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21. 場を制するモノ
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賢者の塔を攻撃してきた者達が最初に居たのは、塔からは少し離れている直接の確認しづらい…王城庭園の外れにある木立ち並ぶ外周路だった。
フレイリアルが見つけた時、移動型の簡易魔力砲を持ち賢者の塔を攻撃していた。
だが、発見される事を厭わない…と言った感じで隠蔽魔力施すこともなく、塔に向かい攻撃を仕掛け続けていたのだ。
その前に攻撃を仕掛けてきている場所を2か所程回り…片付けてきたフレイリアルだったが、そちらは2名ずつ…完全な隠蔽魔力を纏い攻撃していた。
同じように気配消し対応したので一瞬で片がつき…フレイリアル的には期待した状況は訪れず、肩透かし…で終わってしまった。
「何をやってるの!」
新たに見つけた襲撃者に対し、誰何するフレイリアル。
問い質された者達は、砲を投げ捨て逃げ始める。
此処の襲撃者達は、まるで…見つけては欲しいが捕まりたくはない…と言った感じであり、声を掛けても近づくまで逃げない。
逃走経路だけは万全…といった感じなのか、追いかけるフレイリアルを小馬鹿にした余裕の表情浮かべ…様子窺いながら逃げていく。
捕まりそうで捕まらない…ギリギリ追われる極限の状態を演出するかの如く維持し、その後…用意していたと思われる転移魔石を発動しようと刹那で魔力動かし…移動する…つもりだったようだ。
だが追いかけてきたのは、現・青の塔の大賢者…であり、空の巫女…であったモノ。
空間魔力の扱いは其処らの賢者とは一線を画す。
「この空間は閉じたから、転移系魔力は使えないよ」
その言葉に驚愕の表情浮かべる襲撃者達ではあったが、急遽…防御結界でも施したのだろう…と推測したようだ。
大賢者だと気付いたとしても、その能力の全てが知られている訳ではない。
距離をとりつつ、フレイリアルを無言で見つめ…品定めをする者達。
フレイリアルも相手の値踏みをする。
今回の相手は隠蔽魔力は使ってないので、妙に対等に拘るフレイリアルは同様の対応をする。相手と自身の人数や力量の差は考慮しない…微妙に片手落ちな部分が、大変フレイリアルらしい。
賢者の塔の者が纏う一般的なフード付きローブを頭から目深に被るが、小柄であり…女子供で有ることは隠せないだろう。
後から応援が来る様子がない事も、探索魔力展開され直ぐに把握される。
単独であるならば…どんなに魔力扱いが優れていたとしても、襲撃者達より確実に劣る存在に見えるフレイリアル。
戦いに優るようには思えない上、戦えたとて5人を同時に相手に出来るはずもなし…と襲撃者達は決断を下す。
侮りが窮地を呼び込むのは…万物共通する落とし穴。
勝てる…と判断した其の者達は、逃げ道を得るために一斉にフレイリアルに攻撃仕掛ける。
「凄いね! 皆、ちゃんと魔力体術を身につけているんだねぇ」
繰り出される拳に魔力を感じ、思わず感嘆するフレイリアル。
始めての実戦と言えるような戦いに昂る。
在る意味…相手を馬鹿にした発言、見下す訳では無いが…対等な者として評価してない上から目線。
しかもフレイリアルに一切悪気無く、侮らず正当に評価し称賛してるつもりだった。
魔力体術は、魔力で筋力強化し、力と速さを高めた体術。
賢者級の能力持ち…鍛えられた肉体持つ者が操る体術は、極めれば…ただ鍛えただけの者を20人相手にしても一瞬で制する力持つ。
襲撃者は5人いて、皆同様に鍛えているであろう。
此の場に居る時点で落ちぶれてはいるが、腐っても賢者。
自負を持つからこそ、フレイリアルの言葉は余計に腹立たしく…怒りの炎に油注ぐ。
「…ちっ、クソッ! なめやがって」
襲撃者の1人が…流石に偉そうに語るフレイリアルの態度に我慢の限界を越えたのか、無言を保っていた口を開く。
その者が最初に本気の攻撃を仕掛けてきた。
拳を撃ち込みつつしなやかに蹴りを入れる。全ての攻撃を魔力で底上げし、1つ1つが殺傷力持つ攻撃になっている。
その攻撃に防戦一方で対応するフレイリアル。
勢いでフード外れ髪色が露になる。
「お前…其の髪色! 忌まわしき樹海の縁者。似非大賢者の王女か!」
フレイリアルの素性を把握しても、攻撃の手を緩めず…むしろ仕留めにかかってくる者達。
「はっ、所詮この程度か…大賢者とは言え小娘…しかも、樹海色持つ下等な存在! この状況、様子見をしていた等と言う強がりも言えまい」
吐き捨てられる言葉から…フレイリアルが何者であるか把握したようだったし、圧倒的優勢…と判じ大言壮語を紡ぎだす。
フレイリアルは悪党な台詞を待ってました!…とばかりに、目を輝かせ受け取る。
「凄い!…」
「今更の称賛など要らぬ! お前の専横…その血であがなえ!」
「うんっ! その台詞、子悪党っぽくって最高だよ」
拳を避けつつ襲撃者の言葉に対する感想を、嬉々として口にする。
そしてフレイリアルは、やっと言いたかった台詞の1つを口にする事が出来た。
「じゃあ此処からは私の順番…あっ、出番…の方がそれっぽいかな?!」
「??」
そう言葉にしたフレイリアルは、躱していた襲撃者からの攻撃を…いきなりガシリッと掴む。
襲撃者にとっては予想外の事態。
今まで攻撃する実力が無いから防戦一方だと思っていたモノが、気軽に攻撃を受け止める様。
度肝を抜く光景であった。
それは攻撃していた者に混乱引き起こし、その行動1つで時と空間が固まり…状況が反転する。
「あれっ? 他にも言いたかったんだけど…嬉しくなったら考えてた他の台詞忘れちゃった…残念だなぁ」
その言葉に正気を取り戻した襲撃者は、再度状況を変えようと足掻き…他の攻撃を加えてみる。他の者も攻撃加わるが、1度掴まれた拳がその場から動かないし…全ての攻撃が相殺される。
フレイリアルの幼さ残る笑みが喜びに溢れ…対する者達は初めての寒気のようなものを感じ始める。
「こう言う "力で場を制する者"って言うのに、なってみたかったんだぁ」
そして言葉通り…フレイリアルが其の場を制圧した。
あっけない幕切れとなる。
少し人数が多かったので魔力での拘束に、着用していたローブを利用し…5人纏めて拘束する。
師匠譲りの…苛烈さ纏う傍若無人の徒へと変化したフレイリアルは、襲撃者達の顔から血の気を消し去り…鮮やかなる恐怖を刻み込んだのだった。
だが…襲撃者を拘束はしたが全員放置…と言う訳にもいかず、其の後ピオに会うまでズルズルと引き連れて移動していた。
フレイリアルがピオと遭遇し…ニュールまで現れた場所は、広大な庭園内とは言え…見通しの良い場所だった。
其のような場所で、ピオとカームは現れたニュールの足元に即…跪き頭を垂れる。
王宮内とは言え庭園であり、跪いての挨拶まで要するのは相当の貴人…国王及び其れに類する存在の前である事が多い。
一種異様な光景であり…この状況だけでも少し注目を浴びてしまいそうだった。
幸いに周囲に人は居ない。
他国の使節が来訪することもあり一定時間…この場所への出入りは限られた者達のみに限定されていた。
庭園内に居る者のは…見回り警戒する警備担当者…来訪者や其の関係者のみであり、普段は業務を行うような庭園や城壁の管理者も居ない。
但し…その分王城の各所及び賢者の塔の高所に設置されている見張り台より、各所を警戒する者は増やされている。
目立つ行動はなるべく控えたかった。
足元に跪く2人は軽い隠蔽魔力纏い、ある程度認…識阻害識されるよう努めてた。
其れなのに…横に立つ小さな熊型魔物…といった感じに、大地から力取り入れるかの様にデンっと両足を開き…未だピオへの威嚇を解かず…腰に手を当て…胸を張り立つフレイリアル。
