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第2章 龍の里編
22話-屋敷
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蔦風は鬼薔薇の少年、黎紅と共に龍の里を目指し、大木の森の最奥へ進んでいた。
「ん?鬼薔薇・・・・・・って確か・・・・・・俺たち同期ってこと?」
顔を見合せながら蔦風はいつかのおじさんとの会話を思い出す。
「あ!そうだ!そういえばそんなこと聞いたな・・・・・・俺は故郷を出てきてからバタバタしっぱなしではっきり覚えてないけど・・・・・・アイビーの『鎌』の新人は蔦風なのか?」
「うん」
アイビーを手のひらから少し出し、チロチロ動かしてみせた。
「えっ、そうなのかぁ・・・・・・」
黎紅はなぜか残念そうである。
「俺の『鎌』と被っちゃった!万が一の時連携しにくいぞ・・・・・・」
そう言って黎紅は手のひらからトゲだらけのツルを出してみせる。どうやら薔薇のツルのようだ。
確かに、違う系統の『鎌』を使う者同士なら欠点を補い合うことができる。
しかし、今回は二人ともツル系の植物を操る。
「あ、でも蔦風のは柔らかいな。俺のは固いからうねうねさせることできないんだ」
確かにアイビーと薔薇のツル、動き方に滑らかさの違いが見受けられた。
そんなこんなでかなり歩いた。木々の間が狭いのでまんじゅうに乗ってひとっ飛び、という訳にはいかないので木の根や見たことの無い草花を分けてひたすら歩く。
そしてようやく家が見えてきた。が、これは想像していたものとは違っている。
「な、なんで木の幹と幹につり橋がかかってんだよ・・・・・・しかも家が木に食い込んでるぞ・・・・・・」
「わお」
「ワオ」
黎紅は目を丸めて大木を見上げる。
確かに数十本の大木が高いところでつり橋で繋がり、木の幹に直接埋め込んだかのような造りの家が見えた。昔ながらの茅葺きが多い。
ただ一つ、高いところに大きな家があった。恐らくあれが龍の里のお偉いさんの住まいだろう。
「あ!誰かいる」
黎紅が指差す方向に人影が。
どうやら畑仕事をしているようだ。
にしても大木の葉が日光を遮っているのに、どうやって野菜を育ててるんだ?
「すいませーん!龍の里のひとですかー?」
こちらに気がつき、顔を上げ、睨んできた。泥だらけで浅黒い肌の少年が上半身裸で鍬を持ち上げる。
「・・・・・・」
「無視っ」
「忙しそうだね」
「トリアエズ行くゾ」
まんじゅうが先頭を切る。
「オイ小僧、俺ラは龍の里ノ巫女の護衛にヨバレテ来たんだが」
浅黒い肌の少年は犬が喋った、という状況に静かに驚いた様子だ。
「お前イガイ里ノ者が見当たらナイ。ドコニいるんだ?」
少年がふと見上げる。あの大きな屋敷だ。
「アソコか・・・・・・いくゾ蔦風」
「ありがとうございます」
相変わらず少年は無口である。
蔦風一行は少年が見上げていた屋敷に行こうと試みるも、どこから行けばいいのかわからない。みたところ入り口や階段なんてものは無い。
「里のひとらは龍だもんな。あんな高いところに行くときは飛んでいくよな」
「飛んで行く?みんな龍の姿で生活してるの?」
「え?!翼だけ生やすことくらい出来るんだろう!あやかしっていうのは、自分の体力を最小限に留めておける姿で暮らしてるだよ。太古より存在するあやかしほど本来の姿は疲れる。それに・・・・・・」
「それに?」
「・・・・・・それに、筋肉痛が一週間続く」
「大変だね」
「オイ蔦風。『鎌』使エ。トットト行くぞ」
「その手があった」
蔦風はつり橋のに向かってアイビーを伸ばす。
「すごい!」
「レイ、先に登って。俺がツルを切り離せば消えるんだ」
「おう、ありがとな。俺のツルじゃ痛くて登れやしねえ」
確かに黎紅の薔薇のツルではトゲだらけで握れない。
蔦風はまんじゅうを頭に乗せ、黎紅の後に続き登る。腕だけで。そう、腕だけで。
「ふえーー、ようやく登れたぁー」
「思ってたより高い」
「コリャ落ちたらタマランぞ」
木の板で造られているつり橋の隙間から地面が垣間見える。
「とりあえず、この屋敷だ。話聞かなきゃ始まらないぞ」
黎紅が屋敷を見据え、蔦風は屋敷の正面に行く。
登ったつり橋が屋敷の正面だったため、目と鼻の先に目的地があった。
にしても大きい。よくこんな建物が木に食い込んでるな。と思う程だ。
門番もいなければ塀もない。ウェルカム状態だ。ただそこには、物々しい雰囲気が漂っている。
「・・・・・・入ったら危ない気がする・・・・・・」
蔦風はこの手の勘は鋭い。これは生前の頃からだ。
「マ、この里自体がアブねー集団ッテのは違いネーダロ」
「そうだよな・・・・・・里の外部から情報が入ってこない、内部からの情報もあやふや。おまけに建物の外はあの無口野郎の気配しかなかった。この里が世界の全てだって思ってるヤツも少なくないだろう。・・・・・・ん?だとしたら俺らの立場はまずいな」
「ゴメイサツ」
「まずい?」
「アア、この里ノしきたりをオモンジルとか言う固いヤツラに目を付けられて見ろ。外部から来タ俺達はアウトだ。恐らく、前ここに派遣サレタ死神も・・・・・・」
なんと。里の者に消された、ということか。
「巫女の護衛に来たのになかなかの仕打ちだね」
「ここまで来たから俺は行こう。蔦風、どうする?」
「・・・・・・レイが行くなら行こう」
こうして蔦風一行は、屋敷へと姿を消した。
「ん?鬼薔薇・・・・・・って確か・・・・・・俺たち同期ってこと?」
顔を見合せながら蔦風はいつかのおじさんとの会話を思い出す。
「あ!そうだ!そういえばそんなこと聞いたな・・・・・・俺は故郷を出てきてからバタバタしっぱなしではっきり覚えてないけど・・・・・・アイビーの『鎌』の新人は蔦風なのか?」
「うん」
アイビーを手のひらから少し出し、チロチロ動かしてみせた。
「えっ、そうなのかぁ・・・・・・」
黎紅はなぜか残念そうである。
「俺の『鎌』と被っちゃった!万が一の時連携しにくいぞ・・・・・・」
そう言って黎紅は手のひらからトゲだらけのツルを出してみせる。どうやら薔薇のツルのようだ。
確かに、違う系統の『鎌』を使う者同士なら欠点を補い合うことができる。
しかし、今回は二人ともツル系の植物を操る。
「あ、でも蔦風のは柔らかいな。俺のは固いからうねうねさせることできないんだ」
確かにアイビーと薔薇のツル、動き方に滑らかさの違いが見受けられた。
そんなこんなでかなり歩いた。木々の間が狭いのでまんじゅうに乗ってひとっ飛び、という訳にはいかないので木の根や見たことの無い草花を分けてひたすら歩く。
そしてようやく家が見えてきた。が、これは想像していたものとは違っている。
「な、なんで木の幹と幹につり橋がかかってんだよ・・・・・・しかも家が木に食い込んでるぞ・・・・・・」
「わお」
「ワオ」
黎紅は目を丸めて大木を見上げる。
確かに数十本の大木が高いところでつり橋で繋がり、木の幹に直接埋め込んだかのような造りの家が見えた。昔ながらの茅葺きが多い。
ただ一つ、高いところに大きな家があった。恐らくあれが龍の里のお偉いさんの住まいだろう。
「あ!誰かいる」
黎紅が指差す方向に人影が。
どうやら畑仕事をしているようだ。
にしても大木の葉が日光を遮っているのに、どうやって野菜を育ててるんだ?
「すいませーん!龍の里のひとですかー?」
こちらに気がつき、顔を上げ、睨んできた。泥だらけで浅黒い肌の少年が上半身裸で鍬を持ち上げる。
「・・・・・・」
「無視っ」
「忙しそうだね」
「トリアエズ行くゾ」
まんじゅうが先頭を切る。
「オイ小僧、俺ラは龍の里ノ巫女の護衛にヨバレテ来たんだが」
浅黒い肌の少年は犬が喋った、という状況に静かに驚いた様子だ。
「お前イガイ里ノ者が見当たらナイ。ドコニいるんだ?」
少年がふと見上げる。あの大きな屋敷だ。
「アソコか・・・・・・いくゾ蔦風」
「ありがとうございます」
相変わらず少年は無口である。
蔦風一行は少年が見上げていた屋敷に行こうと試みるも、どこから行けばいいのかわからない。みたところ入り口や階段なんてものは無い。
「里のひとらは龍だもんな。あんな高いところに行くときは飛んでいくよな」
「飛んで行く?みんな龍の姿で生活してるの?」
「え?!翼だけ生やすことくらい出来るんだろう!あやかしっていうのは、自分の体力を最小限に留めておける姿で暮らしてるだよ。太古より存在するあやかしほど本来の姿は疲れる。それに・・・・・・」
「それに?」
「・・・・・・それに、筋肉痛が一週間続く」
「大変だね」
「オイ蔦風。『鎌』使エ。トットト行くぞ」
「その手があった」
蔦風はつり橋のに向かってアイビーを伸ばす。
「すごい!」
「レイ、先に登って。俺がツルを切り離せば消えるんだ」
「おう、ありがとな。俺のツルじゃ痛くて登れやしねえ」
確かに黎紅の薔薇のツルではトゲだらけで握れない。
蔦風はまんじゅうを頭に乗せ、黎紅の後に続き登る。腕だけで。そう、腕だけで。
「ふえーー、ようやく登れたぁー」
「思ってたより高い」
「コリャ落ちたらタマランぞ」
木の板で造られているつり橋の隙間から地面が垣間見える。
「とりあえず、この屋敷だ。話聞かなきゃ始まらないぞ」
黎紅が屋敷を見据え、蔦風は屋敷の正面に行く。
登ったつり橋が屋敷の正面だったため、目と鼻の先に目的地があった。
にしても大きい。よくこんな建物が木に食い込んでるな。と思う程だ。
門番もいなければ塀もない。ウェルカム状態だ。ただそこには、物々しい雰囲気が漂っている。
「・・・・・・入ったら危ない気がする・・・・・・」
蔦風はこの手の勘は鋭い。これは生前の頃からだ。
「マ、この里自体がアブねー集団ッテのは違いネーダロ」
「そうだよな・・・・・・里の外部から情報が入ってこない、内部からの情報もあやふや。おまけに建物の外はあの無口野郎の気配しかなかった。この里が世界の全てだって思ってるヤツも少なくないだろう。・・・・・・ん?だとしたら俺らの立場はまずいな」
「ゴメイサツ」
「まずい?」
「アア、この里ノしきたりをオモンジルとか言う固いヤツラに目を付けられて見ろ。外部から来タ俺達はアウトだ。恐らく、前ここに派遣サレタ死神も・・・・・・」
なんと。里の者に消された、ということか。
「巫女の護衛に来たのになかなかの仕打ちだね」
「ここまで来たから俺は行こう。蔦風、どうする?」
「・・・・・・レイが行くなら行こう」
こうして蔦風一行は、屋敷へと姿を消した。
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