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6. 既視感のある時の刻み
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「今スグ…此の場でお前を叩き潰したい衝動に駆られるが、即行動を起こすほど短慮じゃあ無い」
煽り立て…我を失わせ…ニュール操ろうとしているモノは、ヴェステ国王の器を使う…世界の外側…彼方の理に支配される存在だった。
遭遇した時点で…ニュールは隠し切れない程の怒り滾らせる状態ではあった…が、自身で述べた通り…多少煽ったくらいで昂り…理性捨て去るほど浅はかな若造でもない。
「詰まんないなぁ… "一触即発な状況からの戦い!" …って展開、憧れちゃってるんだけどなぁ」
引き続きふざけたことを言うヴェステ国王の振りするモノ。
ただ自身の思うままに物事が進まぬことに対し、小さな不満を漏らす。
『この中身は…間違いなく様々な場面で遭遇した、状況だけを楽しむアノ刹那的存在』
ニュールは心の中で再確認する。
「まぁ、お楽しみは先送りにしておこうかな。でも折角此処まで来てくれたのだから、我から2つ程…小さな贈り物をしよう」
そして世界の理を選択する場に現れたモノのように、平然と高慢に…さもニュールが提案受け入れ了承したかのように押し付ける。
「一つは答えを贈るよ…君の求めるものはソノ陣と繋がっている。まぁ君ならもう謎は解けてるかもしれないけどね! おまけ情報として…陣なくとも求めるものは得られる…と伝えておくよ」
ニュールが必要としているモノを的確に把握し情報を贈る。
如何にも素晴らしい贈り物を届けた…とでも言いたげなドヤ顔で、ニュールの表情を確認しながら次なる贈り物を広げて見せる。
「もう一つは…此の器の我と…我が国との闘い持つまでの猶予を、あ・げ・る。だからシッカリ準備しておくれ。すぐ倒されちゃったら面白くないからさ」
黙って聞いていた3人を…順繰りと見やり、純粋に喜び表すような笑みを浮かべる。満足のいった表情で…とても嬉しそうに勝手な主張を繰り広げ、唖然とする内容を吐き出すのだった。
「…何を馬鹿なこと言って…!」
余りにも傍若無人な展開作り出すヴェステ国王の仮面被るまがい物に対して、思わずディアスティスの口から呟きが漏れていた。
「あっ、君…ディア…我の旧友だったよね。…意外と筋肉だけじゃなく脳味噌も使ってる側近…とでも言った方が良いのかな? 猪突猛進な青の将軍よりも使い勝手良さそうだったんだけどなぁ…。我の後宮にも入れそうなぐらい美しいしね!」
ディアスティスに向かいヴェステ国王シュトラが微笑む。そして次に黙って控えていたピオにも向かい話しかける。
「君も影とか隠者とかに居た、残忍な変わり者のくせに何だかんだ良く働くヤツ…だよね? ちょっと執着心の強い面倒さはあるけど、完璧に仕事こなすだ優秀さがあるんだよねぇ…」
此の不作法な物言いに対し、怪訝な表情浮かべ殺気放つ2人。
だが、シュトラの器操るモノは気にもせず言葉続ける。
「君らは脅しや利益では動かないだろ? 比較的我らの思考に近い、興味や面白さで動く者。ならば再度こちら側に戻って来ても問題ないんじゃない?」
軽い感じの誘い言葉に、2人は即答する。
「望まぬ勧誘…とは不躾さが甚だしいですね。ご理解頂ける脳味噌をお持ちだと良いのですが、自身で望んだもの以外からのお誘いは不快なのですよ。たとえ貴方が何者であろうと、提案されるだけで何だか汚らわしい気持ちになります」
「そうだな…これは自分自身の矜持でもある。軽々しく扱われるのは厭わしいな…」
予想外に提案された、再勧誘のような引き抜き。何一つ考慮する余地なし…と、ピオもディアスティスもキッパリ撥ねつける。
「残念…交渉決裂か、早速負けちゃったねぇ。周りから攻め落とすって良い手だと思ったんだけど、やっぱり上のモノが君みたいな人だと一筋縄ではいかないんだね…。我の周りも結構面白くなっていると思うのだけどなぁ…」
ニュールに向かいシュトラが愚痴の様な感想述べる。