一切の隠蔽魔力を纏わず其処に立っていた。
最後に戦った襲撃者に合わせ、隠蔽魔力を解除していたからだ。
しかも恐ろしい事に、フレイリアルイはヴェステ風のピタリとした戦闘服のみ纏っている状態。
メリハリが前面に押し出され、これでもかと存在を主張する。
ピオと共にいたカームが、最初…行動不能に陥っていたのは此れが原因だった。
四角四面…無表情…無感動なカームでさえ目が釘付けになり固まっていたぐらいであり、その激しい凹凸は周囲に…特に初めて其れを目にする者達には衝撃を与える。
ある意味…行動を呪縛する兵器のような存在。
フレイリアルが着ていたローブは襲撃者の拘束に使ってしまったので、ヴェステの服だけではいつも以上に…出るとこが出ていて…立派で目立つ。
それでも…襲撃者を大人しく従わせる役には立ったようだ。
未だに魅了魔力かけたが如く付き従う。
この場所は、城からも…賢者の塔からも…視認出来る場所。
その上、色々と監視する手段使えば詳細把握まで出来るような距離。
目立たない様にすべき立場なのに、ある意味何処からでも確認出来る場所にいるのに、色々な意味で関心を引きそうなモノが多く…気付かれたなら直ちに状況探る者が向けられるだろう。
微妙な此の状況に…頭の痛くなるニュール。
「先ずはご報告を」
足元に跪くピオがニュールに申し出る。
「あぁ、分かった。だがまず、この場で跪いているのは目立つので立ち上がってくれ、そして長くなるような報告なら場所を改めよう。早く知ったほうが良い内容なら簡略に取り合えず報告してくれ」
戦っている間に目立たない場所から移動していたフレイリアルと襲撃者たちは王城庭園のど真ん中まで移動していたのだ。それなのに色々と目立つ者達、今まで様子窺う者が現れない事のほうが怪しい…。
今更だが、全員が隠蔽魔力纏うよう指示すべきか一瞬ニュールは悩む。
ピオが立ち上がり述べる。
「簡略に…取り合えずの報告させて頂きます。ヴェステの関わりが随所にみられました…しかも国王の魔力の痕跡まで」
「…なるほどな」
ニュールが呟く。
「エリミアがアノ国にとって…アノモノにとって、動かしやすい場所なのか…手に入れたい場所なのか…詳しく検討する必要がありそうだな」
ニュールは一瞬目を閉じ考え巡らすが、ほんの数旬だと言うのに周囲の雰囲気が騒がしくなる。
何事かと目を開けると、何やら…身振り手振りで戦っている様子が目の端に映る。
其処には…子供の喧嘩の様に、フレイリアルとピオが争う姿があった。
言葉無くピオを睨みつけるフレイリアルに対し、ピオがフレイリアルの突き出した胸の線を自身に描き…揉むような仕草をして揶揄う。
それに対しフレイリアルが更に怒りを露わにする "低次元な子供の遊び?" と言うような喧嘩をしていたのだ。
実は仲良しなのでは無いかと問いたくなるが、問えば確実に面倒そうである。
思わず痛み増してく頭に手を置き、首振りながらニュールが言葉漏らす。
「子供なんだから、そんなに揶揄い虐めてくれるな。全くお前達は合わないなぁ…」
一応部下であり年齢的にも上…と言うことで、ピオが注意を受けた形だった。
ニュールに軽い叱責を受けるピオに対し、舌出し顔をしかめ自身の尻を叩き…揶揄い返すフレイリアル。
その様子もシッカリ目に入ったので、結局同じようにフレイリアルも諭す。
「フレイ…お前も、もう完全な子供…って訳じゃないんだから自身を省みろ」
そう言いながらニュールは自分の羽織るマントをフレイに掛ける。
フレイリアルの恰好は中々に扇情的であり、その場の…意識のある男達の視線全てが…チラチラと一点に向けられているのが把握出来た。
父親的心情持つニュールには…複雑な気分である。
しかも放置すると…捕らえた者達から必要な事を聞き出す前に、塔に残る麗しの御方によって…その場全てが消し炭に加工されてしまいそうな気がしたのでニュールは早々に手を打った。
何か…全て今更…な気分に陥るニュール。
大仕事後の仕事としては精神的に負担が大きい内容だった。
『…あぁ、せめて何らかの報酬が欲しいぞ…』
決して叶わぬ願いと知りながらボヤクのであった。
フレイリアルが見つけた時、移動型の簡易魔力砲を持ち賢者の塔を攻撃していた。
だが、発見される事を厭わない…と言った感じで隠蔽魔力施すこともなく、塔に向かい攻撃を仕掛け続けていたのだ。
その前に攻撃を仕掛けてきている場所を2か所程回り…片付けてきたフレイリアルだったが、そちらは2名ずつ…完全な隠蔽魔力を纏い攻撃していた。
同じように気配消し対応したので一瞬で片がつき…フレイリアル的には期待した状況は訪れず、肩透かし…で終わってしまった。
「何をやってるの!」
新たに見つけた襲撃者に対し、誰何するフレイリアル。
問い質された者達は、砲を投げ捨て逃げ始める。
此処の襲撃者達は、まるで…見つけては欲しいが捕まりたくはない…と言った感じであり、声を掛けても近づくまで逃げない。
逃走経路だけは万全…といった感じなのか、追いかけるフレイリアルを小馬鹿にした余裕の表情浮かべ…様子窺いながら逃げていく。
捕まりそうで捕まらない…ギリギリ追われる極限の状態を演出するかの如く維持し、その後…用意していたと思われる転移魔石を発動しようと刹那で魔力動かし…移動する…つもりだったようだ。
だが追いかけてきたのは、現・青の塔の大賢者…であり、空の巫女…であったモノ。
空間魔力の扱いは其処らの賢者とは一線を画す。
「この空間は閉じたから、転移系魔力は使えないよ」
その言葉に驚愕の表情浮かべる襲撃者達ではあったが、急遽…防御結界でも施したのだろう…と推測したようだ。
大賢者だと気付いたとしても、その能力の全てが知られている訳ではない。
距離をとりつつ、フレイリアルを無言で見つめ…品定めをする者達。
フレイリアルも相手の値踏みをする。
今回の相手は隠蔽魔力は使ってないので、妙に対等に拘るフレイリアルは同様の対応をする。相手と自身の人数や力量の差は考慮しない…微妙に片手落ちな部分が、大変フレイリアルらしい。
賢者の塔の者が纏う一般的なフード付きローブを頭から目深に被るが、小柄であり…女子供で有ることは隠せないだろう。
後から応援が来る様子がない事も、探索魔力展開され直ぐに把握される。
単独であるならば…どんなに魔力扱いが優れていたとしても、襲撃者達より確実に劣る存在に見えるフレイリアル。
戦いに優るようには思えない上、戦えたとて5人を同時に相手に出来るはずもなし…と襲撃者達は決断を下す。
侮りが窮地を呼び込むのは…万物共通する落とし穴。
勝てる…と判断した其の者達は、逃げ道を得るために一斉にフレイリアルに攻撃仕掛ける。
「凄いね! 皆、ちゃんと魔力体術を身につけているんだねぇ」
繰り出される拳に魔力を感じ、思わず感嘆するフレイリアル。
始めての実戦と言えるような戦いに昂る。
在る意味…相手を馬鹿にした発言、見下す訳では無いが…対等な者として評価してない上から目線。
しかもフレイリアルに一切悪気無く、侮らず正当に評価し称賛してるつもりだった。
魔力体術は、魔力で筋力強化し、力と速さを高めた体術。
賢者級の能力持ち…鍛えられた肉体持つ者が操る体術は、極めれば…ただ鍛えただけの者を20人相手にしても一瞬で制する力持つ。
襲撃者は5人いて、皆同様に鍛えているであろう。
此の場に居る時点で落ちぶれてはいるが、腐っても賢者。
自負を持つからこそ、フレイリアルの言葉は余計に腹立たしく…怒りの炎に油注ぐ。
「…ちっ、クソッ! なめやがって」
襲撃者の1人が…流石に偉そうに語るフレイリアルの態度に我慢の限界を越えたのか、無言を保っていた口を開く。
その者が最初に本気の攻撃を仕掛けてきた。
拳を撃ち込みつつしなやかに蹴りを入れる。全ての攻撃を魔力で底上げし、1つ1つが殺傷力持つ攻撃になっている。
