おかしくなったのは、彼女が我が家にやってきてからでした。

ましゅぺちーの

文字の大きさ
上 下
11 / 17
番外編

シルビア・ヘインズ③

しおりを挟む
「リリス・・・!リリス・・・・!」


お父様もお母様もお兄様も、ラウル様もみんなリリスの名前を呼びながら涙を流している。


え・・・?何なの・・・?


「可哀そうに。貴方達もそこにいる女の魅了魔法にやられていたのでしょう?そのせいで愛娘を追い出してしまった。」


そう言ったのは王妃様だった。扇子で口元を隠しているため表情は分からない。


王妃様の言葉に周りが同情の声をあげた。


「公爵家の人間も魅了魔法にかけられていたのか。」


「シルビア嬢が現れる前まではオーギュスト公爵家の者たちはリリス嬢を溺愛していたからな。」


「ヘンドリック公爵令息もリリス嬢を心から愛していたものね。」


え・・・?溺愛していた・・・?心から愛していた・・・?


私はその言葉が信じられなかった。


・・・結局私はリリスに何一つ勝てなかったということ?


リリスに完全勝利したと思っていたのに、実際は全てがリリスに負けていたのだ。


新しい家族や婚約者からの愛は偽物だった。


彼らが本当に愛していたのはリリスだったのだ。


だけど私は魅了魔法なんて本当に知らない。


それだけは紛れもない事実だった。


どうにかしてそれを王妃様に伝えようとした。


「王妃様っ!私は本当に魅了魔法なんて知らないんです!本当です!嘘なんてつきません!」


王妃様の瞳は相変わらず冷たいままだった。


「・・・その真意は今はどうだっていいのよ。」


「・・・・え?」


「問題なのは、あなたが魅了魔法を利用してリリス嬢を貶めたことなのよ。」


!!!


「高位貴族を貶めたの。ただではすまされないわ。」


「そ、そんな・・・!」


私は絶望した。


こんなことになるんだったら、舞踏会になんて出るんじゃなかった・・・!


私は衛兵に引きずられて歩いた。


先ほどまであれほど私に心酔していた貴族たちはすれ違いざまに私を罵倒する。


「この魔女が!!!」


「さっさと消えろ!」


・・・なんでなのよ。


私はただ愛されたかっただけなのに―。







後になって分かったことだが、現王妃様は聖女だったらしい。


だから私が魅了魔法を使用していることが一瞬で分かったんだって。


王子二人に私の魅了魔法が効かなかったのはその聖女の血を引いているから。


国王陛下の母親も聖女だった。


だから魅了魔法が効かなかった。




そして今私は地下牢にいる。


もうすぐ判決が出るはずだ。


私の罪はたくさんある。


公爵令嬢を貶めたこと、名門公爵家を乗っ取ったこと、そして舞踏会で王子二人や王たちに媚を売ったことから、王家をも乗っ取ろうとしたのではないかという罪まで加算されてしまった。


判決なんて分かっている。


当然死刑だ。


はぁ・・・短い人生だったな・・・。


今さら後悔してももう遅い。


私は調子に乗りすぎたのだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました

新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。

双子の妹を選んだ婚約者様、貴方に選ばれなかった事に感謝の言葉を送ります

すもも
恋愛
学園の卒業パーティ 人々の中心にいる婚約者ユーリは私を見つけて微笑んだ。 傍らに、私とよく似た顔、背丈、スタイルをした双子の妹エリスを抱き寄せながら。 「セレナ、お前の婚約者と言う立場は今、この瞬間、終わりを迎える」 私セレナが、ユーリの婚約者として過ごした7年間が否定された瞬間だった。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?

リオール
恋愛
両親に虐げられ 姉に虐げられ 妹に虐げられ そして婚約者にも虐げられ 公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。 虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。 それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。 けれど彼らは知らない、誰も知らない。 彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を── そして今日も、彼女はひっそりと。 ざまあするのです。 そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか? ===== シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。 細かいことはあまり気にせずお読み下さい。 多分ハッピーエンド。 多分主人公だけはハッピーエンド。 あとは……

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?

ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。 レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。 アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。 ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。 そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。 上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。 「売女め、婚約は破棄させてもらう!」

【完結】「妹が欲しがるのだから与えるべきだ」と貴方は言うけれど……

小笠原 ゆか
恋愛
私の婚約者、アシュフォード侯爵家のエヴァンジェリンは、後妻の産んだ義妹ダルシニアを虐げている――そんな噂があった。次期王子妃として、ひいては次期王妃となるに相応しい振る舞いをするよう毎日叱責するが、エヴァンジェリンは聞き入れない。最後の手段として『婚約解消』を仄めかしても動じることなく彼女は私の下を去っていった。 この作品は『小説家になろう』でも公開中です。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

処理中です...