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本編
38.小さな追放劇と急患
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食事を終えた瑞姫たちは、ソラーレ食堂を出た。出る前に、女将の旦那が奥から出てきて瑞姫に感謝を述べながら頭を下げたり、フォリアの分は支払うつもりだったのだが、その分もタダにしてくれたりとあったが。
そして、瑞姫たちの側には、アランの姿もある。元々、彼も朝食をとるために食堂にいただけで、仲間もすでにギルドに集まっているはずだから、と言う理由と、森の異変の件で、瑞姫たちが行くなら俺も行くと言い、瑞姫がじゃあ一緒に、と言ったのが理由だ。フォリアは、不服そうにしながらも反対はしなかった。フォリアはアランとパーティーを組んだ事が何度かあるので、彼の実力は嫌というほど知っている。森で何が起こっているかなど知らないが、もし向かうなら戦力は多い方がいい。頼りになる事もわかっている。だから、不服は口にしなかった。瑞姫にはバレバレだが。
そんな三人と一匹でギルドに向かうと、ギルドの扉の三歩ほど横で、ぴくり、と全員何かに反応し足を止める。一歩下がった直後、バンッ!と扉が開いた。
「ぐはぁっ」
そしてすぐ、ドゴッ!と言う音と共に開いた扉から、男が吹っ飛ばされながら出てくる。そのあとも、続けざまに男一人が殴り飛ばされながら、女一人が転がりながら出てきた。それを追うように、ぬっ、と怒気を孕ませたフリッツが指をパキパキ鳴らしながら出てくる。
「嘘吐きは、泥棒の始まりです、と習わなかったのか」
瑞姫は吹き出しそうになった。威圧感はすごいし、顔も鬼の形相と言えるほどなのに、そういう言い方するの?
「ちょ、ちょっとぐらい、いいと、思ったんだよ……っ」
「て、手伝ってあげたのよ!?」
「手伝い?馬鹿を言うな!」
フリッツが怒鳴り声を上げれば、ぐわんっ、と空気が揺れた。スキル、獣の怒声である。これは、スキルを発動した人が相手より強ければ、戦意喪失させる事が可能だ。発動した人が相手より弱くても、ひるませる事は可能。瑞姫たちは平気だが、フリッツの目の前に転がる三人はあっという間に縮こまった。
「お前が盾に使わなければっ、あいつは呪いに冒されて苦しむ事はなかったんだ!」
「なっ、あ、あたしがっ、受ければよかったって言うの……!?」
「お前より優秀だ!」
どうやら、女が誰かを自分の盾にし、代わりに呪いを受けさせたらしい。瑞姫の眉間に皺がよった。瑞姫だけじゃない、アランもフォリアも顔を歪めている。
「前回は証拠がなかったから見逃したが、今回は証拠もある!そして、ギルド内でもめ事を起こした罰も含め、冒険者ギルド登録は抹消する!ギルドに足を踏み入れる事は金輪際許さん!」
冒険者ギルド追放宣言である。
「はーい、これあなたたちのギルドカードねぇ。大丈夫、銀行は使えるわよ~。じゃ、ばいばぁい」
怒り心頭なフリッツの後ろから、ひょこっと現れたのは高身長な男である。言葉は女っぽいので、オネエというやつだ。冒険者ギルド登録が抹消されても、銀行口座が消えるわけじゃない。そっちは商業ギルドの管轄だからだ。そんな彼が、ぽいぽいぽい、と三つのプレートを放心状態の冒険者たちに投げ渡す。それに我に返った三人は、まだ何か言いたかったのか口を開いたが、仁王立ちするフリッツに言葉が出る事はなく。渋々といった感じで瑞姫たちと反対方向に消えていった。それを見送っているフリッツに、瑞姫は急いで駆け寄る。
「フリッツさん!」
「誰だ……!?せ、あ、いえ、あ、貴女様は……!」
瑞姫の声に振り向いたフリッツは、眼鏡を外した瑞姫を見て息をのむ。フリッツが瑞姫を視界に入れて理解したので、眼鏡をかけ直した。
