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私とランチアが仲良くおしゃべりしていると、部室に新たな人物がやってきた。
「よぉ、楽しそうだな。何盛り上がってんだ?」
声をかけてきたのは、メーラさんと同じく平民特待生のオルカ・マーレ。
彼は平民ながら、空間収納魔法の安定化という偉業を成し遂げた天才だ。空間収納魔法は、異空間に物質を収納する魔法なんだけど、複雑な魔法陣を構築しなきゃならないので魔法が不安定になることが多かった。例えば、収納したものが出てこなくなるとか、出てきても劣化しているとか。それを安定させる魔法陣を開発したのが、オルカだ。
私と同じく、この魔法陣の開発によって国から褒賞を受けている。
見た目は平凡な顔立ちだけど、やや吊り目であまり表情を動かさないので、周囲からは少し怖い人と思われているみたい。話してみると意外とひょうきんな性格をしてるんだけど、外見で少し損してるのかも。同じ黒髪黒目なので、私は一方的に親近感を抱いているんだけどね。
「聞いてよ!オルカ!リモーネが大変なことになってるんだから!」
「何?どうしたんだ。俺で良ければ相談に乗るぞ?」
・・・ちょっと、ランチア。さっきここだけの話って言ったでしょうが。
心の中で突っ込んだが、オルカならまぁいいか。この魔法陣研究部の部員は私にとって半分身内のような存在だ。基本ここに集まるのは魔法陣オタクばかり。学園に入る前は、魔法陣のことを熱く語れるような友人がいなかった私にとって、ここの部員は生涯大切にしたい友人達なのだ。
「いや、別に大変なことではないのよ。ランチアが大袈裟に言ってるだけだから」
「大袈裟なんかじゃないわよ!婚約が破棄されるなんて、大事件じゃないの!」
「何だと!?」
オルカがずいっと詰め寄ってきた。
「お前の婚約者は確か第二王子だろ?あいつが何かやらかしたのか?」
「やらかしたっていうか・・・他に好きな人ができたらしくて」
「はああああ!?」
ちょ、オルカの顔が、なんかすごいことになってるんですけど!こわっ!
「浮気か!最低だな!・・・よし、分かった。俺がヤツのお綺麗な顔面に一発お見舞いしてきてやる・・・!」
「待って待って待って!浮気じゃないからっ!」
部室を出ていこうとするオルカを必死に引き留め、私とアルジェント様が正式な婚約者ではないこと、幼馴染として彼が私のことを大切に思ってくれていることなどを説明する。
落ち着きを取り戻したオルカはドカッと椅子に座り直した。
「・・・で?何でお前がヤツの恋路まで面倒見てやるんだよ?」
「だってアルジェント様、ヘタレ過ぎるんだもの。手伝わなきゃ絶対恋が実るわけないわ」
「割とひどいこと言ってるな」
「弟に幸せになってもらいたい姉のような心境なのよ」
「お前、第二王子に対して過保護じゃないか?」
オルカに呆れたように言われ、私は言葉に詰まった。そう言われると、確かに私ってちょっとお節介過ぎるかも?う~んと考え込んでいると、ランチアがオルカに告げた。
「オルカ!リモーネはアルジェント様みたいに恋をしたいと思っているのよ!なのに先に彼を幸せにしたいとかお人好しなこと言っちゃってるの!リモーネの幸せのために、私たちも協力しましょう!」
「・・・捨てられた相手に尽くすとか、正気を疑うが・・・まぁそこがリモーネらしいっちゃらしいよな」
「そうそう!だからリモーネに心置きなく恋をしてもらうためにも、ちゃちゃっとアルジェント様を片付けてしまわないと!」
「それなら仕方ない。手伝おう」
え~~?なんか、ランチアとオルカが私を置いて勝手に話を進めていくんだけど、私、軽くディスられてない?
