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6 学園では愉快に過ごします
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夜に悶々と悩んだ私は、寝不足のせいで遅刻ギリギリに学園に登校した。
「おはよー! セレン、今日は珍しく遅いじゃない。何かあったの?」
友人のフェルミィが駆け寄ってきたので、手早く話す。
「実はいろいろと厄介ごとが起こって……もう授業始まっちゃうから、昼休みに話すね」
「了解!」
私は魔術科を専攻しているので、授業の大半は魔術関係だ。なのに本日の一限目は王国史。
これはあれかな、睡眠取れよっていう神様の思し召しかな?
幸い席は後ろの方なので、一限目は貴重な睡眠時間に充てることにした。
「セレン、一限目爆睡してたでしょ~」
「あ、分かっちゃった? だって私、王国史って興味ないんだもん」
昼休み。カフェテリアでフェルミィとランチを楽しむ。今日のランチはハンバーグ!
私の大好きなデミグラスソース! 肉汁、最高!
デザートのパンプキンプリンも濃厚で、とっても美味しゅうございました。
はふぅ~と満足していると、フェルミィがツンツンと腕を突いてきた。
「……で? 厄介ごとって何?」
ワクワクしながら聞いてくるフェルミィに呆れつつ、私は昨日の鬼…じゃなかった、兄との会話を伝えた。
「セレンの妹さんって、私まだ見たことないな~。そんなすごい美少女なんだ」
「身内のこと褒めるのは何だけど、客観的に見ても容姿は際立ってると思うわ。来月入学してくるから紹介するわね」
「楽しみにしてるわ。それにしても、私たちが入学してもうすぐ二年経つのねぇ」
「卒業まで、あっという間かもね」
「って、セレン。あなたはそんなのんびりしてちゃダメなんじゃない? 卒業までに恋人作るんでしょ?」
「お兄さまが勝手に言ってるだけだから無視するわ。私は魔術研究所に就職するつもりだから、恋愛はその後で考えることにする」
「……キセノと付き合っちゃえばいいのに」
ゴフッと紅茶を噴き出しかけた。
「いいいいい、いきなり、何なの!? 何でそこでキセノが出てくるのよ!」
キセノ・ヘリームは同じクラスの男子だ。平民出身だが、魔道具開発ですでに特許を取得しているためお金持ち。黒目黒髪で顔立ちは平凡ながら、抜きん出た才能があるので女子人気が高い。
「え、だって、セレンってキセノのこと好きでしょ?」
「きゃああああ! いやあぁぁぁ!!」
バレてた! 誰にも気づかれてないと思っていたのに!!
「嘘、私って、そんなに分かりやすい!? みんな気付いてるの? キセノも!?」
ずいっと至近距離でフェルミィに詰め寄ると、彼女は私の肩をつかんで無理やり椅子に座らせた。
「ちょ、おち、落ち着いて。大丈夫だから。少なくとも本人にはバレてないから!」
「キセノにはバレてないのね……! 良かった……!!」
がっくりとテーブルに突っ伏す。でも待って? 本人にはって、あとはどこまでバレてるの?
私が顔を上げてフェルミィに問い詰める前に、私たちのテーブルへ渦中の人物がやってきた。
「よお、セレン、フェルミィ。二人で何騒いでんだよ」
「キキキキキ、キセノッ!」
「あのね、セレンが恋人を作るっていうから、キセ……んぐっ!?」
慌ててフェルミィの口を塞いだが、間に合わなかった。
「……恋人? セレン、好きなヤツいたの?」
「え、や、その~……」
あなたです! なんてもちろん言えない。どどどど、どうしよう!?
私が硬直していると、私の腕から逃れたフェルミィが助け舟を出してくれた。
「お兄さんに、卒業までに恋人を作れって言われたんだって。ほら、セレンってまだ婚約者いないから、お兄さん心配になったらしくて」
「……そうなのか?」
コクコクコクっと何度も大きく頷く。ナイスよ、フェルミィ!
