1 / 17
本編
プロローグ
しおりを挟む
私はリリス・オーギュスト。
オーギュスト公爵家の長女だ。
父と母は貴族には珍しい恋愛結婚で私とお兄様はそれはそれは愛されて育った。
幼少の頃から家族の仲は良く、私を愛してくれる婚約者様もいて、その時私はこの先もずっとこの幸せが変わらないのだと信じて疑わなかった。
そんな時だった、彼女が我が家にやってきたのは。
彼女の名前はシルビア・ヘインズ。
お父様の弟君であらせられるヘインズ伯爵家のご令嬢だ。
私やお兄様にとっては従姉妹にあたる。
どうやらご両親が不慮の事故で亡くなってしまったようで我が家で引き取ることになったそうなのだ。
お父様がお母様とお兄様と私の前に彼女を連れて紹介した。
お父様は何故か彼女を気に入っていて、その目は私たちと一緒にいるとき以上に優しかった。
そしてお父様だけではなくお母様とお兄様も使用人達でさえシルビアを気に入り、彼女に対して過保護になった。
私も歩み寄ろうと努力した。
だが何故だがいつもシルビアに誤解されてしまうようだった。
その度に両親やお兄様から叱責され、私は使用人達からも白い目で見られるようになった。
今では私の味方は邸には誰もいない。
毎日のように冷遇されている。
今日もまた、いつもと同じ光景が目の前に広がっている。
「シルビア、美味しいかい?」
お父様が優しくシルビアに問いかける。
「はいっ!とーっても美味しいです!」
シルビアが笑顔で答えた。
「あらシルビア。嫌いなものもしっかり食べなきゃダメよ。」
お母様が苦笑いしながらシルビアに言った。
「えっ・・・は、はい・・・。」
シルビアが悲しそうに目を伏せる。
「まぁまぁ、母上。いいじゃないですか。シルビア、それは私が食べてあげよう。」
お兄様がシルビアの皿に手を伸ばす。
「わ~っ!ありがとうございます!お兄様!」
それを使用人達は微笑ましい目で見つめている。
ここだけ見れば、さぞ幸せな家族だろう。
私さえいなければ。
私だけ一人黙々とご飯を食べている。
家族はそんな私を気に留めない。
3年目なのだからもうほとんど気にしていないが。
私は食べ終わるとすぐに席を立つ。
幸い食べるのが早い方だったのですぐにあの嫌な空間からは抜け出すことができた。
自室へと戻って一息つく。
(いつから・・・こうなったんだっけ・・・。)
昔は、お父様もお母様もお兄様も私に優しかったような気がする。
まぁ、うろ覚えで今じゃもうほとんど思い出せないが。
私はこの公爵邸では完全に「いないもの」である。
使用人達も私の言うことを聞いてくれないし両親も兄も私を無視する。
だけどもうすぐだ。
もうすぐこの地獄が終わる。
オーギュスト公爵家の長女だ。
父と母は貴族には珍しい恋愛結婚で私とお兄様はそれはそれは愛されて育った。
幼少の頃から家族の仲は良く、私を愛してくれる婚約者様もいて、その時私はこの先もずっとこの幸せが変わらないのだと信じて疑わなかった。
そんな時だった、彼女が我が家にやってきたのは。
彼女の名前はシルビア・ヘインズ。
お父様の弟君であらせられるヘインズ伯爵家のご令嬢だ。
私やお兄様にとっては従姉妹にあたる。
どうやらご両親が不慮の事故で亡くなってしまったようで我が家で引き取ることになったそうなのだ。
お父様がお母様とお兄様と私の前に彼女を連れて紹介した。
お父様は何故か彼女を気に入っていて、その目は私たちと一緒にいるとき以上に優しかった。
そしてお父様だけではなくお母様とお兄様も使用人達でさえシルビアを気に入り、彼女に対して過保護になった。
私も歩み寄ろうと努力した。
だが何故だがいつもシルビアに誤解されてしまうようだった。
その度に両親やお兄様から叱責され、私は使用人達からも白い目で見られるようになった。
今では私の味方は邸には誰もいない。
毎日のように冷遇されている。
今日もまた、いつもと同じ光景が目の前に広がっている。
「シルビア、美味しいかい?」
お父様が優しくシルビアに問いかける。
「はいっ!とーっても美味しいです!」
シルビアが笑顔で答えた。
「あらシルビア。嫌いなものもしっかり食べなきゃダメよ。」
お母様が苦笑いしながらシルビアに言った。
「えっ・・・は、はい・・・。」
シルビアが悲しそうに目を伏せる。
「まぁまぁ、母上。いいじゃないですか。シルビア、それは私が食べてあげよう。」
お兄様がシルビアの皿に手を伸ばす。
「わ~っ!ありがとうございます!お兄様!」
それを使用人達は微笑ましい目で見つめている。
ここだけ見れば、さぞ幸せな家族だろう。
