もふもふで始めるのんびり寄り道生活 ~便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

文字の大きさ
上 下
53 / 339
美味を求めて

49.おもてなしだよ

しおりを挟む
 リリが合流したので、二人を僕のホームにつれて来た。

「へぇ、結構大きなところだね」
「プレイヤーが借りれるホーム、既に結構埋まってるみたいだぞ」
「借りるんだったら、気軽にできるもんね」
「俺らも探すか?」
「ログアウトするだけなら、安い大部屋の宿で十分だけど。やっぱり、自分たちだけの空間ってほしいよねぇ」

 ソファに座って部屋を眺めてる二人の会話を、料理の準備をしながら聞く。

 大部屋の宿っていうのは、各街に一つあるプレイヤー専用の宿らしい。一回利用に十リョウというお安さ。でも、ログアウト中は、プレイヤーのアバターがすし詰め状態で寝てることになるから、嫌っていう人もいるみたい。

 ……僕も嫌だ。ログインした瞬間、たくさんのプレイヤーが寝てる光景を見たら、テンションが下がりそう。

「ここ、一部屋空いてるよ? ベッド置いたら、大部屋の宿よりはいいと思う。ログアウトに利用するプレイヤーが一人増える毎に、三十日間の賃料が百リョウ増えるけど。それくらい安いし」

 提案してみたら、二人は顔を見合わせて悩ましげな表情を浮かべる。

「……正直惹かれる。でも、ここ、街の中心部とかバトルフィールドから遠いんだよな」
「北門は近いけど」
「北エリアは、第二の街周辺で一番モンスターが強いらしいぞ」
「そうなんだ……。僕、この街のバトルフィールドは、西の岩山しか行ってないからなぁ」

 西はノース街道の延長みたいなものなので、そこまでモンスターは強くない。ボスモンスターの小象タイニーエレフと苔むした岩ゴーレムを除いたら。

「――あ、そういえば、転移スキルは持ってないの?」

 ふと尋ねてみた。運営さんが補填してるのか気になる。
 ルトたちとの農地とかホームへの移動は、当たり前のように徒歩だったんだ。

「それ、ボスモンスの体力を十%以上削るか、治癒士としての貢献が高くないともらえないスキルだろ? 俺たち、ほぼ異世界の住人NPCに頼っちまったからなぁ」
「私は回復量がちょっと足りない程度だったけど、ルトは何度か繰り返し挑戦してもまだ難しそうだよね」

 ルトたちは資材運びの依頼を受けて、高ランク冒険者に小象タイニーエレフを倒してもらったらしい。

 カミラと別れてからはじまりの街に向かう途中で見かけたけど、資材を使って街道整備してる作業場は、異世界の住人NPCの作業員と高ランク冒険者でにぎわってる感じだった。
 今第二の街に到着してるプレイヤーの半分くらいが、ルトたちと同じ感じでクリアしてるんだって。

 もう半分は、指南役と仲良くなって、資材運びなしで共闘するパターン。僕が掲示板で教えたやつだね。

 一部の攻略組のプレイヤーが転移スキルを獲得できたって掲示板で報告して、獲得のための条件も判明したっていう流れがあったみたい。

「そっかぁ。僕は異世界の住人NPCに全おまかせで達成したけど、最初のクリア者の特権でもらえたってことかな」

 イグニスさん様様です。
 料理の手を一旦休めて、天を拝んだ。イグニスさんがいるのは、地中ですけども。

「あ、それ。どういうことだったのか教えろよ」

 ルトに言われて、「他の人には内緒にしてねー」と念を押してから話す。
 聖なる地捜索からのワールドミッション達成は、怒涛の勢いで進んだのです。

「――初っ端が、モグラの道への寄り道ってところが、モモらしいよな」
「楽しそうなイベントで良かったねー」

 話を聞き終えたルトは呆れたような、感心したような、微妙な声で言う。リリは純粋に話を楽しんでくれたみたいだけど。

「置いていかれた時はどうしようかと思ったけどね。――はい、お寿司とトンカツ、完成です!」
「すげぇ組み合わせだな。でも美味そうだ」
「やったー! お寿司!」

 二人が目を輝かせて喜んでくれるので、作った僕も嬉しい。
 握り寿司の定番ネタがないのはちょっと不満だけど、美味しさは保証できる。お魚が新鮮だからね。

 でも、マグロとかサーモン、鯛、イカ、ウニ、イクラ、穴子……ほしいものはたくさんだ。地道に釣人ランクを上げなきゃ。

 トンカツは茶豚ティピッグを使ってみた。どんな味なのかなー?

 サラダはキャベツ、レタス、トマト、パプリカ。
 トマトは出店で買ってきたのと、農地で採ったのを一緒に出してみたから、食べ比べできる。出店で買ったやつは大きなトマトだったから、八つ切りにしたよ。

