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14 初めてのデートは心臓に負担がかかります

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ついにキセノとのデートの日がやってきた!
この日のために、お肌や髪のケアはしっかりやったし、コーディネートもメイドたちと一生懸命考えた。
行き先が庶民向けのサーカスだし、まだ恋人同士でもないから気合を入れ過ぎるのは良くないと思って、いつもより少しだけフェミニンな装いにしてみた。
明るめのグリーンのワンピースに、ホワイトレザーの編み上げブーツ。髪はハーフアップにして、レースのリボンを飾った。
歩きやすく、かつ可愛さも忘れない! どうよ!?

メイドたちが可愛いですわお嬢様! と褒めてくれたので、きっと大丈夫だとは思うけど……キセノは可愛いって思ってくれるかな?
私はドキドキしながら待ち合わせ場所へ向かった。


待ち合わせ場所の噴水に着くと、キセノの後ろ姿が見えたので声をかけた。

「キセノ! もう来てたの? 早かったね、待たせてごめん」
「おお、セレン。まだ五分前だから遅くは……」

振り向いたキセノが目を丸くしてこちらを見ている。
え? え? 何!? 無言になるのはやめてほしいんだけど!

「あの、キセノ……私、何か変……?」

恐る恐る聞くと、キセノが慌てて首を振った。

「違う違うっ!! 悪い…セレンの雰囲気がいつもと少し違うからビックリして…。そ、その、いつもより女の子っぽいって言うか…いや、いつだってセレンは可愛いけど、きょ、今日はもっと可愛いっていうか……!」

顔を赤くしたキセノが早口でまくしたてる。

うわあああ! なんかすごく褒められてる! 嬉しい……!
普段、可愛いなんて全く言われ慣れてないせいで、恥ずかしくなってきた。
こういう時って、基本男の人は女性を褒めるものなのよね。勘違いしないようにしなくちゃ。

「褒めてくれてありがとう! お世辞でも嬉しいわ! ところで、どこでランチにする? キセノ、食べたい物ある?」
「…お世辞じゃないんだけどなぁ……。まあいいや。セレン、ハンバーグ好きだろ? 近くにいい店があるんだ。中にチーズが入ってて、めっちゃ美味いんだぜ! 行ってみないか?」
「チーズの入ったハンバーグ!? 何それ、すっごく食べたい!!」

チーズもハンバーグも私の大好物だ。…もしかして、だから選んでくれたのかな?
やだ! キセノが優しくて胸がときめいちゃう!

キセノが案内してくれたお店は、入り口の看板にドドンと肉の絵が描いてあるワイルドな外見だった。これは女性一人だと入りにくいわ。連れてきてもらってよかった。

お店自慢のチーズハンバーグは、切ると中からトロ~リとチーズが溢れてきて、私は夢中でナイフを動かした。
ああ~チーズとハンバーグって、こんなに相性がいいのね! 相思相愛だわ…!!
うっとりと咀嚼する私を、キセノが笑いながら見守っている。

「セレンは本当に美味そうに食うよなぁ」
「……キセノも、私って食いしん坊だと思う?」
「いや? いつも幸せそうな顔して食べてるところが可愛いと思うぜ?」
「ゲッホ! ゴホゴホッ!」

むせた! い、いきなりそういうこと言わないで欲しい!
何だか、今日はやたらキセノに可愛いと言われている気がする。今までも時々は言われることがあったけど、あんまりたくさん言われるとどう返していいのか分からないよ!
……オシャレした甲斐があったな。

そうこうするうちに、デザートのティラミスがきた。チーズ好きの私はもちろんティラミスも大好きだ。パクリと一口。

「うわっ!デザートのクオリティまで高すぎる……!」

ティラミスはまるで洋菓子店の物のような本格的な味で、思わずうなった。

「チーズにこだわってるらしいからなぁ。喜んでもらえて良かったよ。俺は前にネオジムと来た時に食べたんだけど、ああこりゃセレンが好きそうだなって思ったんだ」

ほわあああ! 優しい顔でそんなこと言われたらキュンてしちゃうじゃないの~!
いけない、ちょっと落ち着かないと。メインイベントはこれからなのに、もう疲れてどうするの。私はスーハ―と深呼吸した。

「すごく美味しかったから、今度は妹と一緒に来ようかな。教えてくれてありがとうね、キセノ」

私がお礼を言うと、キセノはなぜかちょっとむくれた。え? 何で?

「…妹さんと来るのはいいけどさ。俺としては、また連れてきてって言ってほしいとこなんだけどな~」
「ふぇ?」
「……またこうしてセレンを誘いたい。ダメか?」
「!!」

し、心臓が! 心臓がもたない! キュンどころか、ギュンギュンだ。
じっと真剣に見つめてくるキセノに、私は虫のように小さな声で答えた。

「あ、あの…また、連れてきて……ほしい……です……」

うわっ! なんかキセノの顔がゆるゆるなんだけど!?
幸せオーラがダダ洩れってこういうことを言うのかと思うくらい、とろけた顔をしている。

あれ? 私たちって今、イチャイチャしてるんじゃないの?
だ、だって、さっきのって次のデートのお誘いってことよね?

もしかしたら、キセノも私に友達以上の感情を持ってくれてるのかしら!?

そう思い至ったら、プシュッと私の脳がフリーズした。

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