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皇女シャーロット編
家族
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3年前。
私が15歳の時の話だ。
私は皇宮の廊下を一人で歩いていた。
すると庭園から笑い声が聞こえた。
声の聞こえてくる方を見てみるとお父様とキャサリンとプリシラが楽しくお茶をしていた。
和気あいあいとしていていかにも「幸せな家族」という雰囲気だった。
お父様はキャサリンとプリシラを優しい瞳で見つめていた。
私やお母様には一度も向けられたことのない瞳。
胸が苦しくなった。
ズキズキと痛む胸を必死で抑え、三人の会話に耳を傾けてみる。
「お父様!新しいドレスが欲しいですわ!」
「あぁ、それなら明日仕立て屋を呼ぼう。いくらでも好きなのを買うといい。」
「やったぁ!お父様大好き~!」
「ウィル、私も欲しいものがあるの。」
「何だ?なんでも言ってみろ。お前たちの願いなら何でも叶えてやる。」
ウィルとはお父様の愛称だ。
お母様は一度も呼ぶことも許されなかった名。
あの礼儀もマナーもなっていない愛妾にはそれを許しているのか。
そんな一家団欒とした三人のもとに近寄ってくる人物がいた。
あれは・・・
「父上、キャサリン様、プリシラ。この度はお茶会に招待してくださってありがとうございます。」
アルフレッドお兄様―
私とプリシラの兄であり皇太子だ。
アルフレッドお兄様は私と同じ母を持つがプリシラを可愛がっている。
「おお、アルフレッド。よく来たな。」
お父様がお兄様を喜々として迎え入れる。
プリシラは席を立ちお兄様に抱き着いた。
「お兄様~!」
「やぁ、プリシラ。」
「お兄様、来てくださったんですね!プリシラ、お兄様に会いたかったです!」
「可愛い妹の誘いを断るわけにはいかないよ。」
お兄様はプリシラに対して優しく微笑んだ。
お父様がお兄様を私のように嫌っていないのはいくつか理由がある。
一つ目は容姿。
私はお母様似だがお兄様は完全にお父様似である。
二つ目は唯一の皇位継承者だからだ。
ライドーン帝国では女よりも家を継ぐことの出来る男が重宝される。
三つ目は・・・
自分の愛するキャサリンとプリシラがお兄様を好意的に見ているから、だろう。
お父様はあの二人がいれば他のことはどうだっていいのね。
もう一度庭園に目を向けるとお兄様も席に座って家族四人、楽し気にお茶をしていた。
私の入る隙なんて無い。
お母様が亡くなった時、泣き続ける私を優しく抱きしめて慰めてくれたお兄様はもういない。
プリシラは愛嬌のある子だ。
万人に好かれるようなその容姿と相まって使用人達からも人気がある。
愛想が無く可愛げがないと言われる私とは真逆だ。
そう自分を嘲笑しながら私は視線を前に戻し、再び廊下を歩いた。
私が15歳の時の話だ。
私は皇宮の廊下を一人で歩いていた。
すると庭園から笑い声が聞こえた。
声の聞こえてくる方を見てみるとお父様とキャサリンとプリシラが楽しくお茶をしていた。
和気あいあいとしていていかにも「幸せな家族」という雰囲気だった。
お父様はキャサリンとプリシラを優しい瞳で見つめていた。
私やお母様には一度も向けられたことのない瞳。
胸が苦しくなった。
ズキズキと痛む胸を必死で抑え、三人の会話に耳を傾けてみる。
「お父様!新しいドレスが欲しいですわ!」
「あぁ、それなら明日仕立て屋を呼ぼう。いくらでも好きなのを買うといい。」
「やったぁ!お父様大好き~!」
「ウィル、私も欲しいものがあるの。」
「何だ?なんでも言ってみろ。お前たちの願いなら何でも叶えてやる。」
ウィルとはお父様の愛称だ。
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あの礼儀もマナーもなっていない愛妾にはそれを許しているのか。
そんな一家団欒とした三人のもとに近寄ってくる人物がいた。
あれは・・・
「父上、キャサリン様、プリシラ。この度はお茶会に招待してくださってありがとうございます。」
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「おお、アルフレッド。よく来たな。」
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「お兄様~!」
「やぁ、プリシラ。」
「お兄様、来てくださったんですね!プリシラ、お兄様に会いたかったです!」
「可愛い妹の誘いを断るわけにはいかないよ。」
お兄様はプリシラに対して優しく微笑んだ。
お父様がお兄様を私のように嫌っていないのはいくつか理由がある。
一つ目は容姿。
私はお母様似だがお兄様は完全にお父様似である。
二つ目は唯一の皇位継承者だからだ。
ライドーン帝国では女よりも家を継ぐことの出来る男が重宝される。
三つ目は・・・
自分の愛するキャサリンとプリシラがお兄様を好意的に見ているから、だろう。
お父様はあの二人がいれば他のことはどうだっていいのね。
もう一度庭園に目を向けるとお兄様も席に座って家族四人、楽し気にお茶をしていた。
私の入る隙なんて無い。
お母様が亡くなった時、泣き続ける私を優しく抱きしめて慰めてくれたお兄様はもういない。
プリシラは愛嬌のある子だ。
万人に好かれるようなその容姿と相まって使用人達からも人気がある。
愛想が無く可愛げがないと言われる私とは真逆だ。
そう自分を嘲笑しながら私は視線を前に戻し、再び廊下を歩いた。
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