私さえいなければ。
私だけ一人黙々とご飯を食べている。
家族はそんな私を気に留めない。
3年目なのだからもうほとんど気にしていないが。
私は食べ終わるとすぐに席を立つ。
幸い食べるのが早い方だったのですぐにあの嫌な空間からは抜け出すことができた。
自室へと戻って一息つく。
(いつから・・・こうなったんだっけ・・・。)
昔は、お父様もお母様もお兄様も私に優しかったような気がする。
まぁ、うろ覚えで今じゃもうほとんど思い出せないが。
私はこの公爵邸では完全に「いないもの」である。
使用人達も私の言うことを聞いてくれないし両親も兄も私を無視する。
だけどもうすぐだ。
もうすぐこの地獄が終わる。
271
お気に入りに追加
3,942
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!
ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。
貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。
実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。
嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。
そして告げられたのは。
「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」
理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。
…はずだったが。
「やった!自由だ!」
夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。
これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが…
これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。
生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。
縁を切ったはずが…
「生活費を負担してちょうだい」
「可愛い妹の為でしょ?」
手のひらを返すのだった。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
結婚式の日取りに変更はありません。
ひづき
恋愛
私の婚約者、ダニエル様。
私の専属侍女、リース。
2人が深い口付けをかわす姿を目撃した。
色々思うことはあるが、結婚式の日取りに変更はない。
2023/03/13 番外編追加
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
【完結】愛してなどおりませんが
仲村 嘉高
恋愛
生まれた瞬間から、王妃になる事が決まっていたアメリア。
物心がついた頃には、王妃になる為の教育が始まった。
父親も母親も娘ではなく、王妃になる者として接してくる。
実兄だけは妹として可愛がってくれたが、それも皆に隠れてコッソリとだった。
そんなある日、両親が事故で亡くなった同い年の従妹ミアが引き取られた。
「可愛い娘が欲しかったの」
父親も母親も、従妹をただただ可愛いがった。
婚約者である王太子も、婚約者のアメリアよりミアとの時間を持ち始め……?
※HOT最高3位!ありがとうございます!
※『廃嫡王子』と設定が似てますが、別のお話です
※またやっちまった、断罪別ルート。(17話から)
どうしても決められなかった!!
結果は同じです。
(他サイトで公開していたものを、こちらでも公開しました)
【完結】長年の婚約者を捨て才色兼備の恋人を選んだら全てを失った!
つくも茄子
恋愛
公爵家の跡取り息子ブライアンは才色兼備の子爵令嬢ナディアと恋人になった。美人で頭の良いナディアと家柄は良いが凡庸な婚約者のキャロライン。ブライアンは「公爵夫人はナディアの方が相応しい」と長年の婚約者を勝手に婚約を白紙にしてしまった。一人息子のたっての願いという事で、ブライアンとナディアは婚約。美しく優秀な婚約者を得て鼻高々のブライアンであったが、雲行きは次第に怪しくなり遂には……。
他サイトにも公開中。
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる