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美味を求めて

70.お友だちと一緒

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 今日もログイン~、からの農地へレッツゴー!

「っ、育ってる!」

 農地におっきな木があった。まだ実は生ってない。でも、見た目は南の密林にあったのと同じ感じだ。

「明日くらいには収穫できるかな~?」

 ワクワクする。自然環境下では一個しか実を付けないらしいけど、農地だと一度にいくつ生るんだろう?

「成長促進剤どーぞ」

 作り置きしていた薬をあげて、作業は終了。
 今日はなにをしようかな。街探索をしてもいいんだけど、人混みがすごいんだよね。イベントに向けて動いてるプレイヤーが多いんだと思う。

 仲良しの人と遊ぶのは楽しいけど、一人の時間も気楽で好き。
 ということで、今日はソロで動こうと思う。そうなると、選択肢としては釣りとか生産活動とかがいつものことなんだけど――。

「……テイムモンスターの確認は必要だよね?」

 フレンドモンスター欄にある【ピア】の文字をじっとみつめる。
 鑑定結果は強そうなモンスターだったけど、実際どうなんだろう? 戦ったわけじゃないからわからないし、気になる。

「最近、スラリンと一緒にバトルもしてなかったし、今日はテイマーさんプレイかな!」

 まだ職業は変えられないけどね。
 召喚をするとなると、バトルフィールドに行かなきゃ。難易度を考えると、西か東がいいんだろうけど、プレイヤーも多そうなんだよねぇ。

 テイムスキル持ってる人は少ないはずだし、あんまり目立ちたくないから、その二箇所はなしにして、北は一番難度が高いって聞くから、まだ進む気はない。となれば、選択肢は一つしかないなぁ。

「僕、南に行き過ぎでは?」

 自分にツッコミ入れちゃった。別に好きな場所ってわけでもないんだけど。

「転移ピン設定したままだから行きやすいし、いっかー」

 スキルを使えば一瞬で南門に到着。
 近くに農地を持ってるマナさんの姿はない。今日も挨拶できなかったや。

 ちょっとしょんぼりしながら南の密林に進む。
 現れるモンスターとバトルしつつ歩けば、人の気配がなくなった。

「この辺りなら、召喚しても大丈夫そうだな」

 念の為、飛翔フライで樹上へ。スラリンはともかく、ピアは飛んでるのが常態だから、支障ないでしょ。

「【召喚】ピア!」

 光と共に、ピアが現れる。
 周囲をきょろきょろと眺めた後、『な~んだ~……』って感じでくるくる回ってた。なんか、慣れた場所に呼び出しちゃってごめんね……? 海が良かった?

「【召喚】スラリン!」
「きゅぴ!」

 枝の先にスラリンが現れる。周囲を眺めて喜んだ雰囲気だ。いつも漁ばかりで、バトルに飢えてたのかな? こっちもごめんね……?

「スラリン、新しいお友だちのピアだよ~。仲良くしてね!」
「きゅきゅぴ」

 スラリンは『知ってる!』って感じに答える。ピアも慣れた感じでスラリンにまとわりついてた。
 もしかして、モンスター空間内で交流してたのかな? 仲が良いのはいいことです。

 うんうん、と頷いて二体を眺めてたら、視界の端で虹色がきらめいた。

「っ、虹鳥ニジバード! 今日は三対一だから、前よりも早く倒しちゃうぞ!」

 このために樹上に来たようなもの。

「ピア、一緒に戦おうね。あいつが敵だよ」

 ビシッと指して教えてみるけど、ピアは『へ~、そうなんだ~』とほのぼのした感じ。戦うつもりありますか?

 ふと思い出したのは、ピアを鑑定した結果のこと。確か『基本的に他種族に敵意を持たない』って書かれてたんだよね。
 ……敵モンスターとも戦わないとか、ありえそう。

「きゅぴ!」
「スラリンはやる気いっぱいだね、ありがとー!」

 慰める感じで背を軽く叩かれて、気合いを入れ直した。ピアは戦闘要員に入れないつもりでがんばろう。

「――いざ、勝負」

 飛翔フライで飛びながら、土魔術を発動。
 タマモたちと南の密林を攻略した結果、土魔術のレベルが2になって、範囲攻撃【土の槍アースランス】を覚えたんだ。

 放った土の槍アースランスが迫ってきていた虹鳥ニジバードにぶつかる。ちょっと避けられたみたいだけど、十分ダメージは与えられた。

「やっぱり火魔術より効果的~」

 テンションが上がったところで、自分にバフを掛けてなかったことを思い出した。
 歌唱スキルで意気高揚、天からの祝福アンジュブレス天の祈りアンジュプレを続けて使用する。