「他になんか食べたい料理ある?」
「うーん……パンケーキ! ホイップクリーム増し増しで、フルーツいっぱいの」

 リリが期待に満ちた眼差しで言う。
 それ、映えを狙った感じのメニューだよね。料理のデザインは、結構イメージ力が重視されるみたいだから、僕の力量が問われる。

「……がんばる!」

 小麦粉やベーキングパウダーは買えたんだ。卵と乳製品もちょっぴりお高かったけど買ったし。作れないことはないはず。

「リリは考えなしに言ってるだけだから、無理はしなくていいぞ?」
「大丈夫だよー。あんまり期待しすぎないでほしいけど。ルトは食べたい料理ないの?」

 苦笑してるルトからも聞き出そうとする。お肉が好きっていうのは知ってるけど。
 ルトは悩んだ表情をした後、小声で言う。

「……ハンバーグとカレー」
「お子様メニューか!」
「そうツッコまれると思ってたから、言いにくかったんだよ!」

 恥ずかしそうに叫ばれた。
 ついツッコんじゃったけど、僕もハンバーグとカレー大好きだよ。なんか家庭の味って感じ。

 ハンバーグのソースって、家庭によって違うよねぇ。ファミレスとか洋食屋さんの味も好きだけど。鉄板焼屋のハンバーグは『肉食べてるー!』って実感できる感じで、これも良い。

 カレーは家庭の味なんだけど、ほぼほぼ企業努力で成り立ってる。つまり、カレールウは偉大! 具材とか隠し味で差が生まれてるんだろうな。

 スパイスから作るカレーは、店の味って感じでいいんだけど、ホッとするのはカレールウで作ったカレーだよねぇ。

「……ハンバーグ作るには牛肉がないし、カレーを作りたくても、ルウどころかスパイスもない。カレー用のスパイスは調べないとわからないから、確信はないけど。料理スレでは発見報告なかったし、たぶんない」

 ぶつぶつと呟いて現状把握をしてたら、天啓を受けたようにビビッときた。

「――これは、食材発見のためにさらなる冒険をしろというお告げ……!?」

 拳を握って天を見上げる。
 僕、きっとみつけてみせるよ。この世界にハンバーグやカレー、つまり家庭の味をもたらすために……!

「いや、そこまでがんばらなくていいから。むしろ、飯のためにそこまでやる気を出すお前を、いまだに理解しきれない」

 ルトが冷静な感じで言った。

 そんな熱意が下がるようなこと言わなくてもいいのにー。ここは「俺のために……? ありがとう! 応援するよ!」って言うところじゃない?

 ……そんな感じのルトは解釈違いだな。ごめん、ルトのリアクションが正しかったかも。

「料理の力は偉大なり。――まぁ、食材みつけた時はごちそうするね。とりあえず今は、チキンステーキをどうぞ」
「トンカツにチキンステーキ……リアルだと絶対に一食で食わない組み合わせだな。寿司もあわせるとさらに」

 苦笑しながら受け取ってくれた。
 今食べれなかったら、アイテムボックスにしまってください。

「ちなみに、チキンと言いつつ鶏ではない」
「それはそうだな。鶏肉じゃなくて鳥肉?」
「うん。虹鳥ニジバードっていうモンスター。これ、フィールドで会ったら、七色の鳥だと判明すると思う」
「そうだろうけど、先の楽しみを明かすなよ。新しいモンスに会うの、ワクワクポイントだろ?」

 そう言うルトだって、モンスターの情報は掲示板で事前に調べるタイプじゃないの?


******

◯NEWアイテム
【にぎり寿司】レア度☆
 空腹度を十回復する。一時間、水属性の攻撃で受けるダメージが減少する。
 ネタは金鰺ゴールデンアジ真鰺リアルアジ暴鱸アバレスズキ林檎間八アプルカンパチ銀剣魚キラタチウオ赤目鯛レッディメダイ虎柄海老タイガーエビ桜乃大海老サクノオオエビ、たまご。ガリ添え。
〈レシピ〉
①魚介類を錬金術で下ごしらえ→【寿司ネタ】
②酢飯を作る。(米を【炊く】+すし酢を【混ぜる】)
③【寿司ネタ】と酢飯を【成形】

【トンカツ】レア度☆
 空腹度を十一回復する。茶豚ティピッグの肉にパン粉をまとわせて揚げた料理。キャベツ、レタス、トマト(二種)のサラダが添えられている。トンカツソースか塩でどうぞ。
〈レシピ〉
茶豚ティピッグの肉を錬金術で下ごしらえ→【茶豚ティピッグの厚切り肉】
②【茶豚ティピッグの厚切り肉】に小麦粉、溶き卵、パン粉で【成形】
③ ②でできた物を【揚げる】

【チキンステーキ】レア度☆
 空腹度を九回復する。虹鳥ニジバードの肉を焼いて、トマトソースをかけた料理。
〈レシピ〉
虹鳥ニジバードの肉を錬金術で下ごしらえ→【虹鳥ニジバードの厚切り肉】
②【虹鳥ニジバードの厚切り肉】を【焼く】
③トマトをニンニク、塩コショウ、ハーブと一緒に【煮る】→【トマトソース】
④ ②に【トマトソース】をかける

******
しおりを挟む
感想 1,383

あなたにおすすめの小説

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

女子力の高い僕は異世界でお菓子屋さんになりました

初昔 茶ノ介
ファンタジー
昔から低身長、童顔、お料理上手、家がお菓子屋さん、etc.と女子力満載の高校2年の冬樹 幸(ふゆき ゆき)は男子なのに周りからのヒロインのような扱いに日々悩んでいた。 ある日、学校の帰りに道に悩んでいるおばあさんを助けると、そのおばあさんはただのおばあさんではなく女神様だった。 冗談半分で言ったことを叶えると言い出し、目が覚めた先は見覚えのない森の中で…。 のんびり書いていきたいと思います。 よければ感想等お願いします。

ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜

望月かれん
ファンタジー
 中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。 戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。 暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。  疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。 なんと、ぬいぐるみが喋っていた。 しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。     天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。  ※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

処理中です...