魔心を持つ大賢者の周りの子~一度出直して来いって本気?

3・T・Orion

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9.再び門の外

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「離れで待つように伝えたつもりだったのだが、他国に行っている間に言葉すら伝わらなくなったか?」

集落の長でありミーティの叔父でもあるラームスは、慈悲深げな表情浮かべつつもあからさまな嫌味を立て続けにぶつけてくる…相変わらずの大人げなさ。
ミーティは叔父ラームスに久々に対応し、げんなりした気分になる。
そして溜め息を飲み込み返事を返す。

「負に傾いた力が地を漂う…のが見えたので、様子が気になり確認したくて来てしまいました」

「ほう…見るぐらいは出来るようになったか。馬鹿力だけしか発揮しないのでは、一部とはいえ移された記憶の繋がりがもったいないからな…」

「……記憶??」

心に引っ掛かる言葉に疑問を浮かべ呟くミーティだったが、その考えを潰すように矢継ぎ早に嫌味を返される。

「今はプラーデラで将軍補佐…とかになったそうだが、随分と偉そうな肩書になったものだな…。まぁ、魔力少ない国だからこそ、多少の入り込む余地があった…と言うことか。全くもって、力だけが自慢のお前の父親譲りの遣り口だな」

「お褒め頂きありがとうございます」

ミーティは余裕の笑顔で返す。
だが、長の口から吐き出されミーティに投げつける言葉は、人を不快にさせる…落としめ突き刺す様な言葉ばかりであった。
横で聞いているモーイの方が苛立ち殺気放つ。

今までも散々ぶつけられて来た罵詈雑言だが、ミーティの祖母であり語り部の長であるアクテや母イラダの居る場所では決して大人げない嫌味をぶつけてくる事は無かった。
ミーティしか居ない時にだけ、ミーティとミーティの父をこき下ろす。

集落の長が、未だ次期長であった頃…ミーティの母イラダは、次期長の婚約者であり、時期語り部の長であった。
所がミーティの父と出会い、集落を後にし鉱山へ行ってしまった。
結局、母の妹…ミーティの叔母と結婚し、集落内での対立や揉め事は避けられた。
一応表面上は円満に解決したように見えたが、当事者である集落の長ラームスの中では相当しこりが残っているようだった。

「外部で活躍され召し抱えられたのが事実…と言うのなら、宝の持ち腐れにならぬよう素晴らしい機会を進呈しよう。出来るものなら…その豪腕振るい、集落に対しても少しは貢献して頂きたいものだ」

挑発するように、予想外の助力要請をしてきた。


「これって、お前への嫌がらせなんじゃないのか?」

モーイはここに来てからの集落の者たちの態度を腹立たしく思っていた。露骨な侮りと、蔑み含む視線を送る者達…以前、ミーティの祖母を訪れた時とは明らかに違う態度や対応。

「前っから婆ちゃんや母さん居ないときはあんなもんだったから気にすんな!」

カラカラと呑気に笑うミーティ。

「最初気づいた時は落ち込んだけど、慣れちまうと哀れっていうか…気の毒って言うか…ガキの八つ当たりみたいだよなぁ。まぁ、実害はないからさ、気にすんな!」

達観したかのように笑い飛ばすミーティに、モーイは湧き上がるままに口惜しさと憤る思いをぶつける。

「おいっ、実害がないだと!! 今のこの状況は危険な場所に放り出されたって言うんじゃないのか? これは立派な実害って言うんじゃないか??」

長達の行動に対して…本来ならミーティが持って然るべき怒りを、モーイが代わりに発散する。
モーイは、罠に嵌めるように外へ放り出されたことにも怒っていたが、あまりにもお気楽なミーティに対しても相当ブチ切れていた。

協力を依頼してきた集落の長に対し、ミーティが今後の行動に必要な措置として一応承諾した…所までは許容範囲だ。
依頼を受諾して門へ向かう数十歩進む間さえも、集落の長は低俗な戯言を繰り返し無礼な態度で応対する。
それでも門を一緒に出て、共に魔物に備えるはずだった。

それなのに、いつの間にかミーティとモーイは門から押し出され結界外へ締め出され…そして門は閉ざされた。

「内側は魔力巧みに操れる者以外必要ないから、お前たちは外部からの魔物の襲来でも防ぐが良い。其処なら大した魔力扱えなくとも武力で存分に暴れられるぞ!」

唖然とするミーティとモーイに容赦なく失礼な言葉を浴びせる。

「内は防御結界陣で守られるから安心して戦ってくれ! まぁ、外の魔物が一掃されない限り門は開けられないがな」

ミーティ達を門の外に弾き出し内に残った長達は、引き続き愚劣で陰湿な言葉をミーティ達に向ける。

「お前らに此の結界を破綻させ無効化することは出来ないだろうが、出来たとしても遣ってしまえば集落自体がが破滅するから余計な事はしてくれるなよ」

恥ずかしげもなく長は勝手な理論を展開する。

「魔物には回路の優秀さより、腕っぷしの方が効果あるかもしれんからな。今晩はじっくりと魔物と語り合うが良い。魔力納めるための器になってもらうのも良いかと思っていたが、器の品質が劣れば結局失敗してしまうから二度手間になる。こっちの戦いの方が適材適所…似合いの役目だろうよ!」

