守護者契約~自由な大賢者達

3・T・Orion

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おまけ 護衛契約書は大切に保管される 2

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「護衛契約結んだ時は、ニュールを射止める為の手段は選ばず…って気分だったんだ。だから報酬としてニュールから奉仕してもらえるってんなら悪くないぞ、上等! って感じだったんだよ…」

ちょっと恥ずかしげに言い訳するモーイの表情に、何とも言えぬ…苦さと切なさ…が混ざる。

「まぁー拘束して組み敷いて、アタシの魅惑的な御奉仕で攻め落とし…強制的に既成事実を作ろうとしたんだ。だけど…何度試しても落ちなかったんだよなぁ」

「すっ…凄い力業だねぇ…」

"落ちる" と言う言葉働きかける場所が…気持ちへ…なのか…意識へ…なのか、意味を図りかねるフレイリアル。
片恋話を聞いてた気がするが、途中から戦話についてなのかと思えてくる。
3人で旅する道程でも、果敢…と言う名の強引さで…モーイがニュールへ挑んでいた事を思い出す。
ニュールに対するモーイの積極的策略に基づく誘惑の数々、モーイ的には後チョットの所まできてたらしい。

「落ちそうなくせに毎回落ちない…って、全く失礼なオヤジだよな! アタシが御馳走してやろうってのに食わねってさ、こーんなに美しくってキュッとしてるんだぞ…ボンッとポンッがちょっと少な目だが旨そうだろ?」

フレイリアルは同意求められるが、何気に色々と…胸とか尻とか気持ちとか…大事な部分が抜けてるのが気になり…何とも答えられない。
フレイリアルと一緒にいた時以降も、攻めの一手で挑み続けたであろう…モーイの数々の大胆な行動。

「だからコッチから美味しーく頂いちゃって…報酬をたーんまり搾り取るつもりだったんだ。そして名実共に、母親…って立場を目指してたんだがなぁ~がははっ」

数々の挑戦を懐かしむように…がははっと笑いながら語るモーイは、どこかスッキリした表情になっていた。
そして…モーイの語る思い全てが、過去のモノ…である事に気付くフレイリアル。

「今は違うの?」

思わず尋ねてしまう。
其の単純な疑問を受け、今まで正面から向き合っていたモーイが顔を横向ける。
しかも…少し俯き加減でほのかに頬を染め、躊躇いがちに言葉返す。

「あぁ…そのな、それでフレイに相談を…話を聞いて欲しいと思ったんだ」

其処には…普段は忘れがちなモーイの女神の如き美しさ際立たせる、可憐に恥じらう面立ちがあり…其処には更に魅惑的な微笑みが追加されていた。
目にした者の心射ぬく輝き放ち、胸に突き刺さる。
そして其の中に浮かぶ…戸惑うような表情さえも、なお一層の美しさの糧となる。
心の内をさらけ出した表情浮かべるモーイに対し、フレイリアルも戸惑い隠せぬ表情浮かべ…言葉待つしかなかった。

今までも誰かに意見を求めたり…教え受け…指導された事ぐらいは、モーイの人生の中にだってある。
だが…只々際限無く…徹底的に…話を聞いて欲しいと思ったことは無かったし、漠然としたまま…取り留めもなく…辿り着く先分からず相談する様な事も無かった。
それだけモーイの人生にとって衝撃的で重大な事態…とも言える。

「あのな…アタシに結婚申し込む奴が居てな…」

モーイが浮かべた美しい表情に…当惑しつつも見とれていたフレイリアルは、耳にした言葉に衝撃を受ける。
そして反射的に悪口雑言が溢れだす。

「えっ!! ヤッパリ何だかんだと籠絡しちゃったの? ニュールってば意思弱! でもっ、モモは? モモと2人とも? ニュールってば国王になって遣ってる仕事って、後宮作り?! 子作り? 産めよ増やせよ? 自前で仲間増やしちゃう気なの? 気取った冷徹魔物っぽい行動とってたくせに、真のエロエロ糞オヤジ? いやっ魔物の意識入っちゃったせい? だから女癖も悪し? 最低最悪野郎?!!」

