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はじまりの街
29.運は大切だと思う
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「行ってきまーす」
「いってらっしゃーい。ゴーレムとバトルになりそうなら、木魔術で妨害するからね!」
飛翔は本来助走なしで飛べるけど、あった方がすぐにトップスピードになれる。
だから勢いよく走って地面を蹴り、スキルを発動。リリに見送られて、木のところへ一直線で進む。
うわー、ゴーレムが近づいてきてる。足は遅いから、接近される前にさっさと採集して戻ろう。
というわけで、無事十五秒以内に辿り着いた木の枝に着地して、採集ポイントを探す。ところどころ微かに光ってるところがあって、そこで採集スキルを使えるっぽいんだ。
「お、ここ良さそう……」
大きな木の枝をもふ、と触る。途端に木の枝が落下していった。
——って、そのままアイテムボックスに収納されるわけじゃないのかー! 確かに薬草も一旦手の上にのってたけどね。落ちるのはやめてー!
慌てて追いかけて木の根元へ。ゴーレムが近づいてきてるよ。
早く回収回収——……よし、一回の採集で五個採れたみたいだし、足りるでしょ。戻るぞー。
一旦木の上に飛ぶ。ゴーレムが幹を叩いてくる震動を感じた。ギリギリセーフ!
リリに木魔術使わせたら、セーフティエリアの意味がなくなっちゃう。だから、攻撃は与えないに越したことはないよね。
ルトを加えた三人なら、ちょっと時間はかかるけどゴーレムを倒せる。でも、リリと僕の二人だけだと、盾役がいないもんなー。
僕はダメージをあんまり食らわなくても、ふっ飛ばされそうだし。その間にリリが無防備になっちゃうのはダメ。
ということで、やっぱり今はバトルを避けるのが正解!
採集終わったし、再び飛翔を発動。帰りは多少距離が足りなくても大丈夫かな。
「モモ、おかえり。ちょっとハラハラしたね」
「ただいまー……ちょっとどころじゃないよ。防御力高いって言っても、石で殴られるのは嫌だもん」
ゴーレムって見るからに硬いんだよね。人に蹴られるのも衝撃があったのに、ゴーレムに殴られたらぺちゃんこになっちゃいそう。
それでなくとも吹っ飛ばされること間違い無しだよ。いくらアクセサリーで後退する可能性が低くなってるとはいえ、僕は小さくて軽いから。
「お疲れさま。ありがとね。ルトはまだあそこ」
リリが結構上の方を指差す。その先を見たら、山の岩肌を登ってるルトがいた。……なにゆえ、そんなところに?
「——近場の草からは【ゴミ】しか採れなかったんだって」
リリが近くで山のようになっていた枯れ草を示した。確かに使いみちがなさそうだけど、ゴミかー。意外と錬金術に使えるのでは? と思って受け取って錬金布にのせてみる。
「あ、肥料になるって」
「え、すごい」
ゴミが肥料になるっていうのは、ありがちだけどいいね。でも、今はいらないなぁ。たぶん、どこででも採れるよね? アイテムボックスの枠は有限だからさ。
「……経験値稼ぎに錬金しとくか」
肥料はここに捨て置くので、誰か拾ってください。しばらくしたら自然消滅してる気がするけど。
ルトの帰りを錬金しながら待つ。リリは僕の作業を眺めて楽しそう。錬金成功したときって、ふわって光の帯が錬金布の周囲を取り巻くから綺麗だもんね。
成功率100%の錬金は単調な作業だったので、時々ルトを眺める。
すごいところまで登ってるなぁ。草玉が採れるのは運要素が関わるとはいえ、そんなに採れないものかな?
「ルト、幸運値低い……?」
芽生えた疑惑を呟いたら、リリが目を逸らした。
「……バトルにはあんまり関係ないから、たぶん初期値から上げてないと思う。リアルでも低めだし」
リアルでもなのかよ。ルト、どんだけバトル脳なの? 初期値が低いなら、ちょっとくらい上げとけば?
◇
ルトが帰ってきたのは、僕がゴミを全部肥料に変えた頃。追加でゴミを渡されたけど、そのままペイッと放り投げました。もう肥料作りは飽きた。
「草玉くれー」
「……ほらよ」
ちょっと気まずそうなルトから草玉を受け取る。奇跡的な一個。……一個かぁ。これ、僕が採集に行くべきだったかな?
