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商人への道?
83.ドキドキ面接だよー
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ホームでログアウトして休憩後に戻ってくると、朝になっていた。
というわけで、商業ギルドにレッツゴー! 良いバイトさんがみつかるといいな~。
「いらっしゃいませ、モモ様。バイトの面接ですね。二階の小会議室で行いますので、ご案内いたします」
商業ギルドについて、相談窓口に向かったら、リエインに二階まで案内された。すぐに面接予定者を呼んできてくれるんだって。
ちょっと緊張するなー。面接ってなにをしたらいいんだろう?
そわそわと小会議室内を眺める。僕が座ってる椅子の前には、三つの椅子が並んでる。バイトに応募してきたのは三人なのかな?
コンコン、とノックの後に、再びリエインが現れた。
「応募者を連れてきました」
「こんにちは~」
「ちわっす」
「失礼いたします」
なんとも面接らしくない挨拶をする男性二名と畏まった様子の女性一名。全員異世界の住人だ。
「僕、南区の農家の三男、メイトです~。よろしくお願いしま~す」
「こちらこそよろしく~」
つられて間延びした返事をしちゃった。
メイトはそばかすがチャームポイントの青年。口調と雰囲気がのんびりしてる。
「俺、カルストっす。親父は中央区の酒場でオヤジしてるっす」
「親父がオヤジしてる……面白い説明だね」
間違ってはないし、意味はわかるんだけど。カルストは語彙力なさそうだなぁ。
ツンツンと立った髪は黒色に金色のハイライトが入ってて、ヤンチャそうな見た目。こういうタイプと話したこと、あんまりないかも。
「私はシシリーです。一ヶ月前までオストリア伯爵令嬢の家庭教師をしておりました」
「おっ? なんかすごそうな人が来た……」
まじまじとシシリーを見つめたら、戸惑った感じながらも微笑みを返された。
シシリーは柔らかいピンク色の髪をきつく団子結びでまとめている。紅茶色の瞳が綺麗だ。簡単に言うと、めちゃくちゃ美人。
なんでこんな人が僕の屋台のバイトに募集してきたの? きっともっと良い職場があるでしょ。
僕が不思議がっているのが伝わったのか、シシリーが躊躇いがちに口を開く。
「あの……私はお嬢様のご不興をかってしまい、暇を出されましたので……。もし私を採用していただいたとしたら、伯爵閣下よりお叱りを受けるかもしれません……」
しょんぼりと肩を落とすシシリーから、リエインに視線を移す。正直意味がわからない。
リエインは少し眉を寄せたが、すぐに表情を笑みで取り繕って説明をしてくれた。
「モモ様は異世界から来られて日が浅いようですからご存じないかもしれませんが、オストリア伯爵閣下は、第二の街オースを治めていらっしゃる方です。公明正大な方ですので、シシリーを雇ったところでお叱りになる可能性は低いですが、ご令嬢はわがままな方だと有名でして……」
珍しく言葉を濁すリエインに、「なるほどー」と頷いて見せる。
完全に理解したとは言えないけど、なんとなくわかった。その貴族のご令嬢のわがままで、シシリーは就職がままならない状態になってるってことか。
領主に睨まれるかもしれないってわかってて、雇う人っていないんだろうなぁ。少なくとも、この街で生まれ育った人なら。
メイトとカルストも気の毒そうにシシリーを眺めているが、その状況がおかしいと言う様子はない。
「まぁ、とりあえずみんな座って」
リエインの席はないんだけど、壁際に立って見守ってくれるらしい。
「――ん~、志望動機をどうぞ」
面接といえばこれだよね?
「僕は成人したばっかりなんですけど、継ぐ農地がなくて~。というか、農家やる気がなくて~。親のすねをかじって生きるのもいいかなって思ってたんですけど、兄ちゃんたちに働けって言われたんで、ちょうど募集出てたバイトに応募しました~」
「おー……そこまで取り繕わずに言えるの、ある意味すごいね!」
普通、もっとやる気のある理由を考えるでしょ。嘘であっても。
ここまで正直に言われると、呆れるより感心しちゃう。
「俺は普通に、遊ぶ金欲しさっすね」
「潔い! それ、わりと盗みを働く動機になりがちだから気を付けて!」
この子大丈夫かな? カルストはヤンチャそうだけど、悪いことしてる雰囲気じゃない。でも、ちょっと考えが浅い気がする。お金欲しいって思って、盗むよりはマシだけど。
「お父さんの酒場でバイトしないんですか~?」
「四六時中親父の顔見てられるかよ」
なんか勝手に話し始めてる。僕が知ってる面接じゃない。緊張感なくていいけどさ。
シシリーはなにか言いたげに二人を見てるけど、唇を引き結んでる。
貴族令嬢の家庭教師をしてたくらいだから、礼儀には厳しいんだろうな。この場では私語を慎むべき、って思いが強くてこらえてるけど。
「シシリーは?」
「私は、異世界からの旅人の方がどのような商売をされるのか興味がありまして。それに、まだこの世界に慣れていらっしゃらないでしょうし、私の知識がお役に立てるのではないかと」
期待に満ちた目。
現地の人に就職を断られたから、っていうだけじゃないんだね。自分の能力がどこまで通用するか、確かめたいんだろうな。
「その方はとても優秀です。正直、商業ギルドで採用したいほどなのですが……お嬢様の御用聞きを担っている商家からの反発が大きくて、なかなか」
リエインがここで口を挟むってことは、シシリーがイチオシってことなんだろう。このメンバーを見たら、すぐにわかるけど。
僕もほぼ心が決まってる。ただ一つ気になる点があるんだよね。
「シシリーはどうしてお嬢様のご不興っていうのをかっちゃったの?」
ご不興って、なにかをして嫌われたってことだよね。シシリーはそんなことをするように見えないけど。
ただ単に、お嬢様がわがままだっただけ? それなら、公明正大って言われてる領主さんが、優秀なシシリーをクビにするとは思えない。
「……お嬢様は勉強がお嫌いでした。それでもなんとかこなしていただいていたのですが、ついに『もっとわたくしのことをわかってくれる人がいい!』と言われてしまったのです。その後、閣下には街の役場での仕事を提案していただいたのですが、そこでやっていける自信がなく……。お嬢様お一人のお心にさえ寄り添えなかった私が、政に関わり上手くいくとは思えません」
お嬢様に無理やり勉強させてたら、嫌われたってことかな? 領主さんは自分の娘と上手くいかなそうだってわかって、違う職を提案したけど、自信をなくしたシシリーは断っちゃったんだねぇ。
話を聞く感じ、お嬢様って結構幼い? 普通に子どもの癇癪な気がするし、それに対して大人が右往左往してるだけのような……。
まぁ、僕はお嬢様のこと知らないし、なにが真実かなんてわからない。シシリーを雇っても大丈夫そうだって判断ができれば十分だ。
「そっか。それなら、シシリーさんを雇おうかな。僕は商売初心者だし、この世界のことにも慣れてない。いろいろ教えてもらえたら助かるよ」
にこっと笑う。僕の屋台で働いて、シシリーが自信を取り戻せるかわからないけど、前に進むための手助けになればいいな。
「いいんですか……! 誠心誠意がんばります」
ホッと安堵したような、希望が見えたと言うような、キラキラとした目だった。案外すぐにシシリーは自信を取り戻せる気がする。
「残念だけど、当然ですね~」
「俺でもシシリーさんを選ぶっす」
あっさり不採用を言い渡した形になったけど、メイトとカルストは不満なさそうだ。二人で次はどのバイトに応募するか話し始めてる。切り替えが早い!
思わず笑っちゃったら、シシリーと目が合った。ちょっと申し訳なさそうにしていたシシリーも、二人のあまりに気が抜けるようなやり取りに苦笑する。
「よろしくね、シシリー」
「よろしくお願いいたします、モモ様」
「あ、口調は砕けた感じでお願い! 敬称もなくていいよ。ムズムズしちゃう」
「えっ!? が、がんばります……」
シシリーが難問を与えられたように悩ましげに眉尻を下げるので、さらに笑っちゃった。
良い人が見つかって良かったな~。上手くやっていけそう!
