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24 オルカサイド その3

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リモーネに、ジェラート屋に誘われた。まあ甘い物は嫌いじゃないから別にいいんだが、今回ばかりは胃が痛い。同行者に問題ありだ。

「・・・初めまして。オルカ・マーレ君。私はアルジェント・オングロード。リモーネの幼馴染だ。どうぞよろしく」
「お、オルカ・マーレです。えー、ご一緒できるなんて、光栄です・・・」
「私に敬語なんて使わないでくれ。同学年じゃないか。リコルドと仲良くなったと聞いているよ。私にも同じように接してくれると嬉しい。気軽にアルと呼んでくれ」
「え、あ、えっと・・・分かった。じゃあ俺のことも呼び捨てにしてくれ」

この王子様もだいぶ気安いな。リモーネといい勝負だと思っていたら、キラキラと輝くような笑顔でアルが握手を求めてきた。
えっ!?力強っ!いやいやいや!初対面で握る強さじゃないだろ!
・・・これは、アレだ。完全にライバル認定されている・・・。

「私はメーラ・プロシア!確か、オルカさんは私と同じ平民特待生だったよね?同じ立場の者同士、仲良くしてもらえると嬉しいな」

メーラ嬢とはこれまでクラスも違ったので、言葉を交わすのは初めてだが、その容姿は確かに可憐だった。リモーネが美人系だとするなら、メーラ嬢は可愛い系だ。

「こちらこそ、よろしく。つっても俺は魔法陣の話しかできないような、オタクだけどな」
「あら、私も似たようなものよ。私は治癒魔法のアレンジと開発のことばっかり考えてるもの。あ、それとスイーツのこともね!」

にこっと笑うメーラ嬢に思わず引き込まれた。・・・確かに、この笑顔は魅力的だ。
ちらりとリモーネを見れば、彼女は緩み切った顔でメーラ嬢を見ていた。
お前、メーラ嬢のこと好き過ぎだろ!本来なら憎んだり妬んだりするはずの相手に、なにほだされてんだよ・・・。

「メーラさん!アルジェント様も甘い物は好きなのよ」
「まあ、そうなんですか。ではお二人でよくカフェなどにも行かれるんですか?」
「え?あ、うん。時々ケーキとか食べに行くかな」
「リモーネ様。今度、私ともケーキを食べに行きましょう?」
「うん!もちろん!プリンの専門店にも行かなきゃね!」

うふふと笑い合っている美少女二人は眼福だが、リモーネよ。お前はアルに興味を持たそうとしているが、メーラ嬢はお前にしか興味持ってないぞ・・・。

自己紹介を済ませると俺たちはジェラート屋へ向かったのだが、ここからがまた問題だった。

「リモーネは何のフレーバーにするんだ?」
「ううぅ~ん・・・。チョコもいいけど、ヘーゼルナッツとピスタチオも捨てがたいし・・・オレンジやイチゴも美味しそうですねぇ」
「では、私がピスタチオにするから半分こしようか?」
「いいんですか?じゃあ私、イチゴにします!」

おいリモーネ!なにイチャイチャしてるんだ!無意識なのか!?
お前、完全にアルとデートしてるぞ!?目的を忘れたのか!?

「リモーネ様!私はオレンジにしますから、私ともシェアしましょう?」
「わあ嬉しい!ありがとうメーラさん!」

って、メーラ嬢もか!・・・何だこれ。リモーネのハーレム状態じゃないか。
キャッキャと楽しそうにする三人についていけない・・・。

「オルカは何にするの?」
「俺はティラミス」
「あ~ティラミスもいいよねぇ!」
「・・・やらねぇぞ」
「人をたかり屋みたいに言わないでよ。私はそんな強欲じゃありません!」

そう言っていたリモーネだが、結局俺のジェラートをじっと見つめてくるから、仕方なく一口やった。
たかり屋じゃなくて、物乞いか?


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