流れのままに

音以流図

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安らぎ

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人それぞれの宝物って何だろう?

皆、違うのは当たり前だ。
人によって価値観も変わる。
他人からしたらゴミに見える物でも、
その所有者からしたら宝物になる。
何とかマニアみたいな人達が
その良い例だろう。
僕の知り合いでジーンズの
コレクターが居たが、
古くて臭そうなジーンズに
何十万円も払って購入していたのを
覚えている。
ただ、後でそれを自慢されても
僕には全く理解が出来ない。
今から4,50年前に製造されて、
保存状態が非常に良くて等、
ウンチクを聞かされても
全然心に響く事は無い。
逆にその情熱を別の方向に
向けば良いのにと本人には
言えないが思ってしまう。

家族が居るならば
話が違っていくだろう。
殆どの人が自分の子供と答えると思う。
自分の分身であり、
大事に間違えた方向に進まない様に
それを導く役割が生まれる。
成長する事を見守り、上手く行けば
色々と楽しい出来事等か増え
幸せな日常を過ごすのだろう。
絆と言えば良いのかな。

以前、セフレに近い関係の
女性がいた。
彼女とは上手く微妙な距離感を
保っていた。
互いを深く干渉しない様に。

基本的に僕は、時間帯にもよるが
なるべくゆっくりと
過ごしたたいので、泊まりも頭に
入れているのだが、
彼女は必ずと言って良いほど
昼前に待ち合わせ、
17,18時には家に帰る。

何時も帰るのが早いねと尋ねると、
家で待っているからと
返答された。
結婚か同棲をしているのかと思い、
それ以上は聞かなかった。

暫くして、彼女と心の距離感が
少し縮まってくると、
家に招待された。
僕は彼氏か旦那さんが居ると
思っていたのでマズイでしょと
彼女に尋ねると、
笑いながら居ないからと答える。
そのまま彼女の家に向かった。

部屋に着くと理由が分かった。
彼女はただいまと少し大きめの
ゲージに向かい、中を開ける。
出て来たのはウサギだった。
ウサギにしては大きく
まぁ太めだった。
異国の人が見たら
美味しそうに見える位に。

ウサギを飼った経験がある人に
話を聞いた事があるが、
かなり大変だと聞いた。
人に余りなつく事が無く、
かなりワガママな行動を取ると。
トイレを覚える事も無く
そこら辺で糞等をしてしまう。
放っておくと部屋の配線を
食いちぎってしまうので
常にテープで補強しなければ
ならない等、
イメージとは違い
飼うとしたらかなり根気がいて
言い方は悪いが
面倒臭そうだなという印象だった。

ウサギの名前はロイ、オスらしい。
僕の聞いていた情報とは違い、
ロイはかなり彼女になついていた。
彼女の周りをチョロチョロと
している。
ただ、ワガママなのは何となく
分かった。
配線はやはり補強はしてある。
そして、僕という見ず知らずの人間が
現れたのでかなり警戒していた。
彼女を独占したいのだろう。
無理に真ん中に入ってきたり、
後ろ足で攻撃してきたりした。
撫でようとしたら
噛まれたり、座っていると
わざとぶつかってきたりと
かなりヤンチャだった。

部屋に泊まり良いムードになると
彼女は外とは違う雰囲気になる。
外ではかなり激しく
僕の背中に爪を立てながら
野生の咆哮をあげ
僕を貪り食らう。
だが、部屋の中では違う。
隣近所の事もあるだろうが、
一番はロイに気付かれるのが
恥ずかしいようだ。
僕はそんな彼女が可愛く見える。
彼女の野生を呼び覚まそうと
身体中を優しく撫で回す。
彼女は歯を食いしばって耐えるが、
段段と吐息が妖しくなってゆく。
開いてゆく身体を
じっくりと味わい、奥に入り込む。
彼女は僕を受け入れながら
背徳の感覚を流し込まれる。
必死に自分の存在を消しながら
身体が弾け飛ぶ。
浮遊感に包まれながら
そのまま沈みこんで逝く。

遊びに行く度に、僕の顔を
覚えて来たのだろう。
少しずつたが、慣れてきた
感じがしてきた。
膝に乗って来たり、僕の手から
エサを食べたりと。
ただツンデレな所があるのか、
挨拶は殆ど蹴られていた
思い出が強い。
だが、それはそれで
少し憎たらしいが可愛くも思えた。

しかし、
残念ながら蜜月には
終わりが来てしまう。
彼女とは価値観等で衝突する様に
なっていき、
時間が経つにつれお互いのズレが
広がってしまい、
そのまま関係は終息してしまった。
ロイにも最後の挨拶が
出来ないまま。

それから暫く経ったある日、
彼女から連絡が入った。
ロイの調子がおかしいと。
ウサギの寿命は8年前後、
長くて10年位だと聞いた事があった。
飼っている年数等を考えて
寿命が近いのかとも思ったが、
取り敢えず動物病院に行って
様子を見れば大丈夫だよとしか
言えない自分がいた。
元気なロイしか想像出来ないので
信じたくなかったのかもしれない。

又、暫くして彼女から連絡が来た。
ロイが死んでしまったと。
前夜までは彼女に寄り添っていて、
朝出掛ける迄は
普通だったらしい。
だが夜に帰って来ると、
ゲージで冷たくなっていたと。

ペット用の葬祭場で送るというので、
僕も一緒に送らせて貰う事にした。
久々に再開したら、本当に
眠っているみたいだった。
多分、最後に彼女に寄り添い
別れを伝えて居たのだろう。

ロイとの思い出に浸りながら
涙が止まらない自分がいた。
楽しい思い出をありがとう、
今度逢えたらもっと優しくしてくれと。
空を見上げながら。

大事な物は失いたくはない。
だがそれは難しい。
いつか別れは来てしまう。
出来れば楽しい思い出を
多く残せたらと願う。
それしかないか。
難しいかもしれないが。

















 
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