赤棘の死神

細川あずき

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第1章 死神への道

9話-鎌

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蔦風は『鎌』を使いこなす必要がある。一番は、ツルが伸びて自在に操れること。あわよくば、アイビー以外の植物も扱えられたらいい、とおじさん曰く。
「まあ、蔦風のように具現化して『鎌』とするには自分の中で具現化対象が深く刻み込まれてねーといけないからな。難しいことだから今は考えるな!アイビーに集中しろよ」
中には多くの『鎌』を扱う死神もいるらしく、ずば抜けて強い。
「『鎌』を使いこなせたら立派な死神さ。まっひとまず、今日はこれで終いだ!晩飯だな」
辺りはもう夕方。おじさんはそそくさと小屋へ入っていった。
「くぁあーー・・・・・・ナンだ?メシか?」
寝ていたまんじゅうも縁側から部屋に入った。相変わらず大きなあくびだ。
「使いこなす・・・・・・」
蔦風は自身の右手を見る。バッと目の前にかざす。
すると、ツルが右手から蛇のごとく出てきて、近くの木にまきついた。
という感じになってくれたらいいのにな。
もう一度右手を見る。難しそうである。

「あやかしだろうと死神だろうと腹は減る!」
そう叫びながらおじさんは自身が焼いた魚を頬張る。
蔦風もおじさんが用意してくれた味噌汁を飲む。
「・・・・・・美味しいです」
「お!そりゃ良かった!」
ニカッと笑い、再び魚を頬張る。魚好きなんだな。お刺身も、付いてるもんな。味噌汁の具は、鮭だしな。ご飯のお供は、佃煮だもんな。
まんじゅうはやはり座布団で寝ている。式神は満腹を感じるだけで空腹は感じないらしい。
食器は蔦風が洗い、片付けた。
食後は五右衛門風呂を頂く。
布団をしいて、川の字で寝る。
あやかしって夜活発に動くとか、そんなイメージがあるが、おじさんは隣で爆睡している。まんじゅうもおじさんの腹の上で鼻提灯をつくっている。
「家庭的だな」
そんなことを言いつつ、蔦風は目を閉じた。

死神(修行中)となってはじめての朝は、相変わらず魚から始まった。
「さて!今日も修行だ、蔦風!」
「はい」
庭にて。
本日はからだ作りだそう。すべての運動能力を高める必要があり、さもなくば一瞬で殺される。
「死神やあやかしは人間よりも少々頑丈に出来ている。力も強いし運動神経もまあまあだ。でも、首をはねられると死ぬし、体力の限界もある」
致命傷を避けるために体力の限界をのばすことが目的だ。
「で、俺思ったのさ。元々人間の奴らにあやかし流の運動は色々面倒だな・・・・・・」
しばし考え込むおじさん。
「シンプルに走り込みだっ!・・・・・・まんじゅう、お前もな」
「ハァアア?狗神ふざけッッハァアア?」
死神になった暁には、まんじゅうと共に行動するようになる。そのための訓練だそうだ。
そして、まんじゅうを引き連れてただ三時間ほど森のなかを全力で駆け回れ、と言われた。
これが意外とキツイ。
それはそのはず。森の中には様々なトラップが仕掛けられており、蔦風は避けたり飛び越えたりするのに必死だからである。
ある時は典型的な落とし穴、ある時は蛇が落ちてきて噛みついてくる。散らばっているのはマキビシだ。紐に引っ掛かると上から刀が降ってきて、避けたと思ったら落とし穴。
「ギャーーー!おい小僧!あと何分ダッ!ウワッ!」
蛇に巻き付かれながら落とし穴におちたまんじゅうが必死の形相で叫ぶ。
「あと、一時間くらいだと思ワッ!・・・・・・イッテ!」
落とし穴率が高いな、この山。
「くっそう狗神メ・・・・・・やってラレッか!こんな事!」
落とし穴から這い上がったまんじゅうは、目の色を変えた。
すると突然まんじゅうが白い煙に覆われた。

蔦風の目の前にいたのは大きな赤い狗だった。
目は開き、瞳は青く、牙をむき出しその尾を膨らませた。
「ま、まんじゅう・・・・・・?」
蔦風を睨み、低く吠える。
「そんなふざけた名で呼ぶな紛いもの!俺の名は『万寿院佐之助』!金輪際、そんな名を口にするでないぞ!」
今までの鬱憤が爆発したかのように蔦風に向かって叫んだ。
「狗神、いい加減にしろ!どうせ何処からか見ておるのだろう?!俺は小僧に付き合っておれん!」
ここにはいないおじいさんを空に向かって叫び、それは地面から飛び立った。
「ま、まんじゅ・・・・・・いん?」
困惑している蔦風はそのまま置いていかれた。
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