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第四章 タラッサ連合国編
17.思い考え悩む
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翌日荷車の後ろの方に乗り込むフレイとモーイとキミア。
ひたすら震えるようにフレイに寄り添い埋まる。
「…怖かったですぅ~」
そう言いながら朝からずっともたれ掛かり頭を胸に埋め密着している。
「フレイ、お前その状態嫌じゃ無いの?」
「そんなでも無いかなぁ」
本当に何も気にして無さそうに答える。
「だって、ずっとリーシェにこんな風にくっついてたから…今もだけど…くっつかれるのも嫌じゃ無いんだよね」
「そ…そうなんだ」
モーイは途方もなく答えにくかった…。
目の前での密着状態をフレイと大賢者様が、立ち位置を交換したとしてもその状況を繰り広げて居るとしたら…とてつもなく甘い空間が出来上がるだろう。
居合わせたら甘い毒にやられてその場で意識失うか、息止まる前に退散せねばならないであろうことが想像できた。
逆に今のコノ子供とフレイの状態をアノ2人が目撃したら、確実に子供を引きはがし陰で抹殺するであろう…と思う。
そんな事を頭に思い浮かべる事もなくフレイは呑気に言う。
「懐く子供って可愛いね~欲しくなっちゃうね」
「誰とのだよ!」
思わずモーイは突っ込んでしまった。
「…えっ?」
そこら辺は何も考えてないようだった。
『まぁこいつだって、ほぼ子供だからなぁ…』
だけどモーイはフレイを眺めると、何だかその体型につい苛立ってしまう。
「フレイは子供が欲しいの? だったら僕と作ろうよ! 一生懸命働いて養うよ」
キミアの目は潤み言葉は真剣であり、しかも抱きついて膝の上に居た体制からフレイを荷車の中で押し倒し、手はフレイの手を掴み荷車の床に縫い留める。
7歳の可愛い子供の軽口と戯れ…なのだが、目付きと行動が本気で怪しくってモーイは思わず引き剥がしてしまう。
「後10年したら再度挑戦しな!」
そう声をかけながら引き剥がすと、今度はモーイにキミアは抱きつき尻を撫でる。
ゾワリとするような触り方…思わずへたり込んでしまう。
「何すんだ!」
そして、耳元に顔近づけキミアは囁く。
「今でも十分挑戦出来そうだと思いませんか?」
思わず真っ赤になり離れるモーイ。
「モーイも可愛いですよ」
「!!!」
『この餓鬼はガキだけど餓鬼じゃない…』
得たいの知れない奴…中身は子供じゃないと確信し、モーイは警戒水準を引き上げた。
そんな、ふざけた道中…またしても独りの時間を持つ子供。
海辺での休息時、独り海辺で水に足をつけながら呟いている。
「詰まらなくって一寸遊び過ぎちゃったから、警戒されちゃいました…そろそろ、この前の続きお願いしますよ。僕も楽しいし、気が紛れれば皆さんの警戒も解けるでしょ」
暫く水にしっかり足を浸けた後、再び喋り始める。
「そうですか…本職が来ることになっているなら傍観するだけで良いかも知れませんね…下手に手出しをすると塔まで持たなくなっちゃいますからね」
ニュール達が出発する前、モモハルムアは絶対にニュールを見送りたかったので自身の見送りを断り、皆が出発した後に立つことにした。
会った日を含め3日間だけ、ニュール達は準備のため港湾都市ザルビネに留まっていた。
その間は仲間として皆と過ごす。ニュールと特別な2人の時間を持てるわけではないのだが、それでも近くで姿を目にし、手を伸ばせば触れられる距離にいることがモモハルムにとっては物凄く嬉しく幸せを感じる時間となった。
「モモハルムア様、お時間です」
「わかったわ…」
転移までの待ち時間、少し前の取り留めのない出来事を思い返しているとフィーデスの声掛けで現実に引き戻される。
それに応じ転移の間へ進む。
転移陣は時間ごとの予約がなされ、その予約に基づき転移を行う。
予約日時が前倒しになる事がある陣の予約は、ニュール達が出立してから行った。
そのためニュール達の出立後も5日程ザルビネで過ごすことになった。
タリクは急ぎ帰国したかった様で、ザルビネに到着後この街にも陣が設置されたと聞くと直ぐに行動した。サージャに商業組合との仲介を頼み予約を入れると、偶々順番が早まり一番最初の出発となる。
