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83 家族 フランチェスカ視点
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それから私は水晶で陛下――レオの様子をずっと見ていた。
彼が本当に変わったのか、自分の目でしっかりと見極めたかった。
どうやら彼は本格的にレスタリア公爵家を倒すために動き出しているようだった。
そしてそんな彼の隣には私のよく知るもう一人の人物がいた。
「え……お義兄様……?」
――シリウス・ヴェロニカ
私の兄でヴェロニカ公爵家の現当主。
兄とはいっても実の兄ではなく、私の従兄弟にあたる人物だ。
私の両親は私が小さい頃不慮の事故で亡くなっている。
唯一の後継者であった私はまだ幼く、公爵家を継ぐことは出来なかったため父の弟である叔父がヴェロニカ公爵となった。
そうして家族になった私たちだが、私はあまり彼らと関わった記憶が無かった。
(どうしてお義兄様が……?私はお義兄様たちにとって家族じゃないのに……)
彼らは私のことが好きではなかった。
いつだって私をいない者として扱っていたのだから。
そうしているうちに公爵家は窮屈な場所になり、逃げるようにレオのいる王宮に行くようになった。
「当時の私はまだ幼く、突然両親を二人同時に失くした彼女にどう接すればいいのかが分かりませんでした。私には私を心から愛してくれる優しい両親がいました。だから、彼女の気持ちを理解することが出来なかったのです」
(え……)
お義兄様が口にした言葉に私は衝撃を隠せなかった。
兄は自分に興味が無いと思っていたから。
実際、お義兄様と会話をした記憶などほとんど無かった。
「……信じられない話かもしれませんが、私の父は死の直前までフランチェスカのことを悔いていました」
(お義父様……!?)
「はい、あんな接し方をしてしまったけれど本当は娘が出来て嬉しかった……と父は最後にそう口にしておりました」
(嘘……)
「母も同じです。私の母は、父が亡くなり、私が爵位を継いだ後も引き続き公爵邸に住んでいましたがフランチェスカの訃報を聞き領地に引きこもりました」
(お義母様……)
お母様は私を見るたびにいつも気まずそうな顔をしていた。
以前の私は自分を疎ましがっているからだと思っていたが、どうやら違っていたようだ。
(私……家族から愛されていたの……?)
未だ理解が追い付いていない私にさらなる衝撃的な事実が明らかになった。
「え……嘘でしょう……?」
どうやら先王陛下が私宛てに手紙を送っていたらしい。
(私、あの方たちに見捨てられていると思ってた……)
私が死の間際、深く関わりのあった彼の両親に手紙を残さなかったのは夫の寵愛を得られない私に呆れ果てているからだと思っていた。
だけど、それは大きな間違いだったのだ。
二人はちゃんと私を気にかけてくれていたのだ。
「みんな……!」
もう何度目か分からない涙が私の頬を伝った。
誰も私を気にしていないと思っていた。
皆が私をお飾りの王妃だと蔑んでいると思っていた。
誰からも愛されない女だと、思っていた。
嬉しくて涙が止まらなくなった。
声を上げて泣き続ける私を、女神様は慈愛に満ちた笑みでじっと見つめていた。
彼が本当に変わったのか、自分の目でしっかりと見極めたかった。
どうやら彼は本格的にレスタリア公爵家を倒すために動き出しているようだった。
そしてそんな彼の隣には私のよく知るもう一人の人物がいた。
「え……お義兄様……?」
――シリウス・ヴェロニカ
私の兄でヴェロニカ公爵家の現当主。
兄とはいっても実の兄ではなく、私の従兄弟にあたる人物だ。
私の両親は私が小さい頃不慮の事故で亡くなっている。
唯一の後継者であった私はまだ幼く、公爵家を継ぐことは出来なかったため父の弟である叔父がヴェロニカ公爵となった。
そうして家族になった私たちだが、私はあまり彼らと関わった記憶が無かった。
(どうしてお義兄様が……?私はお義兄様たちにとって家族じゃないのに……)
彼らは私のことが好きではなかった。
いつだって私をいない者として扱っていたのだから。
そうしているうちに公爵家は窮屈な場所になり、逃げるようにレオのいる王宮に行くようになった。
「当時の私はまだ幼く、突然両親を二人同時に失くした彼女にどう接すればいいのかが分かりませんでした。私には私を心から愛してくれる優しい両親がいました。だから、彼女の気持ちを理解することが出来なかったのです」
(え……)
お義兄様が口にした言葉に私は衝撃を隠せなかった。
兄は自分に興味が無いと思っていたから。
実際、お義兄様と会話をした記憶などほとんど無かった。
「……信じられない話かもしれませんが、私の父は死の直前までフランチェスカのことを悔いていました」
(お義父様……!?)
「はい、あんな接し方をしてしまったけれど本当は娘が出来て嬉しかった……と父は最後にそう口にしておりました」
(嘘……)
「母も同じです。私の母は、父が亡くなり、私が爵位を継いだ後も引き続き公爵邸に住んでいましたがフランチェスカの訃報を聞き領地に引きこもりました」
(お義母様……)
お母様は私を見るたびにいつも気まずそうな顔をしていた。
以前の私は自分を疎ましがっているからだと思っていたが、どうやら違っていたようだ。
(私……家族から愛されていたの……?)
未だ理解が追い付いていない私にさらなる衝撃的な事実が明らかになった。
「え……嘘でしょう……?」
どうやら先王陛下が私宛てに手紙を送っていたらしい。
(私、あの方たちに見捨てられていると思ってた……)
私が死の間際、深く関わりのあった彼の両親に手紙を残さなかったのは夫の寵愛を得られない私に呆れ果てているからだと思っていた。
だけど、それは大きな間違いだったのだ。
二人はちゃんと私を気にかけてくれていたのだ。
「みんな……!」
もう何度目か分からない涙が私の頬を伝った。
誰も私を気にしていないと思っていた。
皆が私をお飾りの王妃だと蔑んでいると思っていた。
誰からも愛されない女だと、思っていた。
嬉しくて涙が止まらなくなった。
声を上げて泣き続ける私を、女神様は慈愛に満ちた笑みでじっと見つめていた。
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