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第二章 サルトゥス王国編
14.渦巻く流れ
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「魔石か、魔石か、魔石…か、串焼きか、焼菓子か、魔石か…悩むなぁ~」
フレイは貰ったお小遣いを何に使うか未だに迷っていた…まだ悩みそうだ。
既に食べ物を山ほど買い込んだモーイは自分で買ったものを食べつつ、密かに野望を企てていた…。
『ニュールに、”あ~ん”って食べてもらう!』
過去にも何回か試したが全て躱された。
以外と難易度が高かった。
そして手に串焼き25本携えて手ぐすね引いてニュールの帰りを待つ。
小遣いを全部使って良いとニュールは一言も言ってないのだが、モーイは既に使い切ってるし、フレイも使い切る気満々だった。
昨日、テレノに入る前に日が暮れたので手前の川沿いで野宿した。
その食事時、ニュールが銀貨を出してフレイとモーイに共通硬貨で25ルクルをそれぞれに渡してくれた。
「前に1ルクルで串焼き1本買えたから25本食べられるね!」
「全部串焼き食べられても困るが…」
ニュールはちょっと困った顔をしながら話を続けた。
「明日は境界門通過後、オレとは少し別行動になる。色々調べたり、境界壁を越えるに当たって色々提出しなきゃいけない書類とか手続きとかがあるから、皆一緒に行動するのが難しい。多分、昼前には着く。境界門から入った通りは栄えているらしいから、入り口近辺で今渡した金で好きなもん食っててくれ」
その時は二人とも目を輝かせて良く話を聞いてくれた。
フレイは結局串焼き1本と…魔石を手に入れる事にした。ちょっとニュールに怒られそうな気がしたので心の中で言い訳した。
『ちゃんとご飯、串焼き1本食べたもん!』
残り24ルクル。
フレイは手に入るか分からなかったが灰簾魔石を手に入れたかった。
店を見てまわると色々な種類の魔石が売っていた。
『リーシェの瞳の色だ』
見つけると近づいてはため息をつく…それを繰り返す。みんな灰簾魔石は100ルクル以上。
『やっぱり無理なのかな…』
展示されている魔石を見ながらため息をついていると足元に月長魔石が転がってきた。まん丸な上に結構大きい。
転がってきた方から紳士風の人の良さそうな商人が息を切らしながら走ってきて、あちこちに転がった魔石を追いかけている。見ると色々転がって来てた先に、転がりの発生源と思われる四角い鞄が開いて落ちている。
落としてしまったのだろう。
手早く集めてはいるが大分慌てている。
フレイは近くに転がって来た魔石を拾って届けてやるため近付いた。
あらかた転がり落ちた魔石を回収できたのか、男は既に鞄の中身を整えていた。
「あの、これ転がってきてました…」
男はビックリするように振り返るが、フレイが転がった魔石を届けてくれたと分かると大変感謝してくれた。
そして転がってきた月長魔石にしては珍しい橙色した魔石について色々語り出した。フレイは聞いたことない話ばかりで興味深かった。
「…拾ってくれた恩人に語り続けちゃってすまないね…」
「私も魔石好きだから聞けて嬉しかったです」
フレイは本当に魔石の話が楽しかった。
「店を回ってたの?何か気に入った魔石は探せたかい?」
「欲しい魔石があったんだけど高くって…」
フレイはあちこち見て回ったときの値段を思い出し溜息をついた。
「何の魔石だい?」
「灰簾魔石が欲しかったんだけど…みんなどれも手が出ない…」
「そうだね、灰簾魔石は結構人気があるから高めだよ…んっ!」
男はいきなり鞄の中身をかき回し始めた。折角綺麗に並べてあった鞄の中は再び見るも無惨にグチャグチャだ。
「…ちょっと待ってろぉ~ココに入ってた…小振りだけど質の良い…あぁぁ、宿に置いてきた方か!」
「??」
「いやっ、灰簾魔石を持ってたんだよ…耳飾り用だったんだけど片方をこうやって紛失してしまってね…」
魔石が転がる身振りをつけた…以前も魔石をぶちまけた事があったらしい。
「2つで60だったから片方だと30…おまけで24で良いと思ったんだ…」
商人と二人で一緒に今ここにソレが無いことに落胆した。
「お嬢さんはまだ時間はあるかい?」
その商人は思いついたようにフレイに声を掛けた。
