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本編
決別
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私は王妃陛下と別れて、王宮の廊下を歩いていた。
(それにしても・・・シルビアが牢に入れられたことといい、私に聖女の資質があったこと・・・驚きの連続だわ。)
そう思いながら廊下を歩いていた、その時―
「リリス・・・なのか?」
背後から声が聞こえてきた。
私が振り返ると―
そこにはひどくやつれた様子の人間が四人、立っていた。
(・・・なぜ彼らがここにいるの?)
間違いない。
公爵邸で私を虐げた公爵と公爵夫人と公爵令息。そして、婚約を解消しシルビアを選んだ元婚約者。
(家族だった人と、婚約者だった人・・・。)
私は国王陛下にした時と同じように床に膝をついて頭を下げる。
「オーギュスト公爵閣下、公爵夫人、公爵令息様、ヘンドリック公爵令息様。私に何か御用でしょうか?」
「リリス・・・・。」
呆気にとられた公爵の声が聞こえた。
「リリス、そんな風にしなくてもいいじゃない。私たちは家族なのだから。」
公爵夫人が言った。
「いえ、私は平民ですから。」
「っ・・・・。」
「リリス、今までのことは悪かった。だからどうか家に帰ってきてくれないか。」
そう言ったのはオーギュスト公爵令息だ。
「先ほども言いましたが今の私はただの平民でございます。平民が公爵邸に足を踏み入れるわけにはいきません。」
「リリス・・・。」
「リリス、僕もシルビアの魅了にやられていた。君のことが好きなんだ。もう一度、やり直したい。」
次に出てきたのはヘンドリック公爵令息だ。
「平民が公爵令息様と結ばれるわけにはいきません。」
「・・・・」
途端に押し黙った。
顔を上げると、四人全員が辛く、苦しく、悲しそうな表情を浮かべていた。
(自分たちは被害者ですって感じの顔ね。)
「私は、公爵邸に戻る気はありません。」
自分の考えをハッキリと告げる。
「な、何故だ!?公爵令嬢として暮らせば宝石やドレス、欲しい物は何でも手に入るんだぞ!?」
「リリス、もしかしてまたあんなことをされるのが怖いの?大丈夫よ、私たちはもうあんな過ちを犯したりしない。」
「そうだ、もうシルビアはいないから安心して邸へ戻ってきていいんだ。」
「リリスは私のことを慕っていただろう?今度こそ結婚しよう。」
四人が口々に言った。
「私は・・・どうしても思い出せないのです。確かに、十歳の頃までは貴方達に愛されていたと思います。ですが、その時のことがもうほとんど思い出せません。今の私にとって貴方達は家族だった人たちです。それ以上でもそれ以下でもありません。それに私には・・・新しい家族がいるのです。」
そう言って私は四人に背を向ける。
「ま、待てリリス!新しい家族ってな―」
公爵が言いかけたその時、私の目の前に会いたくて仕方がなかった人が現れたのだ。
「リリッ!」
「・・・ロン?」
ロンは笑顔でこちらへ駆け寄ってくる。
「どうしてここにいるの?」
「王妃様と王様に特別に許可をもらったんだ。親父とお袋もあそこにいるよ。」
「「リリちゃん!!」」
「お義父様!お義母様!」
私たちは再会の抱擁を交わした。
公爵たち四人はそんなリリスの姿をずっと見ていた。
「・・・リリス。」
公爵たちの目に映るそれは、まさに絵に描いたような”幸せな家族”だった―
(それにしても・・・シルビアが牢に入れられたことといい、私に聖女の資質があったこと・・・驚きの連続だわ。)
そう思いながら廊下を歩いていた、その時―
「リリス・・・なのか?」
背後から声が聞こえてきた。
私が振り返ると―
そこにはひどくやつれた様子の人間が四人、立っていた。
(・・・なぜ彼らがここにいるの?)
間違いない。
公爵邸で私を虐げた公爵と公爵夫人と公爵令息。そして、婚約を解消しシルビアを選んだ元婚約者。
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私は国王陛下にした時と同じように床に膝をついて頭を下げる。
「オーギュスト公爵閣下、公爵夫人、公爵令息様、ヘンドリック公爵令息様。私に何か御用でしょうか?」
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「リリス、そんな風にしなくてもいいじゃない。私たちは家族なのだから。」
公爵夫人が言った。
「いえ、私は平民ですから。」
「っ・・・・。」
「リリス、今までのことは悪かった。だからどうか家に帰ってきてくれないか。」
そう言ったのはオーギュスト公爵令息だ。
「先ほども言いましたが今の私はただの平民でございます。平民が公爵邸に足を踏み入れるわけにはいきません。」
「リリス・・・。」
「リリス、僕もシルビアの魅了にやられていた。君のことが好きなんだ。もう一度、やり直したい。」
次に出てきたのはヘンドリック公爵令息だ。
「平民が公爵令息様と結ばれるわけにはいきません。」
「・・・・」
途端に押し黙った。
顔を上げると、四人全員が辛く、苦しく、悲しそうな表情を浮かべていた。
(自分たちは被害者ですって感じの顔ね。)
「私は、公爵邸に戻る気はありません。」
自分の考えをハッキリと告げる。
「な、何故だ!?公爵令嬢として暮らせば宝石やドレス、欲しい物は何でも手に入るんだぞ!?」
「リリス、もしかしてまたあんなことをされるのが怖いの?大丈夫よ、私たちはもうあんな過ちを犯したりしない。」
「そうだ、もうシルビアはいないから安心して邸へ戻ってきていいんだ。」
「リリスは私のことを慕っていただろう?今度こそ結婚しよう。」
四人が口々に言った。
「私は・・・どうしても思い出せないのです。確かに、十歳の頃までは貴方達に愛されていたと思います。ですが、その時のことがもうほとんど思い出せません。今の私にとって貴方達は家族だった人たちです。それ以上でもそれ以下でもありません。それに私には・・・新しい家族がいるのです。」
そう言って私は四人に背を向ける。
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「王妃様と王様に特別に許可をもらったんだ。親父とお袋もあそこにいるよ。」
「「リリちゃん!!」」
「お義父様!お義母様!」
私たちは再会の抱擁を交わした。
公爵たち四人はそんなリリスの姿をずっと見ていた。
「・・・リリス。」
公爵たちの目に映るそれは、まさに絵に描いたような”幸せな家族”だった―
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