傾げるシェルさんに説明したら、次第にキラキラと目を輝かせ始めた。
「――私の演奏を、ステージで、できる……!? お客様まで呼んで……!」
「いや、ステージと言えるほどかはわからないけど」
答えつつも、タマモに言ったらしっかり作ってくれそうだなって思った。ライアンさんの許可をもらえたら提案してみようかな。シェルさん乗り気みたいだし。
「全力でがんばります! どのような曲がいいですか?!」
「こっちの曲がわからないけど、明るい感じがいいかな。ほら、前に僕が披露した芸は覚えてるでしょ? ああいうのに合ってると嬉しいよ」
「わかりました! 私にお任せください!」
張り切ってるシェルさんの熱意にちょっと押されちゃう。
これ、僕も同じくらい気合を込めて芸をするべきかな? 新しい芸覚えちゃう? 運営さん、たくさんスキルとしてゲーム内に仕込んでそうだし、探してみるか……。
******
24.07.22
『66.念願のスキル!』でのスキル屋さんフレンドカード取得の表現を削除しました。
1,349
お気に入りに追加
3,076
あなたにおすすめの小説
【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました
土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。
神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。
追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。
居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。
小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。
え?わたくしは通りすがりの元病弱令嬢ですので修羅場に巻き込まないでくたさい。
ネコフク
恋愛
わたくしリィナ=ユグノアは小さな頃から病弱でしたが今は健康になり学園に通えるほどになりました。しかし殆ど屋敷で過ごしていたわたくしには学園は迷路のような場所。入学して半年、未だに迷子になってしまいます。今日も侍従のハルにニヤニヤされながら遠回り(迷子)して出た場所では何やら不穏な集団が・・・
強制的に修羅場に巻き込まれたリィナがちょっとだけざまぁするお話です。そして修羅場とは関係ないトコで婚約者に溺愛されています。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~
秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」
妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。
ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。
どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
リストラされた聖女 ~婚約破棄されたので結界維持を解除します
青の雀
恋愛
キャロラインは、王宮でのパーティで婚約者のジークフリク王太子殿下から婚約破棄されてしまい、王宮から追放されてしまう。
キャロラインは、国境を1歩でも出れば、自身が張っていた結界が消えてしまうのだ。
結界が消えた王国はいかに?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる