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美味を求めて
64.ふわふわだ~
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バトルしながら進んで、ようやく南東の果てあたりまで辿り着いた。
少し開けた草地に一本のピンク色の葉が茂る木が立っている。頂点付近に一つだけ、ころんとした果物が実っていた。
「あれが幻桃かな?」
「鑑定結果はそうなってるね」
僕が問いかけたらレナから早々に回答が来た。鑑定するのはやーい。こういうところに、攻略慣れしてる感じがあるね。
「あの高さやと、モモが飛んで採ってくるのが良さそうやな」
「はーい、がんばりまーす」
ユリに言われて早速飛翔を使って飛び出そうとしたら、背後からむぎゅっと捕まえられた。
「お待ちになって」
「あ、ずるい! さりげなく抱きしめてますね!?」
「ふふふっ、止めるにはこれが一番良い方法でしょう?」
メアリはタマモの文句を軽やかに躱す。
それはいいけど、僕はなんで止められたんですかね?
「こんなに開けているのは、不自然ではありませんか……?」
「わたくしもそう思いましたの」
ミレイとメアリの言葉でハッとした。
確かに幻桃の木周辺だけ、鬱蒼と木が茂っていないのはおかしい……? でも、セーフティエリアも似たようなものだしなぁ。
「私の勘もおかしいって訴えてる」
「ウチもなんかゾワゾワするんやけど、これたぶん、【危機察知】スキルの効果やな」
「それ、確実になんかあるよね?」
攻略組のレナとそれに準じると噂されてるユリがそう言うなら、信憑性高そう。
とりあえず、止めてくれたメアリにお礼を言って、おろしてもらうよう頼む。いつまでも抱きしめられてたら、ちょっぴり居心地が悪い。
「あら、残念。ふわふわで気持ちの良い触り心地でしたのに」
「やっぱり堪能してますよね!? 私も……!」
「はいはい、タマモは大人しくしてな。それより、誰が先行するか決めようよ」
レナにまで聞き流されているタマモがなんだか可哀想になったので、パーッと両腕を広げてみる。
「ハグする?」
「します!」
一瞬の迷いもなかった。優しく抱きしめられて、「五~、四~……」とカウントダウン。他のみんなが羨ましそうな顔をしてるのがなんだか面白い。
「ふわもふ~……ぬいぐるみじゃない、命のぬくもり。私の尻尾でもない……!」
満足してもらえてなによりです。
タマモが落ち着いたところで作戦会議再開。先行する役割として手を挙げたのは、レナとユリだった。
「私の防御力を考えたら、先行役としてふさわしいんじゃない?」
「ウチは斥候を目指すもんとして、ここは譲れんよ」
ユリの方が気合い入ってそう。
レナは苦笑して「それならアンタに任せようかな」と呟いてる。僕もそれでいいでーす。
「じゃあ、僕とミレイはいつでも魔術で補助できるように構えとくね」
「よろしゅ~な」
警戒しながら駆けていくユリの後ろ姿を見守る。いったい、なにが待ち受けているのか――。
「あっ」
真っ先にそれに気づいたのは、タマモだった。
「――もふもふの気配!」
「どういう察知能力なの?!」
タマモの言葉と同時に、ユリの進行を妨げるようにピンク色の丸っこい生き物が現れた。
ふわふわなファーのポンポンに、クマのような丸い耳がある感じ。大きさは僕と同じくらいかな。つぶらな瞳がパチパチと瞬いてる。
「か、かわい……!」
「タマモ、可愛さばかりに注目してるんじゃないよ」
レナが呆れた感じで呟いた。まぁ、タマモのモフラー具合は筋金入りだから、ある程度はしかたないよ。
――――――
【桃色毛玉】
光属性のレアモンスターだが、地域によって妖精や妖怪とも言われることがある。基本的には、他種族に対して敵意を持たない。倒すとレアアイテムをドロップする。テイムすると所有者の幸運値を10上げる。
攻撃力・防御力が高く、敵とみなした相手には、即死効果のある範囲攻撃を行う。
――――――
「絶対に戦っちゃダメなやつ!」
鑑定結果にヒェッとなった。即死効果は嫌すぎる。
僕以外もそれぞれ鑑定をしたらしく、固まっちゃってた。
「……モモ。これ、どうする?」
「無視して進めるのかな?」
「やってみよか」
僕の疑問に即座にユリが応えた。
桃色毛玉を避けるように幻桃の方へ近づいてる。
「あ、ふわふわが寄ってきてる」
「……アカンわ。押し返される」
ユリにまとわりつく桃色毛玉は可愛いんだけど、進めなくなっちゃうのは歓迎できないなぁ。
「僕が勢いよく飛んだらついてこれないかも?」
「戦わなければ危険はなさそうだし、やってみてよ」
レナに促されたので、いってきまーす。
心配そうなタマモとメアリ、ミレイに手を振って飛翔を発動。僕の素早さをナメないでよ!
「……って、速っ!?」
気づいたら桃色毛玉が目の前にいた。
空中で急停止はできないから、そのままぶつかっちゃう。――ふわん、と押し返された。
「攻撃とはみなされてへんみたいやな」
滞空可能時間が切れそうだったから、そのまま下へ。桃色毛玉が着いてきてるけど、なんだか『遊ぼ~』って感じだから大丈夫そう。
近くに来たユリに頷きながら、首を傾げる。結局、レナたちもやって来た。
「これ、バラバラに進んだら、誰を止めるんだろう?」
その答えを求めて、全員違う位置から進んでみたんだけど、なんと桃色毛玉は分身して、全員を止めた。
「もふもふが……増えた……!」
「タマモ、喜ぶところじゃないから」
悶えてるタマモにツッコミを入れつつ、みんなで円陣を組んで攻略法を考える。
ちなみに、桃色毛玉は僕たちが同じ場所にいたら一匹に戻るみたい。
「これさ、テイムするのがいいんじゃない?」
レナが難しい表情で言う。
「ウチもそう思った。わざわざテイムの情報を鑑定に載せてるって、そういうことやろ」
「でも、テイムスキルは持ってませんよ……?」
「わたくしも、何度か試したことがありますけれど、スキルは入手できませんでしたわ」
「おそらく、テイマーにならないと、スキルの入手は難しいんだと思いますけど」
五人から視線を感じる。これ、僕がスラリンをテイムしてること、知られてる感じかな?
まぁ、釣りの時とか、スラリンは遠目でも見えるくらい大きくなってるしね。
「じゃあ、僕がやってみる!」
「やっぱり持ってるんか」
「ワールドミッションクリアしてんだね」
ユリとレナが苦笑して肩をすくめた。
クリアしたワールドミッションがテイマー関連だけじゃないって、言わない方がいい気がする。岩犀のことは、クリアした人を掲示板で探されてたらしいし。
「さすがモモさん!」
「テイムできたら、もふもふがもふもふを飼ってるってことになるんですね……」
「あら、素敵」
楽しそうな三人に促され、桃色毛玉に向き合う。
つぶらな瞳で『なにして遊ぶの?』と聞かれている気がした。これ、スラリンの時と似てるかも。それなら、テイムできる?
「僕と一緒に冒険に行こうよ」
両手を差し出して、テイムスキルを使ってみた。
桃色毛玉の周囲をシャボン玉のようなものがふわふわと漂う。スキルでテイムしようとすると、こういう演出があるんだー。綺麗だなぁ。
『ぼうけん?』
「っ……そう! 僕はバトルフィールドでしか召喚できないんだけど、一緒にいろんなところに遊びに行こう!」
声が聞こえてびっくりしたけど、興味を持ってもらえたみたいだから、畳み掛けるように勧誘してみる。
『いろんなところ……――行く!』
桃色毛玉から光が溢れた。
〈野生の桃色毛玉をテイムしました。モンスターカードが贈られます。名前をつけますか?〉
「やったー! ……って、名前?」
喜びを味わうより先に難問が来たぞ。名前を考えるのって苦手だよ~。
桃色毛玉はなんだか期待に満ちた目をしてる。
「テイムできたんだよね?」
「うん、名前をつけるかって聞かれてるんだ」
レナに答えたら、ユリが「そんなら、綿毛でええんやない?」と言う。僕以上にネーミングセンスがないような……?
「そんな名前は可愛くないです! ……ふわふわちゃん、とか?」
「タマモも人のことは言えませんわよ。ピンク色のクマの顔みたいな姿ですから、ピディではどうかしら。ピンクのテディの略ですわ」
「ピンクのテディベアなら、ピアでも可愛いと思います……」
いろいろと案を出してもらった。ピディとピアかぁ……――僕はピアの響きが好きかな!
