もふもふで始めるのんびり寄り道生活 ~便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

文字の大きさ
上 下
61 / 340
美味を求めて

56.冒険に向けて準備するよ

しおりを挟む
 今日もログイン。
 装備を整えるために、はじまりの街に向かいます。南の密林攻略に向けて、本格的に始動だよ。

「杖、バージョンアップできるかな~」

 向かうのはドワッジさんの装備屋。
 僕の【天の杖】はアイテムを追加したらバージョンアップできるんだ。使用できる制限レベルが上がるから、早めに準備しておきたい。

 もちろん、他のアクセサリーも購入予定だ。これでお金を消費したら、死に戻りしてもあまり懐が痛まないぞー。

「――おっと、ここだ。こーんにーちはー!」
「デケェ声だな」

 カウンターにいたドワッジさんに呆れた顔をされた。
 気にせず近づいて、「杖のバージョンアップとアクセサリー購入に来たよ」と告げる。

「あー、もうそんな頃合いか。随分とレベルアップがはえぇな」
「まだレベル17だけど、新しいバトルフィールドに行くから」

 武器の制限レベルは20だったから、驚かれるのも不思議じゃない。
 僕の説明にドワッジさんは納得した感じで頷いて、「どんなとこに行くんだ?」と聞いてくる。

「第二の街の南の密林だよー。モンスターの属性は木・風・水が多いらしいね」
「あー、あそこか。あの街の周辺だと、二番目に難しいとこだな」
「そうなの?」

 ドワッジさん曰く、第二の街の周辺バトルフィールドだと北>南>東>西の順で難度が高いらしい。リリとルトが東でレベリングしてるっていうのは、妥当だったんだね。

「密林っていうだけあって、木の密度が高くて視界が悪いのに加えて、根っこやら沼地やらで歩きにくいって聞くぞ。モンスターは奇襲してくるらしい」
「ふぇー……難しそう……」

 聞けば聞くほど、攻略が難しそうで落ち込む。

「こう聞いても諦めねぇってこたぁ、なんか目的があんのか?」
幻桃ラールペシェを探すんだよ」
「……そりゃご苦労なこって」

 酔狂なやつだな、とぼそりと呟かれたの、聞き逃してないからね?
 確かに、次のフィールドに進むのには関係ない目的だけど、僕にとっては重要なんだよ。

「――ま、ワシには目的なんて関係ねぇ。杖とアクセサリーだったな。とりあえず、バージョンアップ素材を確認するから、杖見せろ」
「もともと決まった素材が必要なわけじゃないの?」

 取り出した杖を預けながら首を傾げる。ここで買った杖なんだから、サクサクと必要素材の要求をされるんだと思ってた。

「使い方や使い手の特性によって、武器の進化先が変わるんだ。必要素材も、それに応じて変化する」
「へぇ……それ、最初に説明してほしかった……」

 矯めつ眇めつ杖を眺めているドワッジさんを、ジト目でみつめる。
 僕の使い方って、ひたすら魔術を放つことくらいだよ。使ってる魔術は水・木・火が多かったかな。これでなにが変わるんだろう?

「ふむ。これなら、魔石とシルバー、黒曜石、あとは桃系統の枝で良さそうだな」
「……桃系統の枝?」

 前半三つはストレージに入ってるからすぐに持ってこれるけど、桃系統の枝は入手したことない。

「ああ。強化時に使う素材としちゃ珍しいな。仙桃の枝が一番ふさわしいが、普通の桃の枝でもいいぞ。桃の木から採れるはずだ」
「仙桃っていうのは出会ったことないし、普通の桃の枝一択だね」

 農地に植えてる白美桃ハクビトウの枝で良いかな。採ってこよう。
 一旦レナードさんの錬金術工房前に設定している転移ピンを解除して、この店前に設定する。これでパパッと行って帰ってこれるからね。

「――じゃあ、ちょっと素材取ってくる!」
「おう。ワシはアクセサリーを準備しといてやる」

 身を翻して奥に向かうドワッジさんの背中を見送り、転移スキルを発動。一瞬で農地に辿り着いた。

 たくさんの野菜が育っている農地の一画は果樹園だ。といっても、今は白美桃ハクビトウと太陽みかん、王桃オウトウしかない。

 農業ギルドで買える種や苗って、農家としての経験値がないと売ってもらえないのが多いんだよなぁ。何度か作物を見せに行ってるんだけど、あんまり効果ない。
 もしかして、品種改良した作物を見せるとか、特殊なミッションのクリアが必要なのかな。

白美桃ハクビトウさん、枝をもらうよー」

 よく見たら、採集ポイントを示す光を放ってる枝があって、声を掛けてから採る。一度で二本の枝を手に入れられた。

 採ったら枯れないかなって心配してたんだけど、今のところはその可能性は低そう。一応肥料追加しておこう。

 素材を集めてドワッジさんの装備屋に戻る。
 すると、カウンターの上には既にいくつかのアクセサリーが準備されてた。

「帰ってきたか。素材よこせ。バージョンアップ作業料に二千リョウもらう。成功率は七十%、失敗したら杖・素材全ロストだ」
「……わかったよ。お願いします!」

 七十%はちょっぴりシビア。僕は普段、九十%以上の成功率がないと錬金術の作業をしないし、ドキドキだ。全ロストは嫌だなぁ。

 素材を全部渡したら、「アクセサリー見とけ」と言ったドワッジさんが奥に向かった。
 アクセサリーの新調も楽しみにしてたんだよねー。

「アンクレット以外は――」

 耐衝撃用アンクレットは外すつもりがないので、他の部分の装備を選ぶ。気になったのは三つ。

1.【火蜥蜴サラマンダーの王冠】
 火蜥蜴サラマンダーの火を封じ込めたルビーを使った王冠。火魔術の威力が20%上がる。火属性攻撃への耐性が上がる。魔力攻撃力+15。

2.【土精ノームのネックレス】
 土精ノームが作った黄瑪瑙オウメノウを使ったネックレス。土魔術の威力が20%上がる。土属性攻撃への耐性が上がる。防御力+10。

3.【風精シルフィードのブレスレット】
 風精シルフィードの風を封じ込めたエメラルドを使ったブレスレット。風魔術の威力が20%上がる。風属性攻撃への耐性が上がる。素早さ+13。


「……強すぎでは?」

 予想以上に良いアクセサリーが出てきて、呆然としちゃう。どれも、南の密林を攻略するのに有用そうだ。
 そうでなくても、ステータスアップ率が高くて最高!

「気に入ったのがあったか?」
「うん。ドワッジさんの作業は終わったの?」

 戻ってきたドワッジさんの手には、先ほどと変わらない感じに見える杖。

「最後の仕上げは目の前でしてやろうと思ってな」

 ドワッジさんはそう言うと、手にしていた杖を持ってきた布の上に載せた。布は錬金布に似てる。

「それ、なぁに?」
「強化布だ。鍛冶士が使う道具だな。アイテムの強化を行う際に必須なんだ。それより、今から強化するから、成功を祈っとれ」
「う、うん!」

 緊張してきたぞ。
 固唾をのんでドワッジさんの動きをみつめる。

 ドワッジさんは杖の上に手を翳した後、「【武器・強化】」と唱えた。
 途端に杖が光を放ち始める。眩しくて見てられない!

「――……よし、成功だ」
「ほんとに!?」

 声を掛けられて、閉じていた目を開けると、白銀の輝きを放つ杖があった。
 先端にある透明な宝石はより輝きを増し、杖の持ち手はシルバー製でキラッとしてる。黒色で装飾されてるのは、黒曜石が使われてるのかな。

「……桃の木の要素はどこに?」
「杖の芯だ。一番重要だぞ」

 渡された杖を鑑定してみる。

――――――
桃源とうげん天杖てんづえ】レア度☆☆☆
 バフ・デバフ・回復系のスキルの効果が増大。敵に10の固定ダメージを追加で与える。魔力攻撃力+20、精神力+12。装備制限レベル30以下。
――――――

「……固定ダメージ、強っ! ステータスアップも良いね!」

 最高の結果に満足です。
 桃源って、桃源郷のことかな? 仙桃を材料にするとより良いって言われたし、仙界にゆかりのある杖なのかも。

 僕はそういう行動はしたことないけどね?

「この杖は、戦闘意欲低めなタイプが持ちやすい進化先だな。おめぇ、積極的にバトルせんだろ?」
「……そのとおりですー」

 避けられないバトルはしかたないけど、普段はのんびりのほほんと世界を楽しんでる。それが武器に反映されたってことだね。

 ……よく考えたらすごいね!? これ、どのくらいの種類の進化先が用意されてたんだろう?

「アクセサリーはその三つにするのか?」
「うん。これが今僕に必要かなって思って」

 目をつけていたアクセサリー三つを手元に置いていたからか、ドワッジさんはすぐにわかったみたい。「良い選択だ」と満足そうな表情。

「三つで二万七千リョウじゃぞ」
「高っ! あ、でも、効果を考えたら、むしろお安い……?」

 払えるお金はあるし、サクッとお支払い。
 身につけたら、なんだかガチャガチャした印象になるけど、これはアバターの見た目変更機能で不可視化できる。上から衣装被せたら自動で見えなくなるし。

「うむ。上手く使ってやってくれ」
「もちろん! 良い装備をありがとう!」

 ドワッジさんにお礼を伝えて、装備屋を出る。
 装備は整えたし、所持金はいい感じに減って死に戻りでのロストも怖くないし、早速南の密林に行ってみようかな!


******

◯NEWアイテム
火蜥蜴サラマンダーの王冠】レア度☆☆
 火蜥蜴サラマンダーの火を封じ込めたルビーを使った王冠。火魔術の威力が20%上がる。火属性攻撃への耐性が上がる。魔力攻撃力+15。

土精ノームのネックレス】レア度☆☆
 土精ノームが作った黄瑪瑙オウメノウを使ったネックレス。土魔術の威力が20%上がる。土属性攻撃への耐性が上がる。防御力+10。

風精シルフィードのブレスレット】レア度☆☆
 風精シルフィードの風を封じたエメラルドを使ったブレスレット。風魔術の威力が20%上がる。風属性攻撃への耐性が上がる。素早さ+13。

桃源とうげん天杖てんづえ】レア度☆☆☆
 バフ・デバフ・回復系のスキルの効果が増大。敵に10の固定ダメージを追加で与える。魔力攻撃力+20、精神力+12。装備制限レベル30以下。

******
しおりを挟む
感想 1,383

あなたにおすすめの小説

【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。

西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ? なぜです、お父様? 彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。 「じゃあ、家を出ていきます」

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

女子力の高い僕は異世界でお菓子屋さんになりました

初昔 茶ノ介
ファンタジー
昔から低身長、童顔、お料理上手、家がお菓子屋さん、etc.と女子力満載の高校2年の冬樹 幸(ふゆき ゆき)は男子なのに周りからのヒロインのような扱いに日々悩んでいた。 ある日、学校の帰りに道に悩んでいるおばあさんを助けると、そのおばあさんはただのおばあさんではなく女神様だった。 冗談半分で言ったことを叶えると言い出し、目が覚めた先は見覚えのない森の中で…。 のんびり書いていきたいと思います。 よければ感想等お願いします。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

一番モテないヒロインに転生しましたが、なぜかモテてます

Teko
ファンタジー
ある日私は、男の子4人、女の子4人の幼なじみ達が出てくる乙女ゲームを買った。 魔法の世界が舞台のファンタジーゲームで、プレーヤーは4人の女の子の中から1人好きなヒロインを選ぶ事ができる。 ・可愛くて女の子らしい、守ってあげたくなるようなヒロイン「マイヤ」 ・スポーツ、勉強と何でもできるオールマイティーなヒロイン「セレス」 ・クールでキレイな顔立ち、笑顔でまわりを虜にしてしまうヒロイン「ルナ」 ・顔立ちは悪くないけど、他の3人が飛び抜けている所為か平凡に見られがちなヒロイン「アリア」 4人目のヒロイン「アリア」を選択する事はないな……と思っていたら、いつの間にか乙女ゲームの世界に転生していた! しかも、よりにもよって一番モテないヒロインの「アリア」に!! モテないキャラらしく恋愛なんて諦めて、魔法を使い楽しく生きよう! と割り切っていたら……? 本編の話が長くなってきました。 1話から読むのが大変……という方は、「子どもの頃(入学前)」編 、「中等部」編をすっと飛ばして「第1部まとめ」、「登場人物紹介」、「第2部まとめ」、「第3部まとめ」からどうぞ! ※「登場人物紹介」はイメージ画像ありがございます。 ※自分の中のイメージを大切にしたい方は、通常の「登場人物紹介」の主要キャラ、サブキャラのみご覧ください。 ※長期連載作品になります。

処理中です...