「きゅっぴー!」

 僕がバフに気が取られてる間は、スラリンがフォローしてくれた。
 もにょ、と体を伸ばして、虹鳥ニジバードの羽の矢攻撃を飲み込んで無力化してるんだ。

 ……若干ダメージを負ってるように見えるけど、僕の回復スキルはパーティー全体に効くから今のところ問題なし!

「スラリン、ありがとー」
「きゅぴぴ」

 また攻撃しよー、と思ったら、雨のように降り注いでた羽の矢の攻撃が止まった。

「……ピア?」

 虹鳥ニジバードの前にピアがいる。攻撃してくれるのかな、と一瞬思ったけど、違った。

「キュルッ」

 虹鳥ニジバードが暴れてる。ピアがその周囲をまとわりついていた。全然ダメージを受けているように見えない。『遊ぼ~』と脳天気な感じだ。虹鳥ニジバードはすっごく嫌そうだけど。

「……攻撃が来ないのはラッキーかな?」

 なんだかな~、という微妙な気分。バトル感が薄れるよ。スラリンが『あ~あ……』って感じで体を揺らしてる。

「仲間には攻撃がいかない仕様だけど、この状態で攻撃するのはなんかダメな気がする……。スラリン、どうする?」
「きゅぴぃ……」

 二人で困ってたら、虹鳥ニジバードの方がしびれをきらしたっぽい。ピアに向けて羽の矢や、くちばし攻撃を繰り出してる。

 ……でも、ピアは『この遊び、楽しいの?』と気にしてない感じ。どうやったら相手を敵とみなすの? こんなに攻撃されてるのに。

「あっ!」

 油断してた。ピアから逸れた羽の矢が、僕の方に向かってきてる。回避できなかった。

「――ダメージきたよぉ」

 僕の高い防御力があっても、結構体力を削られた。悔しいー!
 ピアのことを気にせず、土魔術で反撃しよう。

「ドクズサビッシー、っ!?」

 詠唱が途切れちゃった。
 ピアの様子がおかしかったんだ。ピアはさっきまでの呑気な感じが嘘のように、目をうるうるとさせて僕を見たかと思うと、振り返って虹鳥ニジバードを見据える。

「もふっ」
「え、鳴き声、可愛い」

 ピアからこぼれた鳴き声に、思わず状況を忘れてしまった。だって「もふっ」だよ? こんな鳴き声ある?

 でも、そんな余裕はすぐになくなる。ピアの周囲が陽炎のように揺らいでるのが見えたんだ。ヤバい気配をヒシヒシと感じる。

「――あ……」

 一瞬で虹鳥ニジバードが光になって弾けた。
 討伐アナウンスが入って、ようやく理解する。これ、即死攻撃ってやつ……?

「きゅぴ!」
「こわっ」

 スラリンは憧憬のこもった眼差しでピアをみつめてるけど、僕はちょっと引いてます。即死攻撃強すぎでしょ。ピアと戦うことにならなくて良かったー!

 固まってる僕のところにピアが近づいてくる。『怪我してない? 大丈夫?』と心配そう。

 それでハッと気づく。
 ピアが虹鳥ニジバードを敵認識したのって、僕がダメージを受けたから? 友だち傷つける悪いやつ、って思ったの?

「――そんなに心配してくれるなんて、ピアは中身まで可愛いね! ダメージはまだ全然大丈夫だよ~。それより、ピアすごい!」

 全力で褒める。攻撃の凶悪さは知らないことにします。味方なら頼りになるからいいんだよ。

 ピアはふわふわとした雰囲気に戻って『そうかな~』と喜んでる。

 なんかわかった。
 ピアはバトルにおける保険だと思ってればいいんだ。やられそうな場面とかですごく頼もしいと思う。でも、頼りきるのはよくないから、普段は自分でバトルがんばろう!


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◯スキル変化
土の槍アースランス
 土魔術レベル二。土でできた槍で最大三体の敵を攻撃する。効果範囲が広い。

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