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商人への道?

81.マーケティングは大切

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 乳製品を使った料理かー。なにがいいかなー。

「グラタン」
「あ、カミラはグラタンが好きなの?」
「ん」

 じゃあ、作りましょう!
 スパルくんにもらったレシピ本を見ながらグラタン作り。たっぷり野菜と緑玉鶏エメコックのお肉を入れてみる。マカロニはちょっと少なめかな。

 にんじんはうさぎ型にしてみたよ。専門店エリアの『調理道具店』で型抜きセットが売ってたから、衝動買いしちゃったんだ。

 パンを作れるようになったら、グラタンパンを作りたいな。パイの方がいいんだろうけど、難しそう。

 グラタンは手順を登録したから、材料を用意しちゃえば量産できる。

「品質の差ってどれくらいなんだろう?」

 ふと気になったから鑑定。
 まずは一から自力で作ったものを。

――――――
【うさぎ印のマカロニグラタン】レア度☆
 美味しいミルクで作ったグラタン。空腹度を10回復する。にんじんはうさぎ型だよ。探してみてね。
――――――

 名前と説明はちょっといじってみた。
 手順を登録して、パパッと作った方は――。

――――――
【うさぎ印のマカロニグラタン】レア度☆
 おいしいミルクで作ったグラタン。空腹度を7回復する。にんじんはうさぎ型だよ。探してみてね。
――――――

「回復する空腹度が違う!」

 たった3。されど3。
 満腹になるために消費する食料アイテム数に差が出るね。

「味はどうかな?」
「……味見する?」

 カミラのキラキラした目で答えは言われずともわかった。好物なんだもんね~。
 なんだか楽しくなりながら、味見の用意をする。

 まずは自力で作ったやつ。それぞれフォークですくいとってぱくり。もぐもぐ。

「――うん、美味しい! というか、ミルク濃厚、バターの香りも最高、チーズはコクがあって、塩味がちょうどいい! うまうま。緑玉鶏エメコックのお肉、柔らかくてとろける~」

 ほっぺが落ちちゃいそうな美味しさです。
 ついつい味見の域を超えて食べちゃう。

「……美味しい」
「カミラも気に入ってくれて嬉しいよ」

 わかりにくいけど、目を細めて堪能してるカミラを見て、じわじわと喜びが満ちてくる。
 美味しいものを食べるのは楽しいけど、僕が作ったものを美味しいって食べてくれる人を見るのはもっと好きかもしれない。

「こっちはどう」
「あ、食べ比べするんだった!」

 グラタン皿が空っぽになって、皿ごと消えたところでハッとする。
 慌ててレシピを登録して作った方もぱくり。

「――……ちょっと、感動が薄れた?」
「十分美味しい。けど、さっき食べたのを思い出すと、差が明確」

 カミラと頷き合う。
 品質が下がるって、空腹度だけじゃなくて味もなのかぁ。店で売ってるのより、自分で作ったものの方が美味しく感じることが多いのは、このせいなのかもしれない。

「う~ん、ちゃんと作った方がいいのかなぁ?」
「屋台で売るなら、これで十分」

 カミラがまだ残ってるグラタンを指す。
 手間を考えても、レシピ登録してパパッと作った方を売るのが楽なんだよね。

「親しい人向けとかに保存しとくのは、自力で作ったものにしよう」

 うん、と頷きながら決めた。
 料理をするのは楽しいし、現実と比べたらすごく手間が省かれてるから、少数を作るなら問題ない。

「ん。グラタン以外になにを売る? おすすめはシェイク。バトルフィールドでも片手で空腹度回復に使いやすい。冷たくて気分転換にもなる」
「それ、カミラが食べたいだけじゃない?」
「違う」

 絶対そうだってば。
 しらっとした顔をしてるカミラに笑いながら、ミルクと桃、イチゴ、ぶどうを取り出す。ミルクシェイクとフルーツシェイク三パターンを作ってみるよ。
 アイスが苦手な人用に、ミルクと果物を混ぜただけのやつも作っておこう。

「じゃじゃーん。映えを意識して、たくさんの果物を飾ってみたよ!」
「……コップから飛び出てる」

 フルーツシェイクの上に切った果物を飾って華やかに。美味しそう!
 でも、これ、片手では食べれないね? ストローだけじゃなくて、フォークまで付属されたってことは、そういうことだよね? ……使う食器もシステムで自動判定されるってすごい!