集落の長は好き放題言い放つと、その場を立ち去った。
門の内で立ち去る長を見送った者達は、ウンザリ…と言った表情の者や、ザマを見ろ…といった表情の者、手も口も出さぬが、哀れみの目で見守るもの…此処でも多種多様な反応見せる者が居た。
それでも、誰一人として再度門を開きミーティ達を招き入れ救い出そうとする者は居なかった。


「モーイは完全復活目指して此処に来たのに、嫌な遣り取り見せちゃたし…色々と巻き込んじゃってゴメン…」

締め出された後、仕方なしに一番安全と思われる樹海と集落の境界にある地上から5メル程の高さある木の上へ避難した。
何だかんだとしている内に闇時となり、魔物が活発に活動する時を迎える。
今回は意気消沈…と言った気分になる場面が多かったようで、ミーティ本来の…良くも悪くも単純で馬鹿っぽい真っ直ぐな部分が影を潜めてしまっている。

湿気含む少し冷んやりした風に吹かれながら、モーイはミーティに告げる。

「そんな沈んだ状態で魔物が来たら、餌にされるだけだぞ!」

モーイは気分切り替えさせるために、ミーティに喝を入れる。

「巻き込むとか何ちゃらの謝罪よりも、この状況打開するための情報をくれ。此処ら辺で闇時に現れそうな動物や魔物は何だ?」

その言葉を受けて、後ろ向きな考えを切り捨てるように自身の頬を両手でピシリと叩く。

「やっぱりモーイは最高だな!」

シャッキリした表情に戻ったミーティは、謎の高揚感表しながら樹海深部の魔物や獣などについて説明を始めた。

「この集落のある場所は鉱山より…街道より東寄りの奥にあるんだけど、そこまで樹海深部でもないけど熊も出るし魔物化してなくても大きな蛇とか良く出るよ」

まず場所と危険及ぼしそうな獣から軽く説明していく。

「この周辺って樹海深部に近いぐらい魔力が多く漂っているんだ。だから魔物化してることも多いから、どんな生物でも結構危険かな…」

そして更に魔物について語る。

「遷化した魔物だけど数が増えてるらしい。群れになりつつあるから、そろそろ累代魔物に変化しそうなんだ…。あと、既に累代化した剣虎マカイロが現れることがある。コドコドに似てるんだけど、大きくって危険なんだ」


エリミア辺境王国とサルトゥス王国の国土の一部であり、インゼル共和国とアカンティラドの山々に面している樹海。
だが実質は、各国が領土として管理しているのは、魔力巡らせ防御結界陣が築かれている境界壁内のみである。

一応エリミアからサルトゥスへ繋がる名ばかりの街道は、管轄国が近隣の街町に委託管理を依頼し整備している。それ以外の区域は、街町や村…其々の集落が自治権持ち管理自衛することになっていた。
都合の良い時だけ国土として国の権利を主張するが、基本的には放置している場所。
だから無数の集落が樹海の中に出来上がり消えていく。
此処の集落にも各国全てに通じる名称は存在しないし、特定される事で不利益生じる事の方が多いので敢えて外部には集落としか名乗らない。

デュアービル…神通る地…とも呼ばれている此の地に集落の居を構えてから、既に700年近くなる…と語り部が受け継ぐ記憶には記録として残されていた。

「コドコドは獲物を木の上から狙うこともあるけど、剣虎マカイロは大きいから高く登ることは少ないんだ。この地域なら此処…高い木の上は、ある程度安全な場所と言えるかな。まぁ、高い所に来る危険なのも居ないわけじゃないけどね」

2人は外壁門から一番近い樹上に潜み、静穏のと隠蔽の魔力で自分たちを包みながら周囲を伺う。地上から5メル程離れた高さある此の樹海との境目の木の上は、空に近く開放感持ち心地良い。
こんな状況下だが、今まで溜まっていた嫌な気分が洗い流され爽快な気分になる。

気持ち改め、ミーティは近隣の魔物について説明しながら…モーイはそれを聞きながら…2人で分担して5キメル…近距離広範囲で隠蔽をかけた探索魔力を広げ警戒を続ける。
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