「ってわけでリモーネ!私たちもお手伝いするからね!」
「明日から作戦会議だな」
わぁ。私ってば連日作戦会議ばっかり☆ごめんなさい、アルジェント様。あなたの恋バナ、めっちゃ拡散してしまいました。・・・うちの同好会だけなので許してもらおう。
「よぉ、楽しそうだな。何盛り上がってんだ?」
声をかけてきたのは、メーラさんと同じく平民特待生のオルカ・マーレ。
彼は平民ながら、空間収納魔法の安定化という偉業を成し遂げた天才だ。空間収納魔法は、異空間に物質を収納する魔法なんだけど、複雑な魔法陣を構築しなきゃならないので魔法が不安定になることが多かった。例えば、収納したものが出てこなくなるとか、出てきても劣化しているとか。それを安定させる魔法陣を開発したのが、オルカだ。
私と同じく、この魔法陣の開発によって国から褒賞を受けている。
見た目は平凡な顔立ちだけど、やや吊り目であまり表情を動かさないので、周囲からは少し怖い人と思われているみたい。話してみると意外とひょうきんな性格をしてるんだけど、外見で少し損してるのかも。同じ黒髪黒目なので、私は一方的に親近感を抱いているんだけどね。
「聞いてよ!オルカ!リモーネが大変なことになってるんだから!」
「何?どうしたんだ。俺で良ければ相談に乗るぞ?」
・・・ちょっと、ランチア。さっきここだけの話って言ったでしょうが。
心の中で突っ込んだが、オルカならまぁいいか。この魔法陣研究部の部員は私にとって半分身内のような存在だ。基本ここに集まるのは魔法陣オタクばかり。学園に入る前は、魔法陣のことを熱く語れるような友人がいなかった私にとって、ここの部員は生涯大切にしたい友人達なのだ。
「いや、別に大変なことではないのよ。ランチアが大袈裟に言ってるだけだから」
「大袈裟なんかじゃないわよ!婚約が破棄されるなんて、大事件じゃないの!」
「何だと!?」
オルカがずいっと詰め寄ってきた。
「お前の婚約者は確か第二王子だろ?あいつが何かやらかしたのか?」
「やらかしたっていうか・・・他に好きな人ができたらしくて」
「はああああ!?」
ちょ、オルカの顔が、なんかすごいことになってるんですけど!こわっ!
「浮気か!最低だな!・・・よし、分かった。俺がヤツのお綺麗な顔面に一発お見舞いしてきてやる・・・!」
「待って待って待って!浮気じゃないからっ!」
部室を出ていこうとするオルカを必死に引き留め、私とアルジェント様が正式な婚約者ではないこと、幼馴染として彼が私のことを大切に思ってくれていることなどを説明する。
落ち着きを取り戻したオルカはドカッと椅子に座り直した。
「・・・で?何でお前がヤツの恋路まで面倒見てやるんだよ?」
「だってアルジェント様、ヘタレ過ぎるんだもの。手伝わなきゃ絶対恋が実るわけないわ」
「割とひどいこと言ってるな」
「弟に幸せになってもらいたい姉のような心境なのよ」
「お前、第二王子に対して過保護じゃないか?」
オルカに呆れたように言われ、私は言葉に詰まった。そう言われると、確かに私ってちょっとお節介過ぎるかも?う~んと考え込んでいると、ランチアがオルカに告げた。
「オルカ!リモーネはアルジェント様みたいに恋をしたいと思っているのよ!なのに先に彼を幸せにしたいとかお人好しなこと言っちゃってるの!リモーネの幸せのために、私たちも協力しましょう!」
「・・・捨てられた相手に尽くすとか、正気を疑うが・・・まぁそこがリモーネらしいっちゃらしいよな」
「そうそう!だからリモーネに心置きなく恋をしてもらうためにも、ちゃちゃっとアルジェント様を片付けてしまわないと!」
「それなら仕方ない。手伝おう」
え~~?なんか、ランチアとオルカが私を置いて勝手に話を進めていくんだけど、私、軽くディスられてない?
「ってわけでリモーネ!私たちもお手伝いするからね!」
「明日から作戦会議だな」
わぁ。私ってば連日作戦会議ばっかり☆ごめんなさい、アルジェント様。あなたの恋バナ、めっちゃ拡散してしまいました。・・・うちの同好会だけなので許してもらおう。
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