その攻撃に防戦一方で対応するフレイリアル。
勢いでフード外れ髪色が露になる。
「お前…其の髪色! 忌まわしき樹海の縁者。似非大賢者の王女か!」
フレイリアルの素性を把握しても、攻撃の手を緩めず…むしろ仕留めにかかってくる者達。
「はっ、所詮この程度か…大賢者とは言え小娘…しかも、樹海色持つ下等な存在! この状況、様子見をしていた等と言う強がりも言えまい」
吐き捨てられる言葉から…フレイリアルが何者であるか把握したようだったし、圧倒的優勢…と判じ大言壮語を紡ぎだす。
フレイリアルは悪党な台詞を待ってました!…とばかりに、目を輝かせ受け取る。
「凄い!…」
「今更の称賛など要らぬ! お前の専横…その血であがなえ!」
「うんっ! その台詞、子悪党っぽくって最高だよ」
拳を避けつつ襲撃者の言葉に対する感想を、嬉々として口にする。
そしてフレイリアルは、やっと言いたかった台詞の1つを口にする事が出来た。
「じゃあ此処からは私の順番…あっ、出番…の方がそれっぽいかな?!」
「??」
そう言葉にしたフレイリアルは、躱していた襲撃者からの攻撃を…いきなりガシリッと掴む。
襲撃者にとっては予想外の事態。
今まで攻撃する実力が無いから防戦一方だと思っていたモノが、気軽に攻撃を受け止める様。
度肝を抜く光景であった。
それは攻撃していた者に混乱引き起こし、その行動1つで時と空間が固まり…状況が反転する。
「あれっ? 他にも言いたかったんだけど…嬉しくなったら考えてた他の台詞忘れちゃった…残念だなぁ」
その言葉に正気を取り戻した襲撃者は、再度状況を変えようと足掻き…他の攻撃を加えてみる。他の者も攻撃加わるが、1度掴まれた拳がその場から動かないし…全ての攻撃が相殺される。
フレイリアルの幼さ残る笑みが喜びに溢れ…対する者達は初めての寒気のようなものを感じ始める。
「こう言う "力で場を制する者"って言うのに、なってみたかったんだぁ」
そして言葉通り…フレイリアルが其の場を制圧した。
あっけない幕切れとなる。
少し人数が多かったので魔力での拘束に、着用していたローブを利用し…5人纏めて拘束する。
師匠譲りの…苛烈さ纏う傍若無人の徒へと変化したフレイリアルは、襲撃者達の顔から血の気を消し去り…鮮やかなる恐怖を刻み込んだのだった。
だが…襲撃者を拘束はしたが全員放置…と言う訳にもいかず、其の後ピオに会うまでズルズルと引き連れて移動していた。
フレイリアルがピオと遭遇し…ニュールまで現れた場所は、広大な庭園内とは言え…見通しの良い場所だった。
其のような場所で、ピオとカームは現れたニュールの足元に即…跪き頭を垂れる。
王宮内とは言え庭園であり、跪いての挨拶まで要するのは相当の貴人…国王及び其れに類する存在の前である事が多い。
一種異様な光景であり…この状況だけでも少し注目を浴びてしまいそうだった。
幸いに周囲に人は居ない。
他国の使節が来訪することもあり一定時間…この場所への出入りは限られた者達のみに限定されていた。
庭園内に居る者のは…見回り警戒する警備担当者…来訪者や其の関係者のみであり、普段は業務を行うような庭園や城壁の管理者も居ない。
但し…その分王城の各所及び賢者の塔の高所に設置されている見張り台より、各所を警戒する者は増やされている。
目立つ行動はなるべく控えたかった。
足元に跪く2人は軽い隠蔽魔力纏い、ある程度認…識阻害識されるよう努めてた。
其れなのに…横に立つ小さな熊型魔物…といった感じに、大地から力取り入れるかの様にデンっと両足を開き…未だピオへの威嚇を解かず…腰に手を当て…胸を張り立つフレイリアル。
一切の隠蔽魔力を纏わず其処に立っていた。
最後に戦った襲撃者に合わせ、隠蔽魔力を解除していたからだ。
しかも恐ろしい事に、フレイリアルイはヴェステ風のピタリとした戦闘服のみ纏っている状態。