テンパりながらもフレイリアルは嫌悪の表情浮かべ、まるで身内の…父親の色事での悪評耳にしたかのように…一気にニュールを貶め…誹謗中傷的な内容を並べ立てる。

「アタシは…そう言うの狙ってたんだけどなぁ…」

モーイはモーイで…遠い目で、終わった出来事…諦めた過去として感想語る。
心の中に渦巻くのは、難攻不落の砦の如きニュールの気持ちを此れから得る者への…遣り場無き羨望の思い。
そして、僅かばかり残る未練…とでも言えそうな…本気の恋慕であったが故に残る…複雑な思い。

「チャラチャラした好色オヤジだったら、遣りやすかったんだけどな。残念な事に、アタシには全く攻略出来そうもなかったんだ…だからこそ本気で好…だったのかもな」

そう呟き洩らすモーイの瞳は空を見つめ、口にする言葉と共に…2つの思いを天に向け解き放つ。

「…ってニュールじゃないの? 違う…って、えっ…じゃあ…誰だろう? 私の知ってる人??」

嵐過ぎ去ったかのように落ち着き、勘違いであった事に気付くフレイリアル。
だが散々好き放題…悪し様に言葉ぶつけていたニュールについてだが、一瞬で話題から切り捨てる。
非常に切り替えが早い。
興味赴くまま、モーイに求婚した相手を探り始める。
言われ損なニュール、此の場に居ないのは幸いだが…少し気の毒な気もする。

「あぁ、良く知ってる奴だよ…」

「すっごく気になるよぉ!」

此の…正当な女子の基準から外れている2人の間にも、一気にポワポワした柔らかな雰囲気が高まる。
本格的な2人女子会的語らいが開幕するようだ。
しかし内容が、待望の恋話…から一足飛びに結婚話へと突き進む。

手に入らなかった片恋でしんみりした雰囲気になったのは一瞬であり、女子会の本領発揮! とばかりに、キャイキャイした雰囲気の中…フレイリアルがモーイに結婚申し込んだと予想する相手の名を述べていく。

「…うーん、キミア?」

「あんまりアタシと接点ないし、タラッサ以外で見たことないぞ? それに旅途中の子供姿の印象が強すぎる…」

「確かに子供だったもんね。私は其の後のスケベ兄さん的な、お姉さんに囲まれてる印象が強いかも…」

「どっちにしても微妙だな…」

予想1人目…名前をあげたのはフレイリアルだったが、モーイと共に "無し判定" を下す。

「そっかぁーそんじゃタリクは?」

「懐かしいな! でも年下はナシだ」

「でもモーイってば、頼もしいから年下にもモテそうだよね」

フレイリアルの指摘に、モーイはチョット嫌そうな表情で断言する。

「アタシは甘えたい!」

「タリクなら甘えさせてくれそうじゃない? まぁツン…だけどね…」

「それ以前に、旅してた時以来会ってないんだぞ。アイツもサルトゥスだろ?」

「確かに会わなきゃ、求婚も何もあったもんじゃないよね」

フレイリアルもモーイの指摘に納得する。

「アタシはアイツと絡んだことないし、アイツから存在を認識されてない気がする」

「確かにタリクはアルバシェルさんにしか興味ないっか…」

「イヤっ、ヤツにだってキット色々な思いはがあると思うぞ…」

あんまりな対応に、思わずタリクを擁護する言葉を持ち出すモーイ。
タリクが興味持ち関心向かう先、アルバシェルの明確な思いに寄り添いつつ…タリク自身が向ける思い。
察しの良いモーイは、気付いてた。
故にフレイリアルの清々しいぐらい周囲を眼中に入れぬ様を目にすると、思わず気の毒になる。

フレイリアルとモーイは久々の再会ではあるが、近況は伝え合ってきた。
他の旅仲間とも連絡はとっている。
だが特殊な意味で気になる相手についてなど…其処まで踏み込んだ近況は、誰からも聞く機会無かったので…全く思い浮かばない。
色々と名前をあげてみても…カスリもしないのは当然か。

「そうだよねぇ。皆其々の生活を営んできたんだものねぇ。皆と離れている間の生活について思い浮かばないけど、私が知ってる人なんだよね…うーん…」

頭悩ますフレイリアル。
色々と推察されている現状に恥ずかしさを覚え、モーイは再度視線逸らし待機する。

「今回来た人の中にも、新しく目にした…」

「前から知ってる奴だ…」

辿り着かぬもどかしさに、つい手掛かりを与えてしまうモーイ。

「うーん…じゃあカームさんとかじゃないって事だよね…、あっ…」

何を思いついたのか、瞬間顔を曇らせ…怪訝な表情でモーイに尋ねる。

「…まさか…アノ…糞男が、モーイにチョッカイ出したんじゃないよね?」

「はいぃ?」

フレイリアルから、若干怒りにより魔力導き出されているのを感じるモーイ。
其の意味の分からぬ状況に、動揺しつつも短く問う。

「…どっ…どうしたんだ?」

「アノ碌でもない下劣な奴! もし奴なら絶対に騙されてるからダメだよ!!!」

「???」

「プラーデラの宰相にチャッカリ収まってる、悪逆非道な最悪最低な嫌な奴だけは反対だからね!」

珍しく頭ごなしに否定的な意見ぶつけるフレイリアル。
其の剣幕に一瞬呆気に取られるモーイだが、殺気立ちながら悪し様に語る相手はピオの事らしい。
売られなくとも買ってやる! と言った感じで、ピオについての話題に対しては常に喧嘩腰で挑む姿勢を崩さない。
ある意味ブレない、フレイリアル自身で話題持ち出す時も例外ではない。
ピオにとってのフレイリアルは、取るに足らぬ存在であり…小煩い鳴き声で威嚇する小動物…ぐらいに思っているのが一見して分かる。
だがフレイリアルにとってのピオは、宿敵…怨敵…不倶戴天の敵…の様であった。

「もし手出ししてくるなら、ありとあらゆる所を2度と使えないようにチョン切ってやるから教えて!」

即断即決即行動…と言った感じで断言する。
お願いする前に、物騒な一方的報復行動を実行に移しそうな勢いのフレイリアル。
勿論…モーイは有難くお断りする。
王女様の口から出る言葉とは思えないえげつない言動だが、凄まじき思いを切り離せないぐらいの嫌悪なのであろう。
其れは "一途な執着" とでも呼べそうだ…とモーイは思うが、気軽に伝えた日にはフレイリアルに絶交されるか…ピオを抹殺しに行きそうだ。

更にフレイリアルの助言者であり…保護者であるリーシェライルの耳に入れば、考え改めさせるため…口を物理的に消去されてしまいそうである。
何度か直接言葉を交わした事のあるモーイにとって、リーシェライルとは…遭遇した中で一番の危険人物である。フレイリアルの為ならば、全ての陰惨な事象を予告なく引き起こせる災厄級のモノであると確信できる。
故にピオとフレイリアルについての考察は、自身の為…絶対に口にしてはいけない…とモーイの本能が警告を送る。

「あぁ、違うよ。あの人はニュールしか目に入ってないし、城下に山程付き合ってる御嬢様方が居るらしいぞ」

「チッ、奴が自慢しそうな内容だね。ウソぶくならもう少しマシな事言いやがれだよ、糞男に騙される娘…なんて…」

其処まで言って、ハッとした表情浮かべ言葉を止めるフレイリアル。
ピオに…コンキーヤからヴェステに連行された時の事を思い出し、其の事実に思わず驚愕の叫び声を上げる。

「あぁあぁあ~ヴェステに居たぁ~、騙されてる気の毒な娘さん達が居たよ。あぁ思い出すだけで腹が立つぅ~、キイィィムカつくぅぅぅ。あの最低野郎の本性に何で皆して気付かないんだろう!!」

フレイリアルの頭の中で、怒りの爆発が連鎖しているようだ。
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