もふもふで始めるのんびり寄り道生活 ~便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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美味を求めて

61.僕は大スター!?

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 南の密林攻略に向けて、スイーツを食べながら話し合う。

「わたくしは殴りヒーラーを目指していますの。ですから、自分の身は自分で守れますわ。あ、でも、モモさんに守ってもらうのは歓迎ですわよ」

 メアリがにっこりと笑う。
 殴りヒーラーを目指すって、僕以上に珍しい感じがする。しかも、喋り方は令嬢っぽいから、なんだかギャップがある。装備も赤いドレスだし。

「そ、そっか……積極的に前に出たいタイプ?」
「必要に応じて、ですわね。このメンバーだとその必要はあまりなさそうですし、治癒士に専念しますわ」

 普段はソロで活動してるから、戦える治癒士を目指す必要があったんだとか。ソロなのに治癒士を選んでるあたり、そもそも殴りヒーラーになろうと決意していた気がするけど。

「ふはっ、メアリって愉快なやつだなー。私はさっきも言った通り、盾を使うから、完全前衛な」
「盾使う人も珍しいよね?」
「うん、まぁ、私は盾で守るって言うより、盾で殴るんだけど」

 レナも十分愉快だと思う。盾で殴るより、剣で斬った方が攻撃力高いのでは?

 そんで、この時点でパーティーの三分の一が殴るタイプって確定してるんだけど、物理的すぎない?

 あ、タマモも体術士だから殴るタイプだ。ということは、半数が殴り系か……。

「ウチは素早さ重視で敵を撹乱して、ちょっとずつダメージを重ねていくのが得意やな。レナとタマモとウチで、ヘイトを分散させたらええんやないかな」
「でも、攻撃されたらしんどくない? 防御力上げてる?」
「回避重視や」

 きっぱりと宣言された。これ絶対、防御力はあんまり気にしてない感じだ。適度に魔術でフォローしたらいいのかな。

「わ、私は、ごく普通の魔術士だと思います……」
「全然、それでいいんだよ!」

 ミレイが申し訳なさそうに言うけど、特殊なプレイスタイルは求めてないから。面白さは優先事項じゃない。

「そうですか? あ、得意なのは雷魔術です……。エルフなので魔力量が多いですし、大技連発もいけます」
「すごいねっ!? というか、雷魔術を持ってるの? それ、複合属性だよね?」
「風と火の複合ですね。交互に繰り返し放ってたら覚えられました」
「ほんとに? 僕もやってみよ」

 すごく良い情報をゲットしちゃった。
 にこにこしてたら、タマモが「はいはい!」と手を挙げてるのに気づく。

「どうしたの?」
「私は体術士ですので、敵の攻撃を躱しつつ、殴ったり蹴ったり、投げたりするのが得意です!」
「うん、知ってる」

 南の密林から帰って来る時、連携の確認も兼ねて一緒にバトルしたでしょ。わざわざ言う必要ないよ。あ、でも、ミレイたちと情報を共有するのは大切かも。

「――僕は飛んで攻撃を躱しながら、魔術を放つのが得意かな?」
「見た目からそうだと思ってましたけれど、飛べるんですわね」
「ちっこい羽なのにな」
「魔力がある世界やし、羽の大小は関係ないんやろ」
「飛べるっていいですね……」

 感想をもらいつつ、情報を整理。
 レナとタマモが完全前衛で、ユリは柔軟に前衛から中衛、僕は中衛から後衛、ミレイとメアリが後衛って感じかな。後方から襲ってくる敵がいたら、僕かメアリが最初に対応するってことで良さそうだね。

「連携確認してみたいし、早い内に一回挑戦しに行こうよ」
「ええよ。そんなら、リアル時間の明日十八時でどうや。こっちだと朝やから、暗くなる前に帰ってこれるやろ」
「私は問題ないよ」
「わたくしも明日は一日オフですから、何時でも大丈夫ですわ」
「私も大丈夫ですけど、攻略用の補助アイテムは用意しておきたいです……」

 ミレイの言葉に、全員で顔を見合わせる。攻略用の補助アイテムというと、回復薬とか?
 僕は最近錬金術で回復薬を作れるようになったけど、街で売ってるのより効果が低いかもしれない。錬金術士だからしかたないんだけど。

「ウチ、初級回復薬と初級魔力回復薬は作れるけど、材料が足りひんなぁ」
「あ、それなら、僕の農地で収穫した薬草とかあげるよ。僕より効果高いの作れるでしょ」

 はーい、と手を挙げて提案したら、視線が集まった。なんで?