「もう一つの商品箱は宿の受付で貴重品預かりになっているから、時間があるなら取ってくるよ…宿が丁度門の入り口辺りなんだ」
丁度、時告げの鐘の横にある大きな期計りを見ると、その針はニュール言われてた状態になっていた。
「なら一緒に行くよ!丁度、門横の検査場に用があるから…」
モーイは相変わらず道のど真ん中で妄想に埋まってたのでフレイは一応声をかける。
「モーイ、時間だからクイール出してあげに行くね」
「…わかった…」
モーイは夢の中であまり分かってなさそうだ。
フレイと商人はその100メル程度の距離を揺ったりと歩いた。
魔石商のおじさんはこの国の人では無いそうだ。
昔から魔石が好きで、魔石商に憧れて自分でコツコツ商品を集め夢を追ったようだ。
「だからこの子達には思い入れがあって、幸せにしてくれる人やこの子達が幸せにしたい人達の所へ買われて欲しいんだ…」
フレイは初めて魔石への思いがフレイと同じぐらい濃い人に出会った。
そして、このニュールよりチョット上の年代のおじさんに親近感を覚えた。
モーイはひたすら妄想に邁進していた…訳では無い。
しっかり依頼された内容を守りながらニュールとの未来を勝手に夢見ていただけだ。
思い込み強く、強い者の大好きなモーイだが、助けられたと言う状況だけで無くニュールの何かを本能が嗅ぎ分け執着しているようだ。
程ほど強いモーイは方向音痴ではあったが、程ほど優秀な魔石使いでもあった。
夢に現を抜かしているように見えてもしっかり1キメルの範囲に探索魔力を広げて敵を感知し、然り気無く排除している。
「今日は昼から飲みすぎの奴が多いなぁ」
「陽気がいいからかなぁ」
街行く人の会話が流れてくる…。
壁にもたれ掛かり飲み過ぎたようにグッタリしている者がモーイが排除した者だとも知らずに。
フレイは魔石商と話していた後、クリールを向かえに行くと言って門の方へ行った。
横に居る魔石商の気配はごく普通のオヤジだった。
『ニュールも街で見かけた時はごく普通のオヤジだったのに、あんなに凄いから…惚れちまったじゃないか!!』
出会いのお姫様気分を思い出して通りのど真ん中で身悶えしているモーイは、たとえ美少女な見た目を持っていようとも立派な変人であった…。
昼飯も摂らず、せっせと書類を出したり客車の予約をしたり働いていたニュール。
『アイツら、大丈夫だろうか…』
自由な二人を思い出し悩む。
予定の刻限より大分早いが門の前に立つ。
クリールを迎えに行ったか気になりそちらへ視線を向けると、丁度フレイが商人風の男と話しながらクリールの受け取り窓口を通り過ぎる。
声が届かない距離でもないので叫んだ。
「おーい!フレイ!クリールの迎えはソコだぞ!」
聞こえないようだ。
「おーい!!フレイ!」
もう一度大声で叫ぶ。フレイの周りに居た者達は皆振り向くのに、その二人だけは此方を向かない。
嫌な予感がしてより精密な探索をかけようとした時、モーイがニュール目掛けて走り込んできた。
そしてニュールを背にし、正面からの衝撃を受け止め不意打ちの攻撃から守ろうとした。
しかし、その衝撃は今までモーイが経験したことの無い強さであり防御結界を纏わせた剣を打ち砕き、剣を持つその身さえも粉微塵に変えられるぐらいの魔力を受けてしまう…と覚悟した。
その時、それ以上に硬質な防御結界が形成されモーイを守る。
「…ありがとうな」
モーイはニュールを救えない処か再び救ってもらった。
それなのに守りに来たモーイの気持ちまで察し礼を言う…今まで出会ったことの無い部類のこの男に今までと違う次元で心酔した。
『この男になら、その身処か命さえ捧げられる…』
今まで以上にニュールが熱烈な攻撃を受けることは確実だった。
自身が展開した防御結界の中で防御と同時に精密な探査をかけた。そしてニュールは得られた反応に納得し…度重なる自身の手落ちに苛立った。
ニュールが叫ぶ声にフレイが気付かなかったのは、其処には巧みな遮音結界が展開されていたから…。
建物にフレイを連れて入ろうとしていた男は一瞬ニュールと目を合わせ微笑み手を上げて挨拶する。
柔らかな全てを受け入れるような微笑み…但し全てを諦めてしまった絶望を内在させた微笑みだった。
ニュールの思考の中に、今の姿と変わらぬ面差しの男が記憶に浮かび上がった。
『《30》…』
ニュールが知る以前から、影の末端番号に昇るでも無く落ちるでも無く居座り続けると言う者。全てを諦め達観しているが故に一番非情であり、一番始末に負えない影。人の器だけでなく心までも殺せるような男だった。
フレイは貰ったお小遣いを何に使うか未だに迷っていた…まだ悩みそうだ。
既に食べ物を山ほど買い込んだモーイは自分で買ったものを食べつつ、密かに野望を企てていた…。
『ニュールに、”あ~ん”って食べてもらう!』
過去にも何回か試したが全て躱された。
以外と難易度が高かった。
そして手に串焼き25本携えて手ぐすね引いてニュールの帰りを待つ。
小遣いを全部使って良いとニュールは一言も言ってないのだが、モーイは既に使い切ってるし、フレイも使い切る気満々だった。
昨日、テレノに入る前に日が暮れたので手前の川沿いで野宿した。
その食事時、ニュールが銀貨を出してフレイとモーイに共通硬貨で25ルクルをそれぞれに渡してくれた。
「前に1ルクルで串焼き1本買えたから25本食べられるね!」
「全部串焼き食べられても困るが…」
ニュールはちょっと困った顔をしながら話を続けた。
「明日は境界門通過後、オレとは少し別行動になる。色々調べたり、境界壁を越えるに当たって色々提出しなきゃいけない書類とか手続きとかがあるから、皆一緒に行動するのが難しい。多分、昼前には着く。境界門から入った通りは栄えているらしいから、入り口近辺で今渡した金で好きなもん食っててくれ」
その時は二人とも目を輝かせて良く話を聞いてくれた。
フレイは結局串焼き1本と…魔石を手に入れる事にした。ちょっとニュールに怒られそうな気がしたので心の中で言い訳した。
『ちゃんとご飯、串焼き1本食べたもん!』
残り24ルクル。
フレイは手に入るか分からなかったが灰簾魔石を手に入れたかった。
店を見てまわると色々な種類の魔石が売っていた。
『リーシェの瞳の色だ』
見つけると近づいてはため息をつく…それを繰り返す。みんな灰簾魔石は100ルクル以上。
『やっぱり無理なのかな…』
展示されている魔石を見ながらため息をついていると足元に月長魔石が転がってきた。まん丸な上に結構大きい。
転がってきた方から紳士風の人の良さそうな商人が息を切らしながら走ってきて、あちこちに転がった魔石を追いかけている。見ると色々転がって来てた先に、転がりの発生源と思われる四角い鞄が開いて落ちている。
落としてしまったのだろう。
手早く集めてはいるが大分慌てている。
フレイは近くに転がって来た魔石を拾って届けてやるため近付いた。
あらかた転がり落ちた魔石を回収できたのか、男は既に鞄の中身を整えていた。
「あの、これ転がってきてました…」
男はビックリするように振り返るが、フレイが転がった魔石を届けてくれたと分かると大変感謝してくれた。
そして転がってきた月長魔石にしては珍しい橙色した魔石について色々語り出した。フレイは聞いたことない話ばかりで興味深かった。
「…拾ってくれた恩人に語り続けちゃってすまないね…」
「私も魔石好きだから聞けて嬉しかったです」
フレイは本当に魔石の話が楽しかった。
「店を回ってたの?何か気に入った魔石は探せたかい?」
「欲しい魔石があったんだけど高くって…」
フレイはあちこち見て回ったときの値段を思い出し溜息をついた。
「何の魔石だい?」
「灰簾魔石が欲しかったんだけど…みんなどれも手が出ない…」
「そうだね、灰簾魔石は結構人気があるから高めだよ…んっ!」
男はいきなり鞄の中身をかき回し始めた。折角綺麗に並べてあった鞄の中は再び見るも無惨にグチャグチャだ。
「…ちょっと待ってろぉ~ココに入ってた…小振りだけど質の良い…あぁぁ、宿に置いてきた方か!」
「??」
「いやっ、灰簾魔石を持ってたんだよ…耳飾り用だったんだけど片方をこうやって紛失してしまってね…」
魔石が転がる身振りをつけた…以前も魔石をぶちまけた事があったらしい。
「2つで60だったから片方だと30…おまけで24で良いと思ったんだ…」
商人と二人で一緒に今ここにソレが無いことに落胆した。
「お嬢さんはまだ時間はあるかい?」
その商人は思いついたようにフレイに声を掛けた。
「もう一つの商品箱は宿の受付で貴重品預かりになっているから、時間があるなら取ってくるよ…宿が丁度門の入り口辺りなんだ」
丁度、時告げの鐘の横にある大きな期計りを見ると、その針はニュール言われてた状態になっていた。
「なら一緒に行くよ!丁度、門横の検査場に用があるから…」
モーイは相変わらず道のど真ん中で妄想に埋まってたのでフレイは一応声をかける。
「モーイ、時間だからクイール出してあげに行くね」
「…わかった…」
モーイは夢の中であまり分かってなさそうだ。
フレイと商人はその100メル程度の距離を揺ったりと歩いた。
魔石商のおじさんはこの国の人では無いそうだ。
昔から魔石が好きで、魔石商に憧れて自分でコツコツ商品を集め夢を追ったようだ。
「だからこの子達には思い入れがあって、幸せにしてくれる人やこの子達が幸せにしたい人達の所へ買われて欲しいんだ…」
フレイは初めて魔石への思いがフレイと同じぐらい濃い人に出会った。
そして、このニュールよりチョット上の年代のおじさんに親近感を覚えた。
モーイはひたすら妄想に邁進していた…訳では無い。
しっかり依頼された内容を守りながらニュールとの未来を勝手に夢見ていただけだ。
思い込み強く、強い者の大好きなモーイだが、助けられたと言う状況だけで無くニュールの何かを本能が嗅ぎ分け執着しているようだ。
程ほど強いモーイは方向音痴ではあったが、程ほど優秀な魔石使いでもあった。
夢に現を抜かしているように見えてもしっかり1キメルの範囲に探索魔力を広げて敵を感知し、然り気無く排除している。
「今日は昼から飲みすぎの奴が多いなぁ」
「陽気がいいからかなぁ」
街行く人の会話が流れてくる…。
壁にもたれ掛かり飲み過ぎたようにグッタリしている者がモーイが排除した者だとも知らずに。
フレイは魔石商と話していた後、クリールを向かえに行くと言って門の方へ行った。
横に居る魔石商の気配はごく普通のオヤジだった。
『ニュールも街で見かけた時はごく普通のオヤジだったのに、あんなに凄いから…惚れちまったじゃないか!!』
出会いのお姫様気分を思い出して通りのど真ん中で身悶えしているモーイは、たとえ美少女な見た目を持っていようとも立派な変人であった…。
昼飯も摂らず、せっせと書類を出したり客車の予約をしたり働いていたニュール。
『アイツら、大丈夫だろうか…』
自由な二人を思い出し悩む。
予定の刻限より大分早いが門の前に立つ。
クリールを迎えに行ったか気になりそちらへ視線を向けると、丁度フレイが商人風の男と話しながらクリールの受け取り窓口を通り過ぎる。
声が届かない距離でもないので叫んだ。
「おーい!フレイ!クリールの迎えはソコだぞ!」
聞こえないようだ。
「おーい!!フレイ!」
もう一度大声で叫ぶ。フレイの周りに居た者達は皆振り向くのに、その二人だけは此方を向かない。
嫌な予感がしてより精密な探索をかけようとした時、モーイがニュール目掛けて走り込んできた。
そしてニュールを背にし、正面からの衝撃を受け止め不意打ちの攻撃から守ろうとした。
しかし、その衝撃は今までモーイが経験したことの無い強さであり防御結界を纏わせた剣を打ち砕き、剣を持つその身さえも粉微塵に変えられるぐらいの魔力を受けてしまう…と覚悟した。
その時、それ以上に硬質な防御結界が形成されモーイを守る。
「…ありがとうな」
モーイはニュールを救えない処か再び救ってもらった。
それなのに守りに来たモーイの気持ちまで察し礼を言う…今まで出会ったことの無い部類のこの男に今までと違う次元で心酔した。
『この男になら、その身処か命さえ捧げられる…』
今まで以上にニュールが熱烈な攻撃を受けることは確実だった。
自身が展開した防御結界の中で防御と同時に精密な探査をかけた。そしてニュールは得られた反応に納得し…度重なる自身の手落ちに苛立った。
ニュールが叫ぶ声にフレイが気付かなかったのは、其処には巧みな遮音結界が展開されていたから…。
建物にフレイを連れて入ろうとしていた男は一瞬ニュールと目を合わせ微笑み手を上げて挨拶する。
柔らかな全てを受け入れるような微笑み…但し全てを諦めてしまった絶望を内在させた微笑みだった。
ニュールの思考の中に、今の姿と変わらぬ面差しの男が記憶に浮かび上がった。
『《30》…』
ニュールが知る以前から、影の末端番号に昇るでも無く落ちるでも無く居座り続けると言う者。全てを諦め達観しているが故に一番非情であり、一番始末に負えない影。人の器だけでなく心までも殺せるような男だった。
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