「それじゃ、名前はピアで」
〈桃色毛玉の個体名をピアに設定しました〉
アナウンスと同時に、ピアが嬉しそうにくるっと回って、幻桃の木へと飛んでいった。
「えっ?」
驚きながら見守ってたら、すぐに帰ってきて、なにかを投げ渡される。
「――おっと!」
「よ……しっ!」
キャッチしそこなったものは、レナが軽々と受け止めてくれた。
桃だ。ちょっとピンク色が強めだね。
「これ、幻桃やな」
「採ってきてくれたんですね……」
ピアはキラキラと瞳を輝かせてる。
「ありがと! これ欲しかったんだー」
よしよし、と撫でたら、ピアが嬉しそうにふわふわと浮き上がった。そのまま光を放ったかと思うと、姿が消える。
テイムしたモンスターだから、触れ合うのは次に召喚してからってことかな。
〈【モンスター空間(草原)】に空きがあります。桃色毛玉【ピア】を入れますか?〉
「入れてくださーい」
これで、召喚の時の詠唱時間が短くなったはず。
召喚スキルはレベル3で、二体まで同時に召喚できるから、スラリンとも仲良くなってほしいな~。
「――桃探索隊、ミッション完遂! ご協力ありがとうございました!」
ビシッと敬礼してみたら、みんな笑いながら敬礼しかえしてくれた。
「色々あったけど、なんだかんだで楽しかったな」
「そやね」
「思いがけない終わり方でしたが、次は象の花ですね」
「採集できるといいですわね」
「注意引くのをがんばります……」
では、お次は西エリアにレッツゴーです!
******
◯NEWアイテム
【幻桃】レア度☆☆
甘く熟れた桃。三十日に一つ採集できる。農地で特殊な栽培法を用いて育てると、大量採集も可能。
◯NEWモンスター・フレンド
【桃色毛玉】個体名:ピア
光属性のレアモンスターだが、地域によって妖精や妖怪とも言われることがある。基本的には、他種族に対して敵意を持たない。倒すとレアアイテムをドロップする。テイムすると所有者の幸運値を10上げる。
攻撃力・防御力が高く、敵とみなした相手には、即死効果のある範囲攻撃を行う。
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少し開けた草地に一本のピンク色の葉が茂る木が立っている。頂点付近に一つだけ、ころんとした果物が実っていた。
「あれが幻桃かな?」
「鑑定結果はそうなってるね」
僕が問いかけたらレナから早々に回答が来た。鑑定するのはやーい。こういうところに、攻略慣れしてる感じがあるね。
「あの高さやと、モモが飛んで採ってくるのが良さそうやな」
「はーい、がんばりまーす」
ユリに言われて早速飛翔を使って飛び出そうとしたら、背後からむぎゅっと捕まえられた。
「お待ちになって」
「あ、ずるい! さりげなく抱きしめてますね!?」
「ふふふっ、止めるにはこれが一番良い方法でしょう?」
メアリはタマモの文句を軽やかに躱す。
それはいいけど、僕はなんで止められたんですかね?
