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第1章 死神への道
19話-式神契約、まんじゅうの誓い
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小屋の前で式神の契約を行うらしい。
おじさんが蔦風とまんじゅうの足元に木の枝で陣を書いた。陣と言ってもただの十字。落書き?
「おっし、こんなもんだろ」
「何ですか、この絵・・・・・・」
「絵じゃねえよ!これは『契約陣』だ」
「けいやくじん・・・・・・」
「式神契約に使われる陣だ。この陣の上で契りの儀式を行う」
おじさんが契約陣から出て、蔦風に木製の何かをを投げ渡す。
何やら面妖な模様が掘ってあり、切り込みが入っているので抜いてみると鋭く光る小さな日本刀だった。
「それで腕のどっかを軽く切って血を陣の上に垂らすんだ」
「わかりました」
作務衣の袖をめくり、躊躇うこと無くその小刀で切りつける。
まんじゅうはというと自分の前足を自分で噛み、血を垂らす。
痛そう・・・・・・
すると十字の陣が紫色に光り、細い黒煙が陣の中心から出てきて辺りを覆う。
契りの儀式だ。
蔦風はまんじゅうの方へ目をやると大きな犬の姿になりかけていた。
「ゥウウゥゥウゥゥガァアァアッッ!」
苦しんでいる・・・・・・?
みるみる大きくなり、いつか見た大狗の姿になると今度は黒煙が姿を変える。
これは・・・・・・
「鎖・・・・・・?」
黒煙から姿を変えたそれは鎖だ。ジャラジャラと音をたてながら蛇のように黒煙と同じく辺りを覆った。
「蔦風!」
おじさんの声だ。
「持っている小刀を陣の真ん中に刺せ!血を付けたままだぞ!」
と、いわれても・・・・・・
「鎖で動けないです!」
気付かぬうちに鎖は蔦風の足首にまとわりついていた。
「なら、始めに黒煙が出てきた場所めがけて投げろ!なんとかなる!」
「わかりました!」
蔦風は小刀を持ち直し、陣の中央(らしき場所)めがけてそれを投げた。
直後、うごめいていた鎖がピシッと音をたててはりつめる。
足首だけでなく、手首や首もと、腹までもが鎖で縛られる。これはまともに動けそうにない。
一方、まんじゅうは大きな犬の姿をしたまま鎖に縛られている。「ウゥゥゥーーー」と呻き声をたててながら睨む。まんじゅうの場合口も鎖に縛れ、話せない。
「見合エヨ見合エ、契リ時。離レヌヨウニ、千切レヌヨウニ、ココニ御魂ヲ捧ゲン。鎖繋ギガ朽チルマデ」
おじさんが何かブツブツ言っている。
すると、ピシャッと音をたてながら鎖が細かくバラバラに砕けた。一気に視界が開け、蔦風はキラキラと宙を舞う破片越しにまんじゅうを見る。
その姿は、美しい大狗だった。
いつも見る大きな犬の姿よりも気高い獣。いや、神獣という言葉の方がいいだろう。長い尾、切れ長の青い瞳。これを人は美しいと言うのだ。
「まんじゅう・・・・・・その姿・・・・・・」
「ふん、式神は契約することで己の力を最大限引き出せるってだけだ。言うなれば最終形態だな」
「そう、なんだ・・・・・・」
ズシッと蔦風の方へ一歩歩み寄る。
「これからは蔦風、お前が俺の主だ。俺に全部預けてくれ。俺に守らせてくれ。最期までそばにいてやるから」
まんじゅうは鼻先を蔦風に寄せる。
その姿は大きくとも、主人を欲する仔犬のようで、どこか儚い。
蔦風は手をまんじゅうの顔に添え、顔をうずめる。
「うん。ありがとう、まんじゅう」
あたたかい。式神も生きている。ただのモノじゃない。
蔦風の中でモヤモヤしたものが晴れていくようだ。
なんか、腕が痛い。
まんじゅうが噛んでいる。
「おいおいまんじゅう、空気読めよ」
おじさんのツッコミ。
まんじゅうが蔦風の腕から牙を離す。いつもより大きな牙なのに傷が小さい。気を遣ってくれているようだ。
「はぁあ?狗神が俺の体いじったからだろ?不可抗力だ」
「・・・・・・」
「なんか言えよ蔦風」
まんじゅうが覗き込み、気まずそうに見つめる。
「・・・・・・こんなの初めての感覚だ。凄く心?が満ちているような、言葉に表せない・・・・・・」
これは、この感情は・・・・・・
「『信頼』」
おじさんがボソッと呟く。
「しんらい・・・・・・」
「言っとくが『信用』と『信頼』は違うぞ。『信用』は行為や実績、成果などから数値化できるといわれる評価。『信頼』は人柄や今まで互いに築き上げてきたものから得られる数値化出来ない評価。お前達の場合は、後者だな」
築き上げてきたもの・・・・・・
この契約の一瞬で、という訳ではない。おじさんとまんじゅうと過ごす時を重ね、その時間が『信頼』を覆う殻にヒビを入れたのだ。
「いちいち説明すんな狗神」
「へーへーすんません」
ああ、そうか俺はまんじゅうを信頼しているんだ。
「まんじゅう」
「あ?んだよ」
「よろしくね」
「・・・・・・おう」
おじさんが蔦風とまんじゅうの足元に木の枝で陣を書いた。陣と言ってもただの十字。落書き?
「おっし、こんなもんだろ」
「何ですか、この絵・・・・・・」
「絵じゃねえよ!これは『契約陣』だ」
「けいやくじん・・・・・・」
「式神契約に使われる陣だ。この陣の上で契りの儀式を行う」
おじさんが契約陣から出て、蔦風に木製の何かをを投げ渡す。
何やら面妖な模様が掘ってあり、切り込みが入っているので抜いてみると鋭く光る小さな日本刀だった。
「それで腕のどっかを軽く切って血を陣の上に垂らすんだ」
「わかりました」
作務衣の袖をめくり、躊躇うこと無くその小刀で切りつける。
まんじゅうはというと自分の前足を自分で噛み、血を垂らす。
痛そう・・・・・・
すると十字の陣が紫色に光り、細い黒煙が陣の中心から出てきて辺りを覆う。
契りの儀式だ。
蔦風はまんじゅうの方へ目をやると大きな犬の姿になりかけていた。
「ゥウウゥゥウゥゥガァアァアッッ!」
苦しんでいる・・・・・・?
みるみる大きくなり、いつか見た大狗の姿になると今度は黒煙が姿を変える。
これは・・・・・・
「鎖・・・・・・?」
黒煙から姿を変えたそれは鎖だ。ジャラジャラと音をたてながら蛇のように黒煙と同じく辺りを覆った。
「蔦風!」
おじさんの声だ。
「持っている小刀を陣の真ん中に刺せ!血を付けたままだぞ!」
と、いわれても・・・・・・
「鎖で動けないです!」
気付かぬうちに鎖は蔦風の足首にまとわりついていた。
「なら、始めに黒煙が出てきた場所めがけて投げろ!なんとかなる!」
「わかりました!」
蔦風は小刀を持ち直し、陣の中央(らしき場所)めがけてそれを投げた。
直後、うごめいていた鎖がピシッと音をたててはりつめる。
足首だけでなく、手首や首もと、腹までもが鎖で縛られる。これはまともに動けそうにない。
一方、まんじゅうは大きな犬の姿をしたまま鎖に縛られている。「ウゥゥゥーーー」と呻き声をたててながら睨む。まんじゅうの場合口も鎖に縛れ、話せない。
「見合エヨ見合エ、契リ時。離レヌヨウニ、千切レヌヨウニ、ココニ御魂ヲ捧ゲン。鎖繋ギガ朽チルマデ」
おじさんが何かブツブツ言っている。
すると、ピシャッと音をたてながら鎖が細かくバラバラに砕けた。一気に視界が開け、蔦風はキラキラと宙を舞う破片越しにまんじゅうを見る。
その姿は、美しい大狗だった。
いつも見る大きな犬の姿よりも気高い獣。いや、神獣という言葉の方がいいだろう。長い尾、切れ長の青い瞳。これを人は美しいと言うのだ。
「まんじゅう・・・・・・その姿・・・・・・」
「ふん、式神は契約することで己の力を最大限引き出せるってだけだ。言うなれば最終形態だな」
「そう、なんだ・・・・・・」
ズシッと蔦風の方へ一歩歩み寄る。
「これからは蔦風、お前が俺の主だ。俺に全部預けてくれ。俺に守らせてくれ。最期までそばにいてやるから」
まんじゅうは鼻先を蔦風に寄せる。
その姿は大きくとも、主人を欲する仔犬のようで、どこか儚い。
蔦風は手をまんじゅうの顔に添え、顔をうずめる。
「うん。ありがとう、まんじゅう」
あたたかい。式神も生きている。ただのモノじゃない。
蔦風の中でモヤモヤしたものが晴れていくようだ。
なんか、腕が痛い。
まんじゅうが噛んでいる。
「おいおいまんじゅう、空気読めよ」
おじさんのツッコミ。
まんじゅうが蔦風の腕から牙を離す。いつもより大きな牙なのに傷が小さい。気を遣ってくれているようだ。
「はぁあ?狗神が俺の体いじったからだろ?不可抗力だ」
「・・・・・・」
「なんか言えよ蔦風」
まんじゅうが覗き込み、気まずそうに見つめる。
「・・・・・・こんなの初めての感覚だ。凄く心?が満ちているような、言葉に表せない・・・・・・」
これは、この感情は・・・・・・
「『信頼』」
おじさんがボソッと呟く。
「しんらい・・・・・・」
「言っとくが『信用』と『信頼』は違うぞ。『信用』は行為や実績、成果などから数値化できるといわれる評価。『信頼』は人柄や今まで互いに築き上げてきたものから得られる数値化出来ない評価。お前達の場合は、後者だな」
築き上げてきたもの・・・・・・
この契約の一瞬で、という訳ではない。おじさんとまんじゅうと過ごす時を重ね、その時間が『信頼』を覆う殻にヒビを入れたのだ。
「いちいち説明すんな狗神」
「へーへーすんません」
ああ、そうか俺はまんじゅうを信頼しているんだ。
「まんじゅう」
「あ?んだよ」
「よろしくね」
「・・・・・・おう」
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