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皇女シャーロット編
真の黒幕
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―コンコン
先代皇帝陛下が亡くなり、新しく皇帝となったアルフレッドの執務室の扉が叩かれた。
「皇帝陛下、失礼いたします。」
入ってきたのは第一騎士団の副団長のブラッドリー卿だ。
第一騎士団の団長であるアーク公子はシャーロット皇女との結婚を控えているため代わりに訪れたのだろう。
「第一騎士団副団長、ハロルド・ブラッドリーと申します。至急皇帝陛下に報告したいことがあり、参りました。」
「言ってみろ。」
アルフレッドは書類とにらめっこしながらブラッドリー卿に言った。
「こちらの資料を見ていただきたいのです。」
ブラッドリー卿が差し出したのは一枚の紙だった。
どうやら先代皇帝の検死結果が正式に出たようだ。
「これがどうしたというんだ?」
「先代皇帝陛下の死因は毒殺です。ですが、検死により新たな事実が明らかになりました。」
ブラッドリー卿は神妙な面持ちでアルフレッドに告げた。
「新たな事実?一体何なんだ?」
「―先代皇帝陛下は、何年も前から毒を盛られ続けていることが判明しました。」
それを聞いたアルフレッドが表情を変えずに尋ねた。
「何年も前からだと?」
「はい。少量ずつ食事に毒を盛られていたようです。先代皇帝陛下の主治医も数年前から体調をよく崩されていたと証言しました。先代皇帝陛下がお倒れになられる日は致死量の5倍の毒が盛られていたそうです。」
「致死量の5倍だと?父上に毒を盛った犯人は父上に相当な恨みがありそうだな。」
「はい。動機は間違いなく怨恨でしょうね。」
ブラッドリー卿は一度黙り込んだ後、再び口を開いた。
「ですから、この件は再捜査が必要かと思います。処刑されたキャサリンは先代皇帝陛下毒殺事件に関しては冤罪だったかもしれません。」
「・・・そうだな。再捜査も視野に入れておこう。」
アルフレッドがそう言うとブラッドリー卿は一礼して執務室を出て行く。
ブラッドリーが部屋から出た後、アルフレッドは先代皇帝の検死結果の書かれた紙をじっと見つめていた。
そしてグシャリ、と握りつぶし、グチャグチャになったそれを暖炉へと放り込んだ。
それはすぐに燃えて灰となった。
その光景をじっと見つめていたアルフレッドは顔を手で覆い、笑い始めた。
「は・・・はははっ・・・ははっ・・・。」
誰もいない執務室にアルフレッドの笑い声が響き渡る。
「・・・可哀そうな父上。母上とシャーロットを虐げるからだ。だから
―毒なんて盛られるんだよ。」
先代皇帝に毒を盛ったのは・・・?
先代皇帝陛下が亡くなり、新しく皇帝となったアルフレッドの執務室の扉が叩かれた。
「皇帝陛下、失礼いたします。」
入ってきたのは第一騎士団の副団長のブラッドリー卿だ。
第一騎士団の団長であるアーク公子はシャーロット皇女との結婚を控えているため代わりに訪れたのだろう。
「第一騎士団副団長、ハロルド・ブラッドリーと申します。至急皇帝陛下に報告したいことがあり、参りました。」
「言ってみろ。」
アルフレッドは書類とにらめっこしながらブラッドリー卿に言った。
「こちらの資料を見ていただきたいのです。」
ブラッドリー卿が差し出したのは一枚の紙だった。
どうやら先代皇帝の検死結果が正式に出たようだ。
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「先代皇帝陛下の死因は毒殺です。ですが、検死により新たな事実が明らかになりました。」
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「新たな事実?一体何なんだ?」
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それを聞いたアルフレッドが表情を変えずに尋ねた。
「何年も前からだと?」
「はい。少量ずつ食事に毒を盛られていたようです。先代皇帝陛下の主治医も数年前から体調をよく崩されていたと証言しました。先代皇帝陛下がお倒れになられる日は致死量の5倍の毒が盛られていたそうです。」
「致死量の5倍だと?父上に毒を盛った犯人は父上に相当な恨みがありそうだな。」
「はい。動機は間違いなく怨恨でしょうね。」
ブラッドリー卿は一度黙り込んだ後、再び口を開いた。
「ですから、この件は再捜査が必要かと思います。処刑されたキャサリンは先代皇帝陛下毒殺事件に関しては冤罪だったかもしれません。」
「・・・そうだな。再捜査も視野に入れておこう。」
アルフレッドがそう言うとブラッドリー卿は一礼して執務室を出て行く。
ブラッドリーが部屋から出た後、アルフレッドは先代皇帝の検死結果の書かれた紙をじっと見つめていた。
そしてグシャリ、と握りつぶし、グチャグチャになったそれを暖炉へと放り込んだ。
それはすぐに燃えて灰となった。
その光景をじっと見つめていたアルフレッドは顔を手で覆い、笑い始めた。
「は・・・はははっ・・・ははっ・・・。」
誰もいない執務室にアルフレッドの笑い声が響き渡る。
「・・・可哀そうな父上。母上とシャーロットを虐げるからだ。だから
―毒なんて盛られるんだよ。」
先代皇帝に毒を盛ったのは・・・?
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