赤棘の死神

細川あずき

文字の大きさ
上 下
16 / 27
第1章 死神への道

15話-ドタバタ

しおりを挟む
「誰の許可でここにきたんだい?僕、気になるなー」
フードを深く被った者が蔦風を押し倒す。首もとに短刀を押し当てながら子どものように問いかけてくる。
「わっ!おじさん」
とっさにおじさんの方に目を向けると、向こうは向こうでお取り込み中のようだ。
おじさんの背後をとり、同じように首もとに短刀・・・・・・ではなく、長い爪を押し当てている。
「天使の刺客か?大歓迎だぜ。何者だ。答えろ」
「・・・・・・はぁ。元気そうだなあ!エイク!」
おじさんは蔦風に刃を向けている者に向かって叫ぶ。
「え?その声・・・・・・師匠?」
短刀を首もとから離し、フードを取りながらおじさんの方に目を向ける。
左に流れる前髪と腰まであろう長い髪。瞳は黒く、少年のような顔立ちだ。
「わあ!師匠だ!師匠!元気にしてた?久しぶりだ!師匠!」
蔦風の腹の上に座ったままテンションが上がり、ぴょんぴょん跳ねる。そのたびにグフッと言う蔦風。
「アァ?んだよ、てめえコイツしってんのかよ」
爪を押し当てていた者も得物を下ろす。すると、
「もーコラーッ!勝手に飛び出すんじゃないよ!」
路地裏の隙間から走って出てきたのは、頬に黒い五本の痣をもつ男。その肩には先程の式神の鳥がとまっている。
「式神が来たことも確認せずに飛んでっちゃうんだもん、いい加減にしてよね?この式神はウチの姉さんの!少しは周りを見なさい!」
「ごめんごめん紬、今度は気を付けるさ!」
「ケッ!その『姉さん』の式神がノロマなんだよ」
「反省しなさい」
「るせーなぁ」
「あ、コラ、待ちなさい」
爪の少年はそそくさと路地裏に消えていった。長髪の少年は相も変わらず蔦風の腹の上。痣の青年は爪の少年の後を追って路地裏に入った。
「おい、エイク、どいてやれ」
おじさんが言ってようやく、そうだった!と言いながら立ち上がった。
「師匠!師匠!どうしてここに来たの?なんかあった?」
目をキラキラさせながらおじさんに話しかける。
「あー、今日はコイツを紹介しに来たんだ」
親指を蔦風の方へ向ける。まだようやく起き上がったばかりで、イテテと後頭部をさすっている。
「あっはじめまして、蔦風と言います。おじさんの元で死神になるために訓練している元人間です」
カンペでも見たようにすらすら挨拶をする。
「元人間・・・・・・ああ!新人って君のことなんだ!楽しみだったのさ!よろしくだよ!僕はエイク。君と同じように師匠の元で死神に育てあげられた元人間さ!」
ここに来て、蔦風と同じ境遇の者が見つかった。
「元人間・・・・・・じゃあエイクも『夢喰いの獏』にやられたの?」
「ん?まー細かいことは後で!路地裏に行こう!みんな待ってるよ?さ!師匠も」
アゴに人差し指を当てて一瞬考えたようだが、すぐに話を切り替えた。みんな、とは。
「いや、俺はここで待つ。蔦風だけ連れていってくれ」
「ふーん。わかった!行こう蔦風!案内するよ!」
グイグイ蔦風の腕を引っ張り、路地裏の奥へ進む。
「えっちょっと、おじさん・・・・・・」
「達者でなー」
棒読みじゃん。
少し歩くと行き止まりになった。エイクが親指と人差し指で輪を作り、シャボン玉を吹くように壁に向かってフッと吹いた。一瞬壁が波打ち、エイクが右手を押し当てる。すると、右手が壁に飲み込まれた。
「さ、行くよ蔦風!臣の元へ・・・・・・!」
不適な笑みを浮かべ、蔦風の方を見る。
「臣・・・・・」
この壁の向こうに、臣がいるのか。
二人は壁に飲み込まれた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

異世界で悪霊となった俺、チート能力欲しさに神様のミッションを開始する

眠眠
ファンタジー
 トラックに跳ねられ異世界に飛ばされた主人公。気がつくと、彼は身体のない意識だけの存在に成り果てていた。なぜこのようなことになってしまったのか。謎を探るべく異世界を彷徨う主人公の前に死神さんが現れた。死神さんは主人公に今の状態が異世界転生(仮)であることを告げ、とあるミッションの達成と引き換えに正しい転生と3つのチート能力の贈呈を約束する。そのミッションとは様々な異世界を巡るもので……。  身体を失った主人公が残った心すらボッキボキに折られながらも頑張って転生を目指す物語です。  なお、その過程でどんどん主人公の変態レベルが上がっていくようです。 第1章は「働かなくてもいい世界」。労働不要の世界で、不死の住人達と友達になります。 第2章は「恋のキューピッド大作戦」。世界を救うため、とある二人の恋仲を成就させます。 6〜8つの世界を巡る予定です。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私の部屋で兄と不倫相手の女が寝ていた。

ほったげな
恋愛
私が家に帰ってきたら、私の部屋のベッドで兄と不倫相手の女が寝ていた。私は不倫の証拠を見つけ、両親と兄嫁に話すと…?!

処理中です...