13 / 17
番外編
オーギュスト公爵家②
しおりを挟む
本音を言ってしまえば、公爵もアーノルドと同じ気持ちだった。
『誰とも関わりたくない』
だからこそ公爵はアーノルドに爵位を譲渡しようとしたのだ。
だけどアーノルドは公爵位を継ぐ気がない。
「・・・アーノルド。リリスのことを気にしているのか?」
公爵は浮かない顔をしていたアーノルドに尋ねた。
「はい。私は愛する妹を傷つけました。散々無視して最後には暴言を吐いて家から追い出しました。」
アーノルドは元々優しい人だった。
だからこそ余計にリリスのことで悔いているのだろう。
「使用人たちも皆そう言って辞めていくが・・・それに関しては私も同罪だ。お前だけが責任を感じる必要はない。」
公爵は優しい口調でアーノルドに言ったがその顔は生気を失っていた。
アーノルドは一瞬で父もリリスのことで頭がいっぱいなのだと悟った。
「・・・父上。リリスは今どうしているのでしょうか。」
アーノルドが父に遠慮がちに尋ねた。
「・・・平民の男と結婚して幸せに暮らしているそうだ。」
「そうですか。」
アーノルドはホッとした。
リリスは公爵邸に戻ってくることはなかったが違う形で幸せを手にしている。
リリスにとっては辛い記憶しかない公爵邸に戻ってくるなんてありえないよなと今になって思う。
あの時罵倒されなかっただけましだろう。
それにリリスは言っていた。
公爵邸での幸せだった頃の記憶は何一つ思い出せないと。
「・・・王妃陛下がリリスの結婚式に参列したそうだ。愛する人と幸せそうだったと言っていた。」
「・・・そうなんですね。」
兄として妹の晴れ姿を見るはずだった。
「幸せならいいです。」
アーノルドは父にそう告げて部屋を出て行った。
「・・・」
公爵は部屋に一人残された。
あの日から家族との仲は微妙なものになっている。
公爵夫人である妻は一切口を聞いてくれなくなった。
アーノルドともよそよそしいままだ。
(・・・爵位を、返上しよう―)
公爵はアーノルドが公爵位を継ぐ気がないのなら爵位を返上しようと考えた。
それが一番最善な方法だと思った。
長い間仕事が手につかなかった公爵は執務室にあるソファに横になって目を閉じた。
そしてシルビアが公爵邸に来る前のことを思い出していた。
リリスがよく笑顔を見せ、家族4人で幸せだった頃のこと。
いつから狂ったのだろうか。
シルビアを可愛がり、リリスを蔑ろにした。
結果、リリスは私たちを見限った。
シルビアの魅了にやられていたとはいえ自分もリリスを虐げたうちの一人なのだ。
しかもリリスに勘当を言い渡したのは紛れもなく公爵本人だ。
「あぁ・・・リリス・・・。」
どれだけ後悔しても最愛の娘はもう帰ってこない。
『誰とも関わりたくない』
だからこそ公爵はアーノルドに爵位を譲渡しようとしたのだ。
だけどアーノルドは公爵位を継ぐ気がない。
「・・・アーノルド。リリスのことを気にしているのか?」
公爵は浮かない顔をしていたアーノルドに尋ねた。
「はい。私は愛する妹を傷つけました。散々無視して最後には暴言を吐いて家から追い出しました。」
アーノルドは元々優しい人だった。
だからこそ余計にリリスのことで悔いているのだろう。
「使用人たちも皆そう言って辞めていくが・・・それに関しては私も同罪だ。お前だけが責任を感じる必要はない。」
公爵は優しい口調でアーノルドに言ったがその顔は生気を失っていた。
アーノルドは一瞬で父もリリスのことで頭がいっぱいなのだと悟った。
「・・・父上。リリスは今どうしているのでしょうか。」
アーノルドが父に遠慮がちに尋ねた。
「・・・平民の男と結婚して幸せに暮らしているそうだ。」
「そうですか。」
アーノルドはホッとした。
リリスは公爵邸に戻ってくることはなかったが違う形で幸せを手にしている。
リリスにとっては辛い記憶しかない公爵邸に戻ってくるなんてありえないよなと今になって思う。
あの時罵倒されなかっただけましだろう。
それにリリスは言っていた。
公爵邸での幸せだった頃の記憶は何一つ思い出せないと。
「・・・王妃陛下がリリスの結婚式に参列したそうだ。愛する人と幸せそうだったと言っていた。」
「・・・そうなんですね。」
兄として妹の晴れ姿を見るはずだった。
「幸せならいいです。」
アーノルドは父にそう告げて部屋を出て行った。
「・・・」
公爵は部屋に一人残された。
あの日から家族との仲は微妙なものになっている。
公爵夫人である妻は一切口を聞いてくれなくなった。
アーノルドともよそよそしいままだ。
(・・・爵位を、返上しよう―)
公爵はアーノルドが公爵位を継ぐ気がないのなら爵位を返上しようと考えた。
それが一番最善な方法だと思った。
長い間仕事が手につかなかった公爵は執務室にあるソファに横になって目を閉じた。
そしてシルビアが公爵邸に来る前のことを思い出していた。
リリスがよく笑顔を見せ、家族4人で幸せだった頃のこと。
いつから狂ったのだろうか。
シルビアを可愛がり、リリスを蔑ろにした。
結果、リリスは私たちを見限った。
シルビアの魅了にやられていたとはいえ自分もリリスを虐げたうちの一人なのだ。
しかもリリスに勘当を言い渡したのは紛れもなく公爵本人だ。
「あぁ・・・リリス・・・。」
どれだけ後悔しても最愛の娘はもう帰ってこない。
411
お気に入りに追加
3,947
あなたにおすすめの小説
第二王子妃から退きますわ。せいぜい仲良くなさってくださいね
ネコ
恋愛
