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おまけ ミーティの受難2

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感動の再会…の其の後は、微妙に鋭い空気漂う。

「ニュールってば、相変わらず尻に殻付けたままの大賢者遣ってるから、僕の完璧な行動が理解できないんじゃない?」

「貴方にも、未だ心の広さを学ぶ余地があると思われるが…気のせいでしょうか?」

「広げすぎず余白残す事…此れが心の若さ保つ秘訣かな? 君は色々と研鑽の余地はありそうだが、余白は残ってなさそうだね…」

永遠に続きそうな、軽やかで冷ややかな毒の吐き合い。
金髪金目の美丈夫の中に入ってる元大賢者リーシェライルは、わざとニュールに絡み付き…言葉巧みに挑み誘い…口先での遣り取りを楽しむ。
御機嫌に交わす会話は、一歩間違えば奈落の底に落とされそうな…綱渡り的ハラハラ感を周囲に引き起こす。もたらされた周りの者の戦々恐々とした気分など意に介さず、際どい遣り取りを繰り返して…遊ぶ。

モーイはリーシェライルが…相手を操り転がし弄ぶような会話…を直接体験した事があり、多少なりとも免疫があった。ミーティは全くの初めてであり、心理的負担が半端ない。
お気楽呑気なミーティでさえも緊張し固まる…独特な空気感漂う時間の流れ。
ミーティはフレイリアルと挨拶してから、一言も言葉発しなかった。

『ヤバイ…この御方に睨まれたら確実に…。駄目だ、口を開いても…動いても…いけない』

それがミーティが考え導きだした答え。
目に留まらない様に、路傍の石と化すしか生き残る道が無いような気がした。

ミーティは空気の読めない奴であったが、流石に現状を把握する。
もし…先ほど誰も阻止せず…フレイリアルと…下心持つまま再会の抱擁交わしていたならば…今頃ミーティの腕はネジ切られ…内に有るモノを全て引きずり出され…息の根を止められていたであろう。
其の事に気づき、背中に冷たい汗が流れる。
肉食動物に払われる虫…と言った感じであり、純粋な恐怖…存在の危機を感じ取る。
何かヤラカシてしまったら、容赦なく其の場で…文字通り潰されるだろう。ミーティは、本能で理解した。

『世の中、決して関わっちゃいけないモノがあるだい…』

ミーティは幼い頃に祖母アクテから何気なく言われた言葉を思い出し、今、心から納得したのだった。


そんな中、独自の世界で勝手に過ごすモノも居た。
フレイリアルは樹海から持ち込まれた手土産が、魔物魔石で有ることに気気付く。
この言葉の剣交わす剣戟巻き起こる空間で、我関せず…ひたすら己の興味を満たすため、魔石を手に取り観察し…遊んでいる。
相変わらずの魔石狂いであり、全くブレない。歓迎したのが、旧知の仲間だったのか…魔石だったのか…今では分からない様な状態である。
大賢者になる者は資質として、自身の世界を極めるために周囲を一瞬で排除出来るような傍若無人さが必要なのかもしれない。

この何とも言えぬ空間に、もう一人場違い感持つ者がいた。
来客をもてなすため、執事の様に行動している者は、怯えを押し殺しながら知らぬふりで立ち働く。
本来なら人形であり、大賢者付き筆頭賢者である金髪金目の青年が遣ってしかるべきなのだが…中身がアレなだけに、動かないし動かせない。
尤もフレイリアルに対してだけはアレが全ての雑事をこなし、完璧に面倒を見る。つまり諸事万端整える能力ある癖に決して望むこと以外に手を出さない。まさしく大賢者的行動であった。

皆が一通り再開喜び合い、自分勝手な空気感持ち寛ぎ始める中…ニュールがミーティ的立場に有りそうな其の青年に目をやると、青年は畏まり軽く会釈すると、略式ではあるが公的挨拶を述べる。

「私、エリミア王国第六王女様であり大賢者様であらせられますフレイリアル様の "仮の" 婚約者務めさせて頂いておりますブルグドレフと申します。プラーデラ王国国王であり大賢者様であらせられますニュールニア様に拝謁賜り僥倖であります」

砂色の髪と青い瞳をこちらに向け同病相憐れむ…といった感じでミーティを見守る執事もどきの行動をとる者の正体。
フレイリアルの "仮の" 婚約者のブルグドレフと名乗る者だった。
"仮の" を強調するのは…アノ御方から自身の命守るのに必要な肩書きなのであろう…とミーティでも見当がついた。

ピオ目線で判じるのならば、確実に高顔面偏差値野郎と認定されるであろう男。目立たないけれど綺麗な顔立ちをしている好青年…と言う感じだった。飛びぬけてはいないが…出しゃばらない柔和な感じの…老若男女問わず好かれそうな、好感度の高い美男子…といった感じの青年。
ミーティ的立ち位置っぽいのだが、ミーティよりは落ち着いた大人な対応取れる優秀な人物であるようだ。
ニュールとモーイがチラリとこちらに送る視線が痛い…とミーティは感じる。

『でも、オレが知らないのはコイツと、もう1人はフレイの中の人だし…人形に入ってるだけだから挨拶なんて必要か?』

そんな風に考えていたのを見抜かれてしまったのか、人形に入るリーシェライルに…挨拶を促される。

「君とは初めてだよね」

実際には優しく見つめられただけだった…それなのに…まるで…その温度を感じさせなさそうな手が喉元に伸び、ガシリと命を握られているような気分になった。
さっき関わっちゃいけないと納得したばかりだったのに…関わり合いになっている。
ミーティは息を飲みながら思った。

『婆ちゃん…関わり合いって…視線向けて思考するのさえ駄目だなんて聞いて無かったぞ…』

祖母アクテに恨み言を述べたいミーティであった

今まで固まり…ひたすら難を逃れていたのに、一瞬思考差し向けただけで気付かれてしまう。
ミーティは向けられた注目にたじろぎ、しどろもどろな挨拶をする。

「わっ、私…プラーデラ…こっ王国国王ニュールニア様の仕え、将軍補佐の任を預からせて頂いております樹海の集落出身のミーティと申します。以後宜しくお願いしたしぃます」

「君がミーティなんだね。フレイからは良く聞いていたよ」

秀麗な笑顔を浮かべこちらを見ているが、目が笑っていない。
かなり…差し迫った、生命の危機を感じる気分を引き続き体感するミーティ。

「僕は、フレイの助言者コンシリアトゥール務めるリーシェライル。知っての通り、元大賢者だよ…」

引き続きミーティだけに視線を置きリーシェライルは語り掛ける。

「…大賢者ってね、意識下に助言者を収めているのだけど…其所ではね、過去の出来事も閲覧出来るんだ…」

自身の唾を飲み込む音が、ミーティは聞こえるような気がした。

「基本的には覗き見のような真似はしないのだけど、危険及びそうだった…過去の記憶は一応閲覧しててね…」

ミーティは異様なほどに押し寄せてくる威圧感に呼吸が苦しくなる。

「…君…色々と良い思いしたことがあるような感じ…だけど、ヴェステの宿屋の寝台の上で…何かチョット失礼なこと言ったり遣ったりしなかった?」

冷汗がダラダラと流れ出てくるミーティ。
かつて宿屋で食事を運んでくれたフレイに告白した挙げ句…押し倒してしまった気がしないでもない。モーイに遮られ、未遂…にさえならなかった些末な出来事…。
フレイには完全に "男好き" と勘違いされていて…告白にならなかった告白。
思い起こした後リーシェライルの目を見て…もう、ひたすら謝罪し弁明するしかないと悟るのだった。

「すっ、すみません!! ごごごっ誤解であります。フレイリアル様に感謝の思いを伝えただけでありまして…全て勘違いであります。それに今はモーイに結婚を申し込みましたので…」

「結婚???」

フレイがその言葉に飛びついた。
今までで魔石に向かっていた目を、キラッキラに輝かせコチラに向ける。
元々フレイリアルは女子的話題には関心は持たないのだが、モーイとミーティの事となると別の話。
そして、乗り出すように寄ってきて興味津々に根掘り葉掘り、しつこく問い質す。

「何何?? いつ? どんな風に? 何処で?」

話が完全に逸れたのはありがたいが…未だ告白の返事が返ってきてない状態での公表。ウッカリ暴露してしまったミーティは、再びモーイに思い切り睨まれることになった。
ミーティはモーイの鬼のような形相を見てしまい、絶対絶命…と言った気分になる。

ブルグドレフだけが、遠い目をしながら…心から気の毒そうにミーティを見やるのだった。

色とりどりの瞳がミーティを見つめている。
唯一心から見つめて欲しいと願う…モーイの天空に尽き抜ける様に鮮烈な青い瞳のみが、ソッポを向いている。

「それで、どう言う事なの? 教えて!」

「一歩踏み出すような爆弾発言的な宣言した…と思ったら、一気に到達点って…凄いな…」

「……」

フレイからの怒涛の突込みにも、ニュールの驚嘆にも俯き黙り込むミーティ。
モーイがニュールのつぶやきに反応して振り返る。

「宣言って何?」

モーイが厳しい顔で問う。

「この前の集落とウチん所との会談の後、ミーティの今後を確認したら…モーイに…」

「…!!! ニュール!! 勘弁して!」

俯いたまま固まっていたミーティが息を吹き返し言葉遮るが…時、既に遅し。

「ふぅん…、皆の前で宣言しちまったんだ…」

モーイの静かに納得する姿は、ミーティにとって…リーシェライルから受けた恐怖より恐ろしいモノへと…今…変化した。
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