というわけで、商業ギルドにレッツゴー! 良いバイトさんがみつかるといいな~。
「いらっしゃいませ、モモ様。バイトの面接ですね。二階の小会議室で行いますので、ご案内いたします」
商業ギルドについて、相談窓口に向かったら、リエインに二階まで案内された。すぐに面接予定者を呼んできてくれるんだって。
ちょっと緊張するなー。面接ってなにをしたらいいんだろう?
そわそわと小会議室内を眺める。僕が座ってる椅子の前には、三つの椅子が並んでる。バイトに応募してきたのは三人なのかな?
コンコン、とノックの後に、再びリエインが現れた。
「応募者を連れてきました」
「こんにちは~」
「ちわっす」
「失礼いたします」
なんとも面接らしくない挨拶をする男性二名と畏まった様子の女性一名。全員異世界の住人だ。
「僕、南区の農家の三男、メイトです~。よろしくお願いしま~す」
「こちらこそよろしく~」
つられて間延びした返事をしちゃった。
メイトはそばかすがチャームポイントの青年。口調と雰囲気がのんびりしてる。
「俺、カルストっす。親父は中央区の酒場でオヤジしてるっす」
「親父がオヤジしてる……面白い説明だね」
間違ってはないし、意味はわかるんだけど。カルストは語彙力なさそうだなぁ。
ツンツンと立った髪は黒色に金色のハイライトが入ってて、ヤンチャそうな見た目。こういうタイプと話したこと、あんまりないかも。
「私はシシリーです。一ヶ月前までオストリア伯爵令嬢の家庭教師をしておりました」
「おっ? なんかすごそうな人が来た……」
まじまじとシシリーを見つめたら、戸惑った感じながらも微笑みを返された。
シシリーは柔らかいピンク色の髪をきつく団子結びでまとめている。紅茶色の瞳が綺麗だ。簡単に言うと、めちゃくちゃ美人。
なんでこんな人が僕の屋台のバイトに募集してきたの? きっともっと良い職場があるでしょ。
僕が不思議がっているのが伝わったのか、シシリーが躊躇いがちに口を開く。
「あの……私はお嬢様のご不興をかってしまい、暇を出されましたので……。もし私を採用していただいたとしたら、伯爵閣下よりお叱りを受けるかもしれません……」
しょんぼりと肩を落とすシシリーから、リエインに視線を移す。正直意味がわからない。
リエインは少し眉を寄せたが、すぐに表情を笑みで取り繕って説明をしてくれた。
「モモ様は異世界から来られて日が浅いようですからご存じないかもしれませんが、オストリア伯爵閣下は、第二の街オースを治めていらっしゃる方です。公明正大な方ですので、シシリーを雇ったところでお叱りになる可能性は低いですが、ご令嬢はわがままな方だと有名でして……」
珍しく言葉を濁すリエインに、「なるほどー」と頷いて見せる。
完全に理解したとは言えないけど、なんとなくわかった。その貴族のご令嬢のわがままで、シシリーは就職がままならない状態になってるってことか。
領主に睨まれるかもしれないってわかってて、雇う人っていないんだろうなぁ。少なくとも、この街で生まれ育った人なら。
メイトとカルストも気の毒そうにシシリーを眺めているが、その状況がおかしいと言う様子はない。
「まぁ、とりあえずみんな座って」
リエインの席はないんだけど、壁際に立って見守ってくれるらしい。
「――ん~、志望動機をどうぞ」
面接といえばこれだよね?