公爵家令嬢セシリアは、第二王子リオンに求婚され婚約まで済ませたが、なぜかいつも傍にいる女性従者が不気味だった。「これは王族の信頼の証」と言うリオンだが、実際はふたりが愛人関係なのでは? と噂が広まっている。ある宴でリオンは公衆の面前でセシリアを貶め、女性従者を擁護。もう我慢しません。王子妃なんてこちらから願い下げです。あとはご勝手に。
妹とともに婚約者に出て行けと言ったものの、本当に出て行かれるとは思っていなかった旦那様
新野乃花(大舟)
恋愛
フリード伯爵は溺愛する自身の妹スフィアと共謀する形で、婚約者であるセレスの事を追放することを決めた。ただその理由は、セレスが婚約破棄を素直に受け入れることはないであろうと油断していたためだった。しかしセレスは二人の予想を裏切り、婚約破棄を受け入れるそぶりを見せる。予想外の行動をとられたことで焦りの色を隠せない二人は、セレスを呼び戻すべく様々な手段を講じるのであったが…。
捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?
ミィタソ
恋愛
「みんな聞いてくれ! 今日をもって、エルザ・ローグアシュタルとの婚約を破棄する! そして、その妹——アイリス・ローグアシュタルと正式に婚約することを決めた! 今日という祝いの日に、みんなに伝えることができ、嬉しく思う……」
ローグアシュタル公爵家の長女――エルザは、マクーン・ザルカンド王子の誕生日記念パーティーで婚約破棄を言い渡される。
それどころか、王子の横には舌を出して笑うエルザの妹――アイリスの姿が。
傷心を癒すため、父親の勧めで隣国へ行くのだが……
婚約破棄された令嬢のささやかな幸福
香木陽灯(旧:香木あかり)
恋愛
田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。
しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。
「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」
婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。
婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。
ならば一人で生きていくだけ。
アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。
「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」
初めての一人暮らしを満喫するアリシア。
趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。
「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」
何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。
しかし丁重にお断りした翌日、
「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」
妹までもがやってくる始末。
しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。
「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」
家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。
濡れ衣を着せてきた公爵令嬢は私の婚約者が欲しかったみたいですが、その人は婚約者ではありません……
もるだ
恋愛
パトリシア公爵令嬢はみんなから慕われる人気者。その裏の顔はとんでもないものだった。ブランシュの評価を落とすために周りを巻き込み、ついには流血騒ぎに……。そんなパトリシアの目的はブランシュの婚約者だった。だが、パトリシアが想いを寄せている男はブランシュの婚約者ではなく、同姓同名の別人で──。
拗れた恋の行方
音爽(ネソウ)
恋愛
どうしてあの人はワザと絡んで意地悪をするの?
理解できない子爵令嬢のナリレットは幼少期から悩んでいた。
大切にしていた亡き祖母の髪飾りを隠され、ボロボロにされて……。
彼女は次第に恨むようになっていく。
隣に住む男爵家の次男グランはナリレットに焦がれていた。
しかし、素直になれないまま今日もナリレットに意地悪をするのだった。
愛を知らないアレと呼ばれる私ですが……
ミィタソ
恋愛
伯爵家の次女——エミリア・ミーティアは、優秀な姉のマリーザと比較され、アレと呼ばれて馬鹿にされていた。
ある日のパーティで、両親に連れられて行った先で出会ったのは、アグナバル侯爵家の一人息子レオン。
そこで両親に告げられたのは、婚約という衝撃の二文字だった。
父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです
珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。
その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。
そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。
そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる