赤棘の死神

細川あずき

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第1章 死神への道

13話-白の屋敷

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大きな屋敷だ。
白の屋敷といっても白いわけではない。ぽかぽかと日当たりの良い庭が広がり、脇でさわさわと草花が揺れている。
なんとも懐かしく、落ち着く場所。
「おーいガキ共ー、ここが白の屋敷だ。お前らはここで世話ンなるんだぜ」
おじさんが屋敷の扉をガラガラと開ける。
子ども達はザワザワしている。
「おーい!風伊!いるかぁ?」
ふうい・・・・・・女性の名前だろうか。
蔦風はなかを覗く。長い廊下といくつもの扉。突き当たりで二つにに分かれている。その左側からヒョコっと人が出てきた。
「なんだ?急患か?」
女性だ。大きな丸眼鏡をかけており、白と紫の髪を乱雑にポニーテールにしている。癖っ毛だな。
白衣と言葉から医者ではないか、と蔦風は思う。
「いや、違う。お前が欲しがってた人手を持ってきた」
「んー、今僕手が離せないから適当に部屋入っててー」
「了解」
おじさんと女性・・・・・・風伊さんの短いやり取りを聞き、
「あのひとは・・・・・・」
「あの人は『月城風伊』。人間の医者だ。ここ、『白の屋敷』は彼女の戦場、もとい俺達あやかしの病院ってわけ」
おじさんが靴を脱ぎながら話す。子ども達は靴を履いていない子がちらほらいるが、なぜか足裏は綺麗だ。
「あの鳥居をくぐって来たものはもれなく汚れが落ちるのさ」
「便利ですね」
例の札の鳥居。蔦風たちをここまで導いたものだ。


「またせたな。一昨日怪我人が大勢来て少し手間取っていた・・・・・・で、この子どもが僕の猫の手かい?」
ひとりひとりマジマジと見つめる。
「おい、この女児半妖ではないか!なぜすぐ言わない!」
風伊さんがロメリアに気付き、あわてて駆け寄る。そう言えば、この屋敷に来てからロメリアの体調はすこし整っている。
「この屋敷のお陰で少し楽になってるっぽいから風伊の用事を優先すべきかと・・・・・・」
「・・・・・・ふーん・・・・・・」
「いやこれマジで」
風伊さんの目が。
「おいババア」
ババア・・・・・・
この声はミアだ。
「ロメリア、何とかしてくれよ。こいつ、小さい頃から体が弱ぇんだ。今は落ち着いてるけど・・・・・・」
「半妖はあやかしの血に人間の血が耐えきれなくて早死にするものが大半だからね」
風伊さんの言葉にミアの顔が青ざめる。
「でも大丈夫だ。僕の屋敷に来たからには誰も死なない。半妖くらいどうってこと無いね」
「っ!ババア、どういう意味でぇ」
「この屋敷は僕の結界に覆われているのさ。すべて僕の思うがまま。フフッ小さなかすり傷くらいならもう治ってると思うよ?」
蔦風はハッとして頬に触れてみる。ミアのナイフに切りつけられた傷が無いことに気付く。
「本当だ、凄い・・・・・・」
「風伊はこの手の天才だからな」
「ま、闘いにゃ不向きだがね。ロメリアって言ったか?一応僕の診察室においでよ。あやかしの血を抑える煎じ薬出すよ」
「ありがとう、ふういさん」
ロメリアが二へッと笑い、その姿にミアとシタラは安堵した。
「狗神さん、この子らみんな僕がもらうよ?良いんだね?」
「ああ、子ども達に居場所を作ってやってくれ」
「フフッ任せな。さあ、猫の手は遠慮なく借りる主義さ!明日からのハードワークに耐えるんだぞ」
猫の手が増えて喜んでいるようだ。子ども達はゴクリと固唾を飲む。
「じゃ、俺達は帰るぜ。行こう蔦風」
「はい」
「ん?その子は僕の猫の手ではないのか?」
「あ?ああ、言ってなかったな。こいつは蔦風。死神の卵で俺の教え子。孤児たちは蔦風の実践練習のついでに保護したんだ」
「ほー、死神の卵ね。僕に世話になることが見え見えだ」
顎に手を当てニヤニヤする風伊さん。
「まっ臣たちに認めて貰えるまで頑張りなよ」
「はい。ありがとうございます」
ポンポン、と軽く肩を叩かれ、風伊さんはロメリアを抱っこして他の子ども達をお風呂場へ行かせた。
「おし、今度こそ帰るぜ」
「はい」
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