婚約者がハーレムの一員となったのですが・・・え? そんな理由で?

相馬香子

文字の大きさ
上 下
16 / 24

隣国王子は逃がさない

しおりを挟む
オリバーとヘイゼルがサロンに着くと当時に、リィンとアレックスが飛び出してきた。

「あら~! ヘイゼルさんじゃないですかぁ~! 最近あんまりお話できなかったから、寂しかったですわぁ。あたしたちもご一緒していいかしらぁ?」
「ア、 アレックス嬢。ええと、私は構いませんが・・・」

アレックスの突撃にたじろぎつつ、ヘイゼルがオリバーに視線を向ける。
オリバーは笑顔でアレックスの肩に手を置いた。

「・・・アレックス。こっそりはどうした?」
「密室に入られちゃったらこっそりも何もないでしょうが。あんた馬鹿なの?」
「・・・仕方ない。同席を許可しよう」

お互いだけに聞こえるようにヒソヒソ話す二人。その距離の近さにヘイゼルは、やはりアレックスの本命はオリバーなのかもしれないと思った。
・・・ほんの少しだけ、胸がざわめいたのはどうしてだろう。
ヘイゼルは自分の胸に手を当て、首を傾げた。

「さ、さあさあ! せっかくですから皆でお茶にしましょう!」

リィンが取り仕切り、全員をサロンに押し込む。ついでにお茶を入れ、オリバーが用意していた大量の茶菓子をこれでもかと大皿に盛りつけた。お好きな物を食べ放題スタイルだ。

「あたしスコーンにしよっと」

アレックスがスコーンを手に取り、クロテッドクリームを大量に乗せてかぶりつく。それを横目にリィンはフィナンシェを3つほど自分の皿へ取り分けた。

「君たちは遠慮がないな・・・」
「美味しい物は皆で食べてこそですわよぉ~? ヘイゼルさんは何がお好きかしら?」

しれっとヘイゼルの好みを聞き出そうとするアレックス。オリバーはその作戦にまんまと乗せられ、アレックスからヘイゼルへと興味を移した。

「わ、私はマドレーヌが好きですね」
「そうか! では、次回はもっと美味しいマドレーヌをたくさん用意しよう!」
「え? じ、次回、ですか・・・?」
「嫌かい?」
「いえ! そんなことはありませんが・・・」
「では、約束だ」

キラキラの王子様スマイルで接近されたヘイゼルは、しっかりと次の約束をさせられた。
獲物と捕食者にしか見えない構図に、リィンとアレックスが同情する。

「これ、逃げられないわね」
「オリバーって本命には粘着質だったのね。うざいわ」
「そこ! 悪口が聞こえてるぞ!」

三人の取り繕わない関係を目にして、ヘイゼルは目をぱちくりさせた。

「み、皆さん、仲がよろしいのですね」
「まあ、あたしとオリバーは幼馴染みたいなもんだしね~」

そう言いながら、アレックスが紅茶でスコーンを流し込む。

「・・・アレックス嬢とオリバー様には、婚約のご予定が?」

ゴフッとアレックスがむせた。オリバーがずるりと椅子から落ちかける。

「「冗談じゃないっっっ!!」」

奇しくも揃ってしまった一言に、アレックスとオリバーが互いを嫌そうな目で見た。

「こーんな俺様な王子様なんて絶対嫌よ! それに、あたしには世界一愛する人がいるんだから!」
「俺だってこんな性格捻くれたヤツはごめんだ!」

ぎゃいぎゃい言い合うアレックスとオリバー。だがそれは傍目には仲が良さそうに映るのだった。
戸惑うような視線を向けるヘイゼルの手を、オリバーがギュッと握る。

「お、俺が恋をしているのは・・・君だ!!」
「えっ・・・?」

顔を真っ赤にしながらの、オリバーの必死な告白。
リィンとアレックスは、おぉ~! と素直に感動した。頑張れ頑張れと小さな拳を作って見守っている。
――見つめ合う、オリバーとヘイゼル。

「あ、あの、わたしっ・・・・・・!」

真っ青になって慌てふためくヘイゼルに、オリバーが優しく語りかけた。

「急に驚かせてしまってすまない。ただ、どうしても君に伝えたくて・・・」
「で、でも、あの、そのっ! わ、わたしでは、ダメです!」

きっぱりと言い切られたオリバーが顔色を無くす。

「・・・君にはもう、愛する人がいるのか・・・・・・」

今にも消えてしまいそうな呟きに、ヘイゼルがぶんぶんと首を振る。

「ち、違いますっ! そんな人いませんっ!」
「・・・・・・では、俺が生理的に無理ということなんだな・・・」
「そそそ、そうでもありませんっ!!」

かわいそうなくらい、ヘイゼルが首振り人形のようになっている。
オリバーの往生際の悪いフラれ男っぷりに呆れたアレックスとリィンが割って入ろうとすると――

「わ、わたし・・・私は、実は・・・女なんですっ・・・・・・!!」

ヘイゼルの叫びに、オリバー、リィン、アレックスが硬直した。

(((あ・・・そういえば、彼女の性別を知ってること、話してなかった・・・・・・)))


騙していてごめんなさいと泣きながら謝るヘイゼル。
同性愛者だと誤解されてしまったオリバーは、大急ぎでこれまでの経緯を事細かくヘイゼルへ説明したのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

解雇されたけど実は優秀だったという、よくあるお話。

シグマ
ファンタジー
 突如、所属している冒険者パーティー[ゴバスト]を解雇されたサポーターのマルコ。しかし普通のサポート職以上の働きをしていたマルコが離脱した後のパーティーは凋落の一途を辿る。そしてその影響はギルドにまでおよび……  いわゆる追放物の短編作品です。  起承転結にまとめることを意識しましたが、上手く『ざまぁ』出来たか分かりません。どちらかと言えば、『覆水盆に返らず』の方がしっくりくるかも……  サクッと読んで頂ければ幸いです。 ※思っていた以上の方に読んで頂けたので、感謝を込めて当初の予定を越える文量で後日談を追記しました。ただ大団円で終わってますので、『ざまぁ』を求めている人は見ない方が良いかもしれません。

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?

ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。 レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。 アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。 ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。 そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。 上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。 「売女め、婚約は破棄させてもらう!」

【完結】身勝手な旦那様と離縁したら、異国で我が子と幸せになれました

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
腹を痛めて産んだ子を蔑ろにする身勝手な旦那様、離縁してくださいませ! 完璧な人生だと思っていた。優しい夫、大切にしてくれる義父母……待望の跡取り息子を産んだ私は、彼らの仕打ちに打ちのめされた。腹を痛めて産んだ我が子を取り戻すため、バレンティナは離縁を選ぶ。復讐する気のなかった彼女だが、新しく出会った隣国貴族に一目惚れで口説かれる。身勝手な元婚家は、嘘がバレて自業自得で没落していった。 崩壊する幸せ⇒異国での出会い⇒ハッピーエンド 元婚家の自業自得ざまぁ有りです。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/10/07……アルファポリス、女性向けHOT4位 2022/10/05……カクヨム、恋愛週間13位 2022/10/04……小説家になろう、恋愛日間63位 2022/09/30……エブリスタ、トレンド恋愛19位 2022/09/28……連載開始

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

お飾り王妃の愛と献身

石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。 けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。 ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。 国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました

紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。 ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。 ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。 貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

処理中です...