「僕は成人したばっかりなんですけど、継ぐ農地がなくて~。というか、農家やる気がなくて~。親のすねをかじって生きるのもいいかなって思ってたんですけど、兄ちゃんたちに働けって言われたんで、ちょうど募集出てたバイトに応募しました~」
「おー……そこまで取り繕わずに言えるの、ある意味すごいね!」
普通、もっとやる気のある理由を考えるでしょ。嘘であっても。
ここまで正直に言われると、呆れるより感心しちゃう。
「俺は普通に、遊ぶ金欲しさっすね」
「潔い! それ、わりと盗みを働く動機になりがちだから気を付けて!」
この子大丈夫かな? カルストはヤンチャそうだけど、悪いことしてる雰囲気じゃない。でも、ちょっと考えが浅い気がする。お金欲しいって思って、盗むよりはマシだけど。
「お父さんの酒場でバイトしないんですか~?」
「四六時中親父の顔見てられるかよ」
なんか勝手に話し始めてる。僕が知ってる面接じゃない。緊張感なくていいけどさ。
シシリーはなにか言いたげに二人を見てるけど、唇を引き結んでる。
貴族令嬢の家庭教師をしてたくらいだから、礼儀には厳しいんだろうな。この場では私語を慎むべき、って思いが強くてこらえてるけど。
「シシリーは?」
「私は、異世界からの旅人の方がどのような商売をされるのか興味がありまして。それに、まだこの世界に慣れていらっしゃらないでしょうし、私の知識がお役に立てるのではないかと」
期待に満ちた目。
現地の人に就職を断られたから、っていうだけじゃないんだね。自分の能力がどこまで通用するか、確かめたいんだろうな。
「その方はとても優秀です。正直、商業ギルドで採用したいほどなのですが……お嬢様の御用聞きを担っている商家からの反発が大きくて、なかなか」
リエインがここで口を挟むってことは、シシリーがイチオシってことなんだろう。このメンバーを見たら、すぐにわかるけど。
僕もほぼ心が決まってる。ただ一つ気になる点があるんだよね。
「シシリーはどうしてお嬢様のご不興っていうのをかっちゃったの?」
ご不興って、なにかをして嫌われたってことだよね。シシリーはそんなことをするように見えないけど。
ただ単に、お嬢様がわがままだっただけ? それなら、公明正大って言われてる領主さんが、優秀なシシリーをクビにするとは思えない。
「……お嬢様は勉強がお嫌いでした。それでもなんとかこなしていただいていたのですが、ついに『もっとわたくしのことをわかってくれる人がいい!』と言われてしまったのです。その後、閣下には街の役場での仕事を提案していただいたのですが、そこでやっていける自信がなく……。お嬢様お一人のお心にさえ寄り添えなかった私が、政に関わり上手くいくとは思えません」
お嬢様に無理やり勉強させてたら、嫌われたってことかな? 領主さんは自分の娘と上手くいかなそうだってわかって、違う職を提案したけど、自信をなくしたシシリーは断っちゃったんだねぇ。
話を聞く感じ、お嬢様って結構幼い? 普通に子どもの癇癪な気がするし、それに対して大人が右往左往してるだけのような……。
まぁ、僕はお嬢様のこと知らないし、なにが真実かなんてわからない。シシリーを雇っても大丈夫そうだって判断ができれば十分だ。
「そっか。それなら、シシリーさんを雇おうかな。僕は商売初心者だし、この世界のことにも慣れてない。いろいろ教えてもらえたら助かるよ」
にこっと笑う。僕の屋台で働いて、シシリーが自信を取り戻せるかわからないけど、前に進むための手助けになればいいな。
「いいんですか……! 誠心誠意がんばります」
ホッと安堵したような、希望が見えたと言うような、キラキラとした目だった。案外すぐにシシリーは自信を取り戻せる気がする。
「残念だけど、当然ですね~」
「俺でもシシリーさんを選ぶっす」
あっさり不採用を言い渡した形になったけど、メイトとカルストは不満なさそうだ。二人で次はどのバイトに応募するか話し始めてる。切り替えが早い!
思わず笑っちゃったら、シシリーと目が合った。ちょっと申し訳なさそうにしていたシシリーも、二人のあまりに気が抜けるようなやり取りに苦笑する。
「よろしくね、シシリー」
「よろしくお願いいたします、モモ様」
「あ、口調は砕けた感じでお願い! 敬称もなくていいよ。ムズムズしちゃう」
「えっ!? が、がんばります……」
シシリーが難問を与えられたように悩ましげに眉尻を下げるので、さらに笑っちゃった。
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