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婚約者、ターゲットを魅了する
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朝っぱらからなんだか疲れてしまったリィンだが、これから学園へと行かなければならない。本日はアレックスが留学初日ということで、ひとまず彼を職員室へ案内し、担任へと引き渡した。当然、リィンやハワードと同じクラスになる。
「き、君がアレックス・アディソンか・・・。その・・・話は聞いているんだが・・・君は、男性・・・なんだよな?」
担任のクリスは丸眼鏡をかけたり外したりしながら、アレックスを凝視した。
「そうで~す! 短い間ですがぁ、よろしくお願いしま~す!」
「・・・・・・」
口をかぱっと開けて信じられないような顔をしている教師を残し、リィンは先に教室へ向かった。果たしてハワードは、アレックスに食いつくのだろうか。
席についてしばらく待つと、ようやく担任がアレックスを連れてやってきた。
卒業近くの時季にやってきた留学生に、生徒たちは興味津々である。
自己紹介をするようクリスに言われたアレックスは、ずいっと前に進むと輝かしい笑顔を教室中に振りまいた。
「はじめましてっ! あたしの名前はアレックスです! 短い間ですが、みなさん、仲良くしてくださいね~」
教室内の空気がザっと割れた。片や好意的な視線。片や不審げな視線。
好奇心と猜疑心が生徒たちの間に広がった。
かわいいなという男子生徒に、何あの話し方と眉をひそめる女子生徒。
リィンはこっそりハワードの様子を観察してみた。
ぽ~っとした様子で、じっとアレックスを見つめるハワード。
(あ、これは食いついたわ)
ターゲットが網にかかったことを、リィンは確信した。
★ ★ ★
授業が終わると、アレックスはすぐにクラスメートたちに囲まれた。
「アレックスさんって、隣国の出身なのね」
「そうなの! 実は、リィンとは親戚なんだ~」
アレックスの素性について探りを入れてくる生徒たちをうまくかわしつつ、リィンと親しい関係であるということを伝える。
器用に立ち回るなぁとリィンが感心していると、ハワードがやってきた。
「あ、アレックス嬢! 良かったら、これから校内を案内させてもらえないだろうかっ!」
クラスメートたちは、ああまたかと呆れたような目を向ける。もっとも、空気を読まないハワードは全く気にもしないが。
アレックスはこてっと小首を傾げた。
「えっと、どちらさまですか~?」
「えっ!? あ、ああそうか。君は隣国から来たのだったね。私はこの国の第三王子、ハワードだ」
「まぁっ! 王族の方でしたのねっ! でもぉ、王子様にそんな雑用をさせるなんて・・・・・・」
「雑用などとっ! 私はぜひあなたを案内したいのだ!」
「うわぁ! とっても嬉しいですわ~。では、お願いしま~す」
アレックスはそう言うとリィンに先に帰っててと小声で囁いた。
リィンは少々複雑な心境だったが、今はハワードをアレックスに夢中にさせなければならない。アレックスの身が心配ではあったが、リィンはしぶしぶアレックスたちを見送った。
「き、君がアレックス・アディソンか・・・。その・・・話は聞いているんだが・・・君は、男性・・・なんだよな?」
担任のクリスは丸眼鏡をかけたり外したりしながら、アレックスを凝視した。
「そうで~す! 短い間ですがぁ、よろしくお願いしま~す!」
「・・・・・・」
口をかぱっと開けて信じられないような顔をしている教師を残し、リィンは先に教室へ向かった。果たしてハワードは、アレックスに食いつくのだろうか。
席についてしばらく待つと、ようやく担任がアレックスを連れてやってきた。
卒業近くの時季にやってきた留学生に、生徒たちは興味津々である。
自己紹介をするようクリスに言われたアレックスは、ずいっと前に進むと輝かしい笑顔を教室中に振りまいた。
「はじめましてっ! あたしの名前はアレックスです! 短い間ですが、みなさん、仲良くしてくださいね~」
教室内の空気がザっと割れた。片や好意的な視線。片や不審げな視線。
好奇心と猜疑心が生徒たちの間に広がった。
かわいいなという男子生徒に、何あの話し方と眉をひそめる女子生徒。
リィンはこっそりハワードの様子を観察してみた。
ぽ~っとした様子で、じっとアレックスを見つめるハワード。
(あ、これは食いついたわ)
ターゲットが網にかかったことを、リィンは確信した。
★ ★ ★
授業が終わると、アレックスはすぐにクラスメートたちに囲まれた。
「アレックスさんって、隣国の出身なのね」
「そうなの! 実は、リィンとは親戚なんだ~」
アレックスの素性について探りを入れてくる生徒たちをうまくかわしつつ、リィンと親しい関係であるということを伝える。
器用に立ち回るなぁとリィンが感心していると、ハワードがやってきた。
「あ、アレックス嬢! 良かったら、これから校内を案内させてもらえないだろうかっ!」
クラスメートたちは、ああまたかと呆れたような目を向ける。もっとも、空気を読まないハワードは全く気にもしないが。
アレックスはこてっと小首を傾げた。
「えっと、どちらさまですか~?」
「えっ!? あ、ああそうか。君は隣国から来たのだったね。私はこの国の第三王子、ハワードだ」
「まぁっ! 王族の方でしたのねっ! でもぉ、王子様にそんな雑用をさせるなんて・・・・・・」
「雑用などとっ! 私はぜひあなたを案内したいのだ!」
「うわぁ! とっても嬉しいですわ~。では、お願いしま~す」
アレックスはそう言うとリィンに先に帰っててと小声で囁いた。
リィンは少々複雑な心境だったが、今はハワードをアレックスに夢中にさせなければならない。アレックスの身が心配ではあったが、リィンはしぶしぶアレックスたちを見送った。
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