38 / 41
皇太子アルフレッド編
大事な妹
しおりを挟む
それから私の即位式が始まった。
この国に皇子は私しかいなかったので、私が次の皇帝になるのは当然だった。父である元皇帝はお世辞にも優秀とは言えない男だった。そのため、貴族たちの中には王が変わって良かったとさえ思っている者もいた。
即位式で皇帝の証である王冠を受け取ったときは大きな達成感を感じた。ようやく今までの努力が報われた日が来たのだと。しかし、まだ気を抜くのは早い。
(これは始まりに過ぎない。本当の復讐はこれからなのだから)
そう、まだあと対象は二人いる。母を殺し、シャーロットを苦しめたあの二人には地獄の苦しみを与えなければいけない。もちろん私は最初からそのつもりだった。
今まではただ皇帝という邪魔者がいたから出来なかっただけで、私はずっとあの二人を殺したいと思っていた。
私は即位式で祝いの言葉を述べに来たその二人を冷めた目で見つめた。
「お兄様、即位おめでとうございます!」
「とっても立派になったわね・・・!」
「・・・」
いくら親しい兄妹であろうと、普通はこのような公式の場では陛下と呼ぶのが普通だ。それにただの平民が皇帝にタメ口とは何事だ。これがプリシラではなくシャーロットであれば別に何とも思わないのだろうが、私は不快でたまらなくなった。せっかくの良い気分が台無しだ。
愚かにも、本当に私が自分たちのことを守ってくれるとでも思っているらしい。私にはそんなつもりは毛頭無いのだが。
それから即位式が無事に終わり、私の即位を祝う舞踏会が開かれる時間となった。
私はそこでキャサリンとプリシラの全ての罪を貴族全員の前で明らかにし、プリシラに関しては皇族の身分を剥奪するつもりだった。しかし、ここである意外な事実を知った。
「どうやら、シャーロット皇女殿下が裏で色々と動いていらっしゃるようです」
「・・・シャーロットが?」
何でも、私の唯一の妹であるシャーロットがキャサリンとプリシラを断罪するための準備を秘密裏に進めているらしい。
(・・・あのシャーロットが)
私は成長した妹の姿に、純粋に嬉しくなった。
そうともなれば、ここは私の出る幕ではないだろう。あの二人に被害を受けたのは私よりもシャーロットだったから、シャーロットが断罪するのが最も良い。そう思った私は全てを彼女に任せることにした。
(シャーロット、頑張れ)
心の中で大事な妹を応援しながら私は皇帝の執務に取り掛かった。きっとシャーロットは私のことも恨んでいるに違いない。そう考えると胸が痛くなったが、仕方が無い。
そして時は過ぎ、ついに舞踏会の時間になった――
この国に皇子は私しかいなかったので、私が次の皇帝になるのは当然だった。父である元皇帝はお世辞にも優秀とは言えない男だった。そのため、貴族たちの中には王が変わって良かったとさえ思っている者もいた。
即位式で皇帝の証である王冠を受け取ったときは大きな達成感を感じた。ようやく今までの努力が報われた日が来たのだと。しかし、まだ気を抜くのは早い。
(これは始まりに過ぎない。本当の復讐はこれからなのだから)
そう、まだあと対象は二人いる。母を殺し、シャーロットを苦しめたあの二人には地獄の苦しみを与えなければいけない。もちろん私は最初からそのつもりだった。
今まではただ皇帝という邪魔者がいたから出来なかっただけで、私はずっとあの二人を殺したいと思っていた。
私は即位式で祝いの言葉を述べに来たその二人を冷めた目で見つめた。
「お兄様、即位おめでとうございます!」
「とっても立派になったわね・・・!」
「・・・」
いくら親しい兄妹であろうと、普通はこのような公式の場では陛下と呼ぶのが普通だ。それにただの平民が皇帝にタメ口とは何事だ。これがプリシラではなくシャーロットであれば別に何とも思わないのだろうが、私は不快でたまらなくなった。せっかくの良い気分が台無しだ。
愚かにも、本当に私が自分たちのことを守ってくれるとでも思っているらしい。私にはそんなつもりは毛頭無いのだが。
それから即位式が無事に終わり、私の即位を祝う舞踏会が開かれる時間となった。
私はそこでキャサリンとプリシラの全ての罪を貴族全員の前で明らかにし、プリシラに関しては皇族の身分を剥奪するつもりだった。しかし、ここである意外な事実を知った。
「どうやら、シャーロット皇女殿下が裏で色々と動いていらっしゃるようです」
「・・・シャーロットが?」
何でも、私の唯一の妹であるシャーロットがキャサリンとプリシラを断罪するための準備を秘密裏に進めているらしい。
(・・・あのシャーロットが)
私は成長した妹の姿に、純粋に嬉しくなった。
そうともなれば、ここは私の出る幕ではないだろう。あの二人に被害を受けたのは私よりもシャーロットだったから、シャーロットが断罪するのが最も良い。そう思った私は全てを彼女に任せることにした。
(シャーロット、頑張れ)
心の中で大事な妹を応援しながら私は皇帝の執務に取り掛かった。きっとシャーロットは私のことも恨んでいるに違いない。そう考えると胸が痛くなったが、仕方が無い。
そして時は過ぎ、ついに舞踏会の時間になった――
114
お気に入りに追加
3,441
あなたにおすすめの小説
妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~
岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。
本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。
別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい!
そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。
私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。
それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。
婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。
これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。
私を追い出した結果、飼っていた聖獣は誰にも懐かないようです
天宮有
恋愛
子供の頃、男爵令嬢の私アミリア・ファグトは助けた小犬が聖獣と判明して、飼うことが決まる。
数年後――成長した聖獣は家を守ってくれて、私に一番懐いていた。
そんな私を妬んだ姉ラミダは「聖獣は私が拾って一番懐いている」と吹聴していたようで、姉は侯爵令息ケドスの婚約者になる。
どうやらラミダは聖獣が一番懐いていた私が邪魔なようで、追い出そうと目論んでいたようだ。
家族とゲドスはラミダの嘘を信じて、私を蔑み追い出そうとしていた。
皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。
和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。
「次期当主はエリザベスにしようと思う」
父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。
リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。
「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」
破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?
婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
見た目を変えろと命令したのに婚約破棄ですか。それなら元に戻るだけです
天宮有
恋愛
私テリナは、婚約者のアシェルから見た目を変えろと命令されて魔法薬を飲まされる。
魔法学園に入学する前の出来事で、他の男が私と関わることを阻止したかったようだ。
薬の効力によって、私は魔法の実力はあるけど醜い令嬢と呼ばれるようになってしまう。
それでも構わないと考えていたのに、アシェルは醜いから婚約破棄すると言い出した。
出て行けと言って、本当に私が出ていくなんて思ってもいなかった??
新野乃花(大舟)
恋愛
ガランとセシリアは婚約関係にあったものの、ガランはセシリアに対して最初から冷遇的な態度をとり続けていた。ある日の事、ガランは自身の機嫌を損ねたからか、セシリアに対していなくなっても困らないといった言葉を発する。…それをきっかけにしてセシリアはガランの前から失踪してしまうこととなるのだが、ガランはその事をあまり気にしてはいなかった。しかし後に貴族会はセシリアの味方をすると表明、じわじわとガランの立場は苦しいものとなっていくこととなり…。
私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる