守護者契約~自由な大賢者達

3・T・Orion

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4. 大地との契約

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結局… "正統なる王" となるための "大地との契約" についての詳細は、意識下や身近にあるプラーデラの塔にある文献などからは見つからなかった。

「やはり他の者に…王か大賢者に確認した方が良い…と言うことだな」

「そうだね。守護者制度続けている王国の王か大賢者に聞くのが良いかもね。僕が更に深くまで潜って探れば見つかるとは思うけど、それには他の賢者と繋がる領域まで踏み込まないといけないから時間がかかると思う」

ニュールに答えるニュロは、少し困った表情を浮かべ言葉続ける。

「それに大事変の後は彼方から…外側から此の世界への干渉を拒否する契約が成立しているから、こちら側から世界が共有する記憶に接触できる無限意下集合記録への接続も…部分的に規制されているみたいなんだ」

しっかりと現状把握させるため、きっちり説明していくニュロ。

「今現在の此処…意識下と言う場所は、以前のような全ての情報に接触出来る場所では無く…此の世界の…この時代の…狭い範囲で生まれる情報だけに接触可能な場所になっている感じ…かな」

説明するニュロに少し厳しめの表情が浮かび、ニュールへの警告を口にする。

「下手な関わり…理の境界に接触してしまうような関わりを持つと、抜け出せなくなる可能性もある。ニュールも自分で情報を得る時は…十分に気を付けて…」

説明するニュロは意識下の空間に存在するのに、酷く疲れた表情をしていた。
精神的疲労…と言った所か…。

「情報手に入れるために…ニュロに負担が掛かったのではないか?」

ニュロの表情を見てニュールが気遣う。

「僕は何とか大丈夫だったかな。君には管理者権限…みたいなものが付いてるから、比較的規制が緩いみたいなんだ。だけど他の大賢者達は…多分…色々と難しくなっているかも…」

新たに世界の外側の存在と結んだ契約は、外部からの干渉防ぐために内部からも情報を手に入れにくい状態を作り出している。

「意識下の状況変化は、新たなる契約に基づいた理で世界が動いている…と言うことの "証明" とも言えるってことだよな…」

ニュールが感慨深さ含むような声で呟く。

あの日あの時…彼方のモノ…此の世界の理の外に属するモノと自身が望む願い成就させるため、ニュールは一方的条件を突き付けられ…契約を迫られた。

完全に希望通り叶った…と言い難い内容だと言うのに、人の理の中では…望むモノにとっては果報とも…望まぬモノにとっては理不尽とも言える…意地悪な要求を受け入れざるを得なかった。

絶対的強者との不公平な取引きで、対価支払って結んだ…不十分な契約。

ニュール自身を…境界の外にある時の軸に属するモノに変え、此の世界に存在するのに…世界の外へ連れ出されてしまったかの様な "時を持たぬ…永遠" と言う名の呪縛と引き換えに与えられた約束。
長き時を望まぬニュールにとって、理不尽な要求でしかなかった。

それでも今現在…あの時の契約がしっかり履行されている事を確認し、複雑な思い抱えながらもニュールは安堵を覚えるのだった。


ニュールは現状を分析しつつ、ニュロと共に引き続き今後進むべき方向を考える。
フレイリアルとの守護者契約を破棄するために向かうべき方向、必要な条件は見えていても…条件手に入れるまでの道筋が見えない。

「守護者の制度続けてるのはエリミアとサルトゥス…。サルトゥスの王子でもあり大賢者でもあるアルバシェルに確認をしてみるべきだと思うんだが、未だあの国は混迷から抜けきらぬ様子だからな…」

「そうだね…、此方の事情に付き合う余裕は無さそうかな」

ニュールの見解に、ニュロが軽く相槌程度に言葉を返す。

「…摂政付きの未成年の王など立てず、アルバシェルが取り敢えずでも王として立てば国内など直ぐ落ち着くものを…」

更にニュールが、感想とも…批判…とも言える呟きを思わずもらす。
つい身近なモノとして…講ずるべき最善策を持つのに放置していることへ、歯痒さを感じてしまうようだ。

「ふふっ、サルトゥスの大賢者はエリミアの大賢者姫にご執心だからね…国政から抜けられぬ立場になるのは望まないんじゃない?」

ニュロは楽し気に声を出し笑うが、ニュールは何となく其の回答が癪に障る。

「自身の望む立ち位置ばかりに拘り、実際の立場調整さえ出来ず安定を手に入れられない。その様な者が他者を求めるなど…愚の骨頂ではないか?」

辛辣な評価を下すニュール。

「望むものがあるからこそ頑張ってるんじゃないかい? 姫を抱え込む直近の保護者であり競合者であるモノが…凄く手強いから、アルバシェルに近しい保護者として少しは手心加えてあげたら?」

「保護する立場ならば、身近だろうが何だろうが手加減してはいけないんじゃないかと思うが…」

「そんな意地悪ばかり言っていると、いつか自分も同じ立場に立たされちゃうよ」

ニュロはにっこりと穏やかな笑顔で、魔物的判断以上に父親的心情に傾くニュールの視点を揶揄いながら元へ戻す。

「…まぁ、其れは其れとして…自分たちの進むべき道を見つけないとね…」

ニュールも冷静に面白がるニュロの気持ちを感じ取り、自分自身がオヤジ的な立ち位置で踊らされている事に気付き…正気に返る。

「どっちにしてもエリミアの王に近付かずに済ますためにも、アルバシェルに一度問い合わせてみるべきなのは確かだな」

「そうだね…わざわざエリミアの国王に関わらず、己の手で儀式行えるような立場を手に入れるべく努力してるんだからさ」

「手立て得られず…エリミアから情報得ることになるならば、まさしく…本末転倒…だな」

ニュールは湧き上がるもどかしさを抑えつつ冷静な判断を導き出し、難しい顔で考え込みながら言葉漏らす。

「ニュロには悪いが、厄介な者の相手より…面倒で手間のかかる事でも…調べるだけで済むならば其の方がマシなんだ…」

「気にしないで! 確かにエリミアの王は、最近関わりたくない感じの相手になっちゃったよね。特に王妃が表舞台から退いた後、妙に積極的…野心的だからね。下手に接点持ってしまうと代償が高くつきそうだ…」

その後もニュロと一緒に様々な角度から状況を考察してはみたが、やはり決定打となるような判断材料はなかった。更なる情報を得るあてを考えてみるが、打つべき策を見いだせず…その時は決断を先送りにしたのだった。


ニュールは内外へ向けてプラーデラ王国国王を名乗り、実務こなす身…ではある。それでも、未だ "正統な王" では無い。

だからこそ守護者契約の解除に向け、 "正統な王" として立つべく…大地との契約得る方法を模索している。

成り行きで留まる事になったプラーデラ王国国王と言う立場、前王を弑逆し王位簒奪した…と言われても仕様がない状況で引き受ける事になった王位。
最終的には自身も周囲も納得し受け入れる状況となり落ち着いたが、大地との契約については詳細不明であり…保留されている。

プラーデラ王国の魔力が枯渇し始めた数世代前の国王から、大地との契約は成立していない。
結局、今までの歴代国王と立場的にはあまり変わらない状態ではあった。
大地との契約の有無による、国事への影響は皆無である。

それでも難癖つけたい者達は存在し、あれやこれやと色々持ち出し言い募る。
さらりっと…柔枝に風…とばかりにニュールは受け流すのだが、国王ニュールニアに心酔し信奉する者達は…不埒な者どもに対しいきり立つ。

「我が君は、その座に在るだけで尊いと言うことに気付かぬ愚者どもめ! 異議申し立てる様な不心得な輩は、人だろうが国だろうが慈悲など与えず蹂躙しつくすべきです。ご下命頂ければ、喜んで露払いをさせて頂きます」

現在必要としている大地との契約について…周囲からの意見求めるため問いかけた瞬間、物騒な忠臣の筆頭…狂信者とも言えるピオが目に怒りの炎を灯し乗り出してきて述べた言葉。

「ヴェステでも…真なる王とか正統なる王とか言う奴や研究する奴は居たが、早々に…文字通り口を無くしてたぞ。私も何人かは協力してやったがな」

ヴェステもプラーデラ同様、魔力溢れる国では無い。そして上に立つのは専制的な王であり、厳格に統制されていたようだ。
楽しそうに…血に飢えた獣の如く目を輝かせ…冗談の中に本気を混ぜ混み…優雅で麗しき女が寛ぎ語る。今やプラーデラの緋色の将軍として立つディアスティスが、華麗で秀逸な微笑み浮かべつつ…言葉続けた。

「…主君が望むのなら…我もこいつに続くぞ」

ニュールの側近務める者達は、若干…いやっ相当に…血に飢えた魔物のように暴走気味な者達であることを再認識させられる。

「オレが今欲しているのは…守護者の解任への承認出すために必要となる正統なる王になるための手順。…余計なモノはいらない」

闘争心溢れる物騒な人たちを少しだけ諫めつつ、正しく望むものを掲げる。
ニュールの訂正や制止はあったが、鼻歌出そうな感じで…楽しそうに余計な者達を処理する策謀を頭の中に巡らせるピオ。
ふと大地繋がりで思い出したかのようにニュールへ伝える。

「そういえば以前、ヴェステの隠者どもが城に未知の陣を発見したと騒いでおりました。なんでも…大地に呑み込まれてしまう…と言われる大層変わった陣だったそうです」

若干…求めるような答えに近づきそうな内容に、ニュールが関心を示す。

「続けてくれ…」

「…確認したら…厳密には転移陣では無かったようです。最初…転移陣かと思われた其の陣は、古い構造と思われる形式で描かれた…未知の魔法陣。同じようなモノを作り上げ研究してみたようですが、座標は付いてても…移動出来るものでは無かったと聞きました」

ピオの話にニュールが耳を傾ける。

「そもそも終点座標が賢者の塔の地下…地中深く、直接赴けるとは思えない場所。残されている資料は何もなく、結局…隠者から…その研究は魔石研究所に引き渡すことにしたそうです」

「…それは興味深いな。如何にも大地との契約実行出来そうな、用途不明な陣か。早速、見学しに行ってみるべきだな」

あらましを聞き取ったニュールが呟いた言葉に、一瞬ピオとディアスティスの表情が一瞬動く。
だが透かさず、動じる事無くニュールの前に跪き声をそろえ答える2人。

「「仰せのままに」」

思い立ったその場で、ヴェステにある用途不明の古い陣へ…言葉通り直ぐ…見学に赴くのだった。
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