「松明一個になっちゃうけど」
「しかたねぇだろ」
「うん、ルトのせいだから、モモは気にしないで」
ルトが黙り込む。時々リリって強いよね。
肩をすくめて錬金開始。料理と肥料作りで慣れたから、ささっと完成した。見るからに手持ちの松明! 火をつけるには別の手段が必要っていう、原始的なものです。
火魔石とか火打ち石とかがあれば、もっと良い松明とかランプが作れたんだけど、材料が限られてるからしかたない。
「ルトの手が塞がったら駄目だし、私が持つね」
「おう、頼んだ」
「……僕は最初から数に入れられてなかった?」
小さな呟きだったせいか、自然とスルーされました。僕が持ったら上の方に死角ができちゃうもんね。頼られなかったことへの不満なんかないよ。
「——とりあえず、着火だー」
本来は着火用の魔術があるらしいけど覚えてないので、岩に立てかけた松明の上部を狙って火の玉を放つ。……上手く着火できた!
「すげぇ豪快」
「そういうのありなんだ」
苦笑したリリが松明を拾って掲げたところで、洞窟探索開始です。
今回もルトが先頭だけど、ほぼ横並び。離れたら暗くて視界が悪くなるから。
「採掘ポイントねぇな」
「まだ入り口近いし。もっと奥じゃない?」
「つーか、はじまりの街のフィールドのクセに、すげぇ手が込んでるよな。普通、最初のエリアってほぼスルー状態になるんじゃねぇか?」
「んー。このゲームは異世界を楽しむっていうのがコンセプトらしいし。普通のゲームより隠し要素が多いのかも」
二人の会話を聞きながら、うんうんと頷く。
自由度が高いから、僕は寄り道しまくっちゃってるもん。でも、攻略組さえまだ第二の街に到着してないっぽいし、単純に強さを求めて突き進んでもダメなんじゃないかな。
そんな感じでのんびり進んでる間も、実はモンスターが襲ってきてた。洞窟蝙蝠っていうやつとか、洞窟鼠とか。
どれも、ルトが剣の一撃で片付けてたけど。物理耐性はないっぽい。
「あ、見て、光ってる!」
前方に淡い光を発見。これ、絶対採掘ポイントだ。
「ここ、光ってるところたくさんあるな」
これまで人が三人横並びで歩いたらいっぱいになっちゃいそうだった道が、急に広くなっていた。道というか、広間? 岩肌でゴツいけど、人工的に拓かれてる気がする。
ところどころにボロいツルハシやトロッコの残骸らしきものが転がってた。やっぱりここは採掘跡なんだろうな。
トロッコ用の通路がもっと奥の方まで続いてるけど、とりあえずここで採掘に挑戦。
「いざ、鉄のツルハシの出番である!」
「それ、どういうキャラなんだ」
じゃじゃーん、と鉄のツルハシを取り出して掲げたら、ルトに呆れた顔をされた。ルトの手にも鉄のツルハシ。
採掘スキルを持ってないリリは、僕たちの採掘を見守るって。モンスターへの警戒も必要だし、明かり持ちは重要。
「さぁて、楽しい採掘の時間だよー」
「がんばってねー」
リリに応援されて、ルトと一緒に採掘ポイントへ向かう。僕はルトの隣で掘ろう。
鉄のツルハシを構えて、採掘ポイントに打ち込む。途端にガンッと大きな音が響いた。
……僕には厳しい場所です。耳栓がほしい。
「……あ、鉄が採れた」
「俺、石炭」
「僕がほしかったやつー!」
ふふん、と勝ち誇られた。いいもん、僕も掘るから。
再び鉄のツルハシを振るう。一つの採掘ポイントで、何回か連続して掘れるみたい。
「鉄、石、鉄、……石炭!」
やっと来たよ。鉄率高くない?
「石炭の方がレア度低いのかもしれないね」
「それ、暗に、俺の幸運値が低いって言ってるだろ、リリ」
石と石炭ばっかり掘ってるルトが、リリを軽く睨んでる。笑顔で聞き流されてるけど。
幼馴染み二人の微笑ましい会話を聞きながら、僕は採掘に勤しみます。たくさん貯めとくんだ。いろいろなレシピに使えそうだから。
「あー、シルバーも掘れた!」
「そういう金属もあるのか。高値で売れそう」
「ルトはまず、採れない気がするけど」
「さっきからリリは俺の幸運値バカにしすぎじゃねぇか?」
不満そうだけど、それなら幸運値を上げたらいいと思う。それでも攻撃とか防御にSPを振っちゃうんだろうけど。
三人で話しながら採掘してたら、リリが勢いよく洞窟の奥の方を振り向いた。
「っ、モンスターが来たよ! ゴーレムみたい」
「ここでゴーレムかよ」
慌てて戦闘態勢をとる。奥の方からのっそりと現れたゴーレムの姿に、思わず首を傾げちゃった。
見慣れたゴーレムにそっくりだけど、外で彷徨いてるのとはちょっと違うような?
鑑定してみよう。
——————
【鉄鉱石のゴーレム】
土属性のモンスター。聖なる地を守っている。騒がす者に鉄槌を下す。通常の石でできたゴーレムより硬く、防御力・攻撃力ともに優れている。腕と足を振り回して攻撃する。得意属性【風】苦手属性【水】
——————
「鉄鉱石でできたゴーレムみたい。普通のより硬いらしいから、気をつけて!」
「マジか……。これ、採掘の時の音で近づいてきたんだよな」
「そうだと思う。気配察知できる距離には、最初いなかったもん」
僕だって、一応警戒してたんだよ。このゴーレムは遠方から近づいてきたっぽい。
「とりあえず、攻撃する!」
「大きな音出したら、追加で来るかも」
「うげっ……」
嫌そうな顔をしたルトが駆けて、武器を振った。
「って、それ、鉄のツルハシ!」
思わずツッコミを入れる。そりゃ、採掘してたんだから、手元にあるのはツルハシだけどさぁ。バトルの時は持ち替えようよ。
「しまった——……あ?」
ルトが振り下ろしたツルハシが、ゴーレムの頭に突き刺さり、わずかに砕いた。結構体力バーが削られてる。水魔術ほどじゃないけど、剣術や蹴りよりは随分と攻撃力あるね……?
「鉄のツルハシは武器だった……?」
「予想外な展開すぎる……」
首を傾げるリリに続いて、僕も思わず呟く。
鉄のツルハシが採掘用のアイテムであることは間違いないんだけど、もしかしたらゴーレムには特別な効果あるのかも。石を掘れる道具だから、石のモンスターには効く、とか?
鉄のツルハシは、攻撃一発で耐久性消し飛んで消滅してるけど。使い捨ての攻撃手段としては良いのかも。
「——ま、僕は魔術一択だけど」
体術も物理攻撃力も育ててないので、いつも通り水の槍を発動。さっさと倒して採掘再開するぞー!
******
◯NEWアイテム
【ゴミ】レア度☆
バトルフィールド内で採集した際に入手することができる。ほぼ使い道はない。
【肥料】レア度☆
錬金術を使って製作できるアイテム。農地の収穫量を10%増加させる。
【松明】レア度☆
周囲を明るく照らす。手で持つアイテム。錬金術レシピ:【木の枝】+【草玉】
【鉄】レア度☆
採掘ポイントで採掘し入手できる。生産用アイテム。
【石】レア度☆
岩石のかけら。採掘ポイントで採掘し入手できる。生産用アイテム。
【石炭】レア度☆
採掘ポイントで採掘し入手できる。生産用アイテム。
【シルバー】レア度☆☆
採掘ポイントで採掘し入手できる。生産用アイテム。高値で売買可能。
◯NEWモンスター
【洞窟蝙蝠】
洞窟に生息するモンスター。噛みつき攻撃をしてくる。
【洞窟鼠】
洞窟に生息するモンスター。体当たり攻撃をしてくる。
【鉄鉱石のゴーレム】
土属性のモンスター。聖なる地を守っている。騒がす者に鉄槌を下す。通常の石でできたゴーレムより硬く、防御力・攻撃力ともに優れている。腕と足を振り回して攻撃する。得意属性【風】苦手属性【水】
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「いってらっしゃーい。ゴーレムとバトルになりそうなら、木魔術で妨害するからね!」
飛翔は本来助走なしで飛べるけど、あった方がすぐにトップスピードになれる。
だから勢いよく走って地面を蹴り、スキルを発動。リリに見送られて、木のところへ一直線で進む。
うわー、ゴーレムが近づいてきてる。足は遅いから、接近される前にさっさと採集して戻ろう。
というわけで、無事十五秒以内に辿り着いた木の枝に着地して、採集ポイントを探す。ところどころ微かに光ってるところがあって、そこで採集スキルを使えるっぽいんだ。
「お、ここ良さそう……」
大きな木の枝をもふ、と触る。途端に木の枝が落下していった。
——って、そのままアイテムボックスに収納されるわけじゃないのかー! 確かに薬草も一旦手の上にのってたけどね。落ちるのはやめてー!
慌てて追いかけて木の根元へ。ゴーレムが近づいてきてるよ。
早く回収回収——……よし、一回の採集で五個採れたみたいだし、足りるでしょ。戻るぞー。
一旦木の上に飛ぶ。ゴーレムが幹を叩いてくる震動を感じた。ギリギリセーフ!
リリに木魔術使わせたら、セーフティエリアの意味がなくなっちゃう。だから、攻撃は与えないに越したことはないよね。
ルトを加えた三人なら、ちょっと時間はかかるけどゴーレムを倒せる。でも、リリと僕の二人だけだと、盾役がいないもんなー。
僕はダメージをあんまり食らわなくても、ふっ飛ばされそうだし。その間にリリが無防備になっちゃうのはダメ。
ということで、やっぱり今はバトルを避けるのが正解!
採集終わったし、再び飛翔を発動。帰りは多少距離が足りなくても大丈夫かな。
「モモ、おかえり。ちょっとハラハラしたね」
「ただいまー……ちょっとどころじゃないよ。防御力高いって言っても、石で殴られるのは嫌だもん」
ゴーレムって見るからに硬いんだよね。人に蹴られるのも衝撃があったのに、ゴーレムに殴られたらぺちゃんこになっちゃいそう。
それでなくとも吹っ飛ばされること間違い無しだよ。いくらアクセサリーで後退する可能性が低くなってるとはいえ、僕は小さくて軽いから。
「お疲れさま。ありがとね。ルトはまだあそこ」
リリが結構上の方を指差す。その先を見たら、山の岩肌を登ってるルトがいた。……なにゆえ、そんなところに?
「——近場の草からは【ゴミ】しか採れなかったんだって」
リリが近くで山のようになっていた枯れ草を示した。確かに使いみちがなさそうだけど、ゴミかー。意外と錬金術に使えるのでは? と思って受け取って錬金布にのせてみる。
「あ、肥料になるって」
「え、すごい」
ゴミが肥料になるっていうのは、ありがちだけどいいね。でも、今はいらないなぁ。たぶん、どこででも採れるよね? アイテムボックスの枠は有限だからさ。
「……経験値稼ぎに錬金しとくか」
肥料はここに捨て置くので、誰か拾ってください。しばらくしたら自然消滅してる気がするけど。
ルトの帰りを錬金しながら待つ。リリは僕の作業を眺めて楽しそう。錬金成功したときって、ふわって光の帯が錬金布の周囲を取り巻くから綺麗だもんね。
成功率100%の錬金は単調な作業だったので、時々ルトを眺める。
すごいところまで登ってるなぁ。草玉が採れるのは運要素が関わるとはいえ、そんなに採れないものかな?
「ルト、幸運値低い……?」
芽生えた疑惑を呟いたら、リリが目を逸らした。
「……バトルにはあんまり関係ないから、たぶん初期値から上げてないと思う。リアルでも低めだし」
リアルでもなのかよ。ルト、どんだけバトル脳なの? 初期値が低いなら、ちょっとくらい上げとけば?
◇
ルトが帰ってきたのは、僕がゴミを全部肥料に変えた頃。追加でゴミを渡されたけど、そのままペイッと放り投げました。もう肥料作りは飽きた。
「草玉くれー」
「……ほらよ」
ちょっと気まずそうなルトから草玉を受け取る。奇跡的な一個。……一個かぁ。これ、僕が採集に行くべきだったかな?
