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20.帰結
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王妃と話した後は、提案したマリアが驚くほどの勢いで、物事が進んだ。
まず、ピアが貴族籍放棄の申請を出した次の日には、モスト男爵次男の職務上の不正が確認されたと罷免になった。
あまりに予想通りの動きをしたものだから、マリアは苦笑するしかない。
その結果、モスト男爵に非難の目が向けられるようになった。
ゴシップの原因と目されていたピアが、貴族籍を放棄したがっているということ。それをモスト男爵が阻止しようとしたこと。
それらの事象から、ゴシップの原因はモスト男爵の指示によるものだったのではと噂されるようになったのだ。一転して、ピアは被害者として見られ始めた。
そして、王妃の目が光っていたからか、ピアの申請は粛々と審理され、その正当性が認められて、貴族籍の削除が決定された。モスト男爵家との離縁が叶ったのだ。何度も抗議したモスト男爵は、もはや一顧だにされていない。
リスト侯爵も、「息子はモスト男爵に嵌められたのだ!」と一時期訴えてロナルドの名誉回復を狙ったが、それはさすがに受け入れられなかった。
それだけロナルドは元々評判が悪かったし、浮気やメルシャン伯爵家への企みは、ロナルド自身が考えたものと理解されていたからだ。
ロナルドは決まっていた通り、領地に送られ軟禁状態で過ごすことになったらしい。
「君と王妃殿下の狙い通り、貴族家長法の改正は脚光を浴びているようだね」
久々のカフェデートで、ロイズが面白そうに呟く。マリアも得意気になって微笑んだ。
「これで、これまで救いの道を見つけられなかった人々を助けられるといいのだけれど」
「まあ、どこにでも不正をする者は出てくるからね。暫くは注意深く監視する必要はあるだろうけど。王妃殿下はその辺抜け目ない気がするし、マリアが考えることではないね」
「そうね。私、普通の伯爵令嬢だもの」
「普通の、ね――」
再び愉快そうに笑ったロイズが、「普通の伯爵令嬢は、国の法律の周知案を提示して、王妃を動かすなんてしないだろうけどね」なんて呟く。
マリアも少しそうかもしれないとは思ったものの、やはり自分は前世の記憶というアドバンテージがあるだけの、普通の少女だと考える。みんな、マリアを過剰評価しすぎなのだ。
「そういう自覚がないところも、マリアの面白くて魅力的なところだよ。ぜひそのままでいてほしいね」
「……自覚がないんだったら変わりようがないわ」
「それはいいことだ」
嬉しそうに微笑んだロイズの顔に影がかかる。
「ご注文はお決まりですか?」
「あぁ、このチョコレートタルトと紅茶のセットを――」
メニュー表から顔を上げたロイズが、目を見張って固まった。
カフェの店員の髪はピンクブロンド。ふわふわしたそれをきっちりと纏め上げ、蒼い目を輝かせた少女は、人形のようだと形容するにはあまりに生気に溢れた笑みを浮かべていた。
「……ピア嬢」
「ふふっ、もうただの一店員です。どうぞピアとお呼びくださいませ」
「……マリア」
ロイズからの「どういうこと?」と問うような眼差しに、マリアはにこりと微笑んだ。
「ピアの可愛らしい容姿、お洒落なカフェにピッタリなのよね。礼儀作法もきちんと学んでいるし、見映えがするでしょう? ドレス店や宝飾品店とも迷ったけれど、暫くは社交界とは少し距離があるところの方が働きやすいと思ったの」
「そういうことを聞いているんじゃないんだけどね……。ははっ、やっぱりマリアは最高に楽しい人だ。君といると飽きることがなくて嬉しいよ」
「驚きを楽しんでもらえたなら良かったわ」
ちょっとしたドッキリは見事ロイズにはまったらしい。満面の笑みを見せるロイズに、マリアも満足だ。
まず、ピアが貴族籍放棄の申請を出した次の日には、モスト男爵次男の職務上の不正が確認されたと罷免になった。
あまりに予想通りの動きをしたものだから、マリアは苦笑するしかない。
その結果、モスト男爵に非難の目が向けられるようになった。
ゴシップの原因と目されていたピアが、貴族籍を放棄したがっているということ。それをモスト男爵が阻止しようとしたこと。
それらの事象から、ゴシップの原因はモスト男爵の指示によるものだったのではと噂されるようになったのだ。一転して、ピアは被害者として見られ始めた。
そして、王妃の目が光っていたからか、ピアの申請は粛々と審理され、その正当性が認められて、貴族籍の削除が決定された。モスト男爵家との離縁が叶ったのだ。何度も抗議したモスト男爵は、もはや一顧だにされていない。
リスト侯爵も、「息子はモスト男爵に嵌められたのだ!」と一時期訴えてロナルドの名誉回復を狙ったが、それはさすがに受け入れられなかった。
それだけロナルドは元々評判が悪かったし、浮気やメルシャン伯爵家への企みは、ロナルド自身が考えたものと理解されていたからだ。
ロナルドは決まっていた通り、領地に送られ軟禁状態で過ごすことになったらしい。
「君と王妃殿下の狙い通り、貴族家長法の改正は脚光を浴びているようだね」
久々のカフェデートで、ロイズが面白そうに呟く。マリアも得意気になって微笑んだ。
「これで、これまで救いの道を見つけられなかった人々を助けられるといいのだけれど」
「まあ、どこにでも不正をする者は出てくるからね。暫くは注意深く監視する必要はあるだろうけど。王妃殿下はその辺抜け目ない気がするし、マリアが考えることではないね」
「そうね。私、普通の伯爵令嬢だもの」
「普通の、ね――」
再び愉快そうに笑ったロイズが、「普通の伯爵令嬢は、国の法律の周知案を提示して、王妃を動かすなんてしないだろうけどね」なんて呟く。
マリアも少しそうかもしれないとは思ったものの、やはり自分は前世の記憶というアドバンテージがあるだけの、普通の少女だと考える。みんな、マリアを過剰評価しすぎなのだ。
「そういう自覚がないところも、マリアの面白くて魅力的なところだよ。ぜひそのままでいてほしいね」
「……自覚がないんだったら変わりようがないわ」
「それはいいことだ」
嬉しそうに微笑んだロイズの顔に影がかかる。
「ご注文はお決まりですか?」
「あぁ、このチョコレートタルトと紅茶のセットを――」
メニュー表から顔を上げたロイズが、目を見張って固まった。
カフェの店員の髪はピンクブロンド。ふわふわしたそれをきっちりと纏め上げ、蒼い目を輝かせた少女は、人形のようだと形容するにはあまりに生気に溢れた笑みを浮かべていた。
「……ピア嬢」
「ふふっ、もうただの一店員です。どうぞピアとお呼びくださいませ」
「……マリア」
ロイズからの「どういうこと?」と問うような眼差しに、マリアはにこりと微笑んだ。
「ピアの可愛らしい容姿、お洒落なカフェにピッタリなのよね。礼儀作法もきちんと学んでいるし、見映えがするでしょう? ドレス店や宝飾品店とも迷ったけれど、暫くは社交界とは少し距離があるところの方が働きやすいと思ったの」
「そういうことを聞いているんじゃないんだけどね……。ははっ、やっぱりマリアは最高に楽しい人だ。君といると飽きることがなくて嬉しいよ」
「驚きを楽しんでもらえたなら良かったわ」
ちょっとしたドッキリは見事ロイズにはまったらしい。満面の笑みを見せるロイズに、マリアも満足だ。
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