「――モモ、目を逸らしてる」
「やりすぎたと反省はしてます……」
「まぁ……買いたい人はいると思う」
「果物たくさんのせたから、ちょっと高くなると思うんだ……」
「……まぁ、買いたい人はいると思う」

 二度言われた。これ、慰めてくれてるんだよね?
 うーん、と考えてから良いアイディアが浮かんだ。

 薄くスライスしたりんごをうさぎの形に型抜き。シェイクの中心部分にのせてみる。

「より映える感じにしてみた!」
「なんでそっちを努力したの」
「僕のファンを顧客にするのが効率的かな、っていうマーケティング結果です」
「ファン……」

 まじまじと見つめられた。
 なんかファンの人がいるらしいし。絶対買ってくれると思うんだよね。むしろ、ファン向けになにか作らないと、申し訳ない気すらする。

 うさぎモチーフのアイテム、きっとみんな喜んでくれると思う。
 タマモとか、ユリとか、タマモとか、レナとか、タマモとか――って、タマモが何度も思い浮かんじゃうの、タマモの印象が強烈すぎるせいだな。

「――モモのファンを顧客の主だと考えるなら、他にも売れそうなものがある」

 しばらく考え込んでたと思ったら、カミラがふと顔を上げた。
 プリンやチーズドッグなど、売る料理を増やしながら、首を傾げる。他に売れそうなもの、ねぇ……。

「まずは毛繕いスキルを入手」
「持ってるよ」
「……さすが。使った時、アイテムとして綿毛を入手してない?」
「綿毛?」

 そんなものあったかなぁ?
 ちょうど料理が一段落ついたので、アイテムボックスを探ってみる。アナウンスが入らないアイテムが知らない内に収納されてることあるんだよねー。

「――あった!」

 アイテムボックスの一枠に【綿毛】×58の表記。……待って、僕そんなに毛繕いしてる? ナルシストじゃないよ?

「それなら、ぬいぐるみとかアクセサリーを作れるはず」
「ほうほう……」

 錬金玉と錬金布を取り出して、綿毛をのせてみる。

「――たくさんある! しかもうさぎモチーフ!」

 え、可愛いんだけど。ちょっと僕に似てる。色もそっくり。

「綿毛を使うと、入手したモンスに合わせたモチーフでアイテムを作れる」
「つまり、僕から取れた綿毛だと、うさぎモチーフになるってことだね!」

 自分からアイテムを剝ぐってなんか変な気分だけど……。売れる気しかしないアイテムが作れるなら無問題!

「私は抱きぐるみがほしい」
「抱きぐるみ」
「抱っこして寝るのにちょうどいいサイズのぬいぐるみ」

 真面目な顔で言われた。それ、商品の提案じゃなくて、プレゼントしてって意味だよね? 思ってた以上に、カミラって僕のこと好きなの? ……照れちゃう~!

「等身大じゃなくて?」
「もっと大きなの」
「……わかった。作るよ!」

 ぬいぐるみの方を求められるのは、ちょっぴり残念だけど、カミラがほしいなら作ろうじゃないか!

 レシピを検索したら、【ぬいぐるみ(大)】を作るのに綿毛が十個も必要だった。……毛繕い、もっと頻繁にしようかな。

 サクサクッと作って、カミラにプレゼント。美人と可愛いぬいぐるみのコラボレーション、最高です。

「もふもふ……」
「触り心地いいよね~。僕そっくり!」

 僕の毛から作られてるようなものなんだから、当然です。

 ぬいぐるみを堪能してるカミラを横目に、うさぎモチーフのアイテムを量産する。

 綿毛一個で作れるうさぎブローチとうさぎピアスばっかりになっちゃったのはしかたないよね。もっと綿毛を集めたら、ぬいぐるみとかも売りたいな~。

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