「松明一個になっちゃうけど」
「しかたねぇだろ」
「うん、ルトのせいだから、モモは気にしないで」
ルトが黙り込む。時々リリって強いよね。
肩をすくめて錬金開始。料理と肥料作りで慣れたから、ささっと完成した。見るからに手持ちの松明! 火をつけるには別の手段が必要っていう、原始的なものです。
火魔石とか火打ち石とかがあれば、もっと良い松明とかランプが作れたんだけど、材料が限られてるからしかたない。
「ルトの手が塞がったら駄目だし、私が持つね」
「おう、頼んだ」
「……僕は最初から数に入れられてなかった?」
小さな呟きだったせいか、自然とスルーされました。僕が持ったら上の方に死角ができちゃうもんね。頼られなかったことへの不満なんかないよ。
「——とりあえず、着火だー」
本来は着火用の魔術があるらしいけど覚えてないので、岩に立てかけた松明の上部を狙って火の玉を放つ。……上手く着火できた!
「すげぇ豪快」
「そういうのありなんだ」
苦笑したリリが松明を拾って掲げたところで、洞窟探索開始です。
今回もルトが先頭だけど、ほぼ横並び。離れたら暗くて視界が悪くなるから。
「採掘ポイントねぇな」
「まだ入り口近いし。もっと奥じゃない?」
「つーか、はじまりの街のフィールドのクセに、すげぇ手が込んでるよな。普通、最初のエリアってほぼスルー状態になるんじゃねぇか?」
「んー。このゲームは異世界を楽しむっていうのがコンセプトらしいし。普通のゲームより隠し要素が多いのかも」
二人の会話を聞きながら、うんうんと頷く。
自由度が高いから、僕は寄り道しまくっちゃってるもん。でも、攻略組さえまだ第二の街に到着してないっぽいし、単純に強さを求めて突き進んでもダメなんじゃないかな。
そんな感じでのんびり進んでる間も、実はモンスターが襲ってきてた。洞窟蝙蝠っていうやつとか、洞窟鼠とか。
どれも、ルトが剣の一撃で片付けてたけど。物理耐性はないっぽい。
「あ、見て、光ってる!」
前方に淡い光を発見。これ、絶対採掘ポイントだ。
「ここ、光ってるところたくさんあるな」
これまで人が三人横並びで歩いたらいっぱいになっちゃいそうだった道が、急に広くなっていた。道というか、広間? 岩肌でゴツいけど、人工的に拓かれてる気がする。
ところどころにボロいツルハシやトロッコの残骸らしきものが転がってた。やっぱりここは採掘跡なんだろうな。
トロッコ用の通路がもっと奥の方まで続いてるけど、とりあえずここで採掘に挑戦。
「いざ、鉄のツルハシの出番である!」
「それ、どういうキャラなんだ」
じゃじゃーん、と鉄のツルハシを取り出して掲げたら、ルトに呆れた顔をされた。ルトの手にも鉄のツルハシ。
採掘スキルを持ってないリリは、僕たちの採掘を見守るって。モンスターへの警戒も必要だし、明かり持ちは重要。
「さぁて、楽しい採掘の時間だよー」
「がんばってねー」
リリに応援されて、ルトと一緒に採掘ポイントへ向かう。僕はルトの隣で掘ろう。
鉄のツルハシを構えて、採掘ポイントに打ち込む。途端にガンッと大きな音が響いた。
……僕には厳しい場所です。耳栓がほしい。
「……あ、鉄が採れた」
「俺、石炭」
「僕がほしかったやつー!」
ふふん、と勝ち誇られた。いいもん、僕も掘るから。
再び鉄のツルハシを振るう。一つの採掘ポイントで、何回か連続して掘れるみたい。
「鉄、石、鉄、……石炭!」
やっと来たよ。鉄率高くない?
「石炭の方がレア度低いのかもしれないね」
「それ、暗に、俺の幸運値が低いって言ってるだろ、リリ」
石と石炭ばっかり掘ってるルトが、リリを軽く睨んでる。笑顔で聞き流されてるけど。
幼馴染み二人の微笑ましい会話を聞きながら、僕は採掘に勤しみます。たくさん貯めとくんだ。いろいろなレシピに使えそうだから。
「あー、シルバーも掘れた!」
「そういう金属もあるのか。高値で売れそう」
「ルトはまず、採れない気がするけど」
「さっきからリリは俺の幸運値バカにしすぎじゃねぇか?」
不満そうだけど、それなら幸運値を上げたらいいと思う。それでも攻撃とか防御にSPを振っちゃうんだろうけど。
三人で話しながら採掘してたら、リリが勢いよく洞窟の奥の方を振り向いた。
「っ、モンスターが来たよ! ゴーレムみたい」
「ここでゴーレムかよ」
慌てて戦闘態勢をとる。奥の方からのっそりと現れたゴーレムの姿に、思わず首を傾げちゃった。
見慣れたゴーレムにそっくりだけど、外で彷徨いてるのとはちょっと違うような?
鑑定してみよう。
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【鉄鉱石のゴーレム】
土属性のモンスター。聖なる地を守っている。騒がす者に鉄槌を下す。通常の石でできたゴーレムより硬く、防御力・攻撃力ともに優れている。腕と足を振り回して攻撃する。得意属性【風】苦手属性【水】
——————
「鉄鉱石でできたゴーレムみたい。普通のより硬いらしいから、気をつけて!」
「マジか……。これ、採掘の時の音で近づいてきたんだよな」
「そうだと思う。気配察知できる距離には、最初いなかったもん」
僕だって、一応警戒してたんだよ。このゴーレムは遠方から近づいてきたっぽい。
「とりあえず、攻撃する!」
「大きな音出したら、追加で来るかも」
「うげっ……」
嫌そうな顔をしたルトが駆けて、武器を振った。
「って、それ、鉄のツルハシ!」
思わずツッコミを入れる。そりゃ、採掘してたんだから、手元にあるのはツルハシだけどさぁ。バトルの時は持ち替えようよ。
「しまった——……あ?」
ルトが振り下ろしたツルハシが、ゴーレムの頭に突き刺さり、わずかに砕いた。結構体力バーが削られてる。水魔術ほどじゃないけど、剣術や蹴りよりは随分と攻撃力あるね……?
「鉄のツルハシは武器だった……?」
「予想外な展開すぎる……」
首を傾げるリリに続いて、僕も思わず呟く。
鉄のツルハシが採掘用のアイテムであることは間違いないんだけど、もしかしたらゴーレムには特別な効果あるのかも。石を掘れる道具だから、石のモンスターには効く、とか?
鉄のツルハシは、攻撃一発で耐久性消し飛んで消滅してるけど。使い捨ての攻撃手段としては良いのかも。
「——ま、僕は魔術一択だけど」
体術も物理攻撃力も育ててないので、いつも通り水の槍を発動。さっさと倒して採掘再開するぞー!
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◯NEWアイテム
【ゴミ】レア度☆
バトルフィールド内で採集した際に入手することができる。ほぼ使い道はない。
【肥料】レア度☆
錬金術を使って製作できるアイテム。農地の収穫量を10%増加させる。
【松明】レア度☆
周囲を明るく照らす。手で持つアイテム。錬金術レシピ:【木の枝】+【草玉】
【鉄】レア度☆
採掘ポイントで採掘し入手できる。生産用アイテム。
【石】レア度☆
岩石のかけら。採掘ポイントで採掘し入手できる。生産用アイテム。
【石炭】レア度☆
採掘ポイントで採掘し入手できる。生産用アイテム。
【シルバー】レア度☆☆
採掘ポイントで採掘し入手できる。生産用アイテム。高値で売買可能。
◯NEWモンスター
【洞窟蝙蝠】
洞窟に生息するモンスター。噛みつき攻撃をしてくる。
【洞窟鼠】
洞窟に生息するモンスター。体当たり攻撃をしてくる。
【鉄鉱石のゴーレム】
土属性のモンスター。聖なる地を守っている。騒がす者に鉄槌を下す。通常の石でできたゴーレムより硬く、防御力・攻撃力ともに優れている。腕と足を振り回して攻撃する。得意属性【風】苦手属性【水】
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