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08.魔法の訓練

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 翌日、魔法を教えて貰う約束をマリアとした俺はそわそわしながら待っていた。
 もちろん昼間に魔法が使えるから浮き足だっている訳では無い。
 今日の夜の事を考えるだけで、落ち着かないのだ。

「ショータ。きょうはマリア様のスカートめくらないの?」
「僕はもう大人の階段を上ったんだ。もうそんな子供の遊びはやっていられないのさ」
「おとなのかいだん? エリナものぼる!」

 正確には今日大人の階段を上る予定なのでまだ上っていないのだけれどね。

「こら、ショータ。エリナに変なこと教えないの」

 エリナと話していたらマリアがやって来た。
 そわそわは別にしても、今日から魔法の特訓が昼間も出来ると思うと嬉しいかぎりだ。
 
「マリア様。別に変な事は教えてないよ。それより今日は約束してたよね」

「そうね。じゃあ、早速だけど外に行きましょうか」

「わーい、お外いくー」

 僕とエリナがマリアに着いて行くとその後ろからルードも着いてきた。

「お前ら、マリア様と何するんだ?」

「ああ、今日から魔法を教えて貰うんだ」

「えー、俺は5歳からだったのにずっこいぞ」

 俺の返事にルードが憤る。
 そう言えば、ルードは5歳になったときに魔法を教えて貰ってたな。
 全く才能がなかったから、すぐに諦めたみたいだけど。
 この魔法の才能があるとか、剣の才能があるとかはやってみないとわからない。
 マニュアルでステータスを見ても適性は出てこないから、こればっかりはやってみるしかないわけだ。
 俺の場合はスキルポイントを割り振って強制的に取得できるが、適性があるにこしたことはない。
 エローリアが用意した身体だし、適性も高いような気はするけどね。

「二人は剣術がとても強いとカイルから聞いているわ。だから、魔法も少し早く教えてみることにしたのよ」

 ルードは既にエリナにも剣術で全く勝てなくなっている。
 マリアにそう言われては何も反論できないようだった。

「ちぇっ、お前ら二人揃ってずっこいんだよ」

 ルードは拗ねた口調になって僕達の事を妬む。
 いや、ルード。
 お前も真剣に特訓してたらまだエリナとどっこいどっこいだったと思うぞ。
 誰にも勝てないルードが腐ってしまうのも分からなくないけどな。
 いや、五歳という年齢を考えれば当たり前かもしれない。
 だが、俺がルードにしてやれることは特にないんだよな。
 すまん、ルード。
 せめてビシバシ鍛えて貰えるようにマリアに頼んでおくからな。

「さあ、じゃあ見本を見せるわね。危ないから少し離れていてね」

 孤児院を出て開けた空き地に着くと、マリアは魔法の実演をしてくれた。
 片手を前にだして、魔力を集中させている。
 すぐにマリアの手のひらから直径30cm位の水の塊が出現する。

「ウォーターショット!」

 マリアが魔法名を唱えると、マリアの手からすごい勢いで水の塊が飛び出していった。
 飛び出して言った水の塊は大きな岩にぶつかり穴を開ける。

「おおー! すごいすごい!」

 エリナが目を輝かせて喜んでいる。

「これが水魔法Lv1『ウォーターショット』よ。それじゃ二人とも早速やってみましょうか」
「はい」
「はーい」

 俺は既に水魔法は習得している。ただ、今日の為に水魔法のスキルは未習得状態にしてある。
 
「先ずは体内の魔力を感じるところからよ。エリナ、体内にある魔力を感じられる?」

「うーん、エリナわかんない」

「ショータは?」

「僕もわかりません」

 俺は今日初めて魔法を学ぶことになっているのだ。
 マリアが事情を知っていると言っても、ルードやエリナの前でいきなり魔法を使うわけにわいかない。

「わかった。じゃあ二人とも私と手をつないでくれる」

「はい」

「はーい」

 俺とエリナはマリアの手をそれぞれ取って手をつなぐ。

「これから貴方たちに少しだけ魔力を流します。それで体内に魔力が循環するイメージを掴んでください」

 マリアはそう言うと俺とエリナに魔力を流し始める。
 マリアの魔力が俺の中に入ってきて、俺の魔力を押しのけるように身体を巡っている感じだ。
 魔力を押しのけられるのが、何だかむず痒い。
 エリナも同じだったみたいでむむむ、と顔を少ししかめている。

「どう? 魔力が流れる感じはつかめた?」

「なんとなくだけど」

「エリナ、わかった」

「そう、じゃあ二人とも掌に魔力を集中させてそれを水の塊になるようにイメージしてみて、大きさも実際にどのくらいか想像するのよ」

 俺は掌に魔力を集中させて水の塊を掌に出現させる。
 ふう、スキルが無い状態だと集中力がかなりいるんだよな。

「ショータ、すごいわ。後はそれを遠くに飛ばすように魔力を放出するだけよ」

 俺はマリアに言われた通り水の塊を放出する。

「ウォーターショット」
 
 手のひらから放出された水の塊はすごい勢いで飛んでいった。

「ショータ。それが『ウォーターショット』よ。まさか、一回で出来ちゃうなんて、すごいわ」
「そんな、嘘だろ……」

 マリアは俺を賞賛しルードはショックを受けているようだ。
 マリアは俺が魔法を使えることを知っているんだけどね。
 さて、エリナはどうかな?

 エリナの方を見ると俺のウォーターショットには目もくれず目を閉じてすごい集中している。
 そして、エリナが目を開いたと思ったら掌には水の塊が出現した。

「うぉーたーしょっと!」

 エリナの掌から水の塊がすごい勢いで発射された。
 まじか、俺が初めてストーンショットを自力取得したときは2回かかったのに。

「やったー! できたー!」

「すごいわ、エリナ。エリナも一回で出来ちゃうなんて」

「……」

 エリナは飛び跳ねて喜び、マリアはそれを賞賛し、ルードは何も言わずに落ち込んでいる。
 ルードをここに連れてきたのは失敗だったな。
 連れてこなくても仲間外れにされたとかで怒りそうではあるが。
 それにしても、エリナは三歳とは思えない集中力だ。
 精神は大人の俺が二回かかった習得したことをたったの一回でやってのけてしまった。
 隠されたステータスなのか、本人の資質なのか。
 やはり、エリナはただ者ではないらしい。
 
「うぉーたーしょっと! うぉーたーしょっと!」

 気をよくしたエリナはウォーターショットを何度も打ち出す。

「あっ、ダメよエリナ! そんなに魔法を使ったら」

「あはは、うぉーたーしょっと! うぉーたー……」

 エリナはさっきまでの元気が嘘のようにコテンとその場に倒れ込んだ。

「エリナ!」

 マリアが慌ててエリナに近づいて介抱する。

「すぅ、すぅ」

「よかった。気を失っただけだわ」

「いい、ショータ。魔力を使い切ると、とても危険なの。調子に乗って魔法を使ってはダメよ」

「うん、わかったよ」

「よし、じゃあ今日は帰りましょう」

 マリアはエリナを抱きかかえて孤児院へと向かう。
 ルードはぶつぶつと何かいいながらマリアへと続く。
 もう少し魔法の練習がしたかったけど仕方ないか。
 それに今日の本当のお楽しみは夜だしな。
 俺もマリアに続いて孤児院へと戻った。
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