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皇太子アルフレッド編
大事な妹
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それから私の即位式が始まった。
この国に皇子は私しかいなかったので、私が次の皇帝になるのは当然だった。父である元皇帝はお世辞にも優秀とは言えない男だった。そのため、貴族たちの中には王が変わって良かったとさえ思っている者もいた。
即位式で皇帝の証である王冠を受け取ったときは大きな達成感を感じた。ようやく今までの努力が報われた日が来たのだと。しかし、まだ気を抜くのは早い。
(これは始まりに過ぎない。本当の復讐はこれからなのだから)
そう、まだあと対象は二人いる。母を殺し、シャーロットを苦しめたあの二人には地獄の苦しみを与えなければいけない。もちろん私は最初からそのつもりだった。
今まではただ皇帝という邪魔者がいたから出来なかっただけで、私はずっとあの二人を殺したいと思っていた。
私は即位式で祝いの言葉を述べに来たその二人を冷めた目で見つめた。
「お兄様、即位おめでとうございます!」
「とっても立派になったわね・・・!」
「・・・」
いくら親しい兄妹であろうと、普通はこのような公式の場では陛下と呼ぶのが普通だ。それにただの平民が皇帝にタメ口とは何事だ。これがプリシラではなくシャーロットであれば別に何とも思わないのだろうが、私は不快でたまらなくなった。せっかくの良い気分が台無しだ。
愚かにも、本当に私が自分たちのことを守ってくれるとでも思っているらしい。私にはそんなつもりは毛頭無いのだが。
それから即位式が無事に終わり、私の即位を祝う舞踏会が開かれる時間となった。
私はそこでキャサリンとプリシラの全ての罪を貴族全員の前で明らかにし、プリシラに関しては皇族の身分を剥奪するつもりだった。しかし、ここである意外な事実を知った。
「どうやら、シャーロット皇女殿下が裏で色々と動いていらっしゃるようです」
「・・・シャーロットが?」
何でも、私の唯一の妹であるシャーロットがキャサリンとプリシラを断罪するための準備を秘密裏に進めているらしい。
(・・・あのシャーロットが)
私は成長した妹の姿に、純粋に嬉しくなった。
そうともなれば、ここは私の出る幕ではないだろう。あの二人に被害を受けたのは私よりもシャーロットだったから、シャーロットが断罪するのが最も良い。そう思った私は全てを彼女に任せることにした。
(シャーロット、頑張れ)
心の中で大事な妹を応援しながら私は皇帝の執務に取り掛かった。きっとシャーロットは私のことも恨んでいるに違いない。そう考えると胸が痛くなったが、仕方が無い。
そして時は過ぎ、ついに舞踏会の時間になった――
この国に皇子は私しかいなかったので、私が次の皇帝になるのは当然だった。父である元皇帝はお世辞にも優秀とは言えない男だった。そのため、貴族たちの中には王が変わって良かったとさえ思っている者もいた。
即位式で皇帝の証である王冠を受け取ったときは大きな達成感を感じた。ようやく今までの努力が報われた日が来たのだと。しかし、まだ気を抜くのは早い。
(これは始まりに過ぎない。本当の復讐はこれからなのだから)
そう、まだあと対象は二人いる。母を殺し、シャーロットを苦しめたあの二人には地獄の苦しみを与えなければいけない。もちろん私は最初からそのつもりだった。
今まではただ皇帝という邪魔者がいたから出来なかっただけで、私はずっとあの二人を殺したいと思っていた。
私は即位式で祝いの言葉を述べに来たその二人を冷めた目で見つめた。
「お兄様、即位おめでとうございます!」
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「・・・」
いくら親しい兄妹であろうと、普通はこのような公式の場では陛下と呼ぶのが普通だ。それにただの平民が皇帝にタメ口とは何事だ。これがプリシラではなくシャーロットであれば別に何とも思わないのだろうが、私は不快でたまらなくなった。せっかくの良い気分が台無しだ。
愚かにも、本当に私が自分たちのことを守ってくれるとでも思っているらしい。私にはそんなつもりは毛頭無いのだが。
それから即位式が無事に終わり、私の即位を祝う舞踏会が開かれる時間となった。
私はそこでキャサリンとプリシラの全ての罪を貴族全員の前で明らかにし、プリシラに関しては皇族の身分を剥奪するつもりだった。しかし、ここである意外な事実を知った。
「どうやら、シャーロット皇女殿下が裏で色々と動いていらっしゃるようです」
「・・・シャーロットが?」
何でも、私の唯一の妹であるシャーロットがキャサリンとプリシラを断罪するための準備を秘密裏に進めているらしい。
(・・・あのシャーロットが)
私は成長した妹の姿に、純粋に嬉しくなった。
そうともなれば、ここは私の出る幕ではないだろう。あの二人に被害を受けたのは私よりもシャーロットだったから、シャーロットが断罪するのが最も良い。そう思った私は全てを彼女に任せることにした。
(シャーロット、頑張れ)
心の中で大事な妹を応援しながら私は皇帝の執務に取り掛かった。きっとシャーロットは私のことも恨んでいるに違いない。そう考えると胸が痛くなったが、仕方が無い。
そして時は過ぎ、ついに舞踏会の時間になった――
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