ピオの…相手見下し蔑むような発言や視線、ディアスティスの信念に近い重々しい返し…それらを受けても、全く残念では無さそうに残念と呟くモノ。
「この場では諦めるよ。次に仕掛けた時にでも会おう!」
楽しそうに別れの挨拶を告げ、来た時以上に呆気なく立ち去るのだった。
ミーティやモーイと共に樹海の集落を出て立ち寄ったエリミアで…旧知の者との再会を喜んだ後、ニュールはグレイシャムの器に入るリーシェライルと差し向かいでお茶をしていた。
年若い者達を追い払い、今後の予定を確認をする場を持ったのだ。
「じゃあ、此処からは久々に…苦楽を共にする保護者による話し合いを再び…って感じだね」
1の年前…サルトゥスへ旅に出る前にも良く行われた打ち合わせ。
その時の状況思い出したのか、嬉しそうに…揶揄うようにニュールを見つめ…今後も色々と巻き込む気満々で挑んで来るリーシェライル。
ニュールは断固阻止すべく強気に拒否する。
「苦労する事が多すぎる…それに今回は保護者抜けるための手続き、契約解除後の面倒事の処理は大賢者様の管轄です。こっちにまで深い関り持つ余裕はないから、今後は貴方が師匠として…保護者として…しっかりと其方で処理して欲しい。関われるのは相談の範囲のみ…」
「僕と…君と…フレイの間でそれはあまりにも冷たいんじゃないかい?」
「貴方達の暴走に付き合う程の余力は、今のオレには…無いです」
守護者契約によるニュールとフレイとの繋がりに…リーシェライルは、さり気無く自身をも絡め加え…関係性語る。だがニュールは、今後も利用するための見え見えの画策を…キッパリ断ち切った。
「契約による利害関係が無いのなら、対等な友人…って事だよね。せめて今すぐ…言葉だけでも対等にしようよ。他人行儀で寂しいじゃないか」
何故か予想外の切り口で懐に入り込もうとするリーシェライル。
対等…と言いつつ、ゴリ押し間の強い圧力を掛けてくる。
「立派に縁戚関係のない他人。見守る知人…と言った感じの立ち位置で十分…だと思うので、どうか捨て置いて下さい」
引き下がらないリーシェライルに対し、ニュールも引き続き突っぱねる。
だが…情に訴えるような哀愁漂う表情浮かべるのは、以前とはまた別の雰囲気だが美麗な容姿の器。本来のリーシェライルの中性的雰囲気よりも少したくましい感じのグレイシャムの体躯と金髪金目の流麗な姿を、これまた完全活用してニュールの心情落としにかかる。
「それでも…僕は君と…君達とも…対等に…仲間として…繋がっていたいな」
その言葉の中に、偽らざる思いも混ざっている事にニュールは気付く。
リーシェライルが持っていた単独の…孤独で…孤立した…1人称の世界ではない、フレイリアルと相対し…1対1でお互いの存在のみを感じて作りあげる…2人称の関係とも異なる世界。
限られた範囲の中…とは言え、第三者の存在を含む3人称のある…緩やかな繋がり求める世界を思い描く気持ちが垣間見えたのだ。
今までのリーシェライルの中に決して存在しなかった、何かに繋がりたい…と言う思いが感じ取れた。
「わかった…」
その思いを…拒絶し捨て去ることは出来なかった。
ニュールは自身の中の "危ういモノには近付かない" …と言う、本能に紐づけられた強い思いを諦めざるを得なかった。"言葉遣い" という障壁を築いてあった最後の砦を…あっさりと突き破られ、白旗上げることになったニュール。
リーシェライルの絶対的な勝利である。
ある意味…組み敷かれ屈服し負けを宣言した、完全に服従させられている下僕状態。
対等とは程遠い気もする。
『オレが取り込んだ魔物魔石に封じられた魔物の意思よりも、此の御方の方が何枚も上手の…魔物以上に力持つ禍々しい存在に感じる…』
自分自身以上に厄介で魔物っぽい大賢者様の意思。
初めて会った日に捕らえられ…掌に乗せられてから随分経つが、未だ囚われ…実は一時たりとも解放されていなかった事に…改めて気付く。
かつてと同じような溜息をつく自分自身と…今置かれている状況に、思わず笑みが零れるニュール。
『オレも、まだ十分に人なんだな…』
そんなニュールの安堵の思い籠る苦笑など気にもせず、勝ちに満足したリーシェライルが心から楽しそうに微笑み…本来の話を進める。
「王として大地の祝福は受けてきたのだよね」
