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皇太子アルフレッド編

復讐の終わり

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「――シャーロット」


「はい、お兄様」


先代皇帝の崩御から一年後。


キャサリンとプリシラが追放され、シャーロットも結婚してしまったため皇族は私一人となった。先代皇帝に冷遇されて苦しみの中で死んでいった母を見て育ったせいか皇后を迎える気にもなれなかったので、私は今も独り身のままである。


私はシャーロットと母の墓参りに訪れていた。生前、母が好きだった花を持って。


「シャーロット、大丈夫か?具合が悪くなったらすぐに言ってくれ」


「平気です、お兄様」


シャーロットは今子供を身籠っている。もちろんアーク公爵令息との子供だ。シャーロットが結婚して皇宮を出て行ったのは気に食わないが、これから生まれてくる可愛い子供の顔を見れるなら悪くは無い。


しかし、こうやって兄妹で話すのは未だに慣れない。私とシャーロットは長い間疎遠だったから。


「お母様……」


シャーロットは涙目になりながら母の墓に花を供えた。大好きだった母親のことを思い出しているのだろう。そんな妹を見て、私も泣きそうになった。しかし、兄である以上泣くわけにはいかない。


「シャーロット」


「お兄様……」


私はそんな彼女に持っていたハンカチを差し出した。


「ありがとうございます、有難く使わせていただきます」


シャーロットはそれを受け取って涙をそっと拭いた。


そして私から受け取ったハンカチを懐に閉まったかと思うと、持っていた別のハンカチを取り出して私に手渡した。


「……?」


「お兄様も、泣いてますよ」


「あ……」


そこで私はようやく、自分が涙を流していることに気が付いた。


もう子供でも無いというのに、妹の前で泣いてしまうとは何とも情けない。しかし、シャーロットはそんな私を優しい目で見つめているだけだった。


(……シャーロット)


彼女のその瞳を見て、何かから解放されたような気分になった。


「……ありがとう」


素直にハンカチを受け取った私に、シャーロットはクスリと笑った。


母親の墓に花を供えた後も、私たちはしばらくこの場に留まった。特に目的があったわけではないが、今は何故か皇宮に帰りたくなかった。


「立派になった君の姿を見て、母上もきっと喜んでいるだろう」


「そうですね」


私は空を見上げながらそう言った。ふと横を見てみると、シャーロットも同じように空を見上げていた。





それからしばらくして、私は隣にいたシャーロットに声を掛けた。


「シャーロット、そろそろ戻ろうか」


「はい、そうですね。お腹の子のためにも今は安静にしていないと……」


そうして私たちは馬車に乗ってそれぞれの帰る場所へと戻った。


シャーロットと違って私には帰りを待ってくれる人はいない。しかし、そうなって当然だと思っている。


実の父をこの手にかけ、長年苦しんでいた妹を助けてあげられなかった私にはそんな末路がお似合いだ。


(……少なくとも、私は人間ではないから)


――そしてそんな私は今日も、一人寂しくこの皇宮で過ごすのだ。




―――――――――――――――――――


ここまで読んで下さってありがとうございました!


長い間お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。


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