って、フェルミィのせいで窮地に陥ったんだけど。
キセノと私は、実はけっこう仲良しなのだ。魔術の構築に興味があり、将来魔術研究所に入りたいと言う夢が同じだったことから意気投合した。合同研究もしているし、一緒にいることも多いので、親しい友人と言っていいと思う。
……私は、それ以上になりたいんだけどね。
「おはよー! セレン、今日は珍しく遅いじゃない。何かあったの?」
友人のフェルミィが駆け寄ってきたので、手早く話す。
「実はいろいろと厄介ごとが起こって……もう授業始まっちゃうから、昼休みに話すね」
「了解!」
私は魔術科を専攻しているので、授業の大半は魔術関係だ。なのに本日の一限目は王国史。
これはあれかな、睡眠取れよっていう神様の思し召しかな?
幸い席は後ろの方なので、一限目は貴重な睡眠時間に充てることにした。
「セレン、一限目爆睡してたでしょ~」
「あ、分かっちゃった? だって私、王国史って興味ないんだもん」
昼休み。カフェテリアでフェルミィとランチを楽しむ。今日のランチはハンバーグ!
私の大好きなデミグラスソース! 肉汁、最高!
デザートのパンプキンプリンも濃厚で、とっても美味しゅうございました。
はふぅ~と満足していると、フェルミィがツンツンと腕を突いてきた。
「……で? 厄介ごとって何?」
ワクワクしながら聞いてくるフェルミィに呆れつつ、私は昨日の鬼…じゃなかった、兄との会話を伝えた。
「セレンの妹さんって、私まだ見たことないな~。そんなすごい美少女なんだ」
「身内のこと褒めるのは何だけど、客観的に見ても容姿は際立ってると思うわ。来月入学してくるから紹介するわね」
「楽しみにしてるわ。それにしても、私たちが入学してもうすぐ二年経つのねぇ」
「卒業まで、あっという間かもね」
「って、セレン。あなたはそんなのんびりしてちゃダメなんじゃない? 卒業までに恋人作るんでしょ?」
「お兄さまが勝手に言ってるだけだから無視するわ。私は魔術研究所に就職するつもりだから、恋愛はその後で考えることにする」
「……キセノと付き合っちゃえばいいのに」
ゴフッと紅茶を噴き出しかけた。
「いいいいい、いきなり、何なの!? 何でそこでキセノが出てくるのよ!」
キセノ・ヘリームは同じクラスの男子だ。平民出身だが、魔道具開発ですでに特許を取得しているためお金持ち。黒目黒髪で顔立ちは平凡ながら、抜きん出た才能があるので女子人気が高い。
「え、だって、セレンってキセノのこと好きでしょ?」
「きゃああああ! いやあぁぁぁ!!」
バレてた! 誰にも気づかれてないと思っていたのに!!
「嘘、私って、そんなに分かりやすい!? みんな気付いてるの? キセノも!?」
ずいっと至近距離でフェルミィに詰め寄ると、彼女は私の肩をつかんで無理やり椅子に座らせた。
「ちょ、おち、落ち着いて。大丈夫だから。少なくとも本人にはバレてないから!」
「キセノにはバレてないのね……! 良かった……!!」
がっくりとテーブルに突っ伏す。でも待って? 本人にはって、あとはどこまでバレてるの?
私が顔を上げてフェルミィに問い詰める前に、私たちのテーブルへ渦中の人物がやってきた。
「よお、セレン、フェルミィ。二人で何騒いでんだよ」
「キキキキキ、キセノッ!」
「あのね、セレンが恋人を作るっていうから、キセ……んぐっ!?」
慌ててフェルミィの口を塞いだが、間に合わなかった。
「……恋人? セレン、好きなヤツいたの?」
「え、や、その~……」
あなたです! なんてもちろん言えない。どどどど、どうしよう!?
私が硬直していると、私の腕から逃れたフェルミィが助け舟を出してくれた。
「お兄さんに、卒業までに恋人を作れって言われたんだって。ほら、セレンってまだ婚約者いないから、お兄さん心配になったらしくて」
「……そうなのか?」
コクコクコクっと何度も大きく頷く。ナイスよ、フェルミィ!
って、フェルミィのせいで窮地に陥ったんだけど。
キセノと私は、実はけっこう仲良しなのだ。魔術の構築に興味があり、将来魔術研究所に入りたいと言う夢が同じだったことから意気投合した。合同研究もしているし、一緒にいることも多いので、親しい友人と言っていいと思う。
……私は、それ以上になりたいんだけどね。
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