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14. 真意を探る

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新規守護者の選任についての提案を受け…暫し熟考していたフレイリアル。
若干の時の刻みが経過していたので、何も考えず…思ったままに2人に声を掛けた。

その結果…フレイリアルの天然系鈍感力がもたらす力ある言葉は、2人の間に広がる重苦しさを…一瞬で氷結させる。
ニュールとリーシェライルの間に漂っていた、何処か…何か…妖しげな気まずさを含む空気感が一掃され…清められたが如き生暖かさ持つ…清々しい場に変わった。
そんな微妙な変化など気にも止めず、フレイリアルは何処までも我が道を進む。

フレイリアルに呪縛解除されたかのような2人からは、綺麗サッパリ毒気は抜ける。
ややバツの悪そうな表情浮かべたニュールだったが、気を取り直し…フレイリアルの守護者選択について確認する。

「決めたか?」

「無理! ヤッパリ、すぐになんて決められないよ…」

頭を抱えながら、至極まっとうな答えを返すフレイリアル。
そう簡単には決断できないようだった。
確かに…言われて直ぐ決められるような内容でもないし、元々…新たな守護者については…時間をかけてユックリ選び進めていく予定だった。

一度守護者契約を結んでしまえば、この先何年も…下手すれば何十年も…一生続くかもしれない強い繋がり。
仕事と割り切って依頼するにしては、重い契約である。

フレイリアルの立場的にも…下手な者を契約に関与させる訳にもいかず、慎重に検討せざるを得ない。
しかもエリミアと言うお国柄…排他的な空気漂う閉塞した環境であり、フレイリアル自身ではなく…持っている色合いで拒否するものが大半だ。
今回も…ある程度差し迫った状況であり、選ぶ事の出来る範囲は非常に狭い。

此の国は…何1つ変わらない…。

王宮で守護者求めても…何も得られなかった、荒れ地に出て必死にニュールに助力を乞い願った時と同じだった。
ニュールを守護者にすべく巻き込んだ頃より、物を考え…状況が見えるようになったフレイリアル。厳しい環境を…以前より遥かに理解するが故に、現状が心に重く圧し掛かる。
それでも…自身が思い描く道を進むため、フレイリアルは足掻き続ける覚悟を持つ。
簡単に諦めることなく…様々な状況を考慮し、慎重に…思慮深く…真剣に検討する。

1の年程…と言う時の流れは、フレイリアルを考え無しの子供から…少しだけ成長させていた。
フレイリアルが真剣に悩み検討する姿に、ニュールは感慨深さ…感じる。

魔物の心と共にあろうと、感傷には浸れる。
だが、今は其の余裕持つ時では無かった。

「確かに急に "新たな守護者決めろ" だなんて、決断を迫って悪いとは思う…。だが予想より、この国の…エリミアの国王の…機構や大賢者への執着が強そうだ…と判断したんだ…」

ニュールは動向の根拠となる…王城の情報収集者からの報告を、其の場で皆へ示す。

国王との謁見後…エリミア側の大臣も含めた実務者間での話し合いへ、プラーデラ側も参加する。その間…別行動となった国王近くに潜ませていた者より、新たなる報告が上がってきたのだ。

直近で得た、エリミアの中枢…国王側の往古の機構への拘り…執着についての情報。

"往古の機構についての国王から臣下へ尋ねる機会や会話への出現頻度が高く、強い執着…と思われるものが存在する。希望的観測と楽観的な行動が多々見受けられ、何らかの策を講じてあると思われる言動が強く現れている。
水の機構の主要な魔力汲み出し地点について確認する作業を行っているいようであり、この件については引き続き調査中。
プラーデラを巻き込むために、滞在する間に実行すると会話からの情報取得あったため取り急ぎ直接報告に至る。 零06"

