婚約者が私のことをゴリラと言っていたので、距離を置くことにしました

相馬香子

文字の大きさ
上 下
8 / 12

両家の父親には苦労が絶えません

しおりを挟む
“フラン家とシュケル家の婚約は解消されるのではないか?”
“最近、フラン家には次々に美青年たちが訪れているらしい。ご令嬢の新たな婚約者候補では?”
“シュケル家の嫡男がご令嬢に暴言を吐いたらしいからな。娘想いのフラン家当主は激怒しているんだろう”

自由登校期間のため普段よりも学校にいる生徒は少ないのだが、そんな中でも噂というのは広がるものだ。クローネとレアルの痴話げんかは、尾ひれをつけまくって噂されていた。

実際、両家の当主たちはまたいつものケンカかと呆れていただけで、婚約を解消させるつもりなどなかった。



*     *     *



「いつもいつも、愚息が大変申し訳ない……」
「いや、クローネもすぐに感情を爆発させるところがあるからな。お互い様だ」

フラン家の応接室で、両家の当主たちが疲れた様子で顔を合わせていた。
クローネとフランがケンカをするたびに謝罪をし合ってきたせいで、二人の父親はすっかり仲良しになっていた。

「年頃のご令嬢にゴリラなどと…。アレの情操教育に失敗したのは私の責任だ……」

レアルの父、テンゲが嘆くとクローネの父であるポンドがゆっくりと首を振った。

「それは違うぞ。最初にクローネをゴリラ並みの腕力と言ったのは我が弟のドラクマだ。ドラクマはともかく、レアルくんは誉め言葉のつもりだったのだろう」
「たとえ褒めたつもりでも、女性に対して失礼極まりない。アレはどうも強い生き物が好きなようだが、可憐なクローネちゃんに対して褒めるポイントが間違っている!」
「そうは言うが、クローネとて婚約した当初は強さを褒められて嬉しそうにしていたぞ? 今回に限っては…まあ、少し言葉のチョイスに失敗したようだが……」
「せめてライオンとか虎とか! 強い生き物はいくらでもいるのに!」

およよと嘆くテンゲに、苦笑するポンド。
仲良し父親コンビは一息つくと、すっかり冷めてしまった紅茶で喉を潤した。

「…ところで不穏な噂を聞いたのだがな。最近、こちらの家に次々と美青年が訪ねているというが…まさか、婚約を解消するつもりではあるまいな……?」
「落ち着けテンゲ。そんな血走った目で見ないでくれ。怖い」
「これが落ち着いていられようか! クローネちゃんに見限られたら、レアルなんて一生独身だ! 土下座でも何でもさせるから、どうか婚約解消だけはやめてくれ! 頼む!!」
「だから落ち着けって。誤解だ。うちに訪ねてくる美青年などいない」
「噂はただのデマなのか?」
「……いや。デマというわけではない」

は~と長い溜息をつくと、ポンドはテンゲに噂の真相を語り始めた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

そう言うと思ってた

mios
恋愛
公爵令息のアランは馬鹿ではない。ちゃんとわかっていた。自分が夢中になっているアナスタシアが自分をそれほど好きでないことも、自分の婚約者であるカリナが自分を愛していることも。 ※いつものように視点がバラバラします。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

笑わない妻を娶りました

mios
恋愛
伯爵家嫡男であるスタン・タイロンは、伯爵家を継ぐ際に妻を娶ることにした。 同じ伯爵位で、友人であるオリバー・クレンズの従姉妹で笑わないことから氷の女神とも呼ばれているミスティア・ドゥーラ嬢。 彼女は美しく、スタンは一目惚れをし、トントン拍子に婚約・結婚することになったのだが。

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

学生のうちは自由恋愛を楽しもうと彼は言った

mios
恋愛
学園を卒業したらすぐに、私は婚約者と結婚することになる。 学生の間にすることはたくさんありますのに、あろうことか、自由恋愛を楽しみたい? 良いですわ。学生のうち、と仰らなくても、今後ずっと自由にして下さって良いのですわよ。 9話で完結

それは私の仕事ではありません

mios
恋愛
手伝ってほしい?嫌ですけど。自分の仕事ぐらい自分でしてください。

ヒロインの味方のモブ令嬢は、ヒロインを見捨てる

mios
恋愛
ヒロインの味方をずっとしておりました。前世の推しであり、やっと出会えたのですから。でもね、ちょっとゲームと雰囲気が違います。 どうやらヒロインに利用されていただけのようです。婚約者?熨斗つけてお渡ししますわ。 金の切れ目は縁の切れ目。私、鞍替え致します。 ヒロインの味方のモブ令嬢が、ヒロインにいいように利用されて、悪役令嬢に助けを求めたら、幸せが待っていた話。

残念ながら、定員オーバーです!お望みなら、次期王妃の座を明け渡しますので、お好きにしてください

mios
恋愛
ここのところ、婚約者の第一王子に付き纏われている。 「ベアトリス、頼む!このとーりだ!」 大袈裟に頭を下げて、どうにか我儘を通そうとなさいますが、何度も言いますが、無理です! 男爵令嬢を側妃にすることはできません。愛妾もすでに埋まってますのよ。 どこに、捻じ込めると言うのですか! ※番外編少し長くなりそうなので、また別作品としてあげることにしました。読んでいただきありがとうございました。

処理中です...