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皇太子アルフレッド編

皇帝の死後

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それからすぐに皇帝の訃報が皇宮中を駆け巡った。


キャサリンとプリシラはそれを聞いて泣き喚いた。私はそんな二人を慰めるフリをした。


(鬱陶しいったらありゃしないな・・・)


本当は体に触れるのをためらうほど嫌悪していたが。


「お兄様・・・お父様が・・・」


「プリシラ、大丈夫だ。父上がいなくなっても私がいる。何かあったら何でも言うんだ」


「お兄様ぁ・・・!」


そのとき、プリシラが私に抱き着いてきた。こみ上げてくる不快感を必死で抑えながらも、私は彼女の背中に手を回した。


「アル・・・」


「大丈夫です、私が貴方がた二人をお守りしますから」


ニッコリと笑いながらそう言うと、二人は安心しきったような顔をした。


(・・・皇帝の死を悲しんでいたわけではないのか)


きっとこの二人は、皇帝の寵愛という最大の武器が無くなったことで自分の将来を憂いていたのだろう。キャサリンの皇宮に上がる前の身分は平民で、私の母と違って後ろ盾も何も無いのだから。


(・・・本当に吐き気がする)


さっきまでは声を上げて泣いていたというのに、突然人が変わったかのように嬉しそうな顔をする二人に嫌気が差した。


(・・・まぁ、実父の死に対して何とも思わない私もこの二人と大して変わらないか)


おそらく同族嫌悪というやつなのだろう。




それからしばらくして、皇帝の葬儀が開かれた。


体裁が気になるのか、キャサリンとプリシラはそこでもみっともなく泣き叫んでいた。


(何をしているんだコイツらは・・・)


そんな彼女たちを周囲は同情の眼差しで見つめた。私は内心呆れ果てていたが。


皇帝の葬儀では唯一の妹であるシャーロットの姿もあった。相変わらず母上に似て美しい。プリシラのような毒婦とは大違いだ。


シャーロットは皇帝の遺体を見ても涙一つ流さなかった。


周囲はそんなシャーロットを冷たい女だと言ったが、彼女が皇帝にされてきたことを思えばそうなって当然である。むしろ、同情を誘うためだけに涙を流すこの二人の方がよっぽど性根が醜いと言えるだろう。


(早く終わらないだろうか・・・)


冷たくなった皇帝の遺体を見るたびに何だか複雑な気持ちになる。私はそんな気持ちを胸に抱いてこの葬儀に参列していた。




それからあっという間に葬儀は終わった。


大して興味が無かったからか、詳しい内容はほとんど覚えていない。そのときの私には、そんなことよりもずっと大事なことがあったから。


それこそが、私の即位式だった。


(やっと・・・やっとだ・・・)


私がこの日をどれだけ待ち望んでいたか。


この座を得るために血の繋がった父の毒殺まで平然とやってのけた。ようやく皇帝になれるのだと思うと、自然と口元に笑みが浮かんだ。


(さぁ・・・キャサリン・・・プリシラ・・・)


――お前たちはもうすぐ、地獄へ落ちることとなるだろう


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