メリハリが前面に押し出され、これでもかと存在を主張する。
ピオと共にいたカームが、最初…行動不能に陥っていたのは此れが原因だった。
四角四面…無表情…無感動なカームでさえ目が釘付けになり固まっていたぐらいであり、その激しい凹凸は周囲に…特に初めて其れを目にする者達には衝撃を与える。
ある意味…行動を呪縛する兵器のような存在。
フレイリアルが着ていたローブは襲撃者の拘束に使ってしまったので、ヴェステの服だけではいつも以上に…出るとこが出ていて…立派で目立つ。
それでも…襲撃者を大人しく従わせる役には立ったようだ。
未だに魅了魔力かけたが如く付き従う。
この場所は、城からも…賢者の塔からも…視認出来る場所。
その上、色々と監視する手段使えば詳細把握まで出来るような距離。
目立たない様にすべき立場なのに、ある意味何処からでも確認出来る場所にいるのに、色々な意味で関心を引きそうなモノが多く…気付かれたなら直ちに状況探る者が向けられるだろう。
微妙な此の状況に…頭の痛くなるニュール。
「先ずはご報告を」
足元に跪くピオがニュールに申し出る。
「あぁ、分かった。だがまず、この場で跪いているのは目立つので立ち上がってくれ、そして長くなるような報告なら場所を改めよう。早く知ったほうが良い内容なら簡略に取り合えず報告してくれ」
戦っている間に目立たない場所から移動していたフレイリアルと襲撃者たちは王城庭園のど真ん中まで移動していたのだ。それなのに色々と目立つ者達、今まで様子窺う者が現れない事のほうが怪しい…。
今更だが、全員が隠蔽魔力纏うよう指示すべきか一瞬ニュールは悩む。
ピオが立ち上がり述べる。
「簡略に…取り合えずの報告させて頂きます。ヴェステの関わりが随所にみられました…しかも国王の魔力の痕跡まで」
「…なるほどな」
ニュールが呟く。
「エリミアがアノ国にとって…アノモノにとって、動かしやすい場所なのか…手に入れたい場所なのか…詳しく検討する必要がありそうだな」
ニュールは一瞬目を閉じ考え巡らすが、ほんの数旬だと言うのに周囲の雰囲気が騒がしくなる。
何事かと目を開けると、何やら…身振り手振りで戦っている様子が目の端に映る。
其処には…子供の喧嘩の様に、フレイリアルとピオが争う姿があった。
言葉無くピオを睨みつけるフレイリアルに対し、ピオがフレイリアルの突き出した胸の線を自身に描き…揉むような仕草をして揶揄う。
それに対しフレイリアルが更に怒りを露わにする "低次元な子供の遊び?" と言うような喧嘩をしていたのだ。
実は仲良しなのでは無いかと問いたくなるが、問えば確実に面倒そうである。
思わず痛み増してく頭に手を置き、首振りながらニュールが言葉漏らす。
「子供なんだから、そんなに揶揄い虐めてくれるな。全くお前達は合わないなぁ…」
一応部下であり年齢的にも上…と言うことで、ピオが注意を受けた形だった。
ニュールに軽い叱責を受けるピオに対し、舌出し顔をしかめ自身の尻を叩き…揶揄い返すフレイリアル。
その様子もシッカリ目に入ったので、結局同じようにフレイリアルも諭す。
「フレイ…お前も、もう完全な子供…って訳じゃないんだから自身を省みろ」
そう言いながらニュールは自分の羽織るマントをフレイに掛ける。
フレイリアルの恰好は中々に扇情的であり、その場の…意識のある男達の視線全てが…チラチラと一点に向けられているのが把握出来た。
父親的心情持つニュールには…複雑な気分である。
しかも放置すると…捕らえた者達から必要な事を聞き出す前に、塔に残る麗しの御方によって…その場全てが消し炭に加工されてしまいそうな気がしたのでニュールは早々に手を打った。
何か…全て今更…な気分に陥るニュール。
大仕事後の仕事としては精神的に負担が大きい内容だった。
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