「…あぁ、問題は無い」
リーシェライルに確認されて答えた通り、ニュールは大地との契約を成立させた。
ヴェステで出会った、出会いたくもない存在からの無償奉仕のような…無理やり貸しを作らされたかのような押し付けによる情報提供。
不本意ではあるが、それにより問題解決が早まった。
大地との契約…それは王の名前を捧げて行う大地への縛り。
大地創造魔法陣が敷かれているのと同じ空間に、大地統べる者が名を刻む名鑑が存在し、其所に繋がり魔力によって名前を刻印することで成立する契約。
生活魔石の魔力動かす程度の魔力で可能な契約であり、大した効果は持たない。
契約用の名前の登録…と言った感じで、名を刻み繋がりを作ると若干魔力回路が強くなったり…大地からの災害受けにくくなったり…と言った程度の御利益的効果が付いてくる。
そう言った詳細も、名を刻み名鑑に名を連ねた時点で直接情報が得られた。
ニュールはヴェステから戻った後、単独で黄の塔に飛び…操作盤ある塔の地下に直接降りた。
「陣なくとも繋がれば良いって事だよな…」
大地創造魔法陣に繋がる座標を明確に把握出来れば直接赴くことも可能であるが、魔法陣がある領域は…人が関わり刺激して良い場所でない。
そのことは、魔物の本能によってニュールには理解できた。
だから、操作盤にに接触することを思いつき塔を目指した。
運命切り替える契約の日訪れた…操作盤ある小部屋に至り、盤に直接手を置き魔力を流す。
「やはり、この機構使い魔力探索行うのが正解って事か…あぁ、見つけた」
直ぐに大地創造魔法陣の周囲で名鑑を発見し、魔力送り名前を明記した。
それだけで大地との契約完了し、情報が流れ込んでくる。
此の契約も、地下の機構同様に彼方の存在によって導かれたものの一つ…だったようだ。
大地との契約は、条件満たしていれば予想通り容易いものだった。
だがニュールは…大事変後のこの接続で、大地との契約情報とは別に…知りたくもない情報を一緒に得ることになる。
彼のモノからの贈り物は、親切心からだけでなく毒を含むものでもあったのだ。
「なるほどな。まぁ知り得たからと何が変わるわけでもなし…考えても仕様がない」
ニュールは無表情に呟くと口を閉ざした。
煽り立て…我を失わせ…ニュール操ろうとしているモノは、ヴェステ国王の器を使う…世界の外側…彼方の理に支配される存在だった。
遭遇した時点で…ニュールは隠し切れない程の怒り滾らせる状態ではあった…が、自身で述べた通り…多少煽ったくらいで昂り…理性捨て去るほど浅はかな若造でもない。
「詰まんないなぁ… "一触即発な状況からの戦い!" …って展開、憧れちゃってるんだけどなぁ」
引き続きふざけたことを言うヴェステ国王の振りするモノ。
ただ自身の思うままに物事が進まぬことに対し、小さな不満を漏らす。
『この中身は…間違いなく様々な場面で遭遇した、状況だけを楽しむアノ刹那的存在』
ニュールは心の中で再確認する。
「まぁ、お楽しみは先送りにしておこうかな。でも折角此処まで来てくれたのだから、我から2つ程…小さな贈り物をしよう」
そして世界の理を選択する場に現れたモノのように、平然と高慢に…さもニュールが提案受け入れ了承したかのように押し付ける。
「一つは答えを贈るよ…君の求めるものはソノ陣と繋がっている。まぁ君ならもう謎は解けてるかもしれないけどね! おまけ情報として…陣なくとも求めるものは得られる…と伝えておくよ」
ニュールが必要としているモノを的確に把握し情報を贈る。
如何にも素晴らしい贈り物を届けた…とでも言いたげなドヤ顔で、ニュールの表情を確認しながら次なる贈り物を広げて見せる。
「もう一つは…此の器の我と…我が国との闘い持つまでの猶予を、あ・げ・る。だからシッカリ準備しておくれ。すぐ倒されちゃったら面白くないからさ」
黙って聞いていた3人を…順繰りと見やり、純粋に喜び表すような笑みを浮かべる。満足のいった表情で…とても嬉しそうに勝手な主張を繰り広げ、唖然とする内容を吐き出すのだった。
「…何を馬鹿なこと言って…!」
余りにも傍若無人な展開作り出すヴェステ国王の仮面被るまがい物に対して、思わずディアスティスの口から呟きが漏れていた。
「あっ、君…ディア…我の旧友だったよね。…意外と筋肉だけじゃなく脳味噌も使ってる側近…とでも言った方が良いのかな? 猪突猛進な青の将軍よりも使い勝手良さそうだったんだけどなぁ…。我の後宮にも入れそうなぐらい美しいしね!」
ディアスティスに向かいヴェステ国王シュトラが微笑む。そして次に黙って控えていたピオにも向かい話しかける。
「君も影とか隠者とかに居た、残忍な変わり者のくせに何だかんだ良く働くヤツ…だよね? ちょっと執着心の強い面倒さはあるけど、完璧に仕事こなすだ優秀さがあるんだよねぇ…」
此の不作法な物言いに対し、怪訝な表情浮かべ殺気放つ2人。
だが、シュトラの器操るモノは気にもせず言葉続ける。
「君らは脅しや利益では動かないだろ? 比較的我らの思考に近い、興味や面白さで動く者。ならば再度こちら側に戻って来ても問題ないんじゃない?」
軽い感じの誘い言葉に、2人は即答する。
「望まぬ勧誘…とは不躾さが甚だしいですね。ご理解頂ける脳味噌をお持ちだと良いのですが、自身で望んだもの以外からのお誘いは不快なのですよ。たとえ貴方が何者であろうと、提案されるだけで何だか汚らわしい気持ちになります」
「そうだな…これは自分自身の矜持でもある。軽々しく扱われるのは厭わしいな…」
予想外に提案された、再勧誘のような引き抜き。何一つ考慮する余地なし…と、ピオもディアスティスもキッパリ撥ねつける。
「残念…交渉決裂か、早速負けちゃったねぇ。周りから攻め落とすって良い手だと思ったんだけど、やっぱり上のモノが君みたいな人だと一筋縄ではいかないんだね…。我の周りも結構面白くなっていると思うのだけどなぁ…」
ニュールに向かいシュトラが愚痴の様な感想述べる。
ピオの…相手見下し蔑むような発言や視線、ディアスティスの信念に近い重々しい返し…それらを受けても、全く残念では無さそうに残念と呟くモノ。
「この場では諦めるよ。次に仕掛けた時にでも会おう!」
楽しそうに別れの挨拶を告げ、来た時以上に呆気なく立ち去るのだった。
ミーティやモーイと共に樹海の集落を出て立ち寄ったエリミアで…旧知の者との再会を喜んだ後、ニュールはグレイシャムの器に入るリーシェライルと差し向かいでお茶をしていた。
年若い者達を追い払い、今後の予定を確認をする場を持ったのだ。
「じゃあ、此処からは久々に…苦楽を共にする保護者による話し合いを再び…って感じだね」
1の年前…サルトゥスへ旅に出る前にも良く行われた打ち合わせ。
その時の状況思い出したのか、嬉しそうに…揶揄うようにニュールを見つめ…今後も色々と巻き込む気満々で挑んで来るリーシェライル。
ニュールは断固阻止すべく強気に拒否する。
「苦労する事が多すぎる…それに今回は保護者抜けるための手続き、契約解除後の面倒事の処理は大賢者様の管轄です。こっちにまで深い関り持つ余裕はないから、今後は貴方が師匠として…保護者として…しっかりと其方で処理して欲しい。関われるのは相談の範囲のみ…」
「僕と…君と…フレイの間でそれはあまりにも冷たいんじゃないかい?」
「貴方達の暴走に付き合う程の余力は、今のオレには…無いです」
守護者契約によるニュールとフレイとの繋がりに…リーシェライルは、さり気無く自身をも絡め加え…関係性語る。だがニュールは、今後も利用するための見え見えの画策を…キッパリ断ち切った。
「契約による利害関係が無いのなら、対等な友人…って事だよね。せめて今すぐ…言葉だけでも対等にしようよ。他人行儀で寂しいじゃないか」
何故か予想外の切り口で懐に入り込もうとするリーシェライル。
対等…と言いつつ、ゴリ押し間の強い圧力を掛けてくる。
「立派に縁戚関係のない他人。見守る知人…と言った感じの立ち位置で十分…だと思うので、どうか捨て置いて下さい」
引き下がらないリーシェライルに対し、ニュールも引き続き突っぱねる。
だが…情に訴えるような哀愁漂う表情浮かべるのは、以前とはまた別の雰囲気だが美麗な容姿の器。本来のリーシェライルの中性的雰囲気よりも少したくましい感じのグレイシャムの体躯と金髪金目の流麗な姿を、これまた完全活用してニュールの心情落としにかかる。
