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皇太子アルフレッド編
皇帝と皇后
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それからプリシラは今にも倒れそうなキャサリンを支えて部屋へと戻って行った。
私はそれを確認して皇帝の部屋の中へ入った。
―ガチャ
部屋の扉を開けて中に入る。
「・・・!」
ベッドの上には、だいぶ弱った皇帝が横になっていた。
(・・・本当にあと少しで死にそうだな。)
「うう・・・アルフレッドか・・・?」
「はい、私です。父上。」
もう喋る気力も無いだろうに。
それでも皇帝は私に対して話し続ける。
「アルフレッド・・・私はもう長くない・・・私が死んだらキャサリンとプリシラを頼む・・・。」
皇帝は弱々しい声でそう言った。
最後まであの二人の心配をする皇帝に腹が立つ。
(キャサリンとプリシラを頼むだと?)
私の答えは決まっている。
「嫌です。」
「・・・何だと?」
皇帝は私の言葉に驚いた顔をした。
「ですから、嫌だと言ったのです。」
「なっ、何故だ!?」
皇帝に反抗するのは初めてだ。
私は今までずっと「父の言うことを何でも聞く良い息子」だったのだから。
「父上。私の母親はキャサリンではない。皇后フレアだ。」
「あの女の名前を出すな・・・!」
(あの女・・・。母上のことが本当に嫌いなようだ。)
私は皇帝が母を嫌っている理由を知っていた。
今となっては信じられないだろうが皇帝と皇后は昔は仲の良い夫婦だった。
父上も母上をそれなりに大切にしていたように見えた。
しかし、ある一人の女の登場によって全てが壊れてしまったのだ。
皇后フレアは容姿端麗で才女と呼ばれ誰に対しても優しく接する、まさに貴族令嬢の鑑だった。
それに加えて王家に次ぐ権力を持つ公爵家の令嬢。
そんな彼女には他国からも縁談が山ほど来ていたという。
心優しく美しい少女を令息たちは皆婚約者にしたがった。
驚くことに、皇帝もそのうちの一人だったらしい。
皇帝は先代皇帝陛下の唯一の子供で、お世辞にも優秀な皇子とは言えなかった。
貴族たちは皆皇太子時代の皇帝を「無能な皇子」と罵ったという。
父帝や母后は息子を庇うどころか叱責したそうだ。
「お前が努力しないからだ。」と。
両親は彼を愛していたわけではなかったのだ。
何故フレアがそんな皇太子に嫁ぐことになったのか。
それは先代皇帝が命令したわけでも、皇帝が無理矢理婚約者に据えたわけでもない。
フレアが皇太子に嫁ぐことを強く望んだそうだ。
フレアは皇太子に恋をしていた。
皇太子は確かに無能だった。
しかし心優しい人物だった。
フレアは他の高位貴族の令息たちのように傲慢なところが一切無い皇太子に心惹かれたのだ。
そして二人は婚約を結んだ。
皇太子も自分を初めて愛してくれるフレアに心を開いていく。
二人は仲の良い婚約者だった。
しばらくして皇太子は皇帝になり、フレアは皇帝と結婚して皇后になった。
それから第一子である皇子アルフレッドが生まれ、その数年後に第二子となる皇女シャーロットも生まれた。
この頃までは幸せだった。
しかしここから二人を悲劇が襲った。
私はそれを確認して皇帝の部屋の中へ入った。
―ガチャ
部屋の扉を開けて中に入る。
「・・・!」
ベッドの上には、だいぶ弱った皇帝が横になっていた。
(・・・本当にあと少しで死にそうだな。)
「うう・・・アルフレッドか・・・?」
「はい、私です。父上。」
もう喋る気力も無いだろうに。
それでも皇帝は私に対して話し続ける。
「アルフレッド・・・私はもう長くない・・・私が死んだらキャサリンとプリシラを頼む・・・。」
皇帝は弱々しい声でそう言った。
最後まであの二人の心配をする皇帝に腹が立つ。
(キャサリンとプリシラを頼むだと?)
私の答えは決まっている。
「嫌です。」
「・・・何だと?」
皇帝は私の言葉に驚いた顔をした。
「ですから、嫌だと言ったのです。」
「なっ、何故だ!?」
皇帝に反抗するのは初めてだ。
私は今までずっと「父の言うことを何でも聞く良い息子」だったのだから。
「父上。私の母親はキャサリンではない。皇后フレアだ。」
「あの女の名前を出すな・・・!」
(あの女・・・。母上のことが本当に嫌いなようだ。)
私は皇帝が母を嫌っている理由を知っていた。
今となっては信じられないだろうが皇帝と皇后は昔は仲の良い夫婦だった。
父上も母上をそれなりに大切にしていたように見えた。
しかし、ある一人の女の登場によって全てが壊れてしまったのだ。
皇后フレアは容姿端麗で才女と呼ばれ誰に対しても優しく接する、まさに貴族令嬢の鑑だった。
それに加えて王家に次ぐ権力を持つ公爵家の令嬢。
そんな彼女には他国からも縁談が山ほど来ていたという。
心優しく美しい少女を令息たちは皆婚約者にしたがった。
驚くことに、皇帝もそのうちの一人だったらしい。
皇帝は先代皇帝陛下の唯一の子供で、お世辞にも優秀な皇子とは言えなかった。
貴族たちは皆皇太子時代の皇帝を「無能な皇子」と罵ったという。
父帝や母后は息子を庇うどころか叱責したそうだ。
「お前が努力しないからだ。」と。
両親は彼を愛していたわけではなかったのだ。
何故フレアがそんな皇太子に嫁ぐことになったのか。
それは先代皇帝が命令したわけでも、皇帝が無理矢理婚約者に据えたわけでもない。
フレアが皇太子に嫁ぐことを強く望んだそうだ。
フレアは皇太子に恋をしていた。
皇太子は確かに無能だった。
しかし心優しい人物だった。
フレアは他の高位貴族の令息たちのように傲慢なところが一切無い皇太子に心惹かれたのだ。
そして二人は婚約を結んだ。
皇太子も自分を初めて愛してくれるフレアに心を開いていく。
二人は仲の良い婚約者だった。
しばらくして皇太子は皇帝になり、フレアは皇帝と結婚して皇后になった。
それから第一子である皇子アルフレッドが生まれ、その数年後に第二子となる皇女シャーロットも生まれた。
この頃までは幸せだった。
しかしここから二人を悲劇が襲った。
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