「皆さん揃って迂闊なことはなさいませんように…心からお祈り申し上げます」
出発前の言葉もタリクらしかった。
ニュール達がいる間は共に行動したため、初対面であったイストアとも打ち解けることができた。イストアもニュールに心惹かれた仲間だと知る…競う相手であるのに心やすい。
女子部屋では、フレイのみ窓辺で魔石と鏡と戯れ、3人は推しの尊さを語りながら過ごしていた。
たぶん、当事者以外が聞いたら然したる事でもないことで盛り上がる3人。
そんな中でモーイが宣言する。
「アタシ達、大好きな者が一緒の仲間だからさ~誰が落としても恨みっこなしさ!」
そのモーイの言葉に少し躊躇しながらイストアは自身の思いの行方を語る。
「あたしは…此の街に残ることになったから…残念だけど其処からは降りるよ…それでもズット隣に居たいぐらい好きだったし、今でも変わらないけどね…」
場が少し沈む。
「そっか…不思議だな…競う人数が減って嬉しいはずなのに…寂しいや。こっちで負けないぐらいの良い男が出来たら取らないから教えてくれ!」
そのイストアの言葉に返事をするモーイは、少し愁いを含んだ顔をした。
「モモはどうするんだ?」
いきなりモーイに話を振られる。
「私はこの恋を手放す気はありません! ニュールが…もし他のひとを愛すると決めたなら…その人ごと愛します」
ひたすら真っ直ぐだった。
周りのほうが照れてしまうぐらい真っ直ぐで、少しモーイは意地悪したくなった。
「婚約の方は?」
「勿論、ハッキリと断ります…今回会って改めて思いました。私はこの人が欲しいんだと…他は要らないです」
モモハルムアの強い思いは、もう何者にも揺るがされる事はないだろう。
確信を持ち決断したなら確実に実行する…モモハルムアにはその強さがある。
モーイはその真っすぐ突き進む姿に憧れるのだった。
そしてフレイリアルは魔石と戯れつつ、鏡を眺めモーイ達の思いを聞き思う。
『私は誰を…何を欲しているのだろう…』
港湾都市ザルビネの商業組合に陣が設置されたのは10の日程前、まだ相当日が浅い。
モモハルムア達がこの陣を使えるのもサージャが取り計らってくれたからだ。
来るときは別の都市から移動して来た。
ヴェステで魔物魔石の効率的採取方法が確立されてから、転移陣が各地で増設され始めた。簡易かつ低経費の陣は、今まで陣が設置されていなかった国や都市にも転移陣を普及させ、それにより飛躍的な情報伝達網が出来上がる。
ザルビネの商業組合に新設された転移の間。
既にエリミア王宮の転移陣の座標は登録されていたので、そこにいる商会勤めの賢者が2名で陣の組み換えを行う。
先程から魔物魔石の魔力を注ぎ込みつつ陣の組み換えを行っている。
3人の大賢者の転移陣の扱いを目の当たりにしていたモモハルムアは、通常の賢者が行う陣の組み換えと比較し、改めて大賢者達の持つ桁外れの魔力と操作能力を実感した。
半時程して完了の合図が来たので動き始める。
商会長のサージャ・ナルキッシュがモモハルムア達の見送りに来てくれていた。
モモハルムアは離れた場所から見送るサージャに黙礼すると、フィーデスと共に陣に乗る。用意した蒼玉の屑魔石を陣に乗せ、フィーデスが魔力を動かすと一瞬で景色が変化する。
そこは既にエリミアの王宮に新設した転移の間だった。
エリミアの王城内には元々賢者の塔の高層に向かうための陣はあったが、他とは繋がっていない。
そのため王宮に新たに転移の間を設け運用することにしたようだ。
衛兵が常駐しているのは理解できるが、辿り着いた其処には王妃が持つ私兵と側仕えがいた。
そして陣から降りた瞬間に王妃からの言葉を伝えられる。
「モモハルムア・フエル・リトス様、王妃が謁見の間でお待ちです」
そこにはモモハルムアの意思が入る余地はなかった。
連れていかれた謁見の間には言葉通り既に王妃が一段高い上座に居り、モモハルムアが入室する所から全てを見守っていた。
入室したモモハルムアは礼をし、跪き頭垂れる。
「面を上げて。私的な謁見故、忌憚なく話して下さい」
いきなり直接話し掛けられる。
「お言葉ありがたく頂戴致します…では早速、どのようなご用件でしょうか?」
その言葉に、王妃が笑み答える。
「噂通り物怖じする事無く状況を見て立ち回る…優秀ね。貴女は何故だと思いますか?」
質問返しをされてしまった。
「婚約についての事かと…」
「正解です。その後に続く内容は何だと思って?」
易々と対応するモモハルムアを試すように尋ねる。
「直接的な強要…かと」
「強要…ね。つまり、望んでないと…」
「私は望むもの以外欲しません」
キッパリと言ってのけるモモハルムアに、王妃が上に立つ者の鋭い瞳を示し重圧をかける。
「願いが通ると思って?」
「通らぬのなら通して見せます」
「フフフッ、貴女なら出来そうね…」
思わず表情を崩し、小気味よさげに王妃が笑い声を立てる。
「??」
「貴女自身の意見を聞きたかったの…それだけよ」
柔らかく微笑む王妃は、周囲から聞く印象とは別人の様で戸惑う。それを見晴るかすように王妃が答える。
「これは、最初に言ったように私的な謁見なの。次にお会いする私が別人であったとしても気にしないで…私は王妃として遣るべきことがあるのなら其れに従います」
今度は再び威厳を持った王妃としてモモハルムに対していた。
そして退室を促される。
礼をして立ち上がった時、小さく小さく呟くように尋ねられる。
「あの子は?」
一瞬目を上げ、モモハルムアが目にした王妃の表情。
そこには悲しげな…子を思いやる母の顔があったのだが一瞬で消え王妃としての顔になり、答えるか迷うモモハルムアに再度退室を促した。
『あの王妃様は何を考えているか分からない…』
王妃の行動基準が謎である。だが、理由なく動く人でもない事と確固たる意思がある事と、ちゃんと子への思いがあると思われる事をモモハルムアはこの短い謁見の中で感じ取るのだった。
ニュール達は今回海沿いの街道から、少し早めに内陸部に移動し宿に入ることにした。昨日は野宿になった上に戦いもあり、子供も連れ歩いているから…と言うことで今日は街でしっかり休むことにしたのだ。
「僕、ちゃんとお風呂がある宿に泊まりたいです。皆さんが嫌なら僕一人でもそちらに行きます」
「けっ、お坊ちゃんだな!」
「不潔なのは、女の人にモテませんよ」
キミアの言葉に思わずミーティが黙り踊らされ、思わず自身の身なりを確認する。
今回寄るタキアの街は比較的大きめの街で宿も3か所程あった。
一応キミアも納得する中間の宿に決め、宿に併設した酒場兼食堂で早々に食事をする。
こういう場は情報収集に役立つのだが、食堂でもある酒場は早めの時間は食事客主体で大した噂話も出ない。
だが、近場に座っていた20代と30代の狩り仕事の相棒といった感じの一組の客が、聞いたことの無い魔石の話をしていた。
最初は、大人気のプラーデラの黒・金・茶の美女3人組の大盗賊の話だったのだが…その大盗賊が狙う獲物の話になる。
「プラーデラでは天輝石を盗ったらしいのだけど、今度狙うのは水の本神殿にある地輝石らしい…盗るって予告が入っているらしいぞ!」
「予告? しかも聞いたことないけど、そんな魔石があるのか?」
「賢者の石の双子石らしくて、海の底に眠っているらしいぞ!」
「海の底じゃ盗れんだろ~! ま~た、眉唾な噂だろ?」
「いや、俺の従妹がレグルスリヤ王国、王都ハトゥルーサの水の神殿の小殿司の付き人なんだよ…そこで聞いた話だから本当だろ」
「そんな所の噂がすぐ耳に入るか?」
やけに具体的な情報だ。だが噂話を聞いてた男が言うように、プラーデラの話でさえ1の月経たないような話なのに、それよりも最近の話がそんなに早く伝わるのかニュールも訝しんだ。
「11日前に神殿から使いでこっちへ出て来たらしいんだけど、実家に立ち寄ってた一昨日の夜に話しを聞いたんだよ…何だか怖いって言って怯えててさぁ~」
「お前、その従妹の話がしたくて盛ったんじゃないか? 婚約者なんだろ?」
「いやっ、聞いたのは本当なんだけどさ…一昨日来て、やっぱり俺の婚約者って可愛いな~って思ってさぁ…」
惚気に耳を閉ざす。
ニュールの中で一気に信憑性が薄れる気がしたが、気になる内容ではあった。
他の酒場でも、情報は集めるべきと判断し皆と別行動にした後、酒場を巡る。
そこで余りにも懐かしい危険な人物に出会うとは思わずに…。
ひたすら震えるようにフレイに寄り添い埋まる。
「…怖かったですぅ~」
そう言いながら朝からずっともたれ掛かり頭を胸に埋め密着している。
「フレイ、お前その状態嫌じゃ無いの?」
「そんなでも無いかなぁ」
本当に何も気にして無さそうに答える。
「だって、ずっとリーシェにこんな風にくっついてたから…今もだけど…くっつかれるのも嫌じゃ無いんだよね」
「そ…そうなんだ」
モーイは途方もなく答えにくかった…。
目の前での密着状態をフレイと大賢者様が、立ち位置を交換したとしてもその状況を繰り広げて居るとしたら…とてつもなく甘い空間が出来上がるだろう。
居合わせたら甘い毒にやられてその場で意識失うか、息止まる前に退散せねばならないであろうことが想像できた。
逆に今のコノ子供とフレイの状態をアノ2人が目撃したら、確実に子供を引きはがし陰で抹殺するであろう…と思う。
そんな事を頭に思い浮かべる事もなくフレイは呑気に言う。
「懐く子供って可愛いね~欲しくなっちゃうね」
「誰とのだよ!」
思わずモーイは突っ込んでしまった。
「…えっ?」
そこら辺は何も考えてないようだった。
『まぁこいつだって、ほぼ子供だからなぁ…』
だけどモーイはフレイを眺めると、何だかその体型につい苛立ってしまう。
「フレイは子供が欲しいの? だったら僕と作ろうよ! 一生懸命働いて養うよ」
キミアの目は潤み言葉は真剣であり、しかも抱きついて膝の上に居た体制からフレイを荷車の中で押し倒し、手はフレイの手を掴み荷車の床に縫い留める。
7歳の可愛い子供の軽口と戯れ…なのだが、目付きと行動が本気で怪しくってモーイは思わず引き剥がしてしまう。
「後10年したら再度挑戦しな!」
そう声をかけながら引き剥がすと、今度はモーイにキミアは抱きつき尻を撫でる。
ゾワリとするような触り方…思わずへたり込んでしまう。
「何すんだ!」
そして、耳元に顔近づけキミアは囁く。
「今でも十分挑戦出来そうだと思いませんか?」
思わず真っ赤になり離れるモーイ。
「モーイも可愛いですよ」
「!!!」
『この餓鬼はガキだけど餓鬼じゃない…』
得たいの知れない奴…中身は子供じゃないと確信し、モーイは警戒水準を引き上げた。
そんな、ふざけた道中…またしても独りの時間を持つ子供。
海辺での休息時、独り海辺で水に足をつけながら呟いている。
「詰まらなくって一寸遊び過ぎちゃったから、警戒されちゃいました…そろそろ、この前の続きお願いしますよ。僕も楽しいし、気が紛れれば皆さんの警戒も解けるでしょ」
暫く水にしっかり足を浸けた後、再び喋り始める。
「そうですか…本職が来ることになっているなら傍観するだけで良いかも知れませんね…下手に手出しをすると塔まで持たなくなっちゃいますからね」
ニュール達が出発する前、モモハルムアは絶対にニュールを見送りたかったので自身の見送りを断り、皆が出発した後に立つことにした。
会った日を含め3日間だけ、ニュール達は準備のため港湾都市ザルビネに留まっていた。
その間は仲間として皆と過ごす。ニュールと特別な2人の時間を持てるわけではないのだが、それでも近くで姿を目にし、手を伸ばせば触れられる距離にいることがモモハルムにとっては物凄く嬉しく幸せを感じる時間となった。
「モモハルムア様、お時間です」
「わかったわ…」
転移までの待ち時間、少し前の取り留めのない出来事を思い返しているとフィーデスの声掛けで現実に引き戻される。
それに応じ転移の間へ進む。
転移陣は時間ごとの予約がなされ、その予約に基づき転移を行う。
予約日時が前倒しになる事がある陣の予約は、ニュール達が出立してから行った。
そのためニュール達の出立後も5日程ザルビネで過ごすことになった。
タリクは急ぎ帰国したかった様で、ザルビネに到着後この街にも陣が設置されたと聞くと直ぐに行動した。サージャに商業組合との仲介を頼み予約を入れると、偶々順番が早まり一番最初の出発となる。
「皆さん揃って迂闊なことはなさいませんように…心からお祈り申し上げます」
出発前の言葉もタリクらしかった。
ニュール達がいる間は共に行動したため、初対面であったイストアとも打ち解けることができた。イストアもニュールに心惹かれた仲間だと知る…競う相手であるのに心やすい。
女子部屋では、フレイのみ窓辺で魔石と鏡と戯れ、3人は推しの尊さを語りながら過ごしていた。
たぶん、当事者以外が聞いたら然したる事でもないことで盛り上がる3人。
そんな中でモーイが宣言する。
「アタシ達、大好きな者が一緒の仲間だからさ~誰が落としても恨みっこなしさ!」
そのモーイの言葉に少し躊躇しながらイストアは自身の思いの行方を語る。
「あたしは…此の街に残ることになったから…残念だけど其処からは降りるよ…それでもズット隣に居たいぐらい好きだったし、今でも変わらないけどね…」
場が少し沈む。
「そっか…不思議だな…競う人数が減って嬉しいはずなのに…寂しいや。こっちで負けないぐらいの良い男が出来たら取らないから教えてくれ!」
そのイストアの言葉に返事をするモーイは、少し愁いを含んだ顔をした。
「モモはどうするんだ?」
いきなりモーイに話を振られる。
「私はこの恋を手放す気はありません! ニュールが…もし他のひとを愛すると決めたなら…その人ごと愛します」
ひたすら真っ直ぐだった。
周りのほうが照れてしまうぐらい真っ直ぐで、少しモーイは意地悪したくなった。
「婚約の方は?」
「勿論、ハッキリと断ります…今回会って改めて思いました。私はこの人が欲しいんだと…他は要らないです」
モモハルムアの強い思いは、もう何者にも揺るがされる事はないだろう。
確信を持ち決断したなら確実に実行する…モモハルムアにはその強さがある。
モーイはその真っすぐ突き進む姿に憧れるのだった。
そしてフレイリアルは魔石と戯れつつ、鏡を眺めモーイ達の思いを聞き思う。
『私は誰を…何を欲しているのだろう…』
港湾都市ザルビネの商業組合に陣が設置されたのは10の日程前、まだ相当日が浅い。
モモハルムア達がこの陣を使えるのもサージャが取り計らってくれたからだ。
来るときは別の都市から移動して来た。
ヴェステで魔物魔石の効率的採取方法が確立されてから、転移陣が各地で増設され始めた。簡易かつ低経費の陣は、今まで陣が設置されていなかった国や都市にも転移陣を普及させ、それにより飛躍的な情報伝達網が出来上がる。
ザルビネの商業組合に新設された転移の間。
既にエリミア王宮の転移陣の座標は登録されていたので、そこにいる商会勤めの賢者が2名で陣の組み換えを行う。
先程から魔物魔石の魔力を注ぎ込みつつ陣の組み換えを行っている。
3人の大賢者の転移陣の扱いを目の当たりにしていたモモハルムアは、通常の賢者が行う陣の組み換えと比較し、改めて大賢者達の持つ桁外れの魔力と操作能力を実感した。
半時程して完了の合図が来たので動き始める。
商会長のサージャ・ナルキッシュがモモハルムア達の見送りに来てくれていた。
モモハルムアは離れた場所から見送るサージャに黙礼すると、フィーデスと共に陣に乗る。用意した蒼玉の屑魔石を陣に乗せ、フィーデスが魔力を動かすと一瞬で景色が変化する。
そこは既にエリミアの王宮に新設した転移の間だった。
エリミアの王城内には元々賢者の塔の高層に向かうための陣はあったが、他とは繋がっていない。
そのため王宮に新たに転移の間を設け運用することにしたようだ。
衛兵が常駐しているのは理解できるが、辿り着いた其処には王妃が持つ私兵と側仕えがいた。
そして陣から降りた瞬間に王妃からの言葉を伝えられる。
「モモハルムア・フエル・リトス様、王妃が謁見の間でお待ちです」
そこにはモモハルムアの意思が入る余地はなかった。
連れていかれた謁見の間には言葉通り既に王妃が一段高い上座に居り、モモハルムアが入室する所から全てを見守っていた。
入室したモモハルムアは礼をし、跪き頭垂れる。
「面を上げて。私的な謁見故、忌憚なく話して下さい」
いきなり直接話し掛けられる。
「お言葉ありがたく頂戴致します…では早速、どのようなご用件でしょうか?」
その言葉に、王妃が笑み答える。
「噂通り物怖じする事無く状況を見て立ち回る…優秀ね。貴女は何故だと思いますか?」
質問返しをされてしまった。
「婚約についての事かと…」
「正解です。その後に続く内容は何だと思って?」
易々と対応するモモハルムアを試すように尋ねる。
「直接的な強要…かと」
「強要…ね。つまり、望んでないと…」
「私は望むもの以外欲しません」
キッパリと言ってのけるモモハルムアに、王妃が上に立つ者の鋭い瞳を示し重圧をかける。
「願いが通ると思って?」
「通らぬのなら通して見せます」
「フフフッ、貴女なら出来そうね…」
思わず表情を崩し、小気味よさげに王妃が笑い声を立てる。
「??」
「貴女自身の意見を聞きたかったの…それだけよ」
柔らかく微笑む王妃は、周囲から聞く印象とは別人の様で戸惑う。それを見晴るかすように王妃が答える。
「これは、最初に言ったように私的な謁見なの。次にお会いする私が別人であったとしても気にしないで…私は王妃として遣るべきことがあるのなら其れに従います」
今度は再び威厳を持った王妃としてモモハルムに対していた。
そして退室を促される。
礼をして立ち上がった時、小さく小さく呟くように尋ねられる。
「あの子は?」
一瞬目を上げ、モモハルムアが目にした王妃の表情。
そこには悲しげな…子を思いやる母の顔があったのだが一瞬で消え王妃としての顔になり、答えるか迷うモモハルムアに再度退室を促した。
『あの王妃様は何を考えているか分からない…』
王妃の行動基準が謎である。だが、理由なく動く人でもない事と確固たる意思がある事と、ちゃんと子への思いがあると思われる事をモモハルムアはこの短い謁見の中で感じ取るのだった。
ニュール達は今回海沿いの街道から、少し早めに内陸部に移動し宿に入ることにした。昨日は野宿になった上に戦いもあり、子供も連れ歩いているから…と言うことで今日は街でしっかり休むことにしたのだ。
「僕、ちゃんとお風呂がある宿に泊まりたいです。皆さんが嫌なら僕一人でもそちらに行きます」
「けっ、お坊ちゃんだな!」
「不潔なのは、女の人にモテませんよ」
キミアの言葉に思わずミーティが黙り踊らされ、思わず自身の身なりを確認する。
今回寄るタキアの街は比較的大きめの街で宿も3か所程あった。
一応キミアも納得する中間の宿に決め、宿に併設した酒場兼食堂で早々に食事をする。
こういう場は情報収集に役立つのだが、食堂でもある酒場は早めの時間は食事客主体で大した噂話も出ない。
だが、近場に座っていた20代と30代の狩り仕事の相棒といった感じの一組の客が、聞いたことの無い魔石の話をしていた。
最初は、大人気のプラーデラの黒・金・茶の美女3人組の大盗賊の話だったのだが…その大盗賊が狙う獲物の話になる。
「プラーデラでは天輝石を盗ったらしいのだけど、今度狙うのは水の本神殿にある地輝石らしい…盗るって予告が入っているらしいぞ!」
「予告? しかも聞いたことないけど、そんな魔石があるのか?」
「賢者の石の双子石らしくて、海の底に眠っているらしいぞ!」
「海の底じゃ盗れんだろ~! ま~た、眉唾な噂だろ?」
「いや、俺の従妹がレグルスリヤ王国、王都ハトゥルーサの水の神殿の小殿司の付き人なんだよ…そこで聞いた話だから本当だろ」
「そんな所の噂がすぐ耳に入るか?」
やけに具体的な情報だ。だが噂話を聞いてた男が言うように、プラーデラの話でさえ1の月経たないような話なのに、それよりも最近の話がそんなに早く伝わるのかニュールも訝しんだ。
「11日前に神殿から使いでこっちへ出て来たらしいんだけど、実家に立ち寄ってた一昨日の夜に話しを聞いたんだよ…何だか怖いって言って怯えててさぁ~」
「お前、その従妹の話がしたくて盛ったんじゃないか? 婚約者なんだろ?」
「いやっ、聞いたのは本当なんだけどさ…一昨日来て、やっぱり俺の婚約者って可愛いな~って思ってさぁ…」
惚気に耳を閉ざす。
ニュールの中で一気に信憑性が薄れる気がしたが、気になる内容ではあった。
他の酒場でも、情報は集めるべきと判断し皆と別行動にした後、酒場を巡る。
そこで余りにも懐かしい危険な人物に出会うとは思わずに…。
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色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
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