情報収集しているいのは…ピオがヴェステの影から、譲歩してもらい(無理やり)…好条件を提示して(脅して)、引き抜き(強制的に連行)…をしてきた者達だった。

「此れが受けた報告だ」

ニュールは入手した報告を写した魔石の魔力を動かし、皆が目に出来る形で表示する。

今回は飛書魔石と同じように…魔石に情報を刻み込み飛ばし伝達する伝書魔鳥で報告されたようだ。
魔物化した小型の鳥を人形化したものを使う連絡手段である。

送信者は直接の書き込みではなく、意識下遠距離でも人形と繋がっている者ならば可能であり…送受信者双方が所持する必要もない。
ある程度の…意識下の繋がり築けるような距離に1体滞在させれば、わざわざ警戒される場所へ持ち込まなくても情報送れる。
ただし直接の遣り取りには向かないため報告専用…とも言える。

「飛書魔石…じゃ無いんだね…魔鳥が持つ感覚? 何か不思議…」

報告内容ではなく、其の仕組みと…混ざり込む魔鳥の感覚に注目するフレイリアル。
目の付け所が…意図したものと…違う。

確かに飛書魔石も長距離の伝達手段の1つではあるのだが、こちらは大分流通してきたため持ち込みへ強い警戒を持たれている。
そして飛書は、高出力の結界を通ると不具合が出る事が多いため…エリミアの様に王城壁にまで結界陣施されている場所では、正常に働かない可能性が高い。
一長一短はあるが、今回は警戒されにくい伝書魔鳥が使われた。

これもヴェステの魔石研究所で開発した連絡用の技術であり、ピオが程好い情報や金銭を与えながら研究させ手に入れたモノである。
もともとピオが所属していた国や場所ではあるが、敵対する状態の他国の国立研究所を勝手に利用する図太さは流石…としか言いようがない。

「零06って?」

フレイリアルは、更に全く関係のない部分に食いつく。
暗号のように示された、謎…と感じた部分に興味を示す。

「組織名と所属番号だ…」

ニュールは少し眉毛を下げ…残念そうな表情になりながらも、端的に答える。

ピオが編成した、プラーデラ王国における…ヴェステの影…のような暗部担う集団。
"零06" は情報員の呼称であるが、零なのはピオが未だ未定…の意味として付けただけだった。しかし既に定着してしまっているようだ。

余りにも色々と無頓着なためミーティがピオに尋ねた事がある。

「自分が1から編成した組織なのに気にならないんすか?」

鍛練前に零に指示を出しているピオの姿を見て、何気なく考えなしに口にした疑問。
ミーティらしからぬ態度と言葉遣いなのは、一応…師匠としてピオに指導してもらっているためである。だがニュールに対する時以上に礼儀正しい…と言うのが、何とも微妙だ。
もっとも…ピオが一切の甘さを廃した死と隣り合わせの鍛練をミーティに施し "調教" した結果である…と考えれば納得もいく。

「僕は、こう言うのには興味ないんです」

ミーティに対する思いまで含むかのように、冷淡に答えるピオ。
自身が手に入れたり遣り遂げた事に、全く興味が無いようだ。寧ろ手に入れたものに対して、嫌悪感さえ抱いているかの様に凄惨な表情浮かべ嘲る。

「じゃあ、何になら興味が有るんすか?」

「勿論、僕の興味は我が主が何処までも無双して下さることであり、無慈悲な蹂躙を繰り広げるお姿にただひたすら萌えます。まぁ、普段から皆が苦労するような事を…然も下らない容易な事として片手間に片付ける様なお姿もグッと来ますし、人々の諸行を天空から俯瞰し先を見る御姿に人智を超えたものを感じ心打ち震えますし…その他にも…」

「…もう十分伺えました」

止めなければ…永遠にニュール語りをしそうな勢いで話し続ける所が恐い。

だが止めてしまったがゆえに…ミーティはその後の鍛練で、ピオと言う名の魔人住む大魔境へ送られることになった。
それがニュールの魔物な治療の世話になる5度目の機会だった。


ピオが王宮内に放っている零からの報告を、直接ニュールに届けさせる時。

それは自分たちの計画に大きく影響出る内容か、差し迫った危機に陥りそうな場合だけである。
つまり相当な影響あると考えられた為の連絡であった。

「実際に起こす行動は、水の機構への干渉…って感じだね。実行するのが今日明日」

リーシェライルが淡々と状況再確認する。

「予想としては、単純な破壊か。プラーデラの使節団がいる間…と言う指定は、巻き込むため…と言うのは分かるが理由は何だ?」

「破壊されると何が起こるか…新し機構への民の信頼度の低下とか…。他国を証人として使うのかな?」

「少なくとも謁見では往古の機構のままである…と言う印象しか残らないように国側は扱ってたよ」

フレイも国王との謁見での様子を伝える。

「国王側の目的は往古の機構の復活…大賢者と賢者の塔の接続による、機構を万全に使用する機能の取得かな…」

リーシェライルは以前に王城で取得した情報を利用し、予想できる国王が望み進むであろう道を並べてみる。そうやって少しずつ計画を探り、答えへと辿り着くための道順を皆で協力して手繰り寄せて行くのだった。


かつてリーシェライルが大賢者として青の塔と繋がっていた時、王宮には情報得るための人形が多数放たれ…数多の情報を取得していた。
其の人形が、塔から離れられない…囚われた…リーシェライルの目であり手であったからだ。

だがフレイリアルの内なる存在…助言者コンシリアトゥールとなっているリーシェライルは、人形であるグレイシャムを効率良く操る為…自身の同化率を高め、フレイリアルの中に残る意識の比率を少なくしている。

その為…魔力の根元となるフレイリアルに納まる賢者の石からの魔力の導き出しは難しく、リーシェライルが自由に操れる魔力量は少ない。今は、自身が城で操る人形も減り…数体残るのみ。
賢者の石からの魔力の導き出しが必要な時も、フレイリアルに一任している状態だ。

フレイリアルは人形との繋がりを好まない。

人形を作るには…死にかけの生物の意識に繋ぎ、生命の根源となる回路を自身に導き入れ命繋げる過程が必要である。
その接続の感覚は、自らの手で…温かきモノ屠るような…魂凍る様な感覚を持つ。
殆どの者にとって好ましい感覚とは程遠く、抵抗感無く受け入れるのは難しい。

帰巣本能のようなものにより戻ってきたと思われるグレイシャム。
リーシェライルが、自身の大賢者統合人格を入れて使っていた。

世代を超えて遡るぐらいの昔、リーシェライルが大賢者として自身に繋ぎ人形とした器だ。
今はリーシェライル自身が大賢者の内なる者となり、生命維持するための…彼方との繋がりは希薄である。
そのため、引き続きグレイシャムを使用する為には…改めてフレイリアルが自身の人形として繋ぐ必要があった。

前段階として、魔物鳥の人形化をフレイリアルは試みたのだが…無理だった。

「ごめんリーシェ…」

「仕方ないよ…決して気持ち良いモノではないからね」

「でもね、それだけじゃなくって…何か…あのね…感覚が…見たやつと違うの」

今はフレイの体内魔石となった…かつてはリーシェライルの中にあった賢者の石。

そこに詰まっている過去の経験を蓄積し構成されている情報礎石を…リーシェライルの言い付け通り、予習としてサラッと閲覧していたフレイリアルが持った違和感。

上手く出来なかった言い訳…の様にも聞こえるが、リーシェライルの中にも内なる繋がりから…自身が繋いだ時と少し異なる感覚…が伝わっていた。

「そうだね…後で調べてみよう」

その違和感が、初めて人形作る感覚から来るものなのか…本来の接続と異なるものだった為に得た感覚なのか…。
後で情報礎石で再検索をかけ、もし該当する情報が無ければ…記憶の記録の中から類似情報探し、1つずつ洗い出すしかなさそうだ。

「心配しないで、取り敢えずは僕がフレイの体を借りて繋いでみるから…」

リーシェライルがフレイリアルを補助し…守り活動するには、自由に動かせる器を持つ事が必須だった。
その時はまだ水の機構の組み換えを始めて間もない頃であり、様々な危険伴い…喫緊の案件であった。

リーシェライルは完全に意識を同調させ、フレイリアルの表層に上り…成り代わる。
そしてグレイシャムを有用な器として生かし続ける為、人形として再度繋いだ。

フレイリアルの持った違和感による影響も無く、作業は問題なく完了したのだった。
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