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皇太子アルフレッド編
倒れた皇帝
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それから皇帝は自室のベッドへ運ばれ、医師の治療を受けた。
しかし私はもう助からないということを知っている。
(皇帝になる準備をしなければいけないな。後は、キャサリンとプリシラをどうするかだが・・・)
あの二人をこのまま皇宮に居候させるつもりは毛頭なかった。
キャサリンとプリシラが今までしてきたことを思えば皇宮からの追放という処分は甘すぎるだろう。
キャサリンはともかく、プリシラは皇帝によって正式に皇女だと認められた女だ。
(どうするか・・・やはりあいつらの罪を貴族たちに明らかにして断罪するのが一番いいだろう。)
私がそんなことを考えていたその時だった。
侍従のフランクが部屋に入ってきた。
「殿下。どうやらシャーロット皇女殿下が裏で動いているようです。」
「シャーロットが?」
私はその言葉に少しだけ驚いた。
「はい、キャサリン様とプリシラ皇女殿下を舞踏会で断罪しようとしているようです。」
「あのシャーロットが・・・」
私は幼い頃のシャーロットを思い浮かべた。
内気で、いつも私や母上の後ろに隠れているような子だった。
(シャーロット・・・成長したんだな・・・。)
たった一人の妹の成長に何だか嬉しくなる。
(・・・キャサリンとプリシラに関してはシャーロットに任せるか。)
私はそう思って、あえてキャサリンとプリシラを放っておいた。
おそらくシャーロットもあの二人に報復したいのだろう。
散々虐げられていたのだから当然か。
私はそう思いながら椅子から立ち上がった。
「殿下。どちらへ行かれるのですか?」
それに気付いたフランクが私に尋ねた。
「父上の部屋だ。」
私はニヤリと笑う。
そう。
私は今から「毒に倒れた父親を献身的に看病する心優しい皇太子」を演じるのだ。
まぁその皇太子が皇帝をそんな状態にした張本人だがな。
愚かな父上やキャサリン、プリシラ、使用人達はそれにすら気付かないのだ。
私は早速執務室を出て父上の部屋へと向かう。
(ん・・・?あれは・・・。)
部屋の前まで行くと、キャサリンとプリシラが顔色を悪くして立っていた。
「ううっ・・・お父様ぁ・・・。」
「ウィル・・・どうしてなの・・・。」
二人は皇帝の今の状況に嘆き悲しんでいるようだ。
私はそんな二人に近づいて声をかけた。
「キャサリン様、プリシラ。」
「アル!」
「お兄様っ!」
プリシラは涙を流しながら私に抱き着いてくる。
「お兄様・・・お父様が・・・!」
私はそんなプリシラを安心させるように優しく言った。
「プリシラ、大丈夫だ。父上は必ず良くなる。そうしたらまた家族四人で一緒に過ごそう。」
「・・・お兄様。はい・・・。」
プリシラは私の言葉に元気づけられたのか、泣き止んだ。
(そんな未来は永遠に来ないがな。)
しかし私はもう助からないということを知っている。
(皇帝になる準備をしなければいけないな。後は、キャサリンとプリシラをどうするかだが・・・)
あの二人をこのまま皇宮に居候させるつもりは毛頭なかった。
キャサリンとプリシラが今までしてきたことを思えば皇宮からの追放という処分は甘すぎるだろう。
キャサリンはともかく、プリシラは皇帝によって正式に皇女だと認められた女だ。
(どうするか・・・やはりあいつらの罪を貴族たちに明らかにして断罪するのが一番いいだろう。)
私がそんなことを考えていたその時だった。
侍従のフランクが部屋に入ってきた。
「殿下。どうやらシャーロット皇女殿下が裏で動いているようです。」
「シャーロットが?」
私はその言葉に少しだけ驚いた。
「はい、キャサリン様とプリシラ皇女殿下を舞踏会で断罪しようとしているようです。」
「あのシャーロットが・・・」
私は幼い頃のシャーロットを思い浮かべた。
内気で、いつも私や母上の後ろに隠れているような子だった。
(シャーロット・・・成長したんだな・・・。)
たった一人の妹の成長に何だか嬉しくなる。
(・・・キャサリンとプリシラに関してはシャーロットに任せるか。)
私はそう思って、あえてキャサリンとプリシラを放っておいた。
おそらくシャーロットもあの二人に報復したいのだろう。
散々虐げられていたのだから当然か。
私はそう思いながら椅子から立ち上がった。
「殿下。どちらへ行かれるのですか?」
それに気付いたフランクが私に尋ねた。
「父上の部屋だ。」
私はニヤリと笑う。
そう。
私は今から「毒に倒れた父親を献身的に看病する心優しい皇太子」を演じるのだ。
まぁその皇太子が皇帝をそんな状態にした張本人だがな。
愚かな父上やキャサリン、プリシラ、使用人達はそれにすら気付かないのだ。
私は早速執務室を出て父上の部屋へと向かう。
(ん・・・?あれは・・・。)
部屋の前まで行くと、キャサリンとプリシラが顔色を悪くして立っていた。
「ううっ・・・お父様ぁ・・・。」
「ウィル・・・どうしてなの・・・。」
二人は皇帝の今の状況に嘆き悲しんでいるようだ。
私はそんな二人に近づいて声をかけた。
「キャサリン様、プリシラ。」
「アル!」
「お兄様っ!」
プリシラは涙を流しながら私に抱き着いてくる。
「お兄様・・・お父様が・・・!」
私はそんなプリシラを安心させるように優しく言った。
「プリシラ、大丈夫だ。父上は必ず良くなる。そうしたらまた家族四人で一緒に過ごそう。」
「・・・お兄様。はい・・・。」
プリシラは私の言葉に元気づけられたのか、泣き止んだ。
(そんな未来は永遠に来ないがな。)
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