赤棘の死神

細川あずき

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第2章 龍の里編

21話-新たなる仲間

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「まんじゅう、龍の里って?」
蔦風は大きく変化した狗の式神、まんじゅうの背にまたがっている。
おじさんの家を去ったのは明け方。かれこれ数時間は経過しているが、海しか見えない。
「一応、東京って国に含まれてるって話だ。それなりの離島だがな」
「東京は国じゃないよ」
「はっ?あんなキラッキラしてるのに国じゃねえのか?」
「んー、日本っていう国の頭かな」
「じゃあ東京が死んだらニホンも死ぬのか?」
「大混乱するだろうね。文字通り」
「ふーん」
まんじゅうは意外と無知である、ということを知った。
「・・・・・・まんじゅう、龍の里って?」
本題に戻る。
「・・・・・・昔、大陸から渡ってきた龍の子孫たちで構成されている里だ。それも混じりっけのない純粋な血が流れてる。混血や半妖は里に留まることを許されねぇから大抵追い出されるんだ。その分外部からの情報も入ってこねぇから昔からのしきたりとか重んじてるし、特別に里に入れる俺達も口出しできねぇ。蔦風はただ巫女と言われる龍の里の娘っ子を時期が来るまで守りきればいいんだよ」
純粋な龍の血が流れている娘を守る任務・・・・・・あれ、守る必要あるのか?龍を?という疑問は流す。


「おい、見えてきたぞ」
青い海に浮かぶ緑生い茂る島。いや、生い茂り過ぎでは・・・・・・
島、というか森そのものが海に浮いているようだ。木の一本一本がありえないくらい高く、太い。
まんじゅうが降り立った砂浜との高低差が恐ろしい。
近くで見るとその大きさが良く分かる。二十メートルは優に越えているものばかりだ。
「木・・・・・・なのか?」
それすらも怪しい。触れてみるも現実とは思えない。



「おーい!そこの君!雪の髪の!」
突然、誰かが蔦風を呼ぶ。
「雪の髪・・・・・・俺のことかな?」
なんとも綺麗な例えをしてくれるものだな。
「オ前以外ダレガいるンダよ」
小さなまんじゅうが鼻先を声の主の方へと向けると、そこには短い三つ編みの赤髪少年がこちらに駆け寄って来ていた。
蔦風は少し身構えるも、まんじゅうがアイツは大丈夫ダ、とこっそり言ったので信じた。
「どうされたんですか?・・・・・・えと、唐辛子の髪さん?」
「ブッッ!」
まんじゅうが吹いた。
もうちったあマシな例えシロよ!とのこと。
「フハッ!唐辛子の髪って初めて言われたよ。せめて薔薇色って言われないと一族の名誉に関わる」
赤髪の少年が蔦風に右手をさしだした。

「俺は鬼薔薇の黎紅(レイコウ)」

なんとも純粋でフレンドリーな少年だ。
蔦風は彼の手を握り返す。
「俺は蔦風。レイコウさんはこの里のひとですか?」
「黎紅って言いにくいだろ?黎でいいよ。俺は蔦風と同じ、死神だ」
そう言いながら懐から仮面を取り出す。独特のデザインが施されており、この世に二つと無さそうな雰囲気を醸し出している。
「仮面?」
「そう!仮面。死神の新人はフードかどっちか選べるんだけど・・・・・・」
「知らなかった・・・・・・」
おじさん、選択肢すら提示してくれなかったな。デザイン決めが面倒だったのだろう。
「蔦風も見た感じ新人・・・・・・だよな!いきなり龍の里の守護だなんて大層な役割受けてしまったけど、一緒に頑張ろうな!」
「うん、よろしく」
黎紅は蔦風と同じく、つい先程この龍の里の島にやってきたのだそう。式神一族の美都鵯家から鳥の式神を借りてここまでやってきたは良いものの、大きすぎる木に圧倒されてしり込みしていた時にこの海岸に降り立つまんじゅうを見つけ駆け寄って来たのだ。
・・・・・・任務で式神を借りれることも知らなかった。

「にしてもおっきい木だよなぁ。こんな木を切り倒して里を作ったのか・・・・・・」
任務を始めるにはまず里に行かねばならない。恐らくこの大木の森の最奥だろうと安易に想像できた。
「とりあえず、森にはいってみよう」
「えっ!怖くない?こんなわけの分からない大木の森」
「うん」
「・・・・・・よし、蔦風が行くなら俺も腹をくくろう!」
蔦風はただ単に『恐怖』という感情が無いだけである。



こうして蔦風とまんじゅうは黎紅と共に森の奥へ姿を進んでいった。
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