上 下
7 / 38

7

しおりを挟む
その後、本来の活動である魔法陣研究に勤しんだ私は門限ギリギリに女子寮へ戻った。
昨日アルジェント様に呼び出されたせいで作業が遅れてしまっていたので、オルカやランチアが帰ってからも一人で黙々とデータを取っていたのだ。
夕食を食べ損ねないよう慌てて食堂へ向かう。まあ、一日くらい食べ損ねても部屋に携帯食があるんだけどね。

一昔前なら侯爵令嬢と言えば、自分では何もせず全てのことをメイドや侍女が行っていたらしいが、現在は全く事情が違う。何と言っても、魔力持ちは魔物討伐の最前線へ送られるので、一人で何もできないでは済まされないのだ。

魔力持ちは魔法学園の入学前に徹底的に生活魔術の特訓を受ける。火を生み出して料理をしたり、風を起こして洗濯や掃除をしたりと、一人で何でもできるようになっておかないといけない。魔物討伐で野営とかもするしね。
そこは、王子だろうが侯爵令嬢だろうが、関係ないのだ。

さて、急がないと食堂が閉まってしまう。
今日のメニューは確か、チキンソテーと卵のサラダ、コーンスープにふわふわパン!
腕のいいシェフのおかげで、寮のご飯はとっても美味しく皆に大好評だ。
寮に入ってから太ったと嘆く生徒が増えているとか。あ!私はちゃんとランニングと筋トレして体型維持してるからね!これでも乙女なんで!

夕食を美味しくいただいた私は、満腹満足でルンルンと自室へ戻る。その途中で、寮母さんから呼び止められた。

「リモーネさん。お手紙が届いていますよ」
「あら、ありがとうございます」

手紙はアルジェント様からだった。え、何で手紙?
明日も授業で一緒なんだから、その時に言えばいいのに・・・。
自室に戻って開封すると、手紙から良い香りが漂った。女子力高いな、アルジェント様。
どれどれ・・・。


――リモーネへ

急に手紙など、驚かせてすまない。だが、教室内では言いにくいのであえて手紙で伝えることにした。
婚約を解消してほしいという、私の身勝手な要求を受け入れてくれて、本当に感謝している。
だが、私は気付いてしまった。これでは、私だけが幸せになろうとしていると。
君の幸せを蔑ろにして自分だけが幸せになるなんて、許されないことだ。
したがって、私は君の新たな婚約者を探すことをここに誓う。
私以上に君を大切にしてくれる婚約者を、必ず見つけてみせる。
だから、明日の昼休みに、どんな男が好みなのか教えてくれ。


・・・ツッコミどころが多すぎる!
アルジェント様!優しさと誠実さがおかしな方向に暴走してますよ!

私はため息をつくと、明日に備えて英気を養うために早々に眠りについた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

病弱な従妹を理由に婚約者がデートをドタキャンするので、全力で治療に協力します!

灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
ピルチャー伯爵令嬢カトレアは、アンダーソン伯爵令息リードと二ヶ月前に婚約したばかり。 今日は五回目のデートだが、リードは同居している彼の従妹ミミーの具合が悪いから延期してくれという。 五回のデートで、ドタキャンは五回目。 しかし、カトレアは抗議もせずに心底心配してリードにこう提案した。 「わたくしが全力でミミー様のお身体を治してさしあげますわ!」 だってカトレアは、聖女クラスの治癒魔法術師なのだから! ※10話で終わる予定です。 ※タイトル変更しました。

完結)余りもの同士、仲よくしましょう

オリハルコン陸
恋愛
婚約者に振られた。 「運命の人」に出会ってしまったのだと。 正式な書状により婚約は解消された…。 婚約者に振られた女が、同じく婚約者に振られた男と婚約して幸せになるお話。 ◇ ◇ ◇ (ほとんど本編に出てこない)登場人物名 ミシュリア(ミシュ): 主人公 ジェイソン・オーキッド(ジェイ): 主人公の新しい婚約者

婚約者がツンツンしてきてひどいから婚約はお断りするつもりでしたが反省した彼は直球デレデレ紳士に成長して溺愛してくるようになりました

三崎ちさ
恋愛
伯爵家の娘ミリアは楽しみにしていた婚約者カミルと初めての顔合わせの際、心ない言葉を投げかけられて、傷ついた。 彼女を思いやった父の配慮により、この婚約は解消することとなったのだが、その婚約者カミルが屋敷にやってきて涙ながらにミリアに謝ってきたのだ。 嫌な気持ちにさせられたけれど、その姿が忘れられないミリアは彼との婚約は保留という形で、彼と交流を続けることとなる。 初めのうちは照れながらおずおずとミリアに接するカミルだったが、成長に伴い、素直に彼女に気持ちを伝えられるようになっていき、ミリアも彼に惹かれていくようになる。 極度のシャイで素直な気持ちを言うのが苦手な本来ツンデレ属性な男の子が好きな女の子を傷つけないために、素直な気持ちを伝えることを頑張るお話。 小説家になろうさんにも掲載。

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

私は王子の婚約者にはなりたくありません。

黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。 愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。 いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。 そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。 父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。 しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。 なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。 さっさと留学先に戻りたいメリッサ。 そこへ聖女があらわれて――   婚約破棄のその後に起きる物語

婚約破棄宣言は別の場所で改めてお願いします

結城芙由奈 
恋愛
【どうやら私は婚約者に相当嫌われているらしい】 「おい!もうお前のような女はうんざりだ!今日こそ婚約破棄させて貰うぞ!」 私は今日も婚約者の王子様から婚約破棄宣言をされる。受け入れてもいいですが…どうせなら、然るべき場所で宣言して頂けますか? ※ 他サイトでも掲載しています

王太子殿下の小夜曲

緑谷めい
恋愛
 私は侯爵家令嬢フローラ・クライン。私が初めてバルド王太子殿下とお会いしたのは、殿下も私も共に10歳だった春のこと。私は知らないうちに王太子殿下の婚約者候補になっていた。けれど婚約者候補は私を含めて4人。その中には私の憧れの公爵家令嬢マーガレット様もいらっしゃった。これはもう出来レースだわ。王太子殿下の婚約者は完璧令嬢マーガレット様で決まりでしょ! 自分はただの数合わせだと確信した私は、とてもお気楽にバルド王太子殿下との顔合わせに招かれた王宮へ向かったのだが、そこで待ち受けていたのは……!? フローラの明日はどっちだ!?

王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。 これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。 しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。 それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。 事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。 妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。 故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。

処理中です...