「……やっぱり農地をもう借りとったんか」
「スローライフが似合うだろうな、って思ってたけど。私らの希少種さん像を裏切らないの、さすが!」
「農作業も楽しそうですね……」
「きっと農作業の服もお似合いになると思いますわ。わたくしが作ってもよろしくて?」

 メアリが提案してくれたけど、首を横に振る。服装はリリにたくさん作ってもらったからね。

「農家バージョンの服は持ってるよ! 友だちが作ってくれたんだー」

 見せてあげようと思って、衣装チェンジしてみる。
 最近、農作業をする時は必ずこの格好をしてるから、なんだか安心感さえ覚える。カフェにいるから違和感もあるけど。

「っ……か、可愛い!」
「ええやん」
「まあ! 作った方は、趣味がよろしいと思いますわ」

 三人が口々に褒めてくれた。タマモとミレイは無言で悶えてる。レナが言うには「尊い、って感情が極まった結果だからほっとけ」らしい。

 加えて、周囲からも歓声が上がって、この場が僕のファンの集いであることを思い出した。みんな、放っちゃっててごめんね?

「……南の密林攻略は明日がんばるとして、そろそろ写真撮影する?」

 周囲を眺めてから首を傾げる。
 途端に「お願いします!」という声が重なって聞こえた。みんな待っててくれたんだねー。優しいな。

「そやね。薬草は後で取りに行かせてもらうわ。みんなお待ちかねみたいやし、気張ってきぃ。あ、ウチとの撮影は後の方でええよ」
「はーい。格好はどうしよう?」

 聞いてみたら、口々に「さっきの格好で!」とか「そのままで!」とか「なにも着てない方がいいです!」とか言われる。どれやねん。

「……モモさん、それぞれの希望に合わせてお着替えしてもらっても?」
「じゃあ、順番に着てこうかな」

 タマモにキラキラとした目で言われて、ふと思い出す。僕の衣装は今のところ七種類あるんだ。

「――他にも、釣り師、錬金術士、料理人、部屋着、魔術士のバージョンがあるけど……」
「全部見せてください!」

 食い気味に言われた。タマモ以外からも期待に満ちた視線を感じる。
 着替えるのは簡単だから構わないけど。勢いがすごすぎて、ちょっとびっくりしちゃうよ。

「じゃあ、僕の即席ファッションショー開幕でーす! 後で、一緒に撮影したい格好を教えてね」
「めっちゃノリノリやん」

 ユリに笑われたけど、僕は極力雰囲気を壊さないよう全力で乗っかるタイプです。楽しいって気持ちが一番大切だよね!

 リリに作ってもらった衣装を着て歩こうと思ったら、いつの間にか店内にレッドカーペットが敷かれてた。誰が用意したの。

 そこを囲んでみんなが期待に満ちた目を向けてくるから、気分だけパリコレモデルになってウォーキングしてみた。

 拍手に紛れて、パシャパシャと写真を撮られてる気がする。可愛く撮ってくれー。そんで僕にもください。

「おすましモフモフ、かわゆす……!」
「歩き方、ちょこちょこしてるの、尊い!」
「こっち見てー!」

 ファンサービスを忘れず、お手振りしたり、投げキッスしたりしてみた。その度に「きゃー」と歓声が上がるから、さらに気分が良くなる。

 ウィンクしたら両目を瞑っちゃって「かわいー」と笑いながら言われたのは、ちょっと反省点。ウィンクの特訓しとこう。

「――では、まずは農家バージョン衣装での撮影希望の方~」

 タマモがファンを整理してくれて、写真撮影会の開始。忙しくなりそうだなぁ……。


◇◆◇ 


 結果、写真撮影会が終わったのは、空が暗くなり始める時間だった。
 僕が用意しておいた料理アイテムをお土産に、手を振りながら去っていくみんなを見送る。

 ……とりあえず、お土産を喜んでもらえて良かった。僕はもうクタクタだけどね! バトルより疲労感があるよ。

 でも、これまで密かに練習してきたポージングが上手くいって、嬉しいのもほんと。たくさん桃スイーツを食べられたし、お話しもいっぱいできて楽しかった。

「今日はありがとうございました」
「うん、タマモも、イベントの主催ありがとうね」

 ほんと、タマモがいて助かった。テキパキと段取りを整えてくれたから。

「ウチはこれから薬草取りに行くけど、ええか?」
「もちろん!」

 ユリと一緒に農地へ。
 明日のバトルも楽しみだなー。
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