「それでも…僕は君と…君達とも…対等に…仲間として…繋がっていたいな」
その言葉の中に、偽らざる思いも混ざっている事にニュールは気付く。
リーシェライルが持っていた単独の…孤独で…孤立した…1人称の世界ではない、フレイリアルと相対し…1対1でお互いの存在のみを感じて作りあげる…2人称の関係とも異なる世界。
限られた範囲の中…とは言え、第三者の存在を含む3人称のある…緩やかな繋がり求める世界を思い描く気持ちが垣間見えたのだ。
今までのリーシェライルの中に決して存在しなかった、何かに繋がりたい…と言う思いが感じ取れた。
「わかった…」
その思いを…拒絶し捨て去ることは出来なかった。
ニュールは自身の中の "危ういモノには近付かない" …と言う、本能に紐づけられた強い思いを諦めざるを得なかった。"言葉遣い" という障壁を築いてあった最後の砦を…あっさりと突き破られ、白旗上げることになったニュール。
リーシェライルの絶対的な勝利である。
ある意味…組み敷かれ屈服し負けを宣言した、完全に服従させられている下僕状態。
対等とは程遠い気もする。
『オレが取り込んだ魔物魔石に封じられた魔物の意思よりも、此の御方の方が何枚も上手の…魔物以上に力持つ禍々しい存在に感じる…』
自分自身以上に厄介で魔物っぽい大賢者様の意思。
初めて会った日に捕らえられ…掌に乗せられてから随分経つが、未だ囚われ…実は一時たりとも解放されていなかった事に…改めて気付く。
かつてと同じような溜息をつく自分自身と…今置かれている状況に、思わず笑みが零れるニュール。
『オレも、まだ十分に人なんだな…』
そんなニュールの安堵の思い籠る苦笑など気にもせず、勝ちに満足したリーシェライルが心から楽しそうに微笑み…本来の話を進める。
「王として大地の祝福は受けてきたのだよね」
「…あぁ、問題は無い」
リーシェライルに確認されて答えた通り、ニュールは大地との契約を成立させた。
ヴェステで出会った、出会いたくもない存在からの無償奉仕のような…無理やり貸しを作らされたかのような押し付けによる情報提供。
不本意ではあるが、それにより問題解決が早まった。
大地との契約…それは王の名前を捧げて行う大地への縛り。
大地創造魔法陣が敷かれているのと同じ空間に、大地統べる者が名を刻む名鑑が存在し、其所に繋がり魔力によって名前を刻印することで成立する契約。
生活魔石の魔力動かす程度の魔力で可能な契約であり、大した効果は持たない。
契約用の名前の登録…と言った感じで、名を刻み繋がりを作ると若干魔力回路が強くなったり…大地からの災害受けにくくなったり…と言った程度の御利益的効果が付いてくる。
そう言った詳細も、名を刻み名鑑に名を連ねた時点で直接情報が得られた。
ニュールはヴェステから戻った後、単独で黄の塔に飛び…操作盤ある塔の地下に直接降りた。
「陣なくとも繋がれば良いって事だよな…」
大地創造魔法陣に繋がる座標を明確に把握出来れば直接赴くことも可能であるが、魔法陣がある領域は…人が関わり刺激して良い場所でない。
そのことは、魔物の本能によってニュールには理解できた。
だから、操作盤にに接触することを思いつき塔を目指した。
運命切り替える契約の日訪れた…操作盤ある小部屋に至り、盤に直接手を置き魔力を流す。
「やはり、この機構使い魔力探索行うのが正解って事か…あぁ、見つけた」
直ぐに大地創造魔法陣の周囲で名鑑を発見し、魔力送り名前を明記した。
それだけで大地との契約完了し、情報が流れ込んでくる。
此の契約も、地下の機構同様に彼方の存在によって導かれたものの一つ…だったようだ。
大地との契約は、条件満たしていれば予想通り容易いものだった。
だがニュールは…大事変後のこの接続で、大地との契約情報とは別に…知りたくもない情報を一緒に得ることになる。
彼のモノからの贈り物は、親切心からだけでなく毒を含むものでもあったのだ。
「なるほどな。まぁ知り得たからと何が変わるわけでもなし…考えても仕様がない」
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