赤棘の死神

細川あずき

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第1章 死神への道

7話-アイビーと殻

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天使、いや、厳密には天使の体を乗っ取った陰の気を倒せと。
「少年、君は『土』属性だと言ったよな?」
「はい。黄色い・・・・・・五色焔でしたっけ」
不動明王に会う前、黄色の火の玉が少年を包み込んだ。それはおじさんの一族が使う陰陽道にのっとった五色焔だった。
「土から連想したものならだいたい操れる。何か気に入ったモノあるかい?」
土、つち・・・・・・植物・・・・・・
植物といったら想像するのはただ一つ。それは、少年の記憶と文字通り絡み付いたものだ。
「・・・・・・アイビー」
「ん?アイビー?なんだいそれは?」
「ヘデラとも呼ばれているツタの植物です。ツルを伸ばして伸ばして、家の壁を覆ったりグリーンカーテンにも使われてます」
秋に紅葉するものもあれば、常緑のものもある。観賞用に用いられることもあり、身近な植物だ。
「そのアイビーってのが良いのか?」
ぐいぐいくるおじさん。
「気に入ってるのかもよく分かりません。ただ、真っ先に浮かんだものでして・・・・・・」
「オイ狗神、小僧に感情はネエンダぜ。気に入るもクソもアルカってんダ」
「それもそうだな。ふーん、良いんじゃね?」
アイビーは少年の記憶に深く根付いているようだ。
「五色焔はな、というか俺たち一族の陰陽道っていうのは適当なもんでよ。ただただ当人の能力をパパっと決めたり、式神を創ったりするだけで、まあ難しいことはしねえんだ」
○○は○○○を剋す等々陰陽師あるあるは、おじさん本人もよく分かっていないらしい。
「・・・・・・やっぱり死神っていう組織に入れってことですか?」
「嫌か?」
「オイ狗神、小僧に感情はネエンダっつったろ?」
「嫌ではありませんし、好き好んで『はい!やります』とも違います」
「ホラな」
沈黙の茶の間。おじさんは少年をどうしても組織に入れたいらしく、うまい口実を考えている。のか?
「ひとつ、言っておくぞ少年」
「はい」
改まっている。
「感情が殻に籠っている今のままでは、閻魔大王に選別してもらうことができない。それでは困るのだ。ずっとそこらをウロウロされるなら役に立って貰いたい、というのが本音だ。組織に入って、生きていたときには出来なかった経験を積め。ただの人間では到底考えられないことが多く起きる。それをトリガーにして、感情の殻を無理矢理にでも破る。いっぺんに全部の感情の殻を破るのは不可能。大量の感情に少年が耐えきれず、壊れる」
ひとつ、ではないのでは?
感情の殻は球体のようらしい。幾つかに種類分け出来て、その種類の中でそれぞれが共鳴しあっている。
「殻を破るのはどうやって?」
おじさんがまんじゅうをチラッと見る。
何かを察したまんじゅう。
「はぁ・・・・・・オレかヨ」
「そうだ、お前だ。まんじゅうに破ってもらう!」
まんじゅうはおじさんの式神で、命令には逆らえないように契約されている。
「俺自身が破るのもアリだが、なんせ忙しい。だからまんじゅう、頼んだぞ!」
「へーへー分かりマシタよ狗神。命令に逆らってコワレルのはごめんダゼ」
式神は主の命令に逆らうと壊れてしまうらしい。
「まんじゅうのネックレスに細工をしておく。少年の感情の波に反応するようにな。ひとつの感情の波がピークになったとき、その殻は簡単に壊れるぜ?」
「フン!こきつかいヤガッテ」
感情の波。感情は殻に籠っているだけなので、喜怒哀楽に反応はしている。今までに無い経験をすると、感情の波は出来やすい。そこを狙うのだ。殻に閉じ込められている感情が内側から波となって押し、外側からまんじゅうが破る。それにより、殻を壊そうとしているのだ。
「ただ一つ、問題があるとすればだな?感情の殻を破るまで、それがどの感情か分からないってことだな」
「なるほど」
「ソンナモノ、その時の状況を見れバすぐに分かルわ」
「それもそうだな!わはははっ!」
「なるほど」
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