「呪いに冒された方はどこです!まだ生きてるなら案内してください!」
「え、ちょ」
「は……、はっ、こちらでございますっ」
さすがギルドマスター。混乱していても瑞姫の言葉は理解したようだ。隣の男は目を白黒させているが、フリッツが案内するため駆け出せば、後をついてきた。その後をフォリアたちもついてくる。呪いに冒された人がいるのは、医務室ではなく個室だった。フリッツは一応ノックしたが、それと同時に扉を開けたので中にいる人たちは驚いている。
「お前たち、悪いがそこをどけ!」
「え、え?」
「え、は、はいっ」
呪いに侵された人の仲間だろうか。男女二人組は混乱しているが、鬼の形相なフリッツに戦き慌ててベッドから離れた。
「アラン、扉閉めろ!」
「おうっ」
「副マス!防音魔法をお願いします!」
「え、えぇっ」
それぞれが指示を出し、役割を熟す。瑞姫はベッドをのぞき込んだ。呪いに侵されていた人は男で、息はかろうじてしているが意識はない。顔に黒い痣のようなものが浮き出ており、体全体は黒い靄が包み込もうとしていた。瑞姫は、急いで呪いを探る。
(えーっと、何々?――――あーあ、呪詛、か。まあ、これだけ強いなら納得かな。徐々に蝕むものだけど、この様子じゃあと三十分もないな。相手は……、死んでるっぽい?)
「これ、かけた相手って死んでるの?」
「は、はい。あの、魔物、だったので……」
「魔物……、あぁ、魔物か」
確かに、魔物にも呪いを行使するのがいる。主にアンデッド系だ。と、まあ、それはまた後でいい。今は、呪いを浄化する方が先決だ。躊躇なく呪いで黒くなっている左手を握る。すぅ、と息を吸い、自身を宝石に見立て、浄化を祈った。
「――――浄化」
一瞬の強く輝く煌めき。瑞姫が握っている左手から、黒い痣と靄が徐々になくなっていく。最後までなくなるのを見届けて、手を離した。呼吸も正常だし、一応、心臓に耳を当てたが、きちんと動いている。
「よし、大丈夫。フリッツさん、間に合いました。もう大丈夫ですよ」
「……そ、そう、ですか……。はあ~、よ、よかった」
「はい、よかったです。呪いによって体力を持って行かれているはずなので、数日は安静にしていた方がいいと思います」
さすがの瑞姫も、体力を回復させる高度な事はできない。
「え、だ、だい、じょうぶ……?」
「ほ、ほんとですか……!?」
「はい、どうぞ」
ベッド脇からフォリアの方に戻れば、二人は恐る恐る男の顔をのぞき込み、泣き始めた。張り詰めていた空気の糸が切れたのだろう。
「主、お疲れ様でございました。お体の方は?」
「ありがとう。大丈夫だよ」
「は!?え、あ、主!?お前……っ」
「主、この煩い男をたたき出す許可を」
「いやいや、出さないからね?」
チッ、とフォリアは舌打ちして、煩い男から目をそらした。
「ちょ、ちょっと、私にもわかるように説明しなさいよ!」
「俺も説明が欲しい。ギルマス」
「う……、俺も、説明が欲しい部分があるんだが……」
三人の目が瑞姫とフォリアに向けられる。さてどうしよう、とちらっとフォリアを見れば、変わらずすん、とした表情だ。
「あ、あのっ」
「え?」
ぐずぐず、と鼻を啜りながらも、少しは落ち着いたらしい二人は、がばっ、と瑞姫に頭を下げる。
「あ、ありがとうございました!」
「し、死んじゃったらっ、ど、どうしようって……!」
「いえいえ。どういたしまして。お仲間の人?」
「え、いえ、ち、違うんです。この人は、森であって……」
驚いた。仲間じゃなかったらしい。寝顔をまじまじと見るのは失礼だが、改めて見ると、二十代後半に見える。この男女二人組は十代半ばだろうか。聞けば、二人は先日この国に来た流れの冒険者らしい。ランクCで、本当はシャリーの森の入り口付近で採取できる薬草だったのに、先ほど追放されたパーティーに騙されてシュナの森へついて行ってしまったようだ。北の森は現在、ギルドが立ち入り禁止にしているのだが、俺たちはAランクだから大丈夫だとか、北の方が良い物がとれるとかなんとか法螺を吹き、強引に二人を連れていった。そして森に入ったら、最初は何もなかったのに、いきなりアンデッドと遭遇。パニックになりつつも後退しながら応戦していれば、この男が現れて助けてくれたらしい。しかし、最後の力を振り絞り呪いを発動しているアンデッドに気づいた女が、近くにいたこの男を無理矢理引っ張り盾にして、呪いを代わりに受けさせた、ということらしい。魔物は消滅したようだ。
(恩を仇で返すとか、よくできるなあ……。しかも、この人強い人だろうに……)
シュナの森は上級者向けの森である。出る魔物もB、A希にSだ。その森に一人でいた事を考えれば、男の実力はA、もしくはS相当だろう。
そして、倒れた男を追放パーティーが運んできた後、北の森に行った事を問いただしたら、追放者たちはこの二人が北の森に行こうとしたのを止めたと、でたらめを言い出した。しかし、女の子が持っていた録音機の魔道具に、最初のやりとりからアンデッドと遭遇する直前までの会話が録音されていたらしい。嘘を暴かれた追放者が逆ギレして殴りかかって、フリッツに殴り飛ばされ、今に至る。追放パーティーはあれでもランクBだそうだ。二人がこの国に来て日が浅いのを狙ったらしい。
前にも似たような事はあったらしいが証拠がなく、泳がしていたところに今回の出来事。ギルド内でもめ事を起こした上、上級の冒険者を死の淵に立たせた事もあわせ、あの追放劇となった。しかし、この二人も騙されたとはいえ北の森は立ち入り禁止と通達があったのを知っていたので、その分は罰を受ける事になったらしい。録音機が追放の決定打になったので、それも考慮した上で、一週間の依頼受注禁止である。今回、受けた依頼も達成できなかったことになるから、違約金も発生するので、それは妥当な罰だ。
「あの、神官様、ですか?」
「あー、それはねえ、秘密、ってことで。聞きたいなら、契約書がついてくるけど、いい?」
「……、え、えっと、その、やめておきます……」
「お前たち、この方の身元は俺が保証する」
「は、はい。大丈夫です!知らないままの方が、良い事もあるっておばあちゃんが言ってたので!」
「ギルマスがいうなら、信じますし!」
非常に賢明な判断だ。ぶんぶん、と首を横に振る二人である。
そして、瑞姫たちの側には、アランの姿もある。元々、彼も朝食をとるために食堂にいただけで、仲間もすでにギルドに集まっているはずだから、と言う理由と、森の異変の件で、瑞姫たちが行くなら俺も行くと言い、瑞姫がじゃあ一緒に、と言ったのが理由だ。フォリアは、不服そうにしながらも反対はしなかった。フォリアはアランとパーティーを組んだ事が何度かあるので、彼の実力は嫌というほど知っている。森で何が起こっているかなど知らないが、もし向かうなら戦力は多い方がいい。頼りになる事もわかっている。だから、不服は口にしなかった。瑞姫にはバレバレだが。
そんな三人と一匹でギルドに向かうと、ギルドの扉の三歩ほど横で、ぴくり、と全員何かに反応し足を止める。一歩下がった直後、バンッ!と扉が開いた。
「ぐはぁっ」
そしてすぐ、ドゴッ!と言う音と共に開いた扉から、男が吹っ飛ばされながら出てくる。そのあとも、続けざまに男一人が殴り飛ばされながら、女一人が転がりながら出てきた。それを追うように、ぬっ、と怒気を孕ませたフリッツが指をパキパキ鳴らしながら出てくる。
「嘘吐きは、泥棒の始まりです、と習わなかったのか」
瑞姫は吹き出しそうになった。威圧感はすごいし、顔も鬼の形相と言えるほどなのに、そういう言い方するの?
「ちょ、ちょっとぐらい、いいと、思ったんだよ……っ」
「て、手伝ってあげたのよ!?」
「手伝い?馬鹿を言うな!」
フリッツが怒鳴り声を上げれば、ぐわんっ、と空気が揺れた。スキル、獣の怒声である。これは、スキルを発動した人が相手より強ければ、戦意喪失させる事が可能だ。発動した人が相手より弱くても、ひるませる事は可能。瑞姫たちは平気だが、フリッツの目の前に転がる三人はあっという間に縮こまった。
「お前が盾に使わなければっ、あいつは呪いに冒されて苦しむ事はなかったんだ!」
「なっ、あ、あたしがっ、受ければよかったって言うの……!?」
「お前より優秀だ!」
どうやら、女が誰かを自分の盾にし、代わりに呪いを受けさせたらしい。瑞姫の眉間に皺がよった。瑞姫だけじゃない、アランもフォリアも顔を歪めている。
「前回は証拠がなかったから見逃したが、今回は証拠もある!そして、ギルド内でもめ事を起こした罰も含め、冒険者ギルド登録は抹消する!ギルドに足を踏み入れる事は金輪際許さん!」
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「はーい、これあなたたちのギルドカードねぇ。大丈夫、銀行は使えるわよ~。じゃ、ばいばぁい」
怒り心頭なフリッツの後ろから、ひょこっと現れたのは高身長な男である。言葉は女っぽいので、オネエというやつだ。冒険者ギルド登録が抹消されても、銀行口座が消えるわけじゃない。そっちは商業ギルドの管轄だからだ。そんな彼が、ぽいぽいぽい、と三つのプレートを放心状態の冒険者たちに投げ渡す。それに我に返った三人は、まだ何か言いたかったのか口を開いたが、仁王立ちするフリッツに言葉が出る事はなく。渋々といった感じで瑞姫たちと反対方向に消えていった。それを見送っているフリッツに、瑞姫は急いで駆け寄る。
「フリッツさん!」
「誰だ……!?せ、あ、いえ、あ、貴女様は……!」
瑞姫の声に振り向いたフリッツは、眼鏡を外した瑞姫を見て息をのむ。フリッツが瑞姫を視界に入れて理解したので、眼鏡をかけ直した。
「呪いに冒された方はどこです!まだ生きてるなら案内してください!」
「え、ちょ」
「は……、はっ、こちらでございますっ」
さすがギルドマスター。混乱していても瑞姫の言葉は理解したようだ。隣の男は目を白黒させているが、フリッツが案内するため駆け出せば、後をついてきた。その後をフォリアたちもついてくる。呪いに冒された人がいるのは、医務室ではなく個室だった。フリッツは一応ノックしたが、それと同時に扉を開けたので中にいる人たちは驚いている。
「お前たち、悪いがそこをどけ!」
「え、え?」
「え、は、はいっ」
呪いに侵された人の仲間だろうか。男女二人組は混乱しているが、鬼の形相なフリッツに戦き慌ててベッドから離れた。
「アラン、扉閉めろ!」
「おうっ」
「副マス!防音魔法をお願いします!」
「え、えぇっ」
それぞれが指示を出し、役割を熟す。瑞姫はベッドをのぞき込んだ。呪いに侵されていた人は男で、息はかろうじてしているが意識はない。顔に黒い痣のようなものが浮き出ており、体全体は黒い靄が包み込もうとしていた。瑞姫は、急いで呪いを探る。
(えーっと、何々?――――あーあ、呪詛、か。まあ、これだけ強いなら納得かな。徐々に蝕むものだけど、この様子じゃあと三十分もないな。相手は……、死んでるっぽい?)
「これ、かけた相手って死んでるの?」
「は、はい。あの、魔物、だったので……」
「魔物……、あぁ、魔物か」
確かに、魔物にも呪いを行使するのがいる。主にアンデッド系だ。と、まあ、それはまた後でいい。今は、呪いを浄化する方が先決だ。躊躇なく呪いで黒くなっている左手を握る。すぅ、と息を吸い、自身を宝石に見立て、浄化を祈った。
「――――浄化」
一瞬の強く輝く煌めき。瑞姫が握っている左手から、黒い痣と靄が徐々になくなっていく。最後までなくなるのを見届けて、手を離した。呼吸も正常だし、一応、心臓に耳を当てたが、きちんと動いている。
「よし、大丈夫。フリッツさん、間に合いました。もう大丈夫ですよ」
「……そ、そう、ですか……。はあ~、よ、よかった」
「はい、よかったです。呪いによって体力を持って行かれているはずなので、数日は安静にしていた方がいいと思います」
さすがの瑞姫も、体力を回復させる高度な事はできない。
「え、だ、だい、じょうぶ……?」
「ほ、ほんとですか……!?」
「はい、どうぞ」
ベッド脇からフォリアの方に戻れば、二人は恐る恐る男の顔をのぞき込み、泣き始めた。張り詰めていた空気の糸が切れたのだろう。
「主、お疲れ様でございました。お体の方は?」
「ありがとう。大丈夫だよ」
「は!?え、あ、主!?お前……っ」
「主、この煩い男をたたき出す許可を」
「いやいや、出さないからね?」
チッ、とフォリアは舌打ちして、煩い男から目をそらした。
「ちょ、ちょっと、私にもわかるように説明しなさいよ!」
「俺も説明が欲しい。ギルマス」
「う……、俺も、説明が欲しい部分があるんだが……」
三人の目が瑞姫とフォリアに向けられる。さてどうしよう、とちらっとフォリアを見れば、変わらずすん、とした表情だ。
「あ、あのっ」
「え?」
ぐずぐず、と鼻を啜りながらも、少しは落ち着いたらしい二人は、がばっ、と瑞姫に頭を下げる。
「あ、ありがとうございました!」
「し、死んじゃったらっ、ど、どうしようって……!」
「いえいえ。どういたしまして。お仲間の人?」
「え、いえ、ち、違うんです。この人は、森であって……」
驚いた。仲間じゃなかったらしい。寝顔をまじまじと見るのは失礼だが、改めて見ると、二十代後半に見える。この男女二人組は十代半ばだろうか。聞けば、二人は先日この国に来た流れの冒険者らしい。ランクCで、本当はシャリーの森の入り口付近で採取できる薬草だったのに、先ほど追放されたパーティーに騙されてシュナの森へついて行ってしまったようだ。北の森は現在、ギルドが立ち入り禁止にしているのだが、俺たちはAランクだから大丈夫だとか、北の方が良い物がとれるとかなんとか法螺を吹き、強引に二人を連れていった。そして森に入ったら、最初は何もなかったのに、いきなりアンデッドと遭遇。パニックになりつつも後退しながら応戦していれば、この男が現れて助けてくれたらしい。しかし、最後の力を振り絞り呪いを発動しているアンデッドに気づいた女が、近くにいたこの男を無理矢理引っ張り盾にして、呪いを代わりに受けさせた、ということらしい。魔物は消滅したようだ。
(恩を仇で返すとか、よくできるなあ……。しかも、この人強い人だろうに……)
シュナの森は上級者向けの森である。出る魔物もB、A希にSだ。その森に一人でいた事を考えれば、男の実力はA、もしくはS相当だろう。
そして、倒れた男を追放パーティーが運んできた後、北の森に行った事を問いただしたら、追放者たちはこの二人が北の森に行こうとしたのを止めたと、でたらめを言い出した。しかし、女の子が持っていた録音機の魔道具に、最初のやりとりからアンデッドと遭遇する直前までの会話が録音されていたらしい。嘘を暴かれた追放者が逆ギレして殴りかかって、フリッツに殴り飛ばされ、今に至る。追放パーティーはあれでもランクBだそうだ。二人がこの国に来て日が浅いのを狙ったらしい。
前にも似たような事はあったらしいが証拠がなく、泳がしていたところに今回の出来事。ギルド内でもめ事を起こした上、上級の冒険者を死の淵に立たせた事もあわせ、あの追放劇となった。しかし、この二人も騙されたとはいえ北の森は立ち入り禁止と通達があったのを知っていたので、その分は罰を受ける事になったらしい。録音機が追放の決定打になったので、それも考慮した上で、一週間の依頼受注禁止である。今回、受けた依頼も達成できなかったことになるから、違約金も発生するので、それは妥当な罰だ。
「あの、神官様、ですか?」
「あー、それはねえ、秘密、ってことで。聞きたいなら、契約書がついてくるけど、いい?」
「……、え、えっと、その、やめておきます……」
「お前たち、この方の身元は俺が保証する」
「は、はい。大丈夫です!知らないままの方が、良い事もあるっておばあちゃんが言ってたので!」
「ギルマスがいうなら、信じますし!」
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