「こんなに開けているのは、不自然ではありませんか……?」
「わたくしもそう思いましたの」
ミレイとメアリの言葉でハッとした。
確かに幻桃の木周辺だけ、鬱蒼と木が茂っていないのはおかしい……? でも、セーフティエリアも似たようなものだしなぁ。
「私の勘もおかしいって訴えてる」
「ウチもなんかゾワゾワするんやけど、これたぶん、【危機察知】スキルの効果やな」
「それ、確実になんかあるよね?」
攻略組のレナとそれに準じると噂されてるユリがそう言うなら、信憑性高そう。
とりあえず、止めてくれたメアリにお礼を言って、おろしてもらうよう頼む。いつまでも抱きしめられてたら、ちょっぴり居心地が悪い。
「あら、残念。ふわふわで気持ちの良い触り心地でしたのに」
「やっぱり堪能してますよね!? 私も……!」
「はいはい、タマモは大人しくしてな。それより、誰が先行するか決めようよ」
レナにまで聞き流されているタマモがなんだか可哀想になったので、パーッと両腕を広げてみる。
「ハグする?」
「します!」
一瞬の迷いもなかった。優しく抱きしめられて、「五~、四~……」とカウントダウン。他のみんなが羨ましそうな顔をしてるのがなんだか面白い。
「ふわもふ~……ぬいぐるみじゃない、命のぬくもり。私の尻尾でもない……!」
満足してもらえてなによりです。
タマモが落ち着いたところで作戦会議再開。先行する役割として手を挙げたのは、レナとユリだった。
「私の防御力を考えたら、先行役としてふさわしいんじゃない?」
「ウチは斥候を目指すもんとして、ここは譲れんよ」
ユリの方が気合い入ってそう。
レナは苦笑して「それならアンタに任せようかな」と呟いてる。僕もそれでいいでーす。
「じゃあ、僕とミレイはいつでも魔術で補助できるように構えとくね」
「よろしゅ~な」
警戒しながら駆けていくユリの後ろ姿を見守る。いったい、なにが待ち受けているのか――。
「あっ」
真っ先にそれに気づいたのは、タマモだった。
「――もふもふの気配!」
「どういう察知能力なの?!」
タマモの言葉と同時に、ユリの進行を妨げるようにピンク色の丸っこい生き物が現れた。
ふわふわなファーのポンポンに、クマのような丸い耳がある感じ。大きさは僕と同じくらいかな。つぶらな瞳がパチパチと瞬いてる。
「か、かわい……!」
「タマモ、可愛さばかりに注目してるんじゃないよ」
レナが呆れた感じで呟いた。まぁ、タマモのモフラー具合は筋金入りだから、ある程度はしかたないよ。
――――――
【桃色毛玉】
光属性のレアモンスターだが、地域によって妖精や妖怪とも言われることがある。基本的には、他種族に対して敵意を持たない。倒すとレアアイテムをドロップする。テイムすると所有者の幸運値を10上げる。
攻撃力・防御力が高く、敵とみなした相手には、即死効果のある範囲攻撃を行う。
――――――
「絶対に戦っちゃダメなやつ!」
鑑定結果にヒェッとなった。即死効果は嫌すぎる。
僕以外もそれぞれ鑑定をしたらしく、固まっちゃってた。
「……モモ。これ、どうする?」
「無視して進めるのかな?」
「やってみよか」
僕の疑問に即座にユリが応えた。
桃色毛玉を避けるように幻桃の方へ近づいてる。
「あ、ふわふわが寄ってきてる」
「……アカンわ。押し返される」
ユリにまとわりつく桃色毛玉は可愛いんだけど、進めなくなっちゃうのは歓迎できないなぁ。
「僕が勢いよく飛んだらついてこれないかも?」
「戦わなければ危険はなさそうだし、やってみてよ」
レナに促されたので、いってきまーす。
心配そうなタマモとメアリ、ミレイに手を振って飛翔を発動。僕の素早さをナメないでよ!
「……って、速っ!?」
気づいたら桃色毛玉が目の前にいた。
空中で急停止はできないから、そのままぶつかっちゃう。――ふわん、と押し返された。
「攻撃とはみなされてへんみたいやな」
滞空可能時間が切れそうだったから、そのまま下へ。桃色毛玉が着いてきてるけど、なんだか『遊ぼ~』って感じだから大丈夫そう。
近くに来たユリに頷きながら、首を傾げる。結局、レナたちもやって来た。
「これ、バラバラに進んだら、誰を止めるんだろう?」
その答えを求めて、全員違う位置から進んでみたんだけど、なんと桃色毛玉は分身して、全員を止めた。
「もふもふが……増えた……!」
「タマモ、喜ぶところじゃないから」
悶えてるタマモにツッコミを入れつつ、みんなで円陣を組んで攻略法を考える。
ちなみに、桃色毛玉は僕たちが同じ場所にいたら一匹に戻るみたい。
「これさ、テイムするのがいいんじゃない?」
レナが難しい表情で言う。
「ウチもそう思った。わざわざテイムの情報を鑑定に載せてるって、そういうことやろ」
「でも、テイムスキルは持ってませんよ……?」
「わたくしも、何度か試したことがありますけれど、スキルは入手できませんでしたわ」
「おそらく、テイマーにならないと、スキルの入手は難しいんだと思いますけど」
五人から視線を感じる。これ、僕がスラリンをテイムしてること、知られてる感じかな?
まぁ、釣りの時とか、スラリンは遠目でも見えるくらい大きくなってるしね。
「じゃあ、僕がやってみる!」
「やっぱり持ってるんか」
「ワールドミッションクリアしてんだね」
ユリとレナが苦笑して肩をすくめた。
クリアしたワールドミッションがテイマー関連だけじゃないって、言わない方がいい気がする。岩犀のことは、クリアした人を掲示板で探されてたらしいし。
「さすがモモさん!」
「テイムできたら、もふもふがもふもふを飼ってるってことになるんですね……」
「あら、素敵」
楽しそうな三人に促され、桃色毛玉に向き合う。
つぶらな瞳で『なにして遊ぶの?』と聞かれている気がした。これ、スラリンの時と似てるかも。それなら、テイムできる?
「僕と一緒に冒険に行こうよ」
両手を差し出して、テイムスキルを使ってみた。
桃色毛玉の周囲をシャボン玉のようなものがふわふわと漂う。スキルでテイムしようとすると、こういう演出があるんだー。綺麗だなぁ。
『ぼうけん?』
「っ……そう! 僕はバトルフィールドでしか召喚できないんだけど、一緒にいろんなところに遊びに行こう!」
声が聞こえてびっくりしたけど、興味を持ってもらえたみたいだから、畳み掛けるように勧誘してみる。
『いろんなところ……――行く!』
桃色毛玉から光が溢れた。
〈野生の桃色毛玉をテイムしました。モンスターカードが贈られます。名前をつけますか?〉
「やったー! ……って、名前?」
喜びを味わうより先に難問が来たぞ。名前を考えるのって苦手だよ~。
桃色毛玉はなんだか期待に満ちた目をしてる。
「テイムできたんだよね?」
「うん、名前をつけるかって聞かれてるんだ」
レナに答えたら、ユリが「そんなら、綿毛でええんやない?」と言う。僕以上にネーミングセンスがないような……?
「そんな名前は可愛くないです! ……ふわふわちゃん、とか?」
「タマモも人のことは言えませんわよ。ピンク色のクマの顔みたいな姿ですから、ピディではどうかしら。ピンクのテディの略ですわ」
「ピンクのテディベアなら、ピアでも可愛いと思います……」
いろいろと案を出してもらった。ピディとピアかぁ……――僕はピアの響きが好きかな!
「それじゃ、名前はピアで」
〈桃色毛玉の個体名をピアに設定しました〉
アナウンスと同時に、ピアが嬉しそうにくるっと回って、幻桃の木へと飛んでいった。
「えっ?」
驚きながら見守ってたら、すぐに帰ってきて、なにかを投げ渡される。
「――おっと!」
「よ……しっ!」
キャッチしそこなったものは、レナが軽々と受け止めてくれた。
桃だ。ちょっとピンク色が強めだね。
「これ、幻桃やな」
「採ってきてくれたんですね……」
ピアはキラキラと瞳を輝かせてる。
「ありがと! これ欲しかったんだー」
よしよし、と撫でたら、ピアが嬉しそうにふわふわと浮き上がった。そのまま光を放ったかと思うと、姿が消える。
テイムしたモンスターだから、触れ合うのは次に召喚してからってことかな。
〈【モンスター空間(草原)】に空きがあります。桃色毛玉【ピア】を入れますか?〉
「入れてくださーい」
これで、召喚の時の詠唱時間が短くなったはず。
召喚スキルはレベル3で、二体まで同時に召喚できるから、スラリンとも仲良くなってほしいな~。
「――桃探索隊、ミッション完遂! ご協力ありがとうございました!」
ビシッと敬礼してみたら、みんな笑いながら敬礼しかえしてくれた。
「色々あったけど、なんだかんだで楽しかったな」
「そやね」
「思いがけない終わり方でしたが、次は象の花ですね」
「採集できるといいですわね」
「注意引くのをがんばります……」
では、お次は西エリアにレッツゴーです!
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◯NEWアイテム
【幻桃】レア度☆☆
甘く熟れた桃。三十日に一つ採集できる。農地で特殊な栽培法を用いて育てると、大量採集も可能。
◯NEWモンスター・フレンド
【桃色毛玉】個体名:ピア
光属性のレアモンスターだが、地域によって妖精や妖怪とも言われることがある。基本的には、他種族に対して敵意を持たない。倒すとレアアイテムをドロップする。テイムすると所有者の幸運値を10上げる。
攻撃力・防御力が高く、敵とみなした相手には、即死効果のある範囲攻撃を行う。
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