7 / 21
7.お茶会
しおりを挟む
メルシャン伯爵家のお茶会は、美しい庭園で立食形式で開かれていた。たくさん置かれたテーブルの傍で、令嬢たちが思い思いに歓談している。
領地の緑茶を紹介するための会であるからか、既に花の香りと共に豊かな緑茶の香りが漂っている気がした。
招待状を手にして到着したマリアは、予想以上の歓待を受けながら、今回のお茶会の主人ユアナ・メルシャン伯爵令嬢のところに向かった。
「――ようこそいらっしゃいました、マリア様。出席いただけて嬉しいですわ」
「私もようやく出席できて光栄ですわ。メルシャン伯爵家の緑茶葉は良質だと聞いていますもの。一度、お茶会で味わってみたくて、今日はそれを楽しみに来ましたのよ」
「まあ! それは良いことを聞きましたわ。ぜひ当家自慢の緑茶を味わってくださいませ!」
少しリップサービスも入れたが、マリアの言葉に嘘はない。メルシャン伯爵の領地でとれる緑茶葉が良質であることは有名なのだ。ただ、販促が下手なだけで。
歓喜の表情を浮かべるユアナに背を押されるように、数多の茶葉が並ぶテーブルに案内される。主人自ら、マリアを歓待してくれるらしい。
儀礼的な挨拶だけを交わして、ほとんど相手にされていないロイズには、それを特に気にした様子はない。たいていのお茶会は、婚約者同伴であることも多いとはいえ、基本的には女性主体のものだからだ。
「こちらが平民向けに流通させている茶葉ですわ。少し渋みと苦みがありますけれど、それがいいと貴族階級で好まれる方もいますわ。香りが強いのも好まれる理由ですわね」
茶葉を紹介されると同時に、メイドが淹れた緑茶を渡される。
「――確かに渋みと苦みがありますわね。でも……この香り、私も好きですわ」
「ああ、確かに、これは職場で飲むのもいい気がしますね。眠気覚ましになりそうです」
お茶を淹れる技術が優れているからか、それとも茶葉自体の品質が良いからか、十分美味しく感じた。ロイズも気に入ったようだ。
それに微笑みながら、マリアは少し思案する。この緑茶は非常に香りが強い。その分、お菓子に使ったら良い風味が出そうだ。
その後もいくつか茶葉を紹介されるが、マリアが商売に使いたいと考えたのは、最初の茶葉だった。もちろん、ただ飲むだけなら高品質なタイプの方が好きだったので、そちらの契約もしたいところだけれど。
「――ユアナ様。少し商売の話をさせてくださいませんか?」
「っ……もちろん! ぜひ、お願いしたいですわ!」
ユアナの目がキラリと輝いた。お茶会の狙い通りの提案だったのだから、その表情は当然だろう。
マリアたちは別室に場所を移して、詳しい話をすることになった。
領地の緑茶を紹介するための会であるからか、既に花の香りと共に豊かな緑茶の香りが漂っている気がした。
招待状を手にして到着したマリアは、予想以上の歓待を受けながら、今回のお茶会の主人ユアナ・メルシャン伯爵令嬢のところに向かった。
「――ようこそいらっしゃいました、マリア様。出席いただけて嬉しいですわ」
「私もようやく出席できて光栄ですわ。メルシャン伯爵家の緑茶葉は良質だと聞いていますもの。一度、お茶会で味わってみたくて、今日はそれを楽しみに来ましたのよ」
「まあ! それは良いことを聞きましたわ。ぜひ当家自慢の緑茶を味わってくださいませ!」
少しリップサービスも入れたが、マリアの言葉に嘘はない。メルシャン伯爵の領地でとれる緑茶葉が良質であることは有名なのだ。ただ、販促が下手なだけで。
歓喜の表情を浮かべるユアナに背を押されるように、数多の茶葉が並ぶテーブルに案内される。主人自ら、マリアを歓待してくれるらしい。
儀礼的な挨拶だけを交わして、ほとんど相手にされていないロイズには、それを特に気にした様子はない。たいていのお茶会は、婚約者同伴であることも多いとはいえ、基本的には女性主体のものだからだ。
「こちらが平民向けに流通させている茶葉ですわ。少し渋みと苦みがありますけれど、それがいいと貴族階級で好まれる方もいますわ。香りが強いのも好まれる理由ですわね」
茶葉を紹介されると同時に、メイドが淹れた緑茶を渡される。
「――確かに渋みと苦みがありますわね。でも……この香り、私も好きですわ」
「ああ、確かに、これは職場で飲むのもいい気がしますね。眠気覚ましになりそうです」
お茶を淹れる技術が優れているからか、それとも茶葉自体の品質が良いからか、十分美味しく感じた。ロイズも気に入ったようだ。
それに微笑みながら、マリアは少し思案する。この緑茶は非常に香りが強い。その分、お菓子に使ったら良い風味が出そうだ。
その後もいくつか茶葉を紹介されるが、マリアが商売に使いたいと考えたのは、最初の茶葉だった。もちろん、ただ飲むだけなら高品質なタイプの方が好きだったので、そちらの契約もしたいところだけれど。
「――ユアナ様。少し商売の話をさせてくださいませんか?」
「っ……もちろん! ぜひ、お願いしたいですわ!」
ユアナの目がキラリと輝いた。お茶会の狙い通りの提案だったのだから、その表情は当然だろう。
マリアたちは別室に場所を移して、詳しい話をすることになった。
36
お気に入りに追加
335
あなたにおすすめの小説
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
どうせ愛されない子なので、呪われた婚約者のために命を使ってみようと思います
下菊みこと
恋愛
愛されずに育った少女が、唯一優しくしてくれた婚約者のために自分の命をかけて呪いを解こうとするお話。
ご都合主義のハッピーエンドのSS。
小説家になろう様でも投稿しています。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
侯爵令嬢は限界です
まる
恋愛
「グラツィア・レピエトラ侯爵令嬢この場をもって婚約を破棄する!!」
何言ってんだこの馬鹿。
いけない。心の中とはいえ、常に淑女たるに相応しく物事を考え…
「貴女の様な傲慢な女は私に相応しくない!」
はい無理でーす!
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
サラッと読み流して楽しんで頂けたなら幸いです。
※物語の背景はふんわりです。
読んで下さった方、しおり、